■【編集後記】

加藤 宣幸


◎私の日課は新聞2紙とネットメデイアのチェック、さらに日刊「立憲フオーラム通信」(fukuda@haskap.net)を読むことから始まる。「立憲フオーラム通信」はオルタ156号(2016年12月号)で発信責任者・福田誠之助氏がその趣旨・内容などを紹介しているが、超党派野党議員などで構成する立憲フオーラム(http://www.rikken96.com/)(代表近藤昭一衆議院議員)が発信する日刊WEB通信(申し込み無料)である。内容は国会審議(委員会議事録速報版)や各種市民団体の集会案内・主要メディアの関連記事紹介など貴重な情報が詰まっている。創刊は2015年5月26日だから、まさに衆議院で安全保障特別委員会の審議が始まった日である。発信の意図は委員会の論議を少しでも早く院内外の関係者に伝えようとしたものだ。

◎今また安倍政権は「共謀罪」の名称を変え「テロ等準備罪」創設を目指す。野党や日弁連は反対を表明し市民も『「現代版治安維持法」反対!』と声を上げ始めた。「共謀罪」はかつて3回も国会に提出されながら世論の反発で廃案になったいわくつきのものだが、今回はこれがなければテロが防げずオリンピックも開けないという触れ込みだ。条文には「テロ」という表現がないのに「テロ等準備罪」という名称を使って「共謀罪」の負のイメージを隠す。戦時中の大本営は全滅を玉砕、退却を転進などと国民を欺き最後は国家を破滅させた。安倍政権も法案の名称を国民受けが良いように勝手に作り変える。これは常套手段で、高い支持率を保つが政治の退廃を生み(本号で羽原清雅・指摘)、やがて国を亡ぼすことになる。

◎いかなる政権も常に国民を監視下に置こうとするが、国民がやられっぱなしではない歴史がある。1958年に岸内閣は治安立法の警察官職務執行法=警職法を国会に提出したが世論の猛反発で廃案に追い込まれた。戦前の治安維持法で実際にやられた年配の社会運動家たちが反対運動の先頭に立つただけでなく、『オイ・コラ警察復活』・『デートも危ない警職法』というフレーズに若者も宗教者も旅館業者も幅広く動いて勝った。この戦いは戦後日本で国会外運動が院内多数党に勝利した初の体験で、これが60年安保闘争に受け繋がれた。

◎デートどころかネットでさえ危ないのが今回の「テロ等準備罪」=「新共謀罪」だ。金田法相は2月23日の衆院予算委員会分科会で民進党山尾委員の質問に犯罪を合意(共謀)する手段は限定せず、会議などでメンバーが対面して行う合意だけでなく電話やメール、LINE(ライン)でも犯罪の合意が成立する可能性を認めた。山尾氏は『誰がどのタイミングでどんな内容を送っているのか。それを閲覧し、どう返信しているかを幅広く監視しなければならなくなる』と指摘した。(東京新聞 2017/02/17)今や誰もがSNSを使う時代だから政府は全国民を監視することになり、まさにジョージ・オーウェルの『1984年』以上の監視社会になる。というよりもすでに電波による完全な監視社会になっていると思われる。
◎監視社会といえば先月、オリバー・ストーン監督の映画『スノーデン』(本号で大原雄・詳説)を観た。監督はスノーデンが「犯罪者」か「英雄」かと意図的に問うが、彼が私利でなく必死に無差別盗聴社会の実態を全世界に訴える姿を見れば、誰もが彼を「英雄」だと思う。彼が横田基地で国内外の電波監視を担ったのに多くの日本人は衝撃を受けたが、同時に彼らの電波監視は米国民にも例外ではなかった。(『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』毎日新聞出版刊・小松原みどり)。CIAが全世界で何をやったかはティム・ワイナーの名著『CIA秘録(上・下)』で詳らかだが、トランプ大統領の補佐官マイケル・フリンがロシア大使との電話を暴露され辞任させられたのは、明らかにFBIかCIAにしかできない仕業だ。これこそ「英雄」スノーデンの証言の正しさを裏付けるものだ。

◎日本のマスコミは連日「籠池」騒ぎで沸騰しているが、事件の本質は黒々とした『日本会議』人脈が巧みに政・官を操る蠢きの一端が暴露されたもので、私たちは彼らの真の狙いが小学校を作ることでなく改憲で日本を戦争の出来る国にすることにあるのを肝に銘じたい。

【日誌】2月21日:内幸町・プレスセンター・映画監督河邑厚徳。東京新聞相談役宇治敏彦・小榑雅章・野澤汎雄。22日:神保町・福井大学名誉教授凌星光・大類善啓。23日:神保町・荒木重雄。26日:自宅・浜谷惇。27日:上野文化会館・河原千尋リサイタル。28日:学士会館・NHK小口・梅本・淡浪・浜谷惇。澤口佳代・加藤真希子。

3月1日:学士会館・北東アジア動態研究会・法政大学教授趙宏偉。2日:自宅・岡田充・竹中一雄・仲井富。5日:自宅・加藤弘道。13日:総持寺・仏教に親しむ会。14日:国際文化会館・武田尚子。15日:自宅・野沢汎雄・小林吉雄。16日:議員会館・プログレス研究会。17日:九段・ソシアルアジア研究会・高野孟。18日:ちよだプラットホーム・『トレーラー』試写会。

(2017.3.20)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