編集後記44

【編集後記】 

○第21回参議院選挙は自民党の敗北、民主党の大勝利、与野党も逆転。改
憲推進議員数も相対的に減少した模様で、江田五月参議院議長も実現した。
戦争の時代に生まれ育ち、戦後日本の針路を平和と民主主義に求めて、自民
党支配に反対する立場をとってきた者には非常に感慨深く、衝撃的でさえあ
った。
勿論、「終わりが始まりつつある」自民党とはいえ、このまま引き下るま
いから野党が衆議院を制し、政権樹立の道を拓くのは容易ではないだろう。
しかし、衆議院の帰趨にかかわらず、3年後の参議院選挙でも民主党が大敗
しないで、そこそこの議席を確保すれば参議院の多数を保持できる可能性は
高い。そうなれば日本の政治はどう動くのか。少なくとも6年間というスパ
ンで格差拡大の経済政策や改憲路線の修正、対米従属外交の転換などを迫る
ことはできよう。このように民主的な手続きによって政策の変更を一歩々々
実現して行く闘いこそ、1960年代に江田新議長の厳父江田三郎元社会党書
記長が政治生命を賭けて提唱した「構造改革路線」そのものなのだ。奇しく
も江田三郎没後30年の記念すべき年に就任した新議長は、父の果たせなか
った素志を継ぎ、国民の期待に応え、政治手腕を大いに発揮して貰いたいと
思う。

○62回目の敗戦記念日が巡ってきた。文字通り国土は焦土と化し、日本人の
戦没者310万人、うち軍人軍属230万人、その過半数は餓死であったという。
誰が何のために無意味な戦争を始め、続けたのか。無能な最高戦争指導体制
(御前会議)は、ポッダム宣言の受諾を遅らせ、その間にヒロシマ・ナガサ
キの惨劇を生んだ。亡くなった方々はさぞ悔しかった筈だ。この号では戦争
と平和を考えるために、特集1『根本から考える「日本の平和」――安倍居
座り政権のもとでー』と特集2『私の8・15』を組んだ。
 まず、特集1では、私たちにとって「安全保障」とは何であるのかを蝋山
道雄上智大学名誉教授に『安保論議の日本的特徴』という視点で根底的なと
ころから論じて頂いた。次いで沖縄国際大学佐藤学教授から『憲法九条につ
いての極私的考察』の提起をうけた。私たちは専門学者による論考から大い
に学ばなければならないと思う。
 特集2ではオルタの読者から兵役を体験された大宮一朗(元諏訪東洋バル
ブ総務部長・92歳)、若林英二(元栃木国分寺町長・84歳)、細島泉(元毎日
新聞編集局長・83歳)3氏にそれぞれにとっての8.15を記していただいた。
この方々の平和への希求は戦争を知らない世代の心にも強く響く筈である。

○戦争と平和に関連する特別寄稿として韓国から金正勲全南科学大学副教
授の『海峡の両側から靖国を考える』(韓国語版タイトル『靖国神社の現住
所』)の韓国語版翻訳担当者の弁が、出版されたばかりの現物とともに韓国
から届いた。この本はご案内のように昨年10月、「オルタ出版室」から「オ
ルタ」執筆陣の河上民雄・西村徹・朴菖煕・蝋山道雄・岡田一郎各氏や編集
協力者などによるボランタリ-によって出版されたものである。韓国語版が、
このように早く実現したのは「オルタ」執筆者の高沢英子さんのご斡旋と韓
国側金副教授のご努力によるもので関係者に深く感謝したい。私たちは、こ
れからも日韓の交流をいわゆる「韓流ブーム」のような一過性のものに終わ
らせないで人間的な相互信頼を基礎に積み重ねたい。

○いま、世界のマスメデイアはデジタルメデイアの急速な発展によって激動
の嵐に見舞われている。日本も例外ではないが、ことにコイズミによる劇場
型政治の開幕以来、日本のマスコミと政治との“全般的な危ない関係”につ
いてはもっと掘り下げた議論が必要だと思う。 今回の参議院選挙では、新
聞・雑誌・TVなどのマスメデイア以外に、デジタルメデイアの動きはどう
であったのか。若者に人気の「2チヤンネル」などWEBメデイアと政治の
関係について詳しい政治学者岡田一郎氏に『メデイア対策から見た2007参
議院選挙』で分析していただいた。

○今月の「オルタ」にとって嬉しいニュースは『海峡の両側から靖国を考え
る』の韓国語版が出版されたことのほかに、民主党大勝利のなかで「オルタ」
執筆者の大河原雅子さんが東京選挙区で108万票という大量得票でトップ
当選を果たしたことである。読者と共に心からお祝いするとともに、新議会
での大活躍を期待したい。

○防衛庁の人事抗争は何やら戦前の軍部における暗闘を思い起こさせる不
吉な予兆ではないのか。強大な武装集団をコントロールできなくなり「満州
事変」「支那事変」が始った史実が重なる。
猛暑がつづく中、執筆者・読者の健康をお祈りします。
                    (加藤 宣幸 記)  

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