AIIBの外交失敗をTPPで取り戻さんとするオバマ政権

AIIBの外交失敗をTPPで取り戻さんとするオバマ政権
—安倍政権は対中強硬、対米追従の極端外交を正すべし—

篠原 孝


<連休明けに政治は動く>
 日米首脳会談、そして池田勇人首相以来 54年ぶりの米議会演説という政治・外交ショーが終わり、連休明けの政治が始まろうとしている。
 そういえば、4年前は民主党政権で、私は菅首相に連休明けの打つ手を進言し、2011年5月10日にはそれが実行されていた。まだ4年しか経っていないが、今や民主党は弱小政党でしかなく、政権党にいたのはもうかなり前のような気がしてならない。
 今は、何をしようとしても実現には手間がかかる立場である。まして、外国がらみはもっともっと隔靴掻痒の感が否めない。
 しかし、日本国の政治家であることに変わりはなく、主張し続け、活動し続けなければならない。

<AIIBに不参加の理由>
 言訳と格好付けばかりの安倍外交の中でも、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を巡る動きは最も見苦しく映る。
 アメリカと共同歩調をとり、アジア諸国はもちろん、G7のヨーロッパ諸国も加盟する中、日米2ヶ国のみが参加しないことになった。運営の透明性が確保されていない。公正さに欠け、中国の思い通りにしかならない。日本の意向は無視される。環境破壊の恐れがある等、不参加の理由が並べられている。

<中国発のバスは乗らないのか>
 不思議なことに、経済界からもマスメディアからも、TPP交渉参加時の「バスに乗り遅れるな」という声がほとんど聞こえてこない。同じアジアのことなのに、アメリカ発(正確にはP4発)のバスには乗り遅れてはならないが、中国発は乗ってはならないのだろうか。日本以上のアメリカの同盟国のイギリスもG7の先陣を切って参加しているというのに、あまりの違いに驚かされる。
 TPPこそ、交渉過程からして不透明そのものである。それに対し、AIIBは、今後年8000億ドルに及ぶというアジアのインフラ投資のための国際機関である。アジア開発銀行(ADB)の年200億ドルではとても対応できないことは明らかであり、することははっきりとわかっている。得体の知れないTPPとは全く別物である。

<アメリカ外交の大失態>
 アメリカのほうがずっと素直である。シンクタンク戦略国際問題研究所は、AIIBへの不参加を外交上の大失態とし、オバマ政権はそれをTPPで取り戻そうと必死になっている、と指摘している。TPPを日米共同の対中包囲網として進めるべきだという論者もいたが、AIIBで日米が完全に包囲される形となった。日米同盟と違い、TPPは軍事同盟ではない。AIIBもIMF、世銀、ADBと同じ投資のための国際機関にすぎない。アメリカの進めることには盲目的に従い、中国に対しては何でもかんでも絶対的強硬路線をとる安倍政権は、アメリカ以上にズレた外交的失敗を繰り返している。領地紛争を抱えるフィリピン、ベトナムも参加し、韓国、豪州、台湾といったアメリカと軍事関係の緊密な国々も入っている。それを日本がただ1国参加していないのだ。

<イギリス以上にアメリカに追従する哀れな日本>
 私は日本が中国と一線を画して日本の判断で独自路線を歩むのなら、それはそれでかまわないと思っている。最近の中国の思い上がりに対して毅然とした態度で臨んでも、とやかく言われる筋合いはない。しかし、「周辺国が中国に従属する16世紀型の再現」(ラッセル国務次官補)といった、アメリカの時代がかった対応に引っ張られているだけだとしたら、それこそアメリカ以上の大失態に他ならない。もともと中国にもアメリカにも同じように堂々と対応すべきなのだ。それはアメリカに対しては卑屈、中国に対しては傲慢が過ぎるのだ。
 AIIBの設立ももとはと言えば、IMF改革が行われ中国の出資比率をアメリカ、日本に次いで3番目にすることが決められていたのに、アメリカ議会の反対で先延ばしになっていることにも起因している。また既存の機関が新興国投資を渋っていることから、AIIBへの期待が高まるのは当然である。2020年には中国のGDPは日本の3倍になると予測されており、中国は金融投資の重要性に気付き、新興国が中国マネーに期待し、他の先進国が経済的利益の分け前にあずかろうとするのは当然のことである。

<アメリカ発のTPPのほうがずっと危険>
 アメリカは意地になり大失態を覆い隠すためにTPPをさっさとまとめようとしている。さもなければアジアにおける中国のリードを許してしまうと恐れているからだ。訪米時に発した日米共同ビジョン声明では、全文の一割以上をTPPに割き、両大国がいかにTPPを重視しているかを力説した。付加えてAIIBを意識して「日米両国のリーダーシップは、TPPを通じた貿易及び投資、開発協力を含む」と牽制した。
 日本がそのアメリカにばかり歩調を合わせるとしたら、それこそ二重に国を誤らせることになってしまう。AIIBで動くのは、カネだけである。それに対し、TPPはヒト、モノ、カネが国境を越えて動き、日本社会に定着した制度を崩壊させることが目に見えている。国民生活が脅かされてしまうのだ。
 近隣諸国の社会基盤の整備に貢献せんとするAIIBに背を向け、日本の社会的基盤を根底から覆すTPPにのめり込むのはあまりに愚かな外交である。AIIBに慎重になり立ち止まったのなら、TPPにこそ立ち止まって考えていき、全く逆の行動をとろうとしている。矛盾以外の何物でもない。

<FTAAPに向け、日米中が協力すべき>
 日米両政府は、TPPには前のめり過ぎ、AIIBにはつれなさすぎるという異様な態度をとっており、アジアで2大国が孤立しつつある。両極端な対応が著しく不自然にみえる。どこかが歪んでいるのである。両国とももっと冷静にならなくてはならない。
 そういえばAPECでは包括的で質の高い経済連携の強化を目指すFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)の実現こそがコンセンサスになっている。AIIBもTPPもその一手段にすぎない。中国抜きでアメリカと日本だけでは実現できず、アメリカと日本抜きの中国だけでもFTAAPは達成できない。
 日米ともにAIIBに参加するかわりに、TPPも一時中断して中国を入れるべく、もっと緩やかなものにして出直したらよいのではないか。

 (筆者は衆議院議員)

※ この原稿は著者の承認を得て「しのはら孝 メールマガジン412号」から転載したものです。


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