野党勝利と民主壊滅の沖縄県議選を考える

■野党勝利と民主壊滅の沖縄県議選を考える     仲井 富


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◆与党勢力の敗北と野党中道勢力過半数の中味
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 注目の沖縄県議選挙は6月17日、投開票された。結果の概略はマスコミ各社
が報じているが、以下は地元紙の琉球新報・沖縄タイムスなどの報道を中心に、
県議選の結果を分析してみたい。党派別当選者の内訳は県政与党の自民が1減の
13人、公明3人、無所属5人の計21人。野党は社民が1議席増の6人、共産
は5人を維持、社大は1増の3人、無所属・諸会派7人の計21人。中道系無所
属5人で計26人となる。

 まず第1に注目すべきは、民主党沖縄県連の惨敗である。民主党は前回の県議
選挙では那覇市など4選挙区でトップ当選を果たし、戦後初めて県議選挙におい
て野党勢力過半数を生み出す原動力となった。しかし今回は県都那覇市選挙区
(定数11)で、県議選史上最高得票の1万8千票余だった上里直司幹事長は、
今回は5千7百票余で次点に沈んだ。同氏は仙谷由人の秘書、松下政経塾、那覇
市議から沖縄県議。国政にも打ってでようという若手のホープだった。生き残っ
たのは、島尻郡区(定数3)で最下位で新垣安弘県連代表がすべりこんだ1議席
のみ。

 民主党政権発足以来、ことごとく沖縄県民への約束を裏切り続けた民主党政権
および、これには追随してきた県民主党を、沖縄県民は野党勢力ではなく、自公
与党に追随するヌエ的な政党として、ノーを突きつけた。一方、民主党に見切り
をつけて離党して無所属で立候補した2人、浦添市区(3名区)の赤嶺昇氏は最
高点で当選、うるま市区(4名区)の山内末子氏は4位で再選を果たした。仲井
真知事は、民主党の3人の候補の出陣式にかけつけ与党並みの支援をした。民主
党沖縄を与党にカウントした過半数戦略だったが裏目に出た。

 第2に注目すべきは、与党自公勢力の敗北である。自公陣営は、10年7月の
参院選挙で普天間基地の県外国外移転を投げ捨てた民主党に対する沖縄県民への
不信感をうまく利用した。現職の島尻候補は「普天間の県外国外は県民の総意」
として、県外国外移転を地元議員として貫くという態度を鮮明にした。沖縄の自
公県連も、本土の自公には辺野古移設の方針がありながらも、島尻氏を支持して、
野党候補の社民党山城博司氏をわずかの差で破って当選をかちとった。

 11年11月の沖縄県知事選は、現職の仲井真知事が再選を目指していた。同
知事は自他共に認める普天間基地の辺野古移設論者として知られる。県外国外を
主張する伊波洋一元嘉手納市長は、強敵だけにその対応が注目された。だが仲井
真氏の選挙事務長を務めた翁長雄志那覇市長が「県内移設では勝てない。県外移
設を公約とせよ。それを言わなければ事務長を降りる」と迫った。その結果、県
知事選直前に仲井真知事は「県外移設」をしぶしぶ公約として掲げて当選した。
そして今年に入って、県議選の前哨戦といわれて注目された宜野湾市長選挙でも、
大方の予想を覆して自公の推す佐喜真淳氏が当選した。

 仲井真知事は、県外移設を掲げながらも、本音は普天移設にあることを承知し
ている民主党政権は、あらゆる手段で県知事を支援した。それが一括交付金増額
による沖縄第五次振興計画の推進、跡地利用法の後押しであった。2年前の参議
院選挙以降の流れでは、県議選挙で自公の与党勢力が勝利する条件はそろってい
た。だが、投票結果は前回選挙よりも1議席少ない21議席にとどまった。「な
んで負けたかわからない」と茫然自失の仲井真知事の姿が印象的だった。

