苦しい時には笑うんだ。-大震災と放射能の村からの便り-

■ 苦しい時には笑うんだ         濱田 幸生

     ―大震災と放射能の村からの便りー  
───────────────────────────────────
 温かいお見舞いの言葉を賜りましてありがとうございました。

 当地茨城県は、大震災以降も実に70数回もの余震に襲われています。一日に
数回もの地震が来ることもあり、その中には震度6、5の激震が含まれていま
す。そして頭上には放射性物質が飛来し、上と下から揺すぶられている毎日で
す。 考えてみればもう被災から1カ月がたとうとしていますが、通常このよう
な被災の後に来る槌音は弱々しく、農家は春の作付けすら決心できないでおりま
す。 しかし、これも家族を失い、家を失った東北の皆様から較べればと歯をく
いしばって皆明るくやっております。
  苦しい時には笑うんだが村の合い言葉です。どこまで続く暗雲か、まったく雲
の切れ目は見えませんが、がんばっていく所存です。 皆様の支援が心の杖です。
     あらためてありがとうございました。

◇放射能という第2の「津波」
 今、私たち福島県と茨城県の農民は、大震災の後に来た放射能という「津
波」に呑み込まれています。 昨日、ある酪農をしている農家に行ったところ見
るも無残な光景がありました。それまで丁寧に磨き上げるようにしていた床は糞
が大量に溜まり、牛はわずか数頭を残すのみとなっていました。この牧場の主人
は牛としゃべれるというのが自慢で、いつも何事かを話しかけながらブラシをか
けたり、乳房を拭ってやっていたものでした。

 オレの畜舎はおかァとケンカしてもここで寝られるという自慢をするくらい清
潔で、どんなに多忙でも畜舎の掃除を怠ったことはありませんでした。乳質の向
上にも熱心で、わざわざ福島の競りでジャージー種を落としてトラックに乗せて
帰ってきた時には子供のようにはしゃいでいました。トリ屋の私までジャージー
様歓迎式典にお呼ばれして牛見の酒を飲んだものです。
 
  牧草の作付けにも熱心で、村の休耕地があればせっせと牧草を植えては大きな
牧草ロールをたくさん積み上げていたものです。輸入藁を飼うのは恥だと思って
いたのではないでしょうか。オーストラリアあたりの畜産家がみれば笑ってしま
うような小規模でしょうが、牧草地には青々とした牧草が茂っていました。彼の
自慢はこの牧草地と牛でした。

 後継者も育ち拡大しようとする矢先に、あの忌まわしい原発事故が起きまし
た。牛乳は出荷停止となり、絞っては牧草地に捨てることになったのです。
  放牧は放射性物質が残存している可能性があるとされて禁止になりました。放
牧地は原料乳の単なる廃棄場と化したのです。 乳を絞らないと牛が苦しがりま
す。毎日絞っては捨てる。捨てるために絞る。そして餌代だけが静かに溜まって
いきました。息子は出稼ぎに行き、老いた父親だけが残りました。そして絞って
は捨てる・・・。地震は一過性です。余震は毎日数回来ますが、もうなれっこに
なりました。 ほんとうに恐ろしいのは放射能です。いつまでも続く、どこまで
ものしかかるように私たちの上に垂れ込める暗雲のような放射能です。

◇もう時間がない!春の種蒔きと水田は始めるしかない、大いに不安だ・・
米作り農家の友人と話をしました。彼は隣町に住んでいるのですが、その町だ
けで田んぼ約80町歩が使用不能だそうです。私の村でも同じ程度の被害を出し
ており、土地改良区ごと作付け不可能という決定をする地域も出始めています。
パイプラインも地中で寸断されており、もはや新たに敷設するしかないようで
す。ポンプアップしているため池にもかなりのひびが見つかったりしているよう
です。
 
  修繕するにも、工事業者も他の復興工事で出払っているうえに、先立つものが
ありません。友人は冗談ぽく、「今度大震災が来るなら、年度末はやめてほしい
なぁ」などと言っていました(苦笑)。行政がらみの新たな復興予算や補償など
は、村の農水課に問い合わせてもまったく見通しが立たない状況だそうです。
  私たちの村などまだましなほうで、海岸に近い稲敷郡の被害はすさまじいそう
です。液状化現象で、多くの田んぼに砂や泥が出ており、もう手が着けられませ
ん。
 
