~米国に押し付けられた「思いやり予算」~

■ A Voice from Okinawa (13)   吉田 健正

~米国に押し付けられた「思いやり予算」~

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日本では、「思いやり予算」は1978年に当時の金丸信防衛庁長官が、円高ドル
安で対米貿易が大きな黒字状態にあった日本がベトナム戦争による財政難と経済
不況に苦しむ米国に「思いやりの立場で対処すべき」と議会で答弁して、駐留米
軍基地で働く日本人従業員の給与の一部(62億円)を日本政府が負担することに
より始まったと言われる。

しかし「思いやり予算」の起源には別の説もある。ひとつは、沖縄返還をめぐ
る密約だ。1972年の沖縄返還の見返りとして、日本は、それまで沖縄を統治して
きた米国が支払うべきだった軍用地の復元費や基地の施設改善移転費を、負担し
た。米国議会が、沖縄返還にかかわるすべての出費に反対したからだという。沖
縄返還の際、通貨だったドルが円と交換されたが、そのとき日本政府が、取得し
た総額1億ドル余のおよそ半分をニューヨーク連邦準備銀行の口座に27年間、無
利子で預金した(利子分を米国に供与した)という事実も明らかになっている。

また「日米同盟:防衛負担の分有Sharing the Burden of Defense」と題する
米国の論文(1983年)には、日本が率先して「思いやり予算」を提供したという
より、米国の経済的・軍事的側面からの圧力に追い込まれてそうした、というこ
とをうかがわせるいくつもの文言が載っている。たとえば、米国統合本部長は82
年の軍事専門誌に「太平洋におけるソ連の軍事強化を考えると、日本はわれわれ
の相互防衛負担に応分の分担をするため、その防衛能力を着実かつ重要な増大を
しなければならない」と書いたという。ソ連を意識した防衛力強化を図るべし、
と軍事的な面からの要求である。

この論文は、日本が日米安保に「ただ乗り」して輸出増大による経済力強化を
図ってきた、日本の防衛政策に対する批判の多くは両国の経済問題〈特に日本の
防衛予算の1.6倍にのぼる巨大な貿易黒字〉にリンクしている、これについては
米議会で日米安保を見直すべき、日本に防衛費を少なくとも国民総生産の1%に
引き上げるべき、日本は米国に国民総生産の2%を安保税として支払うべき……
などの声のあることを紹介している。

サリバン元国防次官は、日本が地域安全保障の責任を負わなければ、日本に西
欧諸国の市場を閉鎖すべきだとまで主張している。論文はまた、金丸が、1981年
に、「防衛は日本にとって二次的な関心事であった。日本の役割と武器の選択
は、国内的必要性に基づくというより、米国の提案や勧告に合わせたものだっ
た。防衛努力の強化は、いかなる脅威に対するというより、米国を喜ばせる、あ
るいはなだめるためになされたものだ」と述べた言葉を引用して、両国の見解の
開きを紹介している。

ワインバーガー国防長官は1981年3月の議会報告でNATO諸国も日本も応分の負
担(fair share of the defense burden)をしていると述べたが、「貢献能力指
標」(経済力など)と実際の「貢献指標」(防衛費など)を比較してみたとこ
ろ、「日本(の防衛分担)はすべての分野で最低値またはそれに近い数値を示し
た」という。論文は、日本は日米安保に「ただ乗り」こそしていないかも知れな
いが、「応分の負担」はしていない、と結論づけた。

GDPに見合う軍事予算や海外での紛争における米軍支援を期待する米国からす
れば、日本の駐留米軍支援は軍事的貢献からは遠かったのである。論文が挙げ
る、当時の日本が懸念すべき事態とは、ソ連のアフガニスタン侵攻、歯舞、色丹
などへのソ連軍の展開、ソ連東部における大陸弾道弾や爆撃機の配備、ソ連太平
洋艦隊の増大、エチオピア、アンゴラ、ベトナムにおけるソ連拡大の動き、で
あった。経済発展を重視する日本と、冷戦下の軍事力に重きをおく米国との世界
観の違いは、歴然としていた。


◆払い続ける「用心棒代」


ソ連崩壊により、これらの事態の大半は消えた。だが、米国は自らが作り出し
た脅威を含む新たな「脅威」を持ち出して、財政難に陥った日本に安全保障上の
分担を迫り、日本はそれを提供し続けてきたのである。これでは、米軍は日本か
ら立ち去らない。どうもそのような裏の事情を隠したまま、冷戦時代に始まった
「思いやり予算」はその後も米国の言うがままに増加の一途をたどってきたらし
い。

