編集後記80

【編集後記】 

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◎50年前に国論を二分した安保条約の国会審議では条約の適用地域について「極
東の範囲」という概念が重大な論点であった。いまは沖縄を出撃拠点とした米海
兵隊が遠くインド洋から中東まで動き回り、日本は米軍への基地提供で間接的に
イラク・アフガン戦争に関与している。これは小泉政権が2005年10月に「日米同
盟:未来のための変革と再編」という日米(外務・国防)閣僚2+2による文書に
署名して極東条項を外し、安保条約を変質させたからである。現在の日米関係の
実相は「日米対等」どころか日本政府が莫大な基地維持費を負担(ドイツ30%・
日本75%)しながらも米国の意に反すれば米軍基地の一部移転問題一つで簡単に
政権交代した首相の首が飛ぶ有様である。

 外務省が、日米同盟の強化を唱え、その対米従属性をいつごろから強めたのか。
現在の安保問題とは何か。外務省情報局長・駐イラン大使・防衛大学校教授を
務めた孫崎亨氏にその変質過程を「安保体制の現在と今なすべきこと」としてな
まなましく語って頂いた。なお、この記録は「伊達判決を生かす会」での講演を
同会のご好意により転載したもので深く感謝するとともに、今後とも活動の連携
をはかりたいと思う。

 なお、この講演に関連する安保・基地問題として、日本の駐留費負担が国際比
較で、いかに高いものであるか(NATO全体の2倍以上・韓国の約5倍)、沖縄
在住の吉田健正氏に「米国に押し付けられた「思いやり予算」」として連載の
「AVoice from Okinawa (13)」で具体的に数字をあげて検証していただいた。
ぜひ併せお読みいただきたい。
           
◎民主党は参議院選挙大敗の主原因を菅首相の唐突な消費税発言だとしたが、果
たしてそれだけなのだろうか。急速な民主党の第二自民党化に国民は嫌気が指し
たのではないか。当初から「平成維新」「友愛革命」とはいささか大仰で、あま
りまっとうにはいただけなかったが、それにしても「平成維新」なるものがなぜ、
早々に挫折してしまったのか。かって長洲神奈川革新県政を副知事として長く
支えた久保孝雄氏に「「平成維新」はなぜ挫折したか」として論じていただいた。
1人区では惨敗したが比例票はともかく1位を保った民主党に対し、社民党・共
産党はともに不振だった。「左翼政党」のありようも問われているのだろうか。

◎これに関連して、当時の内閣総理大臣鳩山由紀夫宛に出した与党衆参議員182
名の「できれば国外、最低でも県外」の約束を守るべきとの「5・27普天間問題緊
急声明」を【運動資料】(1)として載せた。これはこれから政界再編があった
場合一つの核になる可能性がある政治文書だ。沖縄基地問題の成り行きとともに
この人々の動きに注目し支持したい。是非、対米従属から脱却する政治を目指し
て欲しいと思う。
(2)は「2009年度版 ワーカーズ・コレクテイブ市民白書」の第一章を掲載し
た。この原稿は神奈川ワーカーズコレクテイブ連合会と福祉クラブが共同で参加
型システム研究所に調査委託をして作成したもので「オルタ」は今後ともこの研
究所と連携を強めていきたい。

◎安保関連として【書評】に『さらば日米同盟』(講談社)を取り上げた。著者
天木直人氏は著書の「さらば外務省」が23万部を超えるベストセラーになるなど
元外務官僚佐藤優・孫崎亨両氏と並んでメデイアで大活躍されている。元レバノ
ン大使としてイラク戦争に反対意見を具申し外務省を首になった。文字通り身体
を張ってイラク戦争を批判したことになる。その明確な立ち位置からの日米安保
批判は重い。映像プロジューサーとして活躍されている川西玲子氏に書評をお願
いした。

◎7月24日明治大学で社会環境学会公開セミナーがあり、近畿大学阿野貴司教授
の「地球環境問題解 決へのアプローチ」という興味ある報告を聴いた。(この
記録はオルタ9月号に掲載の予定)。8月8日「公共哲学カフエ」が東京工業大学
田町キャンパスで開かれ、千葉大研究員宮崎文彦氏の講義があった。    
  今、ブームになっているハーバード大学マイケル・サンデル教授の「正義と哲
学」(NHK講座)には「新しい公共哲学」の千葉大小林正哉教授もコメンテー
ター役として関わっておられるのでやがて「新しい公共哲学」にも若い人たちの
強い関心が寄せられる日も近いと思った。

◎65回目の8月が巡ってきた。4回にわたって連載した【アーカイブ】藤村恒雄
氏の「私の戦争体験」は今回で終了する。私たちはいつまでも戦争体験を語りつ
なげなくてはならないが、関連して堺市の木村寛氏からシベリア捕虜収容所につ
いての文献紹介が【オルタのこだま】に投稿として寄せられた。この欄はいわば
「読者の声」欄であり、ジヤンルを問わず読者各位からの自由なご意見をお待ち
したい。なお、今号から【賛同お願い】欄をつくたので、NPOなどいろいろな
グループの賛同呼びかけに少しでもお役に立ちたい。

◎好評連載中の「河上民雄20世紀の回想」は夏季(8月号)休載でしたが9月号
(賀川豊彦)10月号(石橋湛山)の予定で順次再開します。ご期待ください。ま
だまだ異常な酷暑が続きそうですが読者・執筆者各位には健康にご留意をお願い
します。
                         (加藤 宣幸 記)

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