編集後記69

【編集後記】 

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◎ 2009年9月16日鳩山新政権が発足した。戦後の日本政治史に画期となる総選
挙結果をどのように見るのか。三党連立の新政権成立の意義を私たちはどのよう
に考え、どう向き合うべきかなどについて久保孝雄氏、榎彰氏のお二人に論じて
いただいた。
   今回の選挙結果は前回の自民300が今回の民主308とまさにオセロゲ
ームのような展開となった。しかし小泉劇場型選挙のように鳩山代表個人が熱狂
的に支持されたわけではなく、マニフエストの目玉政策にも支持が低かったにも
かかわらず政権交代に賭ける国民の民主支持は一貫して高かった。これをどう読
むか。民主への積極支持というよりも、自公政権の在りように対する明確な拒絶
であった。しかし、鳩山新政権発足後の報道各社による内閣支持率調査ではいず
れも70数%と、国民の期待感が非常に高いことに注目したい。
   
  久保氏の論考には、自らが1975年に長洲神奈川県知事の政策スタッフとし
て県庁に入り、87年に副知事に就任、その後かながわサイエンスパーク社長に転
じ、「地方の時代」主導を貫くため単身で官僚機構に乗り込んで苦闘された24年
間の行政体験が滲みでている。また榎氏の視点には共同通信論説委員長になるま
で、政治部記者として何代もの自民党政権を取材し、また海外支局長としても活
躍された長い経験の蓄積が広い視野を裏付けている。

◎ 政権を獲得した民主党は「中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼を築
き、アジア共同体の構築を目指す」とマニフェストに書き込んだ。共同体構築は
遠い目標ではあってもまず掲げられたことの意義は大きい。目標達成のためには
、これから長く絶え間ない努力が求められるのだが、その前提となるのは関係諸
国民間の市民レベルでの信頼・連帯意識の醸成であろう。その意味で今月号の「
北から南から」にソウルのチョウ・ヤン・スウさんから頂いたエッセイーは市民
の目線で生活の息吹が生に伝えられ貴重である。

チョウさんは韓国の名門梨花女子大学・通訳翻訳大学院教授で、初岡昌一郎氏が
主宰する安東自由大学の熱心な協力者である。一昨年の第一回には自らが通訳を
担い、昨年は教え子2人を派遣された。私も昨年大学に参加したが、ソウルに着
いたとき大勢の出迎えの中にチョウさんはいた。名刺を出して初体面の挨拶をす
るとなんと流暢な日本語で「「オルタ」はよく読んでいますよ」といわれて驚い
た。ホームページで読まれていたのだ。時間の許す限り、「オルタ」へのご寄稿
が続くことをお願いしたい。
   
◎ OECDは、1990年代後半の対GDP比で社会支出が少なく貧困率が高い
国としてメキシコ・日本・アメリカ・トルコ・イタリア等の順で指摘している。
貧困社会の拡大を生んだ政治責任について、国民はすでに総選挙で明白に審判を
下した。
   貧困問題に対する早急な取り組みが新政権に課せられているが、「派遣村」
など問題の可視化を訴えて全国的な活動を展開している『反貧困ネットワーク』
(代表 宇都宮健児、事務局長 湯浅誠)の声明を【運動資料】として掲載した。
 
◎ 新政権発足に当り、NPO「ロシア極東研究会」代表として北の隣国ロシ
アとの交流拡大に取り組まれている北海道大学名誉教授望月喜市氏から「鳩山新
政権と領土交渉」の提言を頂いた。鳩山氏は日露国交回復に執念を燃やした鳩山
一郎氏の孫であり、自身も日露協会長という「知露派」である。6カ国協議の枠
で北東アジアの平和を構築するとともに日露2国間交渉の難問解決にも新しいア
プローチを期待したい。

◎ 新政権に期待される幾つかの課題の中で決定的に重要なものの一つに政権
による情報公開の徹底がある。私は投票日を目前に控えた8月25日、「オルタ」
執筆者の北岡和義氏(原告団のメンバー)に誘われて、東京地裁の「沖縄返還密
約訴訟」を傍聴に行った。当日の法廷は、密約の存在をみとめている元外務省ア
メリカ局長吉野文六氏の証人出廷日を12月1日と決めただけであったが、外務省
役人の証言には外務省の許可が前提となる。しかし岡田新外務大臣はこの問題の
解明を外務省に命じているから国民をだまし続けた「国家の嘘」が新政権の手に
よって暴かれる日は近い。

                      (加藤 宣幸 記)

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