編集後記41

【編集後記】

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○安倍首相が国民投票法案を可決させ、改憲を政治日程に載せると宣言した
ので今年の憲法記念日は例年よりも緊張感につつまれた。「戦後レジュームか
らの脱却」とは、まさに日本国民が戦後60年にわたって「平和憲法・教育基
本法・反核」で築いた「国のかたち」を否定するものである。いよいよ私た
ちは戦後平和体制の軸となってきた憲法九条を守るために、どのような論理
と戦術で広範な国民と手を組み、国民投票に勝つか知恵を絞らなくてはなら
ない。
 今月号の「オルタ」は憲法特集としてまず巻頭インタービューで河上民雄
氏に近現代史家の視点から「日本国憲法をいま新しく考える」として憲法研
究会の『憲法草案要綱』を中心にお聞きした。その第1回は「『押し付け憲法
論』を駁す」として平和憲法の成りたちを史実に則してわかり易く説かれて
いる。とくに昭和天皇がポッダム宣言受諾を踏まえた『勅語』を出している
という重要な指摘がなされ、その全文が示されているのは注目に値する。引
き続き第2回は来月号に「『囚われたる民衆』からの解放」として高野岩三
郎氏の「共和国憲法」私案にみるイニシアチブや明治憲法体制との絡みなど
が論じられており大いに期待して欲しい。

○憲法特集の二本目は平和憲法を護りたいと願う私たちが「護憲」・「護憲」
とひたすら念じ続けるだけでなく何をすべきなのか。下山保氏に一人の市民
として、その実践的決意を表明していただいた。氏は60年安保では学生運
動の活動家として奮闘し、その後、71年にたつみ生協を設立、90年には首
都圏コープ事業連合(現パルシステム生活協同組合連合会・組合員約90万
人)の理事長になり、96年退任後は顧問、現在はコラボレート研究所代表と
して生協活動一筋に歩まれた社会運動家である。自らの人生を率直に語り、
すべてを憲法改悪反対行動に賭けると宣言する「私の反改憲運動論・再チャ
レンジ論」は長年の生協活動に裏付けられていて説得力を持つ。
 なお、財界人ながら「九条は守るべきである」と強く主張する経済同友会
終身幹事品川正治氏が津市九条の会で「戦争・人間そして憲法九条」と題し
て講演されたものを高木一氏がまとめた記録が届いていて、掲載の許諾も頂
いているが紙幅の都合で6月号の「オルタ」に2号連続の憲法特集として載
せることにした。

○靖国神社に榊を奉納していることが発覚しながらこれを否定も肯定もしな
いという安倍首相の姿勢はまったく国民を馬鹿にしている。報道によって誰
もが知っている事実を「美しい国」を説く政治指導者自らが明かさないという。
慰安婦問題は国による強制はなかったと発言し、アメリカ議会での批判が高ま
るとたちまち本音を隠してブッシュ大統領に陳謝する。まず被害者の方々に
謝るのが先であろう。慰安婦問題では「国家の品格」が問われている。
 このほどメルボルンの入江鈴子さんから豪州ではいかに「慰安婦問題」が
大きな話題として扱われているかを日本の友人たちに実感して貰いたいと現
地を代表する新聞2紙の現物が送られてきた。たしかに1面TOPから写真
入りでの全頁特集である。早速、西村徹先生にコメントをお願いし『オース
トラリア紙に見る「慰安婦問題」』としてまとめていただき、入江さんの気
持ちを広く読者に伝えることにした。
 
○先号(40号)で明石書店編集部の朽見太朗氏に「日韓共通の歴史認識をめ
ざして」と題し『日韓歴史共通教材』出版の意義と両国メデイアの対応につ
いて寄稿をいただいたが、この共通教材完成を記念して来る6月16日(土)
に日韓の学者が『歴史教育をめぐる日本と韓国の対話』をテーマに江戸東京
博物館で国際シンポジュームを開くことになった。是非できるだけ多くの
方々が参加し、この有意義なプロジェクトの成功発展に協力していただきた
いと思う。なお、反改憲運動の催しとしては下山保氏も呼びかけ人の一人に
なって6月15日に「9条改憲を許さない中央総決起大会」が開かれる。(い
ずれも詳細は本号巻末の「催し案内」にあり」「オルタ」はデジタルメデイア
の特性を生かし日中韓市民の相互理解と連帯・改憲阻止などを目指す各種のイ
ベントに積極的に参加したい。

○「オルタ」のこだまには阿部健氏から「藤田若雄30周年記念集会」で「オル
タ」29号が配布されたことが報告された。嬉しいニュースである。吉田勝次
氏の「ガン闘病記」にたいして力石先生の紹介で聖路加病院日野原重明氏の
秘書を長く勤められた芝田和果氏から「ガン治療のオルタナテイブ」が寄せら
れた。

○敗戦の年の3月から8月にかけての日本は地獄であったように思う。3月
東京大空襲・3月から6月の沖縄戦・8月広島長崎の原爆投下はいうまでもな
いが地方都市の隅々までも焦土化し、このおぞましい数カ月間に数十万の無辜
の日本人が死に追いやられた。ただ、この実感を伝えられる世代はすでに少
ない。この連休にドイツ映画『ドレスデン、運命の日』を観た。私は45年2
月13日の夜、二度にわたる連合軍の大空爆によって死者3万5000人罹災者
35万人を出したというドレスデン大空襲を3月10日の東京大空襲に重ねた。
石造建築物に大量の大型爆弾を投下するのと木造家屋に無数の焼夷弾を降ら
せる違いはあっても炎熱地獄を逃げまどい死んでいく市民は同じである。  
 そして、すでに抵抗力を完全に失った日独に対し軍事的には意味のない大
規模無差別爆撃を行った『戦争』とは何であったのかを考える。この映画の
ローランド・リヒター監督は『戦争から人間が学べることがあるとすればそ
れはただ一つ、いかに戦争が無意味であるかということだけなのです』とい
うがまさに至言である。
 『ドレスデン』が主役のこの映画を一人でも多くの若い人が観て『戦争』
を考えて貰いたいと思う。       (加藤 宣幸記)