  そんなこんなで、わが県の今わかっている範囲での作付け不能水田は360町歩
にのぼるようです。ただし、こんな数字では収まらないと思います。おそらくは
500町歩を超えることでしょう。宮城県では8500町歩が使用不能だそうで
す。福島はあまりに巨大な被害なので判定不可能です。おそらくは東北5県と茨
城、千葉で一県丸ごとの規模の良田を失ったのではないでしょうか。
 
  ところで、私が放射性セシウムの土壌検査のことを聞くと、その米作り農家の
彼によれば、未だわが地域には本格調査は入っていないとの話でした。
  これまた村の農水課に聞いても、とんと埒があきません。まぁ考えてみれば当
然で、何をどのようにして調べるのかまったく国から県に方針が下りていないの
です。 国は出荷自粛(といっても実際はガチガチに強制ですがね)の地域範囲
を県単位から地方自治体単位にまで縮めました。
 
  本来は家畜伝染病予防法(家伝法)のように、検出された農場から半径5㌔ま
でを出荷自粛とするべきでした。そしてそれ以内の範囲をサーベイランスすれば
いいのです。いきなり1県丸ごと出荷自粛なんて正気の沙汰ではありません。
  と書いていたところで、おっと地震だ。震度5だそうです。なんか地震実況中
継付きですなぁ。もはや震度5でも驚かない茨城県人の私。これを喜ぶべきか、
嘆くべきか(笑)。
 
  そして放射性物質の検査の単位がよくわかりません。たとえばそうですね、ひ
とつの畑にキャベツがあってホウレンソウが植わっていたとしましょう。ホウレ
ンソウは出荷自粛になりましたと、しかし同じ畑で隣合わせのキャベツはいいわ
けです。おいおいじゃないですか。 放射性物質うんぬんで言うのならその畑丸
ごとダメでしょう。条件はまったく同一なんですから。これは食品衛生法を根拠
とする厚労省的な品目主義が根っこにあるからです。農業では基本的に畑(ほ
場)主義が用いられます。有機JAS認証もそうですが、一枚一枚のほ場に番号
をふってそこからトレサビリティ(生産履歴)を始めます。
 
  ところが、今回の暫定基準値による出荷自粛は厚労省がイニシャチブを握った
ために、無理やり品目主義的な仕切りをしてしまいました。これが無用の混乱の
始まりでした。 政府は計画的避難区域(←この名をきくだけで腹がたつ)の川
俣町では、米の作付けに待ったをかけています。福島県は農民に「土壌は作付け
できる基準にあるが、国の発表があるまでできない」という苦しい説明をしてい
るようです。(日本農業新聞4月14日) ちなみに、水田土壌の放射性物質の
基準値は下の図です。川俣町では1㌔乾土あたりで2573ベクレル/㎏でし
た。これはほぼ政府基準の半分です。

◇政府は今頃になって川俣町や飯館村を計画的(なにが計画的だつうの)避難区
域に指定したために、避難のスケジュールが水稲の成長段階と重なってしまうこ
とを恐れているのでしょう。ならばもっと早い段階でこれらの自治体を避難対象
にすべきであって、5月中旬に控えた田植えに向けての種籾の芽出し作業を始め
る4月中旬まで引っ張るべきではありませんでした。
 
  政府は既に1カ月前にこれらの福島原発の30㎞避難範囲の北西の市町村に放
射性物質が降ったことを知っていたはずだからです。政府が今回の大震災復興と
原発事故処理で度々みせる極度の判断の遅さと情報隠匿体質が、かえって問題を
こじらせたのです。 これからするという水田や畑の放射性物質の土壌検査も、
暫定基準値のルールである市の中で一カ所でも検出された瞬間、ひとつの市が丸
ごとアウトなのでしょうか。そうならば薄氷の思いで米作り農家は検査結果をま
たねばならなくなります。
 
