【編集後記】 

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◎今年は日本と中国が国交を回復して40年になる。両国では様々なイベントが
予定されているがオルタでは元神奈川県副知事久保孝雄氏に両国関係の40年の
歩みを『様変わりする世界の中の「日本と中国」』として考察して頂いた。私が
初めて中国を訪問したのは1956年で、まだ両国に国交はなく、LT(寥承
志・高崎達之助協定)貿易さえ始まる前であった。東京から香港までプロペラ機
で7時間飛び、北京までは4日かかった。香港側から国境の小川の鉄橋を歩いて
渡り深セン村に着いた。

当時の日中貿易は対米貿易の僅か20%位だったが2004年にはこれが逆転し
2009年には対米貿易が対中貿易の約60%になり、日米・日中の経済関係は
大きく変った。一党専制・汚職の蔓延・社会的格差拡大など諸矛盾を孕みながら
も急速に強大国化する中国に日本はどのような立ち位置をとるべきなのか。

さらに、これからの40年はどうなるのか。日本についての鋭い洞察で名高いイ
ギリスの碩学ロナルド・ドーア氏はその著書(次号で書評掲載予定)で『現在
(2011年頃)は、米国が西太平洋における軍事的覇権国であり、日本と安全保
障条約を結んでそこに基地を持ち、その基地を移設しようとする内閣(たとえば
鳩山内閣)を倒すくらいの力がある』が『30~40年も経てば、西太平洋にお
ける覇権国家は中国になっているだろう』という。

その条件として ①今後の米中の相対的経済成長力 ②政治的課税力―国庫歳入
の成長率 ③国威発揚の意思の強さ―軍事予算拡大の用意 ④人的資源(日中の
IQが同じレベルとすれば、優れたミサイル技術者になれる日本人が一人いれば
中国は10人いる計算)を挙げる。果たしてどうか。私たちは冷静に考えたい。

◎民主党・自民党がメタメタなことは誰の目にも明らかだが、社民党の存在感も
さらに薄い。選挙ごとに負け、今や衆参10議席に過ぎないが、ネット時代に相
応しい発信力は持てないのか。得票や党員数は少くても政党として「政治的感
性」は磨けないのか。小政党であればこそ政策連合の核の役を果たせないのか。
編集部は福島みずほ党首に対立候補を立てようとして果たせなかった社民党阿部
知子政調会長にその意図を聞いた。

◎1月20日ソシアルアジア研究会で元三井化学専務谷川進冶氏に企業の海外進
出が進む時代の「企業統合と労使関係」を聞く。22日渋谷でドイツが脱原発か
ら再生可能エネルギーへの途を切り開くドキメント映画『第4の革命―エネルギ
ー・デモクラシ―』を観た。ヒロシマ・ナガサキ・フクシマで被曝した日本こそ
世界に先駆けて脱原発を強く発信しなくてはと想う。23日竹中一雄・初岡昌一
郎・伊藤茂氏らと赤坂の中華料理店で情報交換会。29日から2月3日まで初岡
昌一郎氏と台北・花蓮・高雄と台湾東南部を旅する。花蓮では慈済大学医学部副
教授王珠恵さんと日中企業訪問コーデイネーター廣橋雅子さんの案内で仏教慈済
慈善事業基金会を訪ねる。

◎同会は東日本大震災には、世帯別に3万円、5万円、7万円の見舞金を昨年の
6月から12月までに計10回にわたり96,744人の住民に直接配るなど活
発な援助活動をしたが、中国本土で数10校の小学校を建てたり、アフリカなど
でも医療・教育支援活動を活発に展開しているのには感銘を受けた。王さんには
早速オルタに寄稿をお願いした。

◎2日台北では初岡氏が10数年来主宰し、日中韓台のメンバーで構成するソシ
アルアジアフオーラムの、台湾側メンバーである大学教授・研究員そして運輸・
金融・教員などの組合活動家が集まり、楽しい会食会が盛り上がった。9日赤
坂・森美術館で歌川国芳展を観た後、学士会館でオルタ執筆者有志10数人が集
まり、生活クラブ顧問河野栄次氏と日中問題コンサルタント篠原令氏を囲んで情
報交換会を持つ。11日は上野で北京故宮博物院展を観る。

15日ソシアルアジア研究会で田村光博氏から上海の社会福祉問題を聴き16日
新宿で岩根邦雄氏を囲む会、17日「仏教に親しむ会」に出席。18日新横浜・
オルタ館の新社研ミニフオーラムで神奈川大学橘川俊忠教授の『日本政治への希
望は萎えたのか―「物質文明」と「政治文化」の狭間を問うてみる―』を聴く。
19日国学院大学渋谷キャンパスのシンポジューム『脱成長とローカリゼーショ
ン』に終日参加。

                           (加藤宣幸 記)

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