米国の「圧力」により生まれた「思いやり予算」は、米側にとっては財政・貿
易赤字対策を兼ねた軍事協力費だが、日本側からすれば、強制的米軍駐留経費、
あるいは暴力団が飲食店などから徴収する用心棒代、すなわち「ショバ代」や「
みかじめ料」の方が適切な用語であろう。

野党時代の民主党は、米軍住宅の光熱水料のほか、娯楽性の高い基地内ゴルフ
場の整備員、ボウリング場の修理工、基地内バーテンダーの人件費などを含む「
思いやり予算」の見直しを求めていた。民主党政権は、日米地位協定とともに、
主権国家として異様な米軍への利益供与(おもてなし予算)も洗い直し、できれ
ば少なくともNATO諸国並みにすべきだが、その動きは見られない。

「2009年の世界の軍事費は、2008年と比べて5.9%増、2000年と比べるとほぼ50
%増の総額1兆5310億ドル〈約140兆円〉に達した」
「米国の軍事費は困難な経済的局面にもかかわらず最も増加した」
「地球規模の財政危機と経済不況の広範囲の影響は、世界の軍事費には大した
影響を及ばさなかったように見える」「米国の軍事費は、実質470億ドル(約4兆
3千億円)増え、世界の軍事費増加分の54%を占めた」「アフガニスタンにおけ
る2009年の米国の兵力レベルは倍増し、2010年にアフガニスタンに投入予定の軍
事費は650億ドルと、対イラクの610億ドルを超える」

ストックホルム世界平和研究所(SIPRI)が、6月2日に「2010年版年鑑」を公刊
したのに伴って発表した広報資料からの抜粋である。これによると、2009年の米
国の軍事費は6610億ドル(約60兆4千億円、世界の軍事費の43%)、中国(推定9
88億ドル)、フランス(639億ドル)、UK(583億ドル)、ロシア(推定533億ド
ル)、日本は世界第6位の510億ドル。

日本の軍事費は米国の13分の1に過ぎないが、パキスタンと中国に接し、イラ
ンやアフガニスタンにも近い経済新興国インド〈363億ドル〉の1.5倍弱、北朝鮮
(不明)および中国と接する韓国〈241億ドル〉の2倍以上だ。軍事費の対GDP比
が高いのは、エリテリア(20.9%)、グルジア(8.5%)、サウジアラビア(8.2%)、
オマーン(7.7%)、イスラエル(7.0%)、アラブ首長国連邦(5.9%)、イラク
(5.4%)、米国〈4.3%〉、シンガポール(4.1%)、キルギスタン(3.9%)、コロ
ンビア(3.7%)、ジブチ(3.87%)、ギリシア(3.6%)、ロシア(3.5%)、韓国
(2.8%)など。中国は推定2.0%。

国内総生産GDPの4.3%をつぎ込んで世界の軍事費の43%を占め、世界のほとん
どあらゆる戦争に関わり、武器輸出でも世界一(6800億ドル。2009年)の米国。
戦争とできるだけ関わらないようにして、軍事費をGDPの0.9%に抑えている日
本。その日本が世界最大の米軍駐留費を負担して、軍事超大国・米国に大きく貢
献(協力)しているのである。


◆「負担」分担から「責任」分担へ


米国は、平和憲法の下で自国防衛の責任を回避する日本に、NATO諸国に対する
のと同様に、応分の防衛負担を迫るべき、というこの論文の詳細は別の機会に紹
介するとして、ここでは米国防総省が議会に対するいわゆる「駐留国受け入れ支
援」報告書のタイトルにあった「負担分担(Burden Sharing)」を1994年から「責
任分担(Responsibility Sharing)」に変えたことに注目したい。

国防総省は、「責任分担」の方が、「冷戦の終焉」が提示した複雑な現実と機
会に対する米国と同盟諸国の寄与の性格をはるかによく捉えるからである、と説
明している。「負担」には「消極的」とか「米国の押し付け」といったマイナス
イメージがあるからだろう。国防総省によれば、「責任分担」という概念は「同
盟諸国がさまざまな形で彼らのだけでなく、われわれの安全にも貢献するという
事実に基づいている」。

たとえば、ヨーロッパでは、「平和のためのパートナーシップ」などを通じて米
国と欧州同盟諸国が旧ユーゴスラビアでの平和構築に大きな役割を果たし、日本
や韓国の兵力提供と駐留国支援により「われわれは極めて低コスト(at greatly
reduced cost)で彼らの国土に米軍を駐留させることができる。この駐留は世界
で経済成長が最も著しい地域の継続的安定に不可欠である」。

