【自由へのひろば】

障害者差別解消法改正から1年
岡山地裁で「合理的配慮」に対する画期的な、しかし当然の判決でる!

堀 利和


 障害者差別解消法から施行1年がたった。「合理的配慮」の観点から、岡山短大の視覚障害を理由とした配置転換を無効とする画期的な岡山地裁判決が出された。その意味は大きい。
 3月28日に、岡山地裁倉敷支部が「配置転換無効」の判決を出した。
 2013年に改正された障害者雇用促進法第36条では、「差別の禁止」と「合理的配慮」が義務付けられ、昨年4月1日より障害者差別解消法とともに施行された。ちなみに、「差別の禁止(解消)」と「合理的配慮」に関して雇用分野は促進法、その他の分野は解消法というように住み分けされている。いずれにせよ、雇用促進法の「合理的配慮」の提供が施行されてから初めての裁判判決となった。

 幼児教育学科をおく岡山短大に95年に採用された山口雪子現准教授は、網膜色素変性症で当時文字は読めたが、10年前から視力が低下して今は明暗が判る程度である。短大側は、視覚補助を行う職員の確保ができないことを理由に退職を勧めた。山口准教授は、私費で墨訳作業をする補佐員を1人雇う許可を得て、授業をし「指導の質に支障はなかった」と主張した。だが、短大側は、ゼミの授業中に飲食していた学生に気づかなかったことや、無断で教室を出る学生を見つけられなかったことなどを理由に、視覚障害を理由として授業や卒業研究の担当からはずし、研究室からの退去を命じた。学科実務のみの事務職への配置転換を命じたのである。

 これに対し山口准教授は、昨年3月に「地位確認と事務職への職務変更の撤回」を求めて、岡山地裁倉敷支部に提訴した。原田博史学長は、「大学としてはこれまで思案を重ね、(山口准教授を)支えてきた。視覚障害を理由に差別はしておらず、提訴は驚いている。我々は教育の質を担保すると約束している学生の立場に立っている」と説明し、短大側は「授業をするには視覚が決定的に重要な役割を果たすと主張」「視覚補助者によって解消することは不可能」と反論した。

 判決は、「山口准教授の授業における学生の問題行動について、短大側が防止策を議論・検討した形跡が見当たらない」と指摘。「望ましい視覚補助の在り方を検討、模索することこそが障害者に対する合理的配慮の観点から望ましい」とした。

 さらに判決は、視覚障害を理由にした事務職への配置転換は無効として、その取り消しを求めた仮処分で、配置転換の効力を停止する決定をした。決定は、授業をするために准教授を補佐する職員を雇用することは過重な負担とする岡山短大側の主張に対し、「障害者雇用促進法が予定する『合理的配慮』を著しく超過しているとは言えず、職務変更命令に必要性があるとは認められない」と指摘した。ちなみに現在、26人の視覚障害者が大学で教えている。

 法律では合理的配慮については事業者と障害者である労働者との間で話し合うことになっているが、大抵は労働者の方が弱い立場にある。泣き寝入りか、退職に追い込まれる、あるいは本音が言えない。しかも、配慮に対して「過重な負担を課さない」ということを、一体誰が、客観的に判断するのか。

 今回の判決が当然であるとともに画期的なのは、最終的には司法の判断に頼るしかないであろうから、その意味でもこの判決は私たちを勇気づける。
 ところが短大側は4月3日、配転命令は無効などとした岡山地裁判決を不服として、広島高裁岡山支部に控訴した。新しい「社会的包摂」の論理が広がるのか、古い差別観が認められるのかの時代の裂け目がここにある。

 (元参議院銀・共同連代表)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