■自然エネルギーの可能性           トマス・コバリエル

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  私はエネルギーに関して、スエーデンで仕事をし、エネルギー庁元長官でも
あります。エネルギー業界や環境団体でも、いろいろな活動をしてきました。

 さて3月11日は、本当に悲惨でした。地震と原子力発電所のリスクについては
今までも言及され、リスクは回避できると思われていたのですが、残念ながら、
問題は起こってしまったのです。飯田さん、孫さんのほうから、是非、サポート
が欲しい。このような事故が起きないような体制造りをしたい。再生可能エネル
ギーをもっと普及することによって、それを実現したいと、いうことでお話をい
ただきました。まさに、これが非常に重要なことであると思いますがこれは多く
の方々が、協力して、初めて、出来ることです。

 日本の再生可能エネルギーが成功し、効率的で、さらなる惨事を避け得る状況
を作り上げていくことが、非常に大切であると思います。協力していただける方
は大勢必要です。
プレゼンテーションを聞きましたが、この成功のチャンスは非常に大きく、また
再生可能エネルギーの大きな可能性はアジア全域についても考えられます。各国
で、再生可能エネルギーは既に、存在し、使える状態になっています。資源を他
の国の資源を壊すことなく使えるし、次世代の資源を失なうこともなく使える状
態にあります。実際、グローバルな形で、再生可能エネルギーが使われています。

 まず、風力ですが、グローバルの展開で過去数年間、顕著に伸びています。
5-6年前、多くのサポーターが非常に野心的な予見なども出したと言う中で、実
際の普及は、その野心的なもの以上の結果を既にもたらしています。非常に大き
な注目点としては、中国においての風力の展開です。中国では、1時間に1基の
風力発電所を作っているのです。1年中、ずっと、この数年間、それ以上のペー
スで風力発電所が増えています。

 10年前の曲線ですと、非常に、小さなパイオニア国、デンマークなどが含まれ
ていました。そして、現場において、グローバルマーケットがカヴァーできるよ
うな、小さなもの、デンマークのような小さな国が、関わっていたのですが、こ
の図では、もうデンマークもスエーデンも載っていません。また残念ながら日本
も載っていません。

 そして、太陽光でも様々な展開が非常に、劇的なものとなっています。なかな
か、このような曲線を出せる産業は無いと思います。潜在性を考えても、非常に
大きいものがあり、太陽光は、風力に追いつくだろうと思います。一部の国では
コミットメントが強い、そして、政策面でも、サポートされているという国があ
ります。日本は、こちらの方では、リストに載っています。

 過去10年間、ヨーロッパでの状況を見ると、これだけの発電能力があることに
ヨーロッパの人々は、かなり驚いています。ヨーロッパでの、内訳は化石燃料
が、このように増えているということはありますが、その次にくるのが風力で、
第3位が太陽光です。そしてバイオマスと廃棄物、水力もあります。ですから,
今、将来のシナリオとして語っているというふうに思われがちですが、変化はす
でに見られているのです。

 こういった変化の規模というものが、非常に大きくなっていて再生可能エネル
ギーというのは、この全体的な開発の節の部分を占めるのでは無く、かなりの部
分を占めているのです。原子力との比較ということになりますが、今、建設中の
原子力発電所があるのが中国なのですが、ただ、中国において、最も一番大きい
建設は風力なのです。昨年設置された風力発電の発電量は、原子力発電所の発電
能力よりも高いのです。

 グローバルな関係をエネルギーソースで見てみますと、風力、そして太陽光
は、非常に能力が増えています。原子力と比べてみても、近年、大きな差があり
ます。そして、風力は、この新しい世紀に入ってからどんどん、規模を高めてい
ます。風力ですが、日本の方々とどこが伸びているかと話すのですが、私が長官
であった頃のスエーデンなどは成長を見せたのです。

 スエーデンの風力のビジョンについて、説明されたとき、出来ないこともある
んじゃないかというような声もありました。しかし、日本の方々で、あまり風力
に熱心でない方、是非、不可能といったようなことは言うべきでないと思いま
す。大きな展開というものが見られておりますので、この、出来る、出来ないと
いうことについて、太陽光もそうですが、短時間のうちに技術展開が見られてい
るのです。

