【コラム】ザ・障害者(9)

行政は後からついてくる

堀 利和


 本文章は、9月2~3日に行われた共同連全国大会 IN 滋賀での私の挨拶を改めてまとめたものである。「行政は後からついてくる」とは、政策決定が行政当局にあるにしても、すでにその萌芽と下地はむしろ障害当事者・関係者から始まっている。障害者ファースト、当事者ファーストなのである。

 たとえば就労継続A型、B型の事業も今では当たり前の小売業、リサイクルショップ、カフェ、食堂、自然食品の店などがあるが、その前身である小規模作業所が自治体の助成を受けて拡大・発展する過程で、八〇年代初頭にお店の作業所を始めたところ、作業所は製造業種であるからお店は認められないと行政から言われた。しかし交渉の末、認めさせた。

 グループホームの制度化もそうである。制度化にあたっては確かにスウェーデンを参考にはしたが、すでにアパートを借りた手作りの「グループホーム」、わっぱの会でも「生活共同体」が試みられていた。

 また、介護制度についても、七〇年代の「施設解体」、自立生活・地域で共に生きる生活保護受給者のアパート・一人暮らしから端を発している。もちろん当時は介助・介護制度が全くないから、大学の門前でボランティア募集のビラまきをした。

 その後、「制度」を求めて東京都北区、東京都、そして厚生省と交渉を重ね、ようやく「全身性介護人派遣事業」を勝ち取った。知事認可という限定的な個別「制度」であったため、当時、県に一人二人という現状でもあった。だが、これが介護制度のルーツであることも確かである。

 八九年のゴールドプラン・新ゴールドプランではホームヘルパー十万人体制が打ち出された。二十年に及ぶ長い議論を経て九三年ドイツで初めて介護保険制度が発足し、日本でも九四年から税か保険かの大論争が本格的に始まり、二〇〇〇年スタートの介護保険法の原案が九六年にまとめられた。これは権利性、普遍主義にたつ政策である。以上の事例から、行政は後からついてくると言いたいのである。

 障害者ファースト、草の根ファースト、最近なんとかファーストと耳障りになっているが、そもそも「ファースト」とは、土佐の若い漁師が一人で漁に出て遭難。そこでたまたまアメリカの船に救済されアメリカに。土佐に帰ってきたそのジョン・万次郎に、坂本龍馬が「アメリカで一番偉いのは誰だ?」と聞く。大統領と答えると思ったら、万次郎は「ピープルファースト」、国民が第一、国民が偉いと答えたのである。安倍首相よりピープルファースト、行政官僚より当事者ファースト。

 社会的事業所の制度化の壁は厚い。だからといって、国家戦略特区の岩盤規制に穴を開けたら、そこからお友達の加計さんがでてきたなんて。社会的事業所は、私たちだけの、共同連のためのそれではない。普遍主義に立っている。
 行政は後からついてくる。共同連ファースト。社会的事業所の制度化を、WNJ(ワーコレ)、労協(ワーカーズコープ)、NPO法人抱樸(ホームレス支援ネット)と連帯して勝ちとろう。

 (元参議院議員・共同連代表)

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