編集後記70

【編集後記】 

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◎ 新政権が発足して1カ月たった。外交では鳩山新首相の国連総会におけるCO2
の25%削減や安保理首脳会合での非核問題についての演説をはじめ、日米・日
韓・日中など2国間会談をこなし、日中韓三国首脳会談でも東アジア共同体を提
唱するなど次々と自分の言葉で話し、日本外交としては珍しく国際的にも評価さ
れた。首相が国連演説を終えた日、国連で働く日本人職員を労って、職員たちか
ら「今日一日ほど誇らしい日はなかった」と言われたというが総理もさぞ嬉しか
ったに違いない。
 
  内政でも「官僚依存政治脱却」を掲げて、対米密約の調査から、八つ場ダム中
止に象徴される公共事業の一部執行停止、補正予算から3兆円ムダ削減など次々
に緊急課題に取り組み、政治の潮目を確実に変えつつある。期待以上の華々し
さは新政権の船出を十分に彩っている。政治を動かそうと一票を行使した国民
の内閣支持率も高い。しかし、マニフエストに掲げられた政策のすべてや、そ
の政治手法が無条件に支持されているわけではない。国民は民主党に期待を寄
せつつも、その説明責任、政策に対する同意形成などの政策執行力を厳しく見
つめている。新政権がマニフエストを振り回すだけでは、やがて国民の心が離
れることになろう。

 オルタ69号では久保孝雄氏に『「政権交代の意味を考える」、榎彰氏に『民主
党は世界的激動の中で新思想を』で新政権の発足を論じて頂いたが、今号でも引
き続き元朝日新聞政治部長羽原清雅氏に長い政治部記者生活を踏まえた「始動す
る鳩山政権に期待できるか」をご寄稿願い、さらに元社会党中央執行委員船橋成
幸氏からは「鳩山新政権――その戦略課題を考える―」を頂き新政権の政治課
題を検討した。

◎ 緊急な政治課題が山積する新政権にとって早急に解決が迫られているものの
一つに雇用問題がある。政府は緊急雇用対策本部をもうけて雇用創出を図るとと
もに、労働政策審議会の分科会を開き労働者派遣の規制に関する政労使の議論を
本格的に開始した。
   これに関連して「非正規労働が問うていること」として全国ユニオン会長の
鴨桃代氏から論考を頂いた。鴨氏といえば2005年10月の連合会長選に出て、UIゼ
ンセン会長の高木氏と争い323票対107票と善戦して一躍注目を浴びた労働運動家
である。

 なにしろ3000人の組合が200倍の組合に挑戦したのだから反響は大きかった。
それは同時に連合が抱える問題の深さを示唆したものかも知れない。1989年に連
合が結成された当時はパート労働者が連合組合員800万人とほぼ同じ水準の約700
万人であったのが2005年には連合組合員約700万に対しパート約1200万で連合が
雇用・就労の実態に立ち遅れていたのだ。(現在は連合組合員675万・パート約
1260万)鴨氏はこれについて企業別労働運動だけではなく市民団体・弁護士・
ボランテイアなどが力を合わせた「社会的労働運動」の展開、組合民主主義の徹
底による連合の再生、憲法九条の擁護などを訴えて、支持を広げたのではないだ
ろうか。

◎ 10月17日、東京・芝公園で「反貧困ネットワーク」(湯浅誠事務局長)が主
催する 『反貧困世直し大集会2009』~ちゃんとやるよね?!新政権~と銘打っ
た集会が開かれた。この集会の趣旨は私たちの今の気持ちをよく現わしているの
で全文を紹介したい。
『新政権発足から1か月。日本はこれから本当によくなるのか?期待と不安が渦
巻いています。新政権からは、すでに母子加算の早期復活、障害者自立支援法・
後記高齢者医療制度の廃止が打ち出されています。その流れを私たちは歓迎しつ
つ、その時期や内容についてはたくさんの心配もあります。労働者派遣法の抜本
改正はどうなるのか?人々の生活は本当に立て直されるのか?新政権はちゃんと
やってくれるのか?それは私たちの行動にかかっているのだと思います。』

◎ 今月の「オルタのこだま」(1)には東海大学名誉教授の河上民雄先生から
オルタ69号の久保孝雄・榎彰両氏の論考について、編集部に「活き活きしていて
感動的でさえあった」と最大限に評価する感想を頂いたので、先生の了解を得て
掲載した。
(2)には初岡昌一郎氏が主宰する第3回安東自由大学について事務局長の山中
正和氏からエッセースタイルで、韓国パートナーたちの動静や朝鮮通信使にまつ
わる史談を交え、分りやすく「安東自由大学」の活動と将来的には「東アジア市
民大学」へ飛翔する夢を報告して頂いた。「オルタ」としても、その実現のため
に、積極的に一翼を担いたいと思う。

◎ 毎号中国・深センから生活感溢れるエッセーをお寄せいただいている佐藤美
和子さんは体調を崩されたため今月は休載となった。1日も早く回復され、再開
を期待したい。
                  (加藤 宣幸 記)

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