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◆中道系無所属の進出と県議選最低の投票率の意味
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 第3に注目すべきは、野党・無所属グループの過半数の中味である。地元紙の
分析では野党陣営は26人となっているが、そのうち中道系無所属5人を加えて
野党過半数となった。ここに沖縄の特色がある。これに明確な野党として5人の
無所属議員がいる。野党過半数の中味は、政党所属議員は社民、共産、社大の計
11人、これに10人の無所属を加えて過半数の26人となる。これらが広い意
味で沖縄の米軍基地撤去、普天間の県外・国外移設を主張してきたグループとい
える。

 とはいえ、普天間基地の県外移転は、もはや左右を超えた沖縄県民の意志とし
て明確になった。オスプレイの配備反対を含めて、沖縄の保革を超えた全市町村
長の統一された意志である。2度の県民大会がこれを支持した。自公もまた沖縄
ではこれを否定しては生きてゆけなくなった。民主党政権の唯一の功績は、彼ら
の背信への怒りが、沖縄の反基地、普天間県外移転、オスプレイ配備反対のゆる
ぎない沖縄県民の意志統一をもたらしたことだ。

 第4に注目すべきは、投票率の低さだ。投票率は前回より5.3%減り、52.
49%と過去最低を更新した。50%に達しなかった9市町村は、移住者の多い、
新たに開発された新興住宅地が広がる地域ばかり。地縁血縁頼みの旧来の選挙運
動が薄れつつある一方、選挙に行くきっかけつくりが大きな課題になっている、
と地元紙は分析する。(琉球新聞2012・6・12)

 投票率50%を割った北谷町選挙管理委員会は、開票当日、ホームページで、
町内の行政区別、年齢別の投票率を公開した。投票率を見ると、20、30代は
30%台で低く、移住者の多い西海岸の新興地域で30~40%台と低い傾向が
顕著に表れた。北谷町全体の投票率は48.59%、行政区別に見ると、移住者
が多く住む海岸線が極端に低い。

 根底には、政権交代に対する期待が見事に裏切られたことへの失望と怒りが、
無党派層の選挙への関心を失わせたということがいえる。おそらく、この傾向は
次の国政選挙でも現れるだろう。前回、民主党躍進を支えた無党派層は、行き場
を失って、棄権するか、あるいは大阪維新や名古屋の減税日本などに移行する可
能性が高い。

 沖縄県読谷村に移住して活動している友人のK氏は次のように言う。「県下の
都市部で軒並み投票率が低下していることに注目しています。保守も革新も本質
的な違いはない、世界がこれだけ大変わりしているときに、両方とも世界史的な
日本のビジョンを提起できない。したがって沖縄の将来展望が争点にならない、
といった心ある市民の嘆きが象徴的です。これは恩納村で自然保護運動にとりく
む62歳の女性エコロジストの指摘。彼女は先祖代々の琉球人です」。

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◆今後の県政と那覇市長選そして衆参選挙への展望
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 野党過半数のまとめ役として県議会副議長を4年間務めた名護市の玉城義和氏
(無所属)は、当選歴7回の大ベテランだ。玉城氏に電話で話を聞いた。ひとつ
は、民主党の背信によって野党陣営は、参院選、知事選、宜野湾市長選と重要な
選挙で連戦連敗だった。そのなかでなぜ野党が過半数という勝利を得たのか。も
うひとつは、これから最も注目される仲井真知事の県政運営と、那覇市長選挙な
どの展望について、どう見るかということだ。

 玉城氏は極めてクールだった。「野党陣営が勝ったというより負けなかったと
いうところに意味がある。仲井真知事は県外移転と言いながら、本質的には辺野
古移設を認めたがっていることを県民はよく知っていて、全面的な信頼を得てい
ない。つぎの知事選挙での3選出馬は難しいだろう」。一方、11月の那覇市長
選挙に4選出馬を表明している翁長雄志市長に対抗する野党陣営の候補は、まだ
決まっていない。

 玉城氏は言う。「翁長氏は保守と言っても、仲井真知事のように揺れ動かない。
基地問題については県民党的で分裂すべきでない、という信念を持っている。過
去の県民大会でも、議長団の一員として積極的にリードしたきたし、今回のオス
プレイ配備にも断固として反対と明言しており、さらに新たな県民大会をも提案
している」。沖縄県議選のあとを受けて、野党陣営は那覇市長選の候補者選考を
急ぐとしているが、まだ具体的な候補者選考に至っていない。いまのところ翁長
4選を阻止する展望は見えない。

