編集後記57

【編集後記】 

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◎ いま、グルジア問題などユーラシア大陸は民族問題に揺れ、資源高騰で鼻
息の荒いロシア外交とともに、オリンピックを終えた「大国中国」の動向に世界
の注目が集まっている。中国外交は内に『五族』(ウイグル族・チベット族・蒙
古族・朝鮮族・台湾族)と言われる民族問題を内包し、その舵取りは微妙である
。榎彰教授は巻頭論文でこれを『歴史的使命を終わろうとする国民国家』が「米
・中・ロそれぞれの道を模索」という大きなフレームで捉え、日本国民が福田の
辞任騒ぎに目を奪われているうちに、世界は中国と米国という「帝国的国家」と
「国家連合」としてのEUが激しく交錯する過程にあることを指摘している。

◎ 『ネットワーキングの思想―東アジアの人間関係学』は安東自由大学にお
ける荒木重雄氏の講演に加筆して頂いたものである。
  荒木氏はNHK国際局チ-フデレクターから桜美林大学国際学部教授。イ
ンド・プネー大学客員教授などを経て高野山で潅頂を受け高野山真言宗僧侶にな
ったという異色の経歴の方で著書には『グローバル・アジアの社会的発展』のほ
か多数があり、現在は「社会環境フオーラム」会長として活発に発言されている
。なお、今号には、この原稿の外にコラムとして『米国多発テロから7年』の短
文をいただいた。これからも随時独自の切り口でコラムを寄稿していただくこと
になっている。

◎ 書評では日米をまたにかけ八面六臂の活躍を続ける世界的に著名な経済学
者青木昌彦氏の『私の履歴書―人生越境ゲーム』を学生運動時代からの友人であ
る篠原浩一郎氏に書いていただいた。青木氏は自著のなかでも詳しく書かれてい
るが60年安保闘争では『姫岡玲冶』のペンネームでブンド=共産主義者同盟の理
論家として活動し、日本共産党(代々木)から左翼知識人の間での知的ヘゲモニ
ーを奪い、その後スタンホード大に学び今日を成した稀有の異才である。篠原氏
が指摘するように個人史が同時代史として描かれているので多くの読者を惹きつ
ける。なお、付言すれば、この魅力ある著書の上梓にあたって著者から協力者と
して謝辞を贈られている方々にメールマガジン「オルタ」の執筆者初岡昌一郎・
篠原浩一郎両氏の名があるのは「オルタ」編集部としても何か誇らしい気分であ
る。

◎ 最近、雑誌『オルタ』(7-8月号)リニアール創刊号を頂いた。この雑誌
は『月刊オルタ』として特定非営利法人アジア太平洋資料センター(PARC)
から出されていたものが隔月刊として再出発したもので上質紙の総ページ72P
、定価800円、ちなみに今号の特集は『世界食糧危機』である。その問題意識は
メールマガジン「オルタ」の編集感覚と殆ど変わらない。紙・印刷媒体の経営は
厳しいが、同じく「オルタナチーブ」を目指す市民として、さらにウエブメデイ
ア『メールマガジン「オルタ」』として雑誌『オルタ』のさらなる発展を祈りた
い。

◎ 「オルタ」にかかわる嬉しいニュースとして、編集共同代表冨田昌宏氏が
『平成20年度栃木県芸術祭文芸作品俳句の部』で「準文芸賞」(銀)を受賞され
たことをお伝えし、心からお祝いしたい。(入賞作品は本号俳句欄に掲載)ご存
知のように冨田氏は俳句結社「柿の木」会代表として活発な創作活動を重ねられ
ながら「オルタ」に毎号作品を寄せられている。

◎ 8月16日「安東自由大学」に参加するため10数年ぶりに羽田からソウルに飛
んだ。一行は初岡昌一郎代表以下「文化教養学部」生になるうちの10名ほどであ
る。
空港では昨年琵琶湖畔に雨森芳洲記念館をともに訪ねて以来の知人で「安東自由
大学」を多彩にコージネートしてくださる梁世勲氏など関係者がニコニコして出
迎えて下さった。嬉しかったのは氏が私の顔を見るなり「オルタ」を毎号楽しく
読んでいますよと言われたことだ。さらにホテルでは初めて名詞を交換した名門
梨花女子大学のCho,Young-Ju教授から『「オルタ」見ていますよ』と美しい日
本語で流暢に挨拶されたときには驚いた。メーリングリストにはない方だったか
ら、おもわずどうしてご存知なのですかとお尋ねするとHPから見ていますとの
ことに嬉しさとともにウエブメデイアの特性と、責任の重さを痛感した。「安東
自由大学」については本号の荒木・山中・井上各氏の報告に詳しいので是非、『
東アジアに無数のコミニテーを創ろう』という目標の実践であるこの運動に理解
を深めていただきたい。

◎この号では、長文の論考が多かったため先月から始まった「研究論叢」
「『大塩平八郎』(森鴎外)に見る明治大逆事件の影」(中)の掲載を延期し
ました。ご了解をお願いしお詫び申し上げます。
                  (加藤 宣幸 記)

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