【編集後記】

加藤 宣幸
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◎東京都議選における自民党の歴史的惨敗・内閣支持率の急激な低下は、議席多数に胡坐をかき御用新聞・TVに太鼓を叩かせ、議会では首相自ら野党議員をヤジる。無能な子飼いの法相・防衛相をかばい続け、共謀罪は奇策を弄して採決を強行する。完全に国民をなめた安倍政権の横暴に国民が鉄槌を下したものだ。モリ(森友学園)・カケ(加計学園)隠しではモリの8億円値引きもデタラメだが、安倍の本音である教育勅語礼讃教育への露骨な協賛介入意図をも注視したい。カケは特区に名を借りたお友達による規制緩和裏ビジネスの蠢動が明らかに行政を歪めている。政権は逃げ切りに必死だが、どちらのケースでも御用メディアを使って当事者の信ぴょう性を貶めようとして国民の顰蹙を買った。いずれにしても問われたのは「民主主義の基本理念や手続きを軽んじる安倍政権の体質そのものだ」。
「首相信用できない」61%(朝日7.8)の数字は歴史学者本郷和人氏の「おごる平家」ではなく『安倍政権のおごりは鎌倉幕府末期みたい』(7・6朝日)との指摘の重さを示す。

◎次々に出る文科省内部文書・前川喜平前文科事務次官による悪びれない発言で「加計ありき」を追い詰められた安倍首相はついに『地域に関係なく意欲のある所にはどんどん獣医学部を認めていく』と驚くべきことを言い出した。この発言について6・28の朝日新聞社説が『ちゃぶ台をひっくり返すような信じがたい発言である』と評し、著名な元検事の郷原信郎弁護士は自らのブログで『「獣医学部を全国で認可」発言で“自爆”した安倍首相』と切り捨てた。私は安倍発言について郷原氏の「安倍自身もその周辺もこれまで必死に『安倍首相は獣医学部設置認可の問題に一切関わっていないし、具体的に関わる立場にない』という主張を根底から覆したとの指摘は的確で、それは政府自体が決めた獣医学部新設認可4条件を自ら否定する暴言だと思っている(今号掲載の篠原孝議員「日本にも四国にも獣医学部増設必要なし」参照)。

◎今の若い人にはちゃぶ台(卓袱台:4脚の低い食事用の台)という言葉はなじみがないが「ちゃぶ台返し」とは、食事をしている最中に自分の気に入らないことに対して論理的に反対できず一時的に感情を爆発させて食事台をひっくり返しメチャクチャにすることで、「自爆」は文字通りだが周りの者を巻き添えにするのはかなわない。要するに忍耐強くなく感情を瞬間的に爆発させキレる。坊ちゃん育ちに多いこの型の人間が強大な軍事力を握る一国のリーダーとして不適任なのは言うまでもない。

◎安倍首相は都議選惨敗で反省を口にしたが舌の根の乾かぬうちに秋の臨時国会に改憲案を出すのは変えないと言う。もっとも自民党内部から安倍下ろしらしき動きも伝えられるからすんなりとはいくまいが、安倍改憲はどの条文でも変えられればなんでもよいという無節操なものだから何をするか分らない。その点改憲の「元祖」中曽根康弘氏が改憲への国民的合意を何年かけてでも形成しようとした姿勢とは随分違うようだ。

◎最近友人に薦められ、朝日新聞が憲法50年に刊行した中曽根康弘・宮澤喜一/著『討論「改憲・護憲」』(1997年・朝日新聞社刊)を読んだが、総裁選で中曽根氏が、派閥が決めた岸信介でなく、あえて石橋湛山に投票し、単純な戦前回帰志向型の改憲論者ではないこと、宮沢氏が安保体制打破の「革新派」護憲論には組みしないが確固とした信念の護憲論者であることなどを改めて教えられた。改憲派・護憲派を代表する論客として立場は違っても2人は戦争を体験し「改憲」・「護憲」を非常に重く慎重に考えていたこと。中曽根氏は『今の憲法が果たした役割は非常に大きく、象徴天皇、民主主義。自由主義、人権尊重、国際協力、平和主義という原則は認めた上での改憲論』だと主張する。宮沢氏は憲法の個々の条文に不備があることは認めるが、国論を二分し国民意識を分裂させる改憲に膨大なエネルギーを使う意味全くないという徹底した護憲論だった。

◎多くの国民の反対にも関わらず「共謀罪」は7月11日施行された。私たちは悪法の廃止を求めつつも日弁連が提唱する「政府から独立した国内人権機関」設立運動に参加したい。

【日誌】6月22日:稲城・仏教に親しむ会。24日:立教大学・国際アジア共同体学会総会・懇親会。25日:自宅・誕生会・家族・色平哲郎・孫崎亨。27日:三ノ輪・吉まぐれ屋開店パーティー・野沢・羽原・小林他。28日:神保町・桑原昌之。29日:平塚・初岡昌一郎・荒木重雄。30日:弁護士会館・NDの会・「アメリカ民主主義を考える」・芦沢久仁子。

7月1日:日大法学部・公開シンポ「いまこそ立憲主義の意義を問う――共謀罪と安保法制をみすえて――」。2日:自宅・PC作業・加藤公男。3日:自宅・藤田裕樹。6日:自宅・浜谷惇。日吉・久保孝雄・竹中一雄。7日:九段・ソシアルアシア研究会。9日:自宅・バウム博士・色平・荒木・竹中。10日:新宿・小林・竹中・加藤真希子。11日:文京区民ホール・共謀罪NO集会・小池振一郎。12日:自宅・白井宏之・澤口佳代・高橋利直。15日:生活クラブ連合会・『ついに九条「改正?」国民投票の問題点』・今井一。

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