21世紀型生協について

■21世紀型生協について 下山 保

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編集部 加藤宣幸

「生協」はいつの間にか私たちの生活にとって身近な存在になっていますが、日本の「生協」は発祥の地ヨーロッパの影響を受けつつも独自のモデルとして発展し、いまや全国では約1300万世帯が組織されているといわれています。

今号では、「NPO」の特別に発達した組織とも考えられる「生協」について、早くから「21世紀型生協論」を提唱され、運動の方向性を主導されてきた下山 保氏(現首都圏コープ事業連合顧問)にその骨子を述べていただきました。

下山氏は1970年、団地自治会長に生協の設立を公約して立候補したのが契機となり、生協活動一筋の道を歩み、独自の構想力・行動力・説得力でついに「首都圏コープ事業連合」(03年度;グループ総事業高1440億円・組合員数77万人・出資金59億円)を創りあげた方です。

「21世紀型生協論」

序論

20世紀は「戦争と革命の世紀」だったといわれるが、経済主義をベースにした社会構造のもとで強者の論理の通る世紀でもあった。資本と労働の対立、競争の極限としての戦争がそれである。

この状況のなかで、20世紀の生協をふりかえると店舗生協の敗北。共同購入の発展と衰退。個配への流れ。という明確な事実を読み取ることができ、10年間にわたって2桁成長をつづけてきた首都圏コープ事業連合の歴史もこの例外ではなかった。

21世紀とはどのような世紀になるのか。

人間の生き残りを賭けた世紀であり、そのコンセプトは「共存」である。資本と労働の対立からサプライヤー(=資本+労働)対コンシューマーの対峙になるはずである。

時代は資本主義体制―社会主義体制の構図の崩壊だけでなく、間違いなく歴史は共存の世界に入り、20世紀には「無秩序を無理やり秩序化」したのだが、21世紀には「無秩序の共和化」がはかられるだろう。

それは間違いなく思想・民族・宗教・文明国と非文明国との「ちがいの共存」にいたるはずである。いいかえれば20世紀には文明文化圏が支配したが21世紀は非文明文化圏が確立される時代になる。

このような時代に「生協」が単に生き残るだけでなく、社会的に大きな役割を果たすためには何をなすべきなのであろうか。

私は、21世紀における生協の事業経営。組合員運営。社会的責任の三つの視点から考え、そのキーワードとして次の5つをあげたい。

1) 個人対応型事業

2) 1300万世帯組合員経営資源

3) 組合員自らの生協運営

4) パートナーシップ事業

5) 事業インフラの社会への開放

                        である。

(1) 個人対応型事業

  首都圏コープ事業連合の到達点から「個」の事業の時代が見えてきたが21世紀型生協の事業を(店舗・配達など事業形態を問わず)「個人対応型事業」として位置付ける。

  とりわけ、首都圏コープ事業連合の事業経過から「個人対応型無店舗事業」について第一の課題とする。

(2)1300万組合員経営資源

  1300万組合員をはじめ生協が持つすべての経営資源の活用が21世紀事業の鍵である。

首都圏コープ事業連合は生協法の枠内で事業連合という単協事業を超えるリージョナル事業システムに取り組んで成功をおさめてきたが21世紀は全国に組織された2000万組合員の総合的事業資源を活用する新しい事業システムを開発すべきであり、「事業連合ワク」すら十分活用しえてない日本の生協の連帯の未熟さを越えていかなければならない。

(3) 組合員自らの生協運営

  首都圏コープ事業連合は事業とともに立ち遅れていた組織運営を事業経営改革の中で一気に改革し、今、全国レベル上位になっているが、70年~80年代を通して日本の生協が到達した「組合員参加」のレベルはむしろ下がりつつあった。

  生協では事業と組織は相互に成長し、改革し合うという関係にあるがその逆にもなる。

  首都圏コープ事業連合は幸い前者の状況にあり、そこから次のステップを見つけ出していくべき責任を負わせられている。

  したがって「生協の主体者が自ら運営する」という新しい次元へのスタートは首都圏コープ事業連合が切らなくてはならない。 

(4) パートナーシップ事業

  パートナーシップ事業とは組合員と職員の間をパートナーとして確立し、事業者・生産者ともより幅広いパートナー関係として確立していき、」そこにパートナー間のモラルとそれぞれの事業発展の基礎を置くことである。

  首都圏コープ事業連合の経験からパートナーシップには三つの発展段階がある。

  第一段階は「原始的パートナーシップ」(過去)=ダンゴの関係で組織の創生期にあってすべてが弱体で組合員・職員・事業者が一体になってもたれあい共存するという自覚せざるパートナー関係。

  第2段階は「過渡的パートナーシップ」(現在)=タテの関係で組織が量的に成長し専従が主導し、専従者が事業者に仕事を出す(上下意識)対抗的に共存するという擬似パートナー関係。(組合員不在)

  第三段階は「21世紀型パートナーシップ」(未来)=ヨコの関係で組織が質的に成長し組合員運営が進行して組合員組織が事業者(職員組織もパートナー)に委託して自立的共存するという対等、信頼のパートナー関係。

  がある。

  首都圏コープ事業連合は個配事業の中でパートナーという新しい事業的資源を発見したが、この発見の過程を通して、生協職員も主体者組合員のパートナーとして位置ずけられることを認識することができた。

  21世紀はより社会性を持った生協への発展要因として、この発見認識を広めることが不可欠となる。

(5) 事業インフラの社会への開放

  生協の垣根はますます低くなり、社会に溶け込んでいくが社会への貢献があらゆる事業にとって存続の条件になる時代になってきている。

  生協のもつ情報や物流のインフラは社会に開放すればさまざまな地域貢献ができる。

  生協は「組合員」の組織であるにもかかわらず、ますます社会に開放的になっていく。

  事業のパートナーがより広がっていくだけでなく、事業の対象が組合員ワクを越えていく流れも抑えきれない。

  生協の事業的インフラは組合員にとって有用であれば、他の事業インフラ(公的・私的)と結合することも避けてはならない。さらに地域のボランテイア・NPO・住民の希望があれば共同活用・共同運用・あるいは運用・運営への参加、介入も認めていくことになろう。こうしたことを予測し受身になることのないように準備を進めていくことが必要である。

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