【編集後記】

加藤 宣幸


◎「オルタ」はイラク戦争の不条理に反対して創刊されてから来月で12年目に入る。時に動画も発信しWEBメディアとして歩んできたが、昨年8月からは「オフコン」で毎月オープンセミナーを始めた。(オルタ145号;セミナー世話人代表荒木重雄報告)。今月号には第6回セミナーの元中国大使・丹羽宇一郎氏講演を載せた。さすが大商社のトップで辣腕を振るわれた方なのでメモも見ず数字が流れるように口を衝き、イデオロギーでなく事実で世界情勢を説き、中国包囲を妄想する安倍外交の愚を難じられた。本号ではこれに関連してアメリカ大統領選を武田尚子さんに、今も世界各地でつづく戦争の『本質』とは何かを三上治・北岡和義・大原雄の三氏が夫々の視点から論じ、岡田充・田村光博両氏には東アジアの課題を提起して頂いた。この他コラムでも中東・南アジア・インド・インドネシア・中国などについてユニークな情報を載せた。

◎私たちが世界を見るとき、丹羽氏も指摘するように原油安・世界同時株安は世界経済に暗い影を落としているが、同時に見逃せないのは各国の深刻な格差拡大問題だ。これを端的に表わしたのがアメリカ大統領予備選挙緒戦での民主党バーニー・サンダースの大健闘だ。
 オルタは手づくりのWEBメディアだが、数年来、在米の武田尚子・石田奈加子さんに、人権・医療・銃規制など生活問題を通してアメリカ社会の素顔に迫って頂いた。特に武田さんは2010年から約60回に及ぶレポートで、アメリカが「最強大国」だが同時に「貧困大国」なことを明らかにされた。私たちはひたすらアメリカに追随するだけでなく複眼でアメリカの実相を見たい。その意味で日本のどのメディアも報じないときに武田さんがいち早くサンダースの政治経歴・主張・背景などを詳しく記事にしたものをオルタは昨秋の10月号に載せた。オルタとして少し自讃したいが今月の武田レポートにも注目して頂きたい。

【オルタの鼓動】オルタ創刊期から約10年間、100回以上も中国・深センから生活者目線で現地ルポを送って下さった佐藤美和子さんが旧臘帰国されたので、残念ながら現地報告は中止し今後は随時ご寄稿頂くことになった。長い間ご苦労をおかけしたことに深く感謝申し上げたい。またミャンマーから3年間毎月「ミャンマー通信」をお寄せ頂いたITUCミヤンマー事務所長中嶋滋氏も12月に無事退任し帰国されたので現地ルポはなくなり、今後はオルタ編集委員としてお力添え頂くことになった。
 新しく今月から、中国・吉林市に留学しながら別の大学で日本語の教鞭をとる今村隆一氏に『吉林便り』を毎月頂くことになった。また南アジア研究で著名な気鋭の研究者福永正明先生に『フォーカス:インド・南アジア』というコラムを毎月お願いすることになった。大いに期待して頂きたい。

【訃報】1月22日、力石定一法政大学名誉教授が89歳で亡くなられた。謹んで哀悼の意を表したい。私が先生に初めてお目にかかったのは1950年代中頃、まだ先生が杉田正夫のペンネームで構造改革派論客として大活躍されていた時だ。オルタには創刊直後から何回もご寄稿やアドバイスを頂いた。晩年、先生は自ら雑誌『発想』を創刊されたが、これが廃刊になった時にはオルタが引き継ぐようにと名簿を下さった。生前のご指導に深く感謝しご冥福をお祈りします

◎【日誌】1月21日:衆議院会館・プログレス研究会。22日:神保町・大類善啓・竹中一雄。23日:第6回オルタオープンセミナー・丹羽宇一郎。26日:神田・矢野凱也・仲井富・山田高。文京シビックホール・新外交イニシアティブ集会・猿田佐世。27日:自宅・野沢汎雄・村山純子。28日:四谷・加藤弘道。29日:自宅・プログレス研究会新年会。

2月1日:学士会館・今村隆一。2日:自宅・浜谷淳。9日:稲城・仏教に親しむ会。10日:参議院議員会館・峰久和哲・竹中一雄・仲井富。12日:自宅・大類善啓。13日:明大・反貧困ネットワーク講座。高橋裕彦・竹中一雄。14日:自宅・野沢汎雄・小暮剛一。19日:ソシアルアジア研究会・梶谷壤神戸大教授・「中国的資本主義」の検討と今後の展望。

■【今月のオルタ動画案内】
  YouTube配信 http://www.youtube.com/user/altermagazine

◎『朝鮮・台湾植民地の歴史と記憶〜ポストコロニアルの視点から〜』
   徐正根     山梨県立大学教授
   岡田充     共同通信客員論説委員


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