【編集後記】 

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◎いま、菅政権の対米姿勢や内政の迷走を見て多くの国民は政権交代とは何であ
ったのかと自問している。総選挙前、民主党は第二自民党だから政策に期待でき
ないという人でも自民党の一党長期支配が終わる政権交代の意義は認めていた。
それはあまりにも過度な対米従属、既得権益のしがらみに身動きできない内政、
市場原理主義による格差拡大などからの脱却を期待したからである。国民の期待
を裏切るこの混迷と、劣化する日本政治に私たちはどう向き合うのか。羽原清雅
氏に『衰える日本の政党・政治状況』として解明していただいた。

◎沖縄県民は、基地の県内移設に明確な反対の意思表示をしているが、菅政権は
日米合意の理解を求めるとして説得工作をしている。現地はどう動くのか。オル
タ編集部では執筆者の初岡昌一郎・荒木重雄・竹中一雄・船橋成幸・加藤宣幸の
5人が1月24日から27日まで沖縄に飛び、知事・参議院議員などを歴任した後も、
大田総合平和研究所を主宰し、沖縄の歴史・文化を踏まえ「平和・自立・共生」
を一貫して主張し、活発な言論活動を展開されている元沖縄県知事大田昌秀氏に
意見を聞いた。

 また、病後にもかかわらず毎号オルタに米軍基地・日米安保などについて健筆
を振るわれ、昨年来『沖縄の海兵隊はグアムへ行く』『戦争依存症国家アメリカ
と日本』などを、あいついで上梓された吉田健正氏とも交歓し、辺野古や普天間
の現場を訪ねた。ジュゴンが棲む素晴らしい環境の大浦湾辺野古海岸では反対小
屋の若者たちを激励した。

 なお、初岡氏とは沖縄復帰闘争以来の友人粟国安喜氏(元全逓出身・元屋良首
席の下で県渉外課長)が終始、車に同乗され現地の歴史・現状などを懇切に説明
して下さったので、今回の訪沖がより充実した。あらためて感謝したい。

◎今月の【私の視点】は、環境問題研究家の仲井富氏からは「河村減税の”庶民革
命”に敗れた菅民主の増税路線~名古屋の結果をどう見るか~」との寄稿があった。

◎1月21日(金)のソシアルアジア研究会では元国連大学副学長武者小路公秀氏か
ら豊富な国際活動に裏付けられた「東アジアの政治経済状況と安全保障の途」と
いう報告があり、非常に興味深かかった。29日(土)には明治大学駿河台校舎で社
会環境学会第10回公開セミナーがあり、南雲智桜美林大学教授の「戯れ歌から
読み解く現代中国の矛盾」という講演を聴講した。当日はオルタ執筆者の篠原
令・段躍中・山中正和・初岡昌一郎各氏など日ごろ中国と深くかかわりのある方
々だけでなく、船橋成幸氏なども参加されていた。

◎【お祝い】
執筆者の羽原清雅氏が前著『「津和野」を生きる~400年の歴史と人びと』(文
芸春秋社刊・350頁・2500円)に続いて、政治関連以外の新著『「門司港」発展
と栄光の軌跡~夢を追った人・街・港~』(書肆侃侃房刊・414頁・2000円)を上
梓された。引き続きこの分野での企画に期待するとともに、まずはこの好著の上
梓を心からお祝いしたい。いずれオルタでも書評などでご紹介する予定である。

◎【消息】
  菅内閣になっても、自民党時代とほとんど変わらない政治の在り方のなかで、
ちょっと目先が変わったのは当然のこととはいえ、内閣府参与の顔ぶれである。
さきに、「年越し派遣村」で有名になった反貧困ネットワーク事務局長の湯浅
誠氏の就任はよく知られているが、2月1日付けの内閣辞令をみると生活クラブ生
活協同組合連合会顧問の河野栄治氏が発令されていた。河野氏と私は1965年に生
活クラブが岩根邦雄氏(オルタ執筆者)によって東京・世田谷で組織されたころ
からの、いわば草の根仲間なので一瞬驚いた。なんで、いまさら菅内閣にという
思いは強いが、せっかくの機会だから、せめて内閣の内側から「国民の生活第
一」の原点に戻るよう菅総理に生活者の声を届けて貰いたいと思う。

◎【お便り】
  編集部には三重県津市の高木一さんから、『"日中戦争・太平洋戦争"生き延び
て語る』という九条の会・津の出版活動関連の催しや資料について詳しいお便り
があった。(この一部はオルタに掲載予定)。また、大阪府堺市の木村寛さんか
らは、神戸映画資料館でドキメンタリー『442日系部隊―-アメリカ史上最強の陸
軍』が上映されたとき、その背景を「戦時下アメリカ本土における日系人の収容
」として木村氏が「オルタ」32号で説明されていたので、ニコルソン氏の著書『
悲しむ人たちをなぐさめよ』とともにメールマガジン「オルタ」の宣伝をプログ
ラムに載せたとのお知らせがあった。

◎「地球環境問題解決へのアプローチ」(2)は分載となり、また力石定一・岡
田一郎・木下真志各氏から本号にご寄稿がありましたがページ数の制約で載せら
ず執筆者・読者にお詫びします。

                 (加藤宣幸記)

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