 スエーデンでは、短時間での普及は無理だろうと考えられていたのですが、風
力でそれだけのシェアがあるということならば、1日1基、風力は発電を作らなけ
ればならないのではないか、それは不可能だという声がありました。しかし2年
間、実際、そのようなことが起きていて決して、難しいことではなかったので
す。この風力の設置、年間の発電能力も、短時間のうちに増えているのです。

 最も重要なプロセスとして、変化の前に求められるものは何かと言いますと、
やはり産業戦略というのが変わってきているという点があります。そして、もち
ろん政策、国の政策変更も必要となってくる訳でありますが、産業界に関わって
いる人たち、業界の方々、電力会社外の産業界の方々の、見方、態度が変わる
と、物事は急速に変わりだすということです。ヨーロッパ、特にスカンジナビア
諸国では、やはり、孫さんがお言われたような様々な改革、競争(力)というも
のが電気の世界で進んできました。

 競争(力)があるということで、電気料が下がっています。住宅でも、産業界
でも、それが言えるのです。競争(力)があるということになると、よりローコ
ストの、効率の高い発電法は何なのか、どちらが逆に高いのかということがはっ
きりしてきます。そしてまた、電力会社以外の企業、透明性があり、中立なマー
ケットが存在すれば、透明性を持って、状況について学ぶことが出来るとなれ
ば、こういったエネルギーの競争力のある、いろいろな代替ソースがなんなのか
はっきりしてきます。

 お客様のほうからも、住宅からも、そしてまた、法人からも、関心が高まって
くるわけです。なんとかして電力コストを下げたいと思うのです。新しい、この
ような発電能力にも投資したいという声も出てくるでしょう。スエーデンでは、
このエネルギー集中的な費用としては、やはり、この電力供給をより低いものに
切り替えたいと思っているのです。
そして風力に投資をするということで会社を作ったりしています。風力が、この
発電のレベルで大きなシェアとなっておりますと、ゼロに近いような、この電気
代になると。風力というのはタダであります。既にプライスは下がってくるわけ
であります。風力がその割合で増えればと言うわけでありますが。太陽光もそう
ではありますが。

 ですから、業界が関わる、すなわち、このような電力市場のお客様がどのよう
に関心をもち、関わるのかということによって、こういったローコストの再生可
能エネルギーの展開に大きな状況が変わるわけです。そして多くの投資も期待で
きるのです。ですから、1KWパーアワーで、大きな石炭火力を作るよりも、安価
に出来る部分があるわけです。で、さきほど、石油の世界市場においての価格を
見も、それが、言えるのです。

 ですから、やはり、従来からあります既存の電力会社以外の会社がどのような
関心を持つかが非常に重要な点であります。あともう一つ、このような再生可能
エネルギーへの変遷というものを、産業政策として捉えるかどうかということで
す。環境政策だけでなく、産業政策として捉えるかと言うことが大事であります。

 学習曲線というのがあります。再生可能エネルギー、原子力、そしてまた、化
石燃料のコストというものがあり、そして、また、時間とともに状況が変ってく
るのであります。再生可能エネルギーというものが将来の供給源であるというこ
とであり、そしてまた、将来、成長を続ける業界であるということです。ですか
ら、大きな企業、また政府等も、なんとかして、会社内で、あるいは、国で、さ
らなる普及を高めようとしているわけです。そうすれば、自分たちの企業あるい
は、自分たちの国が生存できる、これから先に起こりうる状況に対応できる体制
を作っておこうと思うわけです。

 スエーデンには、一つ、誇れることがあります。再生可能バイオエネルギー
ソースと言うものがあります。この展開と言うのは、産業界で、もともとエネル
ギー業界にいなかった企業の協力で得られたものです。政府の補助金とか、政府
の計画があると言うよりも、むしろ、化石燃料に環境税が課せられたと言うこと
で、バイオマスが逆に、収益性が高まったわけです。こういった状況があったた
めに、このようにバイオエネルギーの需要が増えているわけです。

 もう一つ、重要な点ですが、私たちの経験として、バイオマスをエネルギーの
ために使う割合をふやすということは、バイオマスをエネルギーのために植える
と言うことではなく、いかに、残渣物、廃棄物などを使うかと言うことです。そ
して、また、それ以外のバイオマス産業における副産物をみるわけで、その残渣
の使用ということが問題となってくるわけです。スエーデンの森林の世界におき
まして、そして、また、農産物も競争力が得られております。効率もとても高
まっておりますし、国際市場において成功しています。