  私は農政的常識として、仮に検出されても作付け自粛や出荷自粛はその田畑の
みに限定すべきだと思っています。 とまれ、政府はいっかな放射性物質検査の
ルールを出してきません。時間が経てばたつほど風評被害は大きくなります。農
家も早く検査をしてもらってすっきりしたいのです。これでは対策の立てようが
ありません。 農水省はさっさと仕事をしてほしいものです。決まらなければも
う見切り発車しますよ、というのが被災地農民の声です。
  ついでにTPPも検討再開だそうです!(ソース 日本農業新聞4月14日)
今、TPPをしたら大震災で大打撃を食らった日本農業はご臨終です。分かりき
った話でしょう。菅首相の脳味噌は大丈夫ですか?なにがTPPだ!脳味噌が炉
心融解おこしているんじゃないのでしょうか。
 
◇国は責任をもって土壌の放射性物質の検査をしろ!それがいちばんの風評対策
のはずだ4月4日、暫定基準値の緩和を求めていた5県知事の要求は、政府によ
り却下されたようです。なんとも複雑な心境です。
  参考 厚労省 食品中の放射性物質に関する暫定規制値の取扱い等についてht
tp://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000017tmu.html

 たしかに暫定基準値を下げれば、出荷できる量は一時的に増えるのはたしかで
す。暫定基準値自体の作られ方のうさんくささもむかっ腹が立つところです。
  しかし今ここで農業者が引き下げを要求し、それが通ってしまったなら、消費
者はどのように思うでしょうか。たぶん農業団体の圧力に押されて政府が統一地
方選がらみで下げたと思うでしょうね。そしてそれでなくても、大いに不信感を
もたれて風評被害のまっただ中にある私たちの農産品は更に売れなくなります。
 
  いったん野菜類の基準を放射性ヨウ素2000ベクレル/㎏、放射性セシウム
を500ベクレル/㎏と決めたのなら、それで行くしかありません。有機農業者
には更に厳しい基準を設けよと言う方もありますが、まだ今後なにが待ち受けて
いるかも分からない状況の中で、数値基準をこれ以上厳しくすることも、緩める
事も控えるべきです。 状況は終了していません。いやそれどころか混迷を深め
ていると言ってもいいでしょう。
 
  一昨日、細野剛志補佐官が「3カ月間くらい」というめどを示しました。これ
はおそらくは冷温停止までの期間を指していると思います。冷温停止までは、原
発は圧力容器の内部圧力を放出するためにひんぱんに、しかも今までの例からみ
れば近隣市町村に対して無警告でベント(排気)を行うと見られます。その都
度、放射性物質が空中に放散されて、風に乗り飛散します。このような放射性物
質の飛散状況があと3カ月は続くというのが政府の見方のようです。私はそのよ
うな見方は楽観に過ぎると思いますが、とりあえずはひとつのめどです。

 3カ月間というとおそらくは8月頃までは、放射性物質の被曝下で私たちは生
産し、生活をする覚悟をしましょう。そしてもうひとつは風評被害の原因ともな
り、私たちを苦しめ続けている放射性物質がどのていど作物や土壌にあるのかと
いう調査が、事実上手がつけられていない状態です。この暫定基準値を出した当
の厚労省が放射性物質の検査などしたことがないのです。ですから、地方自治体
に調査を丸投げしてしまいました。 茨城県が特出して基準値をオーバーした作
物を出したのは、原発の風下であるだけではなく、JCO臨界事故以来茨城県が
全国一の放射線被害対策を持つ県だったからです。
 
  検体数が福島県と茨城県で計356件、栃木、群馬、千葉ので計160件で
す。2県で他の県の2倍もの検体をとれば検出数も増えあたりまえです。そして
茨城県はそれをそのまま公開しました。多くの農業者からの批判はありますが、
それは県民の健康をあずかる地方自治体として正しい処置だったと私は思いま
す。(資料1参照)
 
  結果は福島県と茨城県のみが特出した風評被害にあっています。3個90円の
ブロッコリー、一袋50円のピーマン。まったくしゅっかできないほうれんそ
う、牛乳、パセリ、水菜。つまりは検査をしっかりしたから馬鹿を見たのです。
  誰のせいでしょうか。本来は国がなすべき放射性物質調査をせずに県に丸投げ
した厚労省のせいです。そもそも厚労省は12年前の東海村のJCC(原子力燃
料会社)の臨界事故の時ですら、600人から700人と言われた被爆者に対し
て晩発性の障害を認めず、なんの補償もしなかったではありませんか。
 
