編集後記33

■編集後記

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◎この「オルタ」33号が発信される9月20日、自民党安倍総裁がきまり、次期
総理になる。加藤紘一議員にたいする放火テロについて、『質問がなかったから
コメントしなかった』と平然と応える日本国首相は退陣するが、中国への侵略に
ついて明言を避け、自ら歴史認識を語ろうとせず、靖国に参拝していながらした
ともしないとも言わないのだと言い、改憲を政治日程に載せたいと意気込む後継
者が登場した。こういう日本の政治風土とは何なのか。帝京大学教授というより
も長年、政界を取材してきた元朝日新聞政治部長羽原氏にその解明を、そして東
海大学名誉教授で元衆議院議員の河上氏には独誌「シュピーゲル」の記事を紹介
するという形でその本質的なものを鋭く抉りだして頂いた。

◎310万人の死者を出し、列島を焦土と化しながら、敗戦を終戦と言い替え、一
億総懺悔と称して万事あいまいにし、昭和天皇以下日本の指導部は戦争責任を取
らなかった。米国はそれを完全に占領政策に利用したのだが、この戦後体制が内
包する諸課題を蝋山上智大学名誉教授に、さらに戦勝国側からこの戦争責任を裁
いた東京裁判の諸矛盾については西村大阪女子大学名誉教授に論じて頂いた。

◎初岡姫路独協大学名誉教授の連載「回想のライブラリー」も13回を数える。い
ままでは、いわば世界を股にかけたライブラリーと言う名の交友録で、多くの読
者はその多彩な広がりと深い交友関係に驚き、惹きつけられたが、同時に著者の
卓越した記憶力にも感嘆した。今号からは、いよいよ少年期からの読書歴に筆が
及んで、楽しさもより増す筈である。

◎篠原令氏に書評をお願いした『あの頃の日本』の原本は鐘少華著『早年留日者
談日本』という中国で出版された本である。本書は、本のオビに『波乱の留学生
活を強いられた中国青年の琴線に触れた―恩師・街・庶民・・・―日中交流の原点
がここにある』とあるように、1930年代初頭から1945年の日本敗戦にいたる最も
日中関係の厳しい時期に日本に留学し、その後、中国で医学・文学・政界などあ
らゆる分野で実績を残した人々16人の回想を聞き書きした貴重なもので、これは
最近中国で盛んになったといわれる「口述史学」の成果でもある。

日中が干戈を交えるという最悪の時代に日本に留学し、帰国して各界で活躍し

た若者が肌に触れた日本が生々しく画かれており、それはそれで興味深いが、そ
の若者が何を感じ取ったかを知り得ることは、これからの日中関係を強固なもの
にするための大きなヒントになる。

◎今月から富田昌宏氏の「俳句」のように高沢英子さんの「随想」を連載させて
いただくことになった。「オルタ」はリベラルな政治論で比較的高い評価を頂い
ているといささか自負しているが、これからは毎号の充実した「硬い議論」だけ
でなく、女性の筆による質の高い爽やかな読み物がお届けでき「オルタ」はより
豊かになる筈である。

◎佐藤美和子さんの『中国人の日本観・日本人観(前編)』は前号で今井正敏氏
が佐藤さんの現地レポートを読まれ、問いかけられたことに対する答えである。
まさに書き手と読み手が「読者のこだま」し合った結果の文章としてお読みいた
だきたい。その今井さんは毎号読後感を寄せられるのだが今月は初めて西村先生
に安倍首相論を書いて欲しいとの待望論であった。

◎「読者のこだま」といえば高沢英子さんが2回にわたって障害者の問題を書か
れ、その核心をつく発言が読者に静かな反響を広げている。「オルタ」としても
読者の関心が深い福祉分野には重点的に取り組んで行きたい。

「オルタ」執筆者のなかでも、元栃木県国分寺町長の若林英二氏は福祉法人「は

くつる会」理事長、堺市の木村寛氏は福祉法人「麦の会」相談役として、障害者
作業施設の経営に日夜腐心されている。先月末、若林氏の案内を頂きオルタ編集
部の仲間5人で、その「はくつる会」施設を訪ねた。若い婦人の施設長は「障害者
自立支援法」がいかに障害者の自立を妨げているかを強く訴えられていた。後日、
その問題点を現場の声として「オルタ」に寄稿していただくことをお願いしたの
だが、ここにも弱者をさらに追い詰める小泉構造改革の姿を見る思いがした。

◎編集部からのお知らせ。

★長い間、メールマガジン「オルタ」のホームページはバックナンバーページの
更新が遅れ、ご不便をかけておりましたが、このほど32号までの更新が完了しま
したのでご利用ください。なお、まだカバーページの修復などが一部未完成です
が鋭意修復を急いでおりますのでご海容下さい。

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ルマガジンオルタ』と打ち込めば検索できますのでご活用になると便利です。

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クスの試みとして『オルタ叢書』の刊行作業を下記により進めております。
読者各位の絶大なご支援をお願い致します。 
   *発売  全国書店一斉発売予定日  06年10月14日
   *書名 『海峡の両側から*靖国を考える―非戦・鎮魂・アジア―』
   *著者   河上民雄・西村 徹・朴 菖煕・蝋山道雄・岡田一郎
   *定価   1800円
   *発行元  オルタ出版室      *発売元 新時代社 
   *申込先  全国書店又は発行元
 発行元 〒182-0003 調布市若葉町3-7-3-503   オルタ出版室
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