編集後記94

【編集後記】 

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◎ようやく秋色は濃くなったが、なんとも不可解な気分の夏だった。国民や企業
は被災地に思いを馳せつつ、観測史上4番目に暑かった(孫正義氏)という夏を
節電に汗をかいて乗り切った。ところが原発が止まれば、生活や生産は一挙に崩
壊すると脅かされてきたのに、なんと全国の原発54基のうち14基しか動かないの
に東電は電力を他社に融通するほどの余裕があった。野田政権の電力政策も発送
電分離という本質に迫るどころか、「脱原発依存」だとか称して明らかに前政権
よりアイマイさを増している。

 原発推進を狙う政・官・財・報・学のペンタゴンに労も加えた原子力マフィア
が早くも蠢きだした気配がある。例えば10月19日の『さよなら原発5万人集会』
の報道ぶりについて原発推進のよみうり・産経はベタ記事でほとんど無視と同じ、
空撮と記事を載せたのは東京と毎日で、朝日は空撮なしで一面記事だけとTVなど
を含めマスコミ各社の姿勢が色濃く出た。私も参加したが「5万人集会」という
呼びかけに、主催者は6万人が集まったと発表するほど会場は人と熱気にあふれ
た。

 プラカードには「安全神話」をつくりあげたマスコミ批判が散見されたが、そ
れ以上に会場の実態こそ参加者の一人一人に原発についての大手マスコミと国民
意識との乖離がいかに大きいかを実感させた。乖離といえば菅総理の個人的な資
質問題があったにせよ政権末期の異様なマスコミの報道ぶりに違和感を持った人
は多い。これについて原子力マフィアの影さえも感じたという羽原清雅氏が朝日
新聞政治部長まで務めた長い政治記者の体験を込めて『政治報道は公正に機能し
たか』としてジャーナリズムの在りようを鋭く批判された。

◎ある日突然、代々受け継がれてきた土地を追われ、生業を奪われた放射能汚染
地域農民の暮らし、命はどうなるのだろうか。茨城県で農業を営む濱田幸生氏は
『農産物の「検出限界以下」の超微量の低線量被曝が問題となるのならば、それ
が生産された大地の上で歩き、土埃を吸い込み、手で直に触り働き、地元の野菜
を食べている私たち農民はどうなるのでしょうか。』と「放射能雲の下で生きる」
で訴えられている。私たちはこの声を真剣に受け止めなければ「脱原発のデモ」
も都会人のエゴ活動に堕しかねない。

◎9月19日『さよなら原発5万人集会』に家族3人で参加した。場外まで人が溢れ、
家族連れも多い。デモの先頭はフクシマの人たちだ。60年安保では労組・学生な
どの団体が主役だったが、今回は個人だ。そこに運動の拡がりを感じた。10月6
日世田谷・松沢教会の賀川豊彦記念館で『鳳凰は灰燼より甦る~賀川豊彦にみる
被災地支援とボランテイア~』を参観し、8日は大河原雅子事務所でNPO「シーズ・
市民活動を支える制度をつくる会」関口宏聡氏の『新寄付税制で広げる「新しい
公共」』を聞いた。

10日長野県塩尻市に荒木重雄氏とワイン用葡萄づくりや野菜栽培に新しい農業
の在り方を探る農業生産法人信生の小松正氏を訪ねる。12日千駄ヶ谷の津田ホー
ルにアムネステイ・インターナショナル創立50周年協賛コンサートに行く。14日
は稲城市の古刹妙見寺での荒木重雄氏主宰『仏教に親しむ会』に参加し仏教の基
礎知識を学ぶ。18日エドモンドホテルでの公益財団法人日本中国国際教育交流協
会20周年記念シンポジュームとレセプションに出席した。司会は初岡昌一郎(姫
路独協大学名誉教授)、パネラーは権重東(韓国ILO協会会長)周牧之(東京経
済大学教授)荒木重雄(社会環境学会会長)各氏で中国からは宋慶齢基金会教育
代表団が参加し盛大であった。

◎【お知らせ】吉田奈加子さんの米国・マジソン便りは今月の10回で一応連載は
終わり、これからは随時アメリカ事情を送って戴くことになった。また高沢英子
さんの【エッセー】、川西玲子さんの【映画を楽しみましょう】とも今号は休載
となりました。なお、今月号に予定しておりました元国連大学副学長武者小路公
秀氏のご寄稿は都合により次号になりましたのでご了承ください。

                  (加藤宣幸 記)

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