  東電と一体化したような経産省といい厚労省といい、本気で被曝の恐怖におの
のいている福島、茨城の人たちのことを考えた事があるのでしょうか!
  あるというのなら、直ちに国が地方自治体に丸投げせずに、国の責任において
福島、茨城の野菜、土壌を徹底的に調査し、その数値を直ちに公開すべきです。
  これが真の風評被害対策です。暫定基準値を超えても食べて大丈夫だ、被曝し
てもただちに人体に影響はありません、などと訳の分からないことを百回くりか
えすのなら、今すぐにこども手当てなどという信じられない無駄金をこの調査に
あてることです。
 
◇福島第1原発事故は人災です。
  はっきり言います。福島第1原発事故は天災などではありません。人災です。
政府も東電も天災にしたくてたまらないようです。今や一説10兆円とも言わ
れる被災補償金を原子力賠償法を適用して、一般会計で処理してしまいたいよう
です。
  一般会計ですって?なんのことはない、われわれ被災者の税金まで使って補償
をするということです。たぶん消費税増税でもするんでしょうね。国民は踏んだ
り蹴ったりです。冗談ではない。あんなド素人同然の対応をして、情報を隠匿し
たあげく原子力安全委員会は3月の下旬の時点でレベル7だと知っていたという
じゃないですか。知っていたが、レベル判定は保安院の管轄だからと言い逃れを
する。(ソース毎日新聞4月13日)
 
  一時が万事です。気象庁は国会で河野太郎議員が追求するまで、事故以来測定
し続けてきた放射線分布図を隠していました。原子力安全委員会は、大枚の金を
使ってスパコンでシミュレートしてきた放射線拡散分布図を隠匿してきました。
東電の広報担当官である枝野氏は「ただちに健康に影響はない」としか言わな
い。あげく、1カ月もたってから、飯館村も「計画的避難区域」にします。「も
う同心円はやめました」ですと。
  政府の対応を時系列でみてみましょう。
  3月11日    ・・・・3キロの避難区域を設定
  その日の夜   ・・・10キロに拡大
  3月12日    ・・・20キロ翌日に更に拡大
  3月15日    ・・・20キロから30キロに屋内退避指示
  3月25日    ・・・同地域に自主避難を勧告
  4月11日    ・・・計画的避難区域を設定

 なんですか。これは?被災者を翻弄するのもいいかげんにしろ!
  EUなど初めから80キロ圏を避難区域とするように提言してきたはずです。
それをともかく「事故を小さく見せたい」の一心で、政府として取るべき避難指
示をネグレクトしたのです。おまけに、この猫の目のように変わる避難指示は、
避難地域の地方自治体には何も知らせず、記者会見で発表するという杜撰さです。
  これでどうして速やかな避難が出来ますか?事前に当該自治体としっかりと避
難計画を練って、警察、自衛隊、消防などと連携して避難をするのが常識ではな
いですか。それを一切やらず、いきなりテレビ発表です。正気を疑います。です
から、屋内退避した住民へ食料も行き渡らず、着の身着のまま避難した住民は通
帳も現金すらもっていない人も大勢出ました。彼らが一時帰宅を要求するのはあ
たりまえすぎるほど当たり前です。政府が事前に自治体と協議していれば、こん
な杜撰極まる避難方法はとらなかったでしょう。
 
  そして今回の11日の計画的避難区域です。何が「計画的」だつうの。政府は
既に3月12日、すなわち事故直後から放射線分布が福島第1原発から同心円状
に飛散していないことを知っていました。この証拠が、原子力安全委員会の管轄
するSPEED1(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)です。
  (根拠 原子力安全委員会のSPEED1の行った「甲状腺内部被曝の試算 
3月12日午前8時20日から3月24日午前0時までの積算値」)
  http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf#search='speedi
 
  この放射性物質飛散分布図シミュレーションにははっきりと、当時の風向きや
地形によって100㍉シーベルトの放射線が、飯館村、川俣市の一部、南相馬市
の一部などまで降ったことが記載されています。原子力安全委員会は内閣府直属
の機関ですよ。首相や官房長官、経産大臣は当然知り得ていたはずです。こんな
重要な住民の健康に直結する情報をなぜ隠匿していたのですか!
  それを文科省の土壌の放射線測定(資料5参照)などが出るに及んで隠し通せ
なくなって、なんと1カ月もたってから渋々と今どきになって、なにが「同心円
ではない」だの、「計画的避難区域」だ。
 