米国が仕切る世界的軍事戦略について、同盟国が「負担」と感じつつ米国に協
力するのではなく、もっと積極的に「責任」を分担しようという米国流の考え方
である。つまり米国の基準で見た軍事貢献である。

つまり、日本側が「思いやり予算」と称している同盟国の中で破格の駐留軍支
援金は、多額の予算で世界中に軍隊を張り巡らせている米国にとっては、日本の
当然の軍事貢献なのだ。経済大国であるにもかかわらず、防衛費はGDPの1%内
外で済ませ、海外に堂々と軍隊派遣もしない日本は、同盟国としてせめて米軍の
駐留費をまかなうぐらいやったらどうだ、という考え方である。「抑止力」が声
高に論じられる日米(軍事)同盟のもつ、もうひとつの顔である。

そこから、米本土から訓練のためB2ステレス戦闘機などの高爆音・外来機が
嘉手納にやってこようと、「補修」を名目に原子力潜水艦がたびたびホワイトビ
ーチにやってこようと、クラスター爆弾を落下させようと、実弾爆撃訓練で山火
事を起こそうと米軍に異議申し立てをせず、明らかに不平等な日米地協定の改定
も要求せず、「思いやり予算」を含む膨大な駐留経費を差し出す、自らの憲法に
違反してまで、自国民を米軍に従属させてまで、戦争加担国家に変貌した日本の
姿が浮かび上がる。


◆日本の支援は駐留米兵当たりNATO諸国の5倍


米国防総省は、2010年7月付けのウェブサイト「共同防衛に対する同盟国の支
援」に1995年から2003年までの報告書に加えて、2004年に公表された2002~03年
の軍事支援に関する「統計大要statistical compendium」を掲載している。しか
し、なぜか、それ以降の統計数字は公表していない。やむなく、この「最新」統
計で日本と他の米国同盟国の軍事支援を見てみよう。

米国は、戦争国家でありながら自国に外国軍をまったく受け入れていないか
ら、「受入れ国支援(host nation support)」は該当しない。しかし、2003年の
世界に冠たる国内総生産(GDP)と 軍事費、別として、軍事責任分担、軍隊移動能
力、外国援助も世界一。

 その米国が、NATO諸国、太平洋諸国、湾岸諸国から得た直接・間接の二国間支
援金は総額85億ドル(前年比14%アップ9)で、NATO諸国は合計24億8400万ドル
(ドイツ15億6400万ドル、イタリア3億6700万ドル、UK億3800万ドル)、太平洋
諸国は合計52億5500万ドル(日本44億1100万ドル、韓国8億4300万ドル、オース
トラリアがゼロ)、湾岸諸国は合計6億5800万ドル(クウェート2億5300万ドル、
アラブ首長国連邦2億1700万ドル、カタール8100万ドルなど)。

日本の支援は世界総額83億9700万ドルの半分近く、NATO全体の2倍以上、第二
位の韓国の約5倍に達する。軍人一人当たりで単純計算すると、NATO諸国(駐留
米軍11万人弱)の年間2万ドル強に対して、日本(駐留米軍4万2,000人)は5倍の
10万ドル強(現在のレートでおよそ9百万円)を提供していることになる。

同盟諸国の駐留経費〈直接・間接〉負担率はおよそ50%にのぼるが、2003年の
時点で日本の負担率は約75%で、サウジアラビアの約60%、NATOの約35%を大き
く引き離している。在日米軍の駐留自己負担経費は、わずか25%で済んでおり、
米本土に基地を建設・運営する(訓練移転費を含めて100%自己負担)よりはる
かに安くつく。これでは、日本から立ち去れない。

外務省国際情報局長やイラン大使をへて2009年まで防衛大学校教授を務め、『
日米同盟の正体 迷走する安全保障』という近著もある孫崎 亨氏も、今年6月5
日、東京・自治労会館での講演で、こう話している。

「なぜ米軍基地が沖縄や日本にあるのかと言うと、費用の75%を日本政府が出
してくれるからなのです。アメリカは、国内に基地を置けば自分でその経費をも
たなければならない、外国に置けば基地の使用料を払わなければならない。しか
し、日本にいたら75%は面倒見てくれる。これが米軍基地を日本におきたい、沖
縄におきたいという最大の理由であり、在日米軍基地のゆがみの原因だと思いま
す」

確かに、日本には集団安全保障体制に関する憲法上の制約があり、軍事・軍事
超大国米国と比較した軍事力や防衛費は少ないものの、NATO諸国や韓国など他の
米国同盟諸国と比べて極端に見劣りするわけではない。