 もし、バイオエネルギーの、このような発展が無かった場合によりも成功を収
めているわけです。今までは、非常に無駄の多いものと言うのが存在していたわ
けですが、それらに、利益を出す副産物というものが生み出されてきたわけで、
かえって利益マージン全体より大きな貢献が期待できたわけです。木材所では、
いろいろなペレットの燃料なども、スエーデンの会社は売っております。

 パルプ産業は、スエーデンでは電力も供給しているわけですし、また、近くの
都市に対して、いろいろなエネルギーを提供しているのですから、中核となる事
業以外の利益も上げています。また、下水処理を行っている所でも、下水処理を
行っているだけでなく、バイオガスというものをデイーゼル車両のための燃料と
して提供したりしています。また、スエーデンの食料産業もバイオガスを副産物
として、販売していまし、もとの事業以外にも、いろいろやっているわけです。

 もう一つだけ、例を申し上げます。バイオエネルギーが、違った目的のために
使われている例です。これは,コージェネの工場です。ここでは、バイオマスの
燃焼を行い、そして、近くの都市のための暖房を提供しています。前にあるの
が、プールです。そして、畑があります。そこで木などを耕しているわけです。
二つの目的があります。両方がその木材産業に対して、貢献をしているわけで
す。コージェネのための燃料を提供しているだけでなく、もう一つ、下水処理を
行っているのです。まわりの下水処理場から、さらに洗浄するために、化学処理
を行う
のではなく、下水を使って、そして、木の灌漑施設として使っているわけです。
これによって、生産性を高めることも出来ますし、重金属などを、下水から吸収
することが出来るのです。そして、木材を燃焼する際には、重金属は、灰のなか
に含まれるわけです。

 このメカニズムは、今までは、自主的ではなかったのですが、木材の残渣とい
うものを燃焼する際に、チェルノブイリの事故のあと、除染のために行っていた
わけです。もし,燃焼した場合、木材は、セシウムとか、その他の、放射能と
か、アイソトープの濃度が高くなるわけです。そのために、どこかのデポジト
リーに入れなければならないわけです。これによって、いろいろな土地の除染と
いうものに貢献したわけですけれども、日本においても、これが、これからは課
題になるわけです。われわれは、非常に成功してきたわけです。

 バイオエネルギーが伸びてきています。同じように日本でも、石油以外の化石
燃料というものが出てきたわけですし、また、原子力も使われてきたのですけれ
ども、スエーデンは、かって原子力を使っていたのですが、それは、減少してお
ります。なによりも、自然エネルギーとしては、バイオエネルギーを活用してい
ます。一人当たりでは、石炭以上に、バイオエネルギーの使用量は、中国よりも
高い位、スエーデンで使われています。そして、全体のエネルギー供給のうち、
50%近くが自然エネルギーによるものです。そして、二つの原子炉を廃炉してい
ます。それでも、GDPは、この分野において伸びているのです。

 主な理由として、自然エネルギーが何故発展しているかと申しますと、使えば
使うほど価格も下がるのです。まだ、開発の初期の段階ですけれども、太陽電池
というものは、どんどんと値段が下がってきています。そして、原子力の経験か
らしますと、アメリカのほうでは、60年台から80年代初頭まで、いろいろやって
きたわけですが原子炉は増えれば増えるほど、問題が起こるということです。

 後にフランスでも、いろいろやってきたら、原子力と言うものは、危険性もあ
りますし、安全性の問題というものを考えた場合には、より高価なものになって
しまうと言う結果がでています。そのため、原子力の拡大は、いろいろな理由で
制約されています。それに対して、自然エネルギーの勝利と言うものは、経済発
展によって、推進されています。そして、この背景は何かと言えば、日本でも、
原子力を不要にしなければならないわけで、これはおおきな課題です。

 しかし現実を見つめた場合、事実と言うものの裏づけがあると考えられます。
これは避けられない発展であると、必ずこういう方向に向かうと言うことがはっ
きりしいます。ただ、皆様方の会社で、どうこれを実現するか、皆様方の国でど
うやってこれを効率よく運ぶか、そして競争力ある形で,どう実現し、そして、
どういうような形で、出来る限り、いろいろな成功による繁栄から、どうやって
恩恵を受けることが出来るかが大切です。

         (自然エネルギー財団 理事長  トマス コバリエル)
                http://www.ustream.tv/recorded/17222851

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