  ちなみに、飯館村のセシウムの土壌数値は以下です。最大で117万ベクレル
です。初めは桁を読み違えたのかと思いました。
  ・飯館村 陸土 土壌  3月19日11時40分  300,000Bq/kg
  ・     同上      3月20日12時40分 1,170,000  
  ・川俣町 陸度 土壌  3月20日12時4分   151,000
  (出典文科省福島県ダストサンプリング測定結果)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/25/1304007_2510.pdf
  この文科省の調査は3月19日から20日です。この数値は当然、直ちに政府
中枢に伝えられていたはずです。にもかかわらず、更にそこから20日間もたっ
て、「計画的避難区域に設定」だそうです。ここまで住民の安全を無視しつづけ
てきたとなると、もはや政府による意図的不作為といわざるをえないでしょう。
 
◇水田土壌の放射性物質基準が決まりました
政府が水田の土壌のセシウムの基準値を決めました。5000ベクレル/㎏で
す。これを超えると作付け禁止となります。気象庁も国会隠匿し続けていた各地
の放射線モニタリングデータを出し始めました。原発の爆発事故で、気象庁は放
射性物質の拡散予測を連日行っていたにもかかわらず公開していませんでした
が、国会で野党の追求に会い、今頃になって拡散予測を初めてHP上で公開し始
めました。
  http://atmc.jp/jma/
  また気象庁は今までこのようなことを調査していたようです。

 ・全国: 全国の放射能 | 全国の水道の放射能 | 全国の雨の放射能  
  ・水道情報: 東京 | 埼玉 | 神奈川 | 千葉 | 茨城  
  ・福島原子炉: 燃料棒露出度 | 水位 | 温度 | 放射線量 | 収納容器圧力 |
         原子炉圧力 | 原子炉復旧状況図  
  ・福島海水: 海水(表層) | 海水(下層) | 海上の空間 | 放射線量  
  ・福島: 福島20km-30km圏 | 福島原発の放射濃度 | 福島原発の溜
   まり水 | 福島原発プルトニウム
  ・拡散予測: 日本気象庁 | ドイツ気象局 | オーストリア気象局 | イギ
   リス気象局 | ノルウェー気象局 | 台湾気象局  
  ・その他: 茨城原発周辺 | 宮城県全域
 
  今までこんな大事なことを知らせず、風評被害を放置してきた政府の責任は非
常に重いと思います。大きな怒りを感じます。このような時にデータを秘匿する
ことなど到底ゆるせることではありません。これは気象庁独自調査ではかならず
しもなく先程述べたSPEED1(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシス
テム)とリンクしたものです。ちなみにこのSPEED1は、スパコンを使って
わずか20分後に福島第1原発からの放射性物質の拡散をシミュレーションする
能力を持ちながら、これもまた隠匿されていました。
 
  わが国はいつからこんな情報隠匿体質の国になったのですか!今もっとも国民
が欲している情報を隠匿することは、国家の国民への背信行為です。ところで、
この気象庁の拡散予測は、このようなことを調べています。放射性物質の

〈1〉地上への降下量
〈2〉大気中の濃度分布
〈3〉大気の流れに沿ってどう流されたかを示す流跡線だそうです。

 福島第1原発からの放射性物質放出量などが不明なことから、同原発から1ベ
クレルの放射性ヨウ素131が放出されたと仮定して計算したとのことですが、
とうぜんこの「仮定」の数値が正しいのかは知るよしもありません。
  仮定が間違っていたり、あえて誤ったデータを入力してあったりすれば、結論
はまったくちがったことになります。気象庁もこのようなことを言われたくなけ
れば、さっさとデータを公開したらよかったのです。 仮定が正しいとして、気
象庁の地上への降下量についてのシミュレ-ションによれば、4日午後3時から
72時間で放出される計1ベクレルのヨウ素131は風に乗ってこのような飛行
パターンをしました。
 
