■【編集後記】

加藤 宣幸


◎南スーダンの戦闘日報・森友学園の値引き記録・加計獣医学部の異常認可と続く理不尽な公文書管理と国民を小馬鹿にした菅官房長官の強弁。御用メディアを使って当事者のスキャンダルを暴露するなどに国民は納得しなかった。一強に驕る安倍政権は悪法共謀罪法を強行採決し国会を閉じ追及を逃れようとしたが、高まる国民の批判に、文科省は文書の存在を認めることに追い込まれた。

 解釈改憲による安保法制の強行が立憲政治の破壊ならば、出鱈目な公文書管理は民主主義を根幹から掘り崩すものだ。敗戦の日、日本政府があらゆる公文書を焼き尽くしたのは恥ずべきこととして世界に知られている。日本の公文書管理システムの貧困ぶりは国際基準から見ても惨憺たるものだ。ジャーナリストの春名幹男氏や前国立公文書館長高山正也氏等は、米国が保存する大日本帝国とナチスドイツの戦争犯罪に関する公文書はドイツが800万ページで日本は僅かに20万ページ。日本の公文書館員数は米国の10分の1、韓国の3分の1に過ぎないと指摘する。

 6年前に、公文書管理に熱心だった福田康夫首相の主導で公文書管理法が公布され、最近ようやく具体化しつつあるのは結構だが、大事なのは政治家や官僚全員に『公文書は国民のものだ』という意識を徹底させることだ。資料があってもないことに、あっても黒塗りで出す。保存期限を短くし破棄する。こんな官僚のやりたい放題をまず是正させたい。財務省は都合の悪い交渉記録をなくすためか情報システムをすべて更新したという。公文書管理では原本保存が勿論大事だが同時にできるだけ多くの公文書を電子化して永久保存すべきだ。紙の文書ではスペースも管理コストもかかるが、電子化すれば電子デバイスの進歩で記憶容量は十分に確保できる。

◎今、日本のメディアは「日本ほめ」が花盛りだ。誰でも褒められて悪い気はしないが一歩間違えれば偏狭なナショナリズムに結びつく。世界の中で私たちはどこに位置するのか客観的な数字で考えるため今月から【データ・にっぽん】欄を創った。

◎5月末、オルタの仲間8人で新緑の信州を旅し、蕎麦・日本酒・温泉を楽しんだ。佐久でオルタの執筆者、佐久大学盛岡理事長・小暮常任顧問、佐久総合病院色平医師と交歓し、戸隠では広大な蕎麦畑を経営する大日方大治社長を訪ねた。初日は、戦没画学生の遺作を展示する無言館や、戦前治安維持法に反対し右翼の凶刃に斃れた山本宣治の記念碑に平和を念じ、翌日は鬱蒼とした杉並木が続く戸隠神社に詣で、3日目は全国一の長寿県長野を築き先端的な地域医療に取り組む佐久総合病院と佐久大学を盛岡理事長に案内して頂いた。

◎【訃報】生涯を沖縄の平和のために戦いぬかれた元県知事大田昌秀さんが6月12日亡くなられた。オルタは2011年1月に編集部代表団5名を沖縄に送り、大田さんに2時間にわたるインタビューをして基地問題など沖縄が直面する諸課題をオルタ86号に掲載した。本号では大山哲さんが追悼の辞を捧げた。

【日誌】5月23日:東洋学園大・『私たちは親しい隣人』―アジア共同体の文化的共通性―・「ベトナム文化はアジア多様性の縮図」・中野亜里。プログレス研究会・「新所得倍増論」。24日:月刊日本・創立記念パーテー・南丘喜八郎。26日:NDの会・講演会。28日:佐久・色平哲郎・無言館・山本宣治記念碑・別所温泉。29日:戸隠・大日方蕎麦園・戸倉上山田温泉。30日:佐久・佐久大学・佐久総合病院。東洋学園大・「在日コリアンの過去・現在・未来」・柳赫秀。31日:自宅・『トレーラー』・白井・澤口他。

6月2日:京橋・「花とあそぶ」展・荒木美智子。3日:韓国YMCA・「ヘイトスピーチ解消法1年」集会・明戸隆浩。7日:京橋・「落穂拾記」打上げ会・羽原・羽毛田。8日:議員会館・小沢一郎・阿部知子対談・桑原・松原・澤口。10日:新宿文化会館・共謀罪集会・保坂展人。13日:東洋学園大・「ここが面白い・日本人が知らない中国人」・麗澤大学教授三潴正道。議員会館・プログレス研究会・フランス大統領選挙。

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