編集後記36

■編集後記

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◎まさに教育の基本を論じ、準憲法的な性格を持つ法律を改定しようという重要
な参議院の審議が自公によって強行採決され幕を下ろした。広告会社に丸投げし
て「タウンミーテイング」とやらの舞台を派手に演出し、役人を使って謝礼を渡
し「サクラ」を集め「ヤラセ」質問をさせる。マスコミに太鼓を敲かせ「国民世
論」を創り上げる。それを背景に法案を通す。どこかの独裁国家を笑えない小泉
=安倍政権舞台裏のカラクリが国民には透けて見えた。政府自らの調査でも、そ
の一端が明かされたがおよそ民主政治にとって「サクラ」や「ヤラセ」は禁じ手
の筈である。にもかかわらず彼等が焦るのはなぜか。彼らの究極の目標が憲法九
条を変えることにあり、そのために外堀を埋めようと教育基本法改悪を急ぐので
あろう。

◎かねて「オルタ」編集部としても、ことの重要性を意識していたのだが、この
号には建設省OB(元国土庁官房審議官・南原繁研究会員)の山口周三さんから
『教育基本法改正案―特に前文改正案―の疑問』と題する投稿(追記にあるよう
に朝日新聞への投稿が没になり河上先生の紹介で)があり、岡田一郎さんには教
壇に立つ側から、大河原雅子さん(http//www.ookawaramasako.com/)には3
人の子供を育てながら東京・生活者ネットワーク代表として東京都会議員を3期
務められた立場から教育基本法改正案の問題点をそれぞれ論じていただいた。

◎【特別レポート】としては『もったいない!』を合言葉に新幹線新駅建設にス
トップをかけた女性環境学者嘉田滋賀県知事が土建屋政治家群に囲まれて孤軍奮
闘するのを仲井富氏に現地に飛んでレポートしていただいた。私たちは明確なイ
ッシューを掲げて、自公民および連合が推薦する現職知事を破った嘉田知事が、
そのご議会多数派に囲まれて後退させられるのか。突破できるのかという政治的
な視点だけで注目しているわけではない。知事の座は、彼女が生涯をかけて取り
組んできた琵琶湖の環境を守る活動の延長線上にあり、琵琶湖の珠玉のような自
然環境を乱開発から守り、ひいては古代からつづく近江の文化を後世に遺すこと
は、大仰に言えば日本人としての責務であることを全国の人々に訴えたいからで
ある。

◎先号では北朝鮮核実験に対する特集のため紙幅が大幅に増え、好評連載中の『臆
子妄論』西村徹、『回想のライブラリー』初岡昌一郎、『人と思想』富田昌宏の3
本を本号に繰り下げざるを得なかった。毎号を楽しみにお待ちかねの読者や旧ユ
ーゴスラビア旅行から帰国されたばかりで、現地の生々しい息吹とともに臨場感
あふれる紀行を書いていただいた初岡さん、お忙しい中を締め切りに間に合わせ
ていただいた西村、富田さんには、あらためてお詫びしたい。

◎初岡さんの紀行文はいつもながら流れるような筆使いで旅先の歴史・文化・人々
との出会いが活写され、そこに若き日の深い想いが込められている。これを読む
人には、この国が初岡さんの青春にとって格別の国であったことがよく分かる。  
 余談だが、私にとっても初岡さんとの関わりも含め、この国は忘れ難い。私は
1964年の秋にベオグラードに行き、初岡さんはその年の春に帰国されているから
すれ違いである。しかし私も文中にある高屋定国氏の愛車ホルクスワーゲンで国
境まで送って貰っているから共通の思い出がないわけではない。しかし初岡さん
や私たちをユーゴに結びつけたのは友人や旅先の思い出だけではなく、バルチザ
ンを戦い抜いて独立を勝ち取り、コミンフォルムから追放されながらも「非同盟
主義」「自主管理社会主義」の独自路線を貫いたユーゴ共産党の指導者チトーに対
する高い評価があった。

 当時、私たち2人は左派社会党に属し、党内の原理主義的マルクス主義信奉グ
ループからは激しく批判されながらも米ソ対立のなかでの日本独自の社会主義の
途を模索していた。それは、やがて構造改革路線を追求することになるのだが、
その立場からすれば、当時のユーゴ共産党の政治路線は非常に輝いて見えたので
ある。しかし、全面的なソ連型社会主義の崩壊、チトー亡き後のユーゴ内戦・分
裂を視た者として、初岡さんの「ユーゴ紀行」を読み、私自身も感傷的な気分に
なった。

◎メールマガジン「オルタ」が始めて取り組んだ出版『海峡の両側から靖国を考
える』が韓国語に翻訳されつつあることは先号で嬉しいニュースとしてお知らせ
したが、この号では、約90万人の組合員を擁して躍進する首都圏生協連合会(パ
ルシステム)が発行する雑誌『POCO21』で書評が掲載され推奨されたことを報告
し関係者に感謝したい。

◎本年最終号(36号)を無事にお届けできてホットしている。前年に比べ、よ
り多くの執筆者が加わり、号を追って内容も充実し、読者も着実に増えて、デジ
タルメデイアとしてのメールマガジン「オルタ」は確かに前進したと自讃してい
る。

◎この1年、「オルタ」を支えて下さった執筆者・読者に編集部のメンバーを代表
し、あらためて感謝するとともに、より魅力ある「オルタ」を創り出すため来年も
一層のお力添えをお願いして年末のご挨拶とします。良いお年をお迎え下さい。
                          (加藤宣幸記)
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