  まず、南西方向に拡散し、その結果、7日午前9時までに地上に降下した積算
量は、東北南部から関東までは1平方メートル当たり10兆分の1ベクレル程度
に薄まっていました。沖縄本島付近~朝鮮半島南端では同1000兆分の1ベク
レル、台湾ではさらに100分の1小さい値の同10京分の1ベクレルとなって
いるとのことです。

 さて、政府・東電の、自称「低レベル汚染水」(実際は違うと思いますが)を
無警告で海に流すという信じがたい愚行の結果、魚介類に汚染が進んでおり、漁
業にも深刻な影響を与えています。既に、福島県や茨城県の野菜や原乳などに放
射性物質が検出されて、これまで基準値がなかった魚介類にも慌てて同様の暫定
基準にすることを決りました。
 
  毎度のこととはいえ、政府の泥縄ぶりに愕然とします。原発事故対応も泥縄と
思いつき、放射性物質の飛散も情報を隠匿したあげくは、露顕して地元自治体か
ら猛烈な抗議を受けると周章狼狽して泥縄的に基準値を作る・・・まったく政府
の体をなしていません。間違いなく慌てふためいて作ったものでしょうから、植
物と動物を同じ基準値にしています(失笑)。
 
  今回の水稲の土壌基準もおおかたそんなものです。とまれ基準値が決まったこ
とで、さっそく福島や茨城では稲の作付けが始まりました。肝心の土壌検査は、
する時期もそのルールも決まっていないので、「放射性物質が降っていないだろ
う」という見込みで農業者は始めたのです。

 しかし同じ茨城県内の漁協のように、放射能検査を行い、新たに設けられ政府
基準値をクリアしていると安全宣言を出したとたん、強烈な風評被害で銚子漁港
から水揚げすら拒否されるというようなことにならねばいいのですが。 風評被
害は仲買や消費者のせいではありません。全ての責任は放射能を土壌や海に流出
させた政府と東電にあります。
 
  政府はこれを風評被害一般として片づけ、市場や仲買人たちを「指導」するそ
うです。もうその鉄面皮ぶりに唖然とします。そもそも誰のせいでそうなったの
でしょうか。「指導」を受けねばならないのは政府と東電です。東電と一体と
なって国民を保護せず、放射性物質を土壌や海に流出させ、その情報すら隠匿し
続けた政府のせいではないですか。

  ◇百姓は神社の桜の老木のようにこの地から動けないのです
春の作付けが始まりました。もうやるきゃないってとこですかね。この水温む
季節に種蒔きと米作りやらなかったら百姓じゃないてなもんですよ。
  もう待てない!この気持ちを政府はわかっているのでしょうか?
  一斉に村中の畑や田んぼでトラクターがガタゴトと動きは始めました。私なん
ぞセシウムが降ってたら知らんぞォなどと消極派だったのですが、まぁ赤信号皆
んなで渡れば怖くないってところでしょうか(苦笑)。

 とりあえず今は放射性物質の空中放出は低下していますから、お願い、もう一
回水素爆発なんてやらんでくれよと祈るような気持ちです。今度いったら下手す
りゃプルトニウム様の出番ですから、これはシャレにならない。そういえば原子
力保安院は今回の原子力事故をレベル7としました。放出された放射線量がテラ
(京)に達したからだそうです。しかもそれは3月中旬まで既に放出されていた
そうです! だったら今までの枝野官房長官の会見で言っていたことはなんだっ
たのでしょうか。 もう怒る元気もありません。
  そこまでの大事故にしてしまい、情報を国民から隠蔽してきた不始末の責任は
どこかで必ずとってもらいましょう。  

 ◇私たちはこんな状態で毎日グラグラする地盤の上に乗って、放射能が降って
きたらしょうがないじゃないかと明るく居直って暮らしています。
だって泣いてもしかたないじゃないですか。笑って暮らすしか方法がないじゃ
ないですか。百姓は神社の桜の老木のようにこの地から動けないのです。だから
苦しい時こそ笑うんです。
    がんばろう、福島! がんばろう、宮城! がんばろう、岩手!
  がんばろう、青森! がんばろう、山形! がんばろう、千葉!
  がんばるぞ、茨城! がんばるぞ、われらが被災地!

            (筆者は茨城県行方市在住・農業者)

                                                    目次へ