 来年は、参議院選挙と衆院選が重なって実施される。衆院選は消費税をめぐる
延長国会の成り行き如何だが、いずれにしても重要な選挙日程が重なっている。
衆院総選挙での野党4議席確保という戦後初の快挙は、民主の壊滅によって、次
回は自公の4議席確保の展望さえ出てきていた。だが県議選の野党過半数という
結果は、今後は民主抜きでの野党統一候補での選挙戦を戦うということになる。
参議院選挙も、現職の糸数氏が革新統一候補にがなれば勝ち目は出てくる。

 問題は共産党の出方だ。この党は常に革新統一を言いながらも、肝心なときに
は結果として自公勢力を助ける役割もする。2年前の参院選がいい例だ。自民の
島尻候補は、化粧直しをして本土の自公の方針に反して「普天間県外、国外」を
アピールして当選した。しかし得票分析で見れば、以下のように、社民の山城と
共産の伊集の得票合計は自公の島尻を上回る。野党が勝っても不思議ではなかっ
た。

 島尻安伊(自)258,946(47.6%)
 山城博治(社)215,690(39.7%)
 伊集唯行(共) 58,262(10.7%)

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◆地方の予兆に鈍感な政党は生き残れない
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 振り返れば、4年前の沖縄県議選こそが、民主党がそれ以降各地の首長選挙で
勝利するきっかけとなった。直後の08年参院選での勝利、首長選挙と勝ち続け、
ついに3年前の都議選で野党過半数を実現した。その延長線上に3年前の09年
8月総選挙圧勝となった。

 ところが、その直後の宮城県知事選挙から潮目が変わった。09年9月の宮城
県知事選挙で民主党は惨敗した。以後、堺市、鎌倉市、長崎県知事選など節目の
首長選挙で負け続けた。そして10年の参院選では、菅首相の消費税値上げ発言
で惨敗した。

 11年2月名古屋市長選挙でも大敗した挙句、11年春の統一地方選挙でも敗
北。東京都知事選挙では候補者さえ立てられなかった。今年の大阪府知事・市長
選挙では、共産党を含む既成政党連合が、橋下氏率いる大阪維新の会に完敗した。
さらに震災で遅れた昨年秋の東北の地方選挙でも岩手を除いては、ことごとく敗
北した。いまや首長選挙では民主単独の候補者さえたてられず、自公民相乗りで
ようやく体面を保っているに過ぎない。

 民主党は、鳩山、小沢グループの造反で衆議院過半数さえ危い。自公に全面屈
服しての消費税値上げが国民の反発を受け、直近の時事世論調査では民主党政権
発足以来最も低い支持率となった(注・参照)。4年前の沖縄の県議選に示され
た民意を踏みにじり、沖縄の自公与党にすり寄った挙句の県議選惨敗でであった。
8月5日には宜野湾市で、県議会与野党一致で主催する、オスプレイ配備反対の
10万人県民大会(玉城義和事務局長)が開催される。

 この流れはもう止まらない。たとえ自公に支えられて消費税値上げにたどり着
いたとしても、変節した民主党に明日はない。来たるべき総選挙、参院選挙での
敗北は明らかとなった。小沢氏はもとより、菅氏も岡田氏も仙石氏も、この地方
選挙における予兆に無知で何らの手も打てなかった。なぜ民主党政権発足直後か
ら、首長選挙で負け続けたのか。それへの対応を何一つできず総崩れとなった。
「地方の予兆に鈍感な政党は生き残れない」という教訓である。

(注)時事通信が7月6~9日に実施した世論調査によると、野田内閣の支持率
は前月比3.0ポイント減の21.3%となり、政権発足後最低だった4月(2
1.7%)を更新した。不支持率も同5.5ポイント増の60.3%で、最高だ
った4月(55.7%)を上回った。民主党の政党支持率も同1.4ポイント減
の6.7%で、2009年の政権交代後の最低記録を3カ月連続で更新。09年
10月(29.4%)の約2割にまで落ち込んだ。
       (筆者は公害問題研究会代表幹事)

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