ストックホルム世界平和研究所(SIPRI)が6月2日に発表した上記の「2010年度
版年鑑」は、日本が軍事超大の米国に世界最大の駐留経費を提供してまで在日米
軍に依存しなければ安全保障が保てないほどの軍事的脆弱国家でないことを示し
ている。「日米同盟」のもつ「抑止力」と同様、駐留経費負担の必然性にも大き
な疑問が残る。日本が駐留費の7割以上を負担して米軍のプレゼンスを確保しな
ければ、日本もアジア・太平洋地域も、ほんとうに危険な状況に陥るのだろうか。


◆負担免除分も税金でまかなう間接支援


駐留支援は予算に計上される直接支援金と、税金・料金・使用(レンタル)料
の免除など予算に計上されない間接支援からなる。日本の支援は国民の税金でま
かなう直接(32億3千万ドル)が大半だが、ドイツ、英国、イタリアを含むNATO1
8か国の支援はほぼすべて国有地の使用、基地の共有、港湾税の免除など、国民
にあまり負担をかけない間接(24億ドル)だ。

駐留経費について、日米地位協定の第24条(経費の負担)はこう定めている。
1 日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定する
ところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国
に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。
2 日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権
(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を
含む)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の
場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが
合意される。

すなわち、「すべての〈軍事〉施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港にお
ける施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域)は日本の負担で提供
するが、それ以外の「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」
は米国が負担する、というのである。日本の負担対象は基本的に上記の「間接支
援」、米側の負担対象は施設の建設・整備、維持・管理などを含む、と解される。

ところが、日本は無償で基地を提供し、有料道路の通行料や民間空港着陸料、
港湾施設の入港料・岸壁使用料は防衛省が肩代わりすることに加えて、日本人基
地従業員の給与・福祉費から広大なキャンプ・ズケラン(「アメリカ村」)の居
住施設やスポーツ施設、米軍住宅の修繕、基地の光熱費、日本本土での訓練移動
費まで負担する。いわゆる「思いやり予算」である。


◆米領グアムの基地整備費も負担


なお、国会が今年3月末に承認した2010年度の米軍駐留支援費(思いやり予算)
は駐留経費のおよそ70%、防衛費の25分の1に相当する1880億円(最大を記録
した1995年より840億円減、2009年より47億円減)。これには、日本政府が3万人
以上の地主と自治体に払う土地代は含まれていない。含まれるのは、日本人基地
労働者の給与と福利厚生費(279億円)、基地内の光熱水料(249億円)、基地施
設整備費(206億円)など。

これに加えて、日本は防衛費の中から、沖縄からグアムへ移転する海兵隊の施設
整備費として472億円、沖縄におけるその他の米軍再編事業費53億円、空母艦載
機の移駐事業費271億円などを提供する。地元の周辺対策費、施設の借料、漁業
補償、SACO(1996年に在沖米軍基地の条件付き大幅削減を決めた日米合意)関連
経費などを含めた2010年度の在日米軍関係経費の総額は4,686億ドルに達する。

日本以外の近年の米軍駐留費の数字が入手できないので比較はできないが、日
本が依然として米国にとって圧倒的に「思いやり」のある国であることに変わり
はないだろう。

なお、予算には明記されていないが、日本は、沖縄からグアムに移転する海兵
隊の施設整備工事費の名目で、グアムでの米軍の空軍基地と海軍基地の整備工事
も、費用を負担する。7月4日付けの新聞によれば、米国のゲーツ国防長官が日本
に海兵隊グアム移転経費の大幅な負担増を求めたそうであるが、これまでの経緯
からして、日本は足下を見透かされても仕方がない。これまで何度も書いたが、
米国領であるグアムでの米軍基地整備に国民の多額の税金が投入されるというの
に、主要メディアがその使われ方に目を向けないのは、なぜだろうか。


◆対米支援金は聖域? 


  軍事超大国・超覇権国家への軍事協力は「安全保障」の名において世界各地で
戦争を拡大・長期化する原因になって、悲惨の連鎖を生んでいないか。連合国占
領に続く米ソ冷戦の時代に、米国の圧力で始まった日本の駐留経費支援を、そろ
そろ根底から見直すべき時代が来ているのではないか。

多くの国民の関心を呼んだ「事業仕分け」。しかし、公共法人や独立法人の「
事業」「天下り」「外注」などを検証して政府出資金の無駄遣いにメスを入れる
のなら、なぜ米軍駐留経費を取り上げないのか。国内の財政事情が行き詰まり、
福祉対策や雇用対策がそれこそ貧困化し、多くの家庭は医療費や教育費にも困
り、健康問題や経済・生活問題などを理由に、平成11年以来、毎年3万を超える