NPO高齢期の住まい&暮らしをつなぐ会

【運動報告】

「NPO高齢期の住まい&暮らしをつなぐ会」

理事長  井上 亮子


 「高齢期の住まい」が、いま、すべての高齢者の心に、身体に、お財布に、重くのしかかっていて、解決の見通しがついていません。
 そもそも、家とは家族が共に暮らす場です。食べる・休む・育てる・洗う・癒す・看取る等、つまり基本的に生命の再生産が行われるところ。それが、なぜそんなに重大な問題なのか、と思われる方もいるでしょう。が、そんな方も実は当事者なのです。

 そもそも、日本の住宅制度は、「戸建・持ち家」願望を駆り立てる政策によって出来上がっています。が、そのマイホームが「空き家」になり、破綻しています。「稼ぐ夫と主婦と子供2人」という都会の家庭だけの家族モデルに依存しすぎたのではないでしょうか。高齢者の持ち家率が高いわけです。

・年齢層別の持ち家率(2008年)
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 35〜39 40〜44 45〜49 50〜54 55〜59 60〜64 65〜69 70〜74 75歳〜
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 38.0% 49.0% 57.7% 63.4% 66.7% 69.7% 70.5% 70.5% 9.9%
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                出典:総務省統計局「住宅・土地統計調査」

 生活を置いてきぼりにしてきた結果、命よりお金が優位の社会にしてしまったのは、国の政策を容認してきた私たち市民に責任があるでしょう。

 これほど、老人世帯が多数になり、しかもおひとり様が普通になることを予定していなかったわけで、家族計画もまさかこんな結果になるとは想定できなかったでしょう。世代間で支える社会保障制度が成り立たなくなっている事実こそが、不安の源です。内閣府の「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯数は、約2000万世帯で全世帯の半数近くに及びます。単独世帯、つまりおひとり様世帯が24%、老夫婦のみの世帯が30%と、併せて全体の50%を超えています。家庭内の家族介護の仕組みはとうに成り立たなくなっています。

 戦後、頑張って働き、経済を成長させてきた世代の「庭付きの家でのんびり孫と遊び、最期は大往生」の夢が消えてしまったばかりか、賞味期限が切れた家が820万戸もの空き家になり、倒壊、放火、不法投棄など、とんでもない不安を地域に抱えさせています。

 倒壊しないまでも、介護と見取りのできない家は、住まいとは言えないかもしれません。それをお金で買う方法はあります。公的なものとして特別養護老人ホームなどの介護福祉施設、民間の有料老人ホームです。2013年からは民間の「サービス付き高齢者向け住宅」が急成長しています。それでもまだ足りません。団塊世代が暮らしに手助けが必要になるのが2025年ですが、その時42万人もの高齢者がケアの届かない住宅で暮らさなければならないのが迫りくる現実です。要するに、ケアなしの一人暮らしを余儀なくされる老人が42万人にもなる。誰でもいずれケアが必要になるかもしれないことを、受け止めようがないのです。子供がいても、お金があっても、不安の解消にはなりません。こんな社会で老いてゆかなくてはならない対抗策として、まず自分との付き合い方も変えなくてはなりません。

 老いるとは、身体の遺伝子はだんだん正常な再生ができなくなって、そのような細胞がどんどん増えて、やがて死に至る。これは生物の宿命です。その生理に逆らって若返りの療法はありません。治らない状態を受け止める知恵が失われてしまったので、上手に死ねなくなったのが現在の終末期医療の混沌の実情です。

 人が生まれてくるとき、母親はお腹を痛めるかもしれないけれど、本人は自然に生まれてきます。死もまた自然の仕組みが備わっているのではないでしょうか。
医療に死を委ねてしまったので、どのように看取り・看取られるか、いま社会が模索中なのかもしれません。

 「私の介護・看護をこうしてほしい」と意思表明する「リビングウィル」を書いておく運動が広がっています。それを代理人に預けておいて、死に臨むときに自分に代わって、主に医療者に発信してもらうというものです。同じように、死後のことも自分の想いを代理人に託す委任契約を結んでおく動きもあります。遺骨の処理方法、葬式、墓などの供養方法などについて希望を残しておくのです。

 また、身体的な事情で(たとえば入院した時のように)お金の出し入れが出来ない場面を想定して事業事務委任契約をしておくことも重要です。認知症になったときの備えで任意後見人をあらかじめ決めて任意後見契約書を公正証書にしておくことは随分受け入れられてきました。これらに加えて、遺言書、リビングウィル、死後事務委任契約など、書類が大事というより委任契約を受けてくれる友人・知り合いをつくること、承知してもらえる周囲とつながることが老い支度であり、またこれからのおひとり様時代の作法だ、と考えています。

 私たちの会「高齢期の住まい&暮らしをつなぐ会」は、こんな発想で活動をしています。

 (筆者は「NPO法人高齢期の住まい&暮らしをつなぐ会」理事長)
 
注)「NPO法人高齢期の住まい&暮らしをつなぐ会」は、旧「福祉マンションをつくる会」を改称したものです。


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