編集後記65

【編集後記】 

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◎ アメリカに端を発した世界金融危機はいよいよ世界の実体経済に深刻な影響
を及ぼしているが、これは強欲資本主義の破綻とアメリカ一極支配時代の終わり
を告げるものであろう。世界は、サッチャー・レーガン時代から始まった新自由
主義が終焉し、明らかに新しいステージに入った。
 
ケヴィン・ラッド豪首相は『世界金融危機からの脱出は社会民主主義以外に道
はない』と宣言し、1940-1970年代のケインズモデル、1978-2008年までのネオ
・リベラリズムに続く戦後史上第三の新しい体制は「社会民主主義」と呼ばれる
だろうと断言している。いま、気の早いアメリカのメデイアでは、社会の「社会
主義化」さえ論じ始められたという。この状況に就任100日を過ぎたオバマ政権
がどう舵をとろうとしているのか、東海大学教授で元共同通信論説委員長の榎彰
氏に論じていただいた。 

◎ 読売新聞を先導とする各大新聞は特大活字を躍らせ、号外を出し、TVはイ
ージス艦やパトリオット邀撃ミサイルの配備を延々と映し出す。まさに戦時下の
様相である。まるで政府・防衛省の広報部と化したマスコミの狂騒は何であった
のか。
  政権支持率の上昇と改憲を先取りするかのように世論を誘導しようとする麻生
政権の思惑は明らかだが、メデイア側にも国民を煽って部数を伸ばし、視聴率を
稼ごうという魂胆が見えてくる。メデイアと軍部が一体となって戦争への道を突
き進んだ歴史の再現は御免蒙りたい。 

私たちが北東アジアに平和を構築しようとするとき金正日の挙動に情緒的に反応
してはなるまい。事態を客観的に冷静に直視する必要がある。これらについて米
・中・北朝鮮各界の要人と意見の交換を重ねられた国民経済研究協会顧問の竹中
一雄氏に『冷静さ欠くミサイル報道』として解明していただいた。
(なお、これは4月10日東京・学士会館で行われた「09オルタの集い」での竹
中氏の挨拶に加筆されたものである。)

◎ 書評では、かつて小泉・竹中路線の先鋒を担いだ経済学者中谷巌氏の懺悔録
『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル刊)を取り上げた。
この本は権力にすりより、やがて権力者そのものになって「構造改革」を推進
した竹中平蔵氏を典型とする新自由主義経済学者たちの深い罪を著者自らが認
めたという珍しい本である。

米国留学組の彼等については自らも米国に留学した著名な経済学者宇沢弘文氏が
「ミルトン・フリードマンが中心となって学者のモラルを徹底的に破壊していく
時期にアメリカの大学に留学して、それをあたかも自分の功績であるかのように
して非倫理的役割を果たした人たちは許せない」(世界6月号)と厳しく批判さ
れている。これらの関係について島根県立大学教授の井上定雄氏に評していただ
いた。

◎ かっての日本社会党は1994年に村山内閣が成立するまで非現実的理想論
だとして政権与党やマスコミから批判されながらも党の基本政策として「非武装
中立論」を掲げ続けた。今号の「研究論叢」では、その「非武装中立論」がやみ
雲に主張されたのではなく、その条件としていくつかの政策的前提条件が設定さ
れていたことなどを法政大学研究員の木下真志氏が当時の文献(主として石橋政
嗣氏著書)を精査し明らかにしている。これについての賛否は別に、6カ国協議
・憲法九条論議などにからめて今日的状況から吟味していただけたらと思う。
なお、本稿は長文のため上・下2回に分載し、下は次号に掲載予定である。

◎ 5月16日東京・明治大学でオルタ執筆者荒木重雄氏がコーデイネーターにな
り、『経済危機・雇用不安から何を学び何を目指すか』をテーマに「社会環境フ
オ-ラム21」の公開パネルデイスカッションが催された。

オルタ執筆者の初岡昌一郎姫路獨協大学名誉教授が「床と天井のある社会を目指
して~~社会的民主主義の強化」と題する基調報告をしたあと、中村文隆明治大
学教授が「世界経済構造の変質と巨大プレイヤーの出現が経済危機の原因」と解
析され、中村孚信埼玉工業大学教授が「地球環境保全と経済成長は両立しない」
とポスト工業社会における産業構造の転換を主張された。

◎ お詫び;
  オルタ64号の編集後記で久保孝雄氏のオルタ1月号論文『日本沈没を防ぐ年』
が中国のクオリテイ雑誌「領導者」に訳載されたとお伝えしましたが12月号の
論文『社会変動と社会運動』でしたので訂正しお詫びいたします。
                    (加藤 宣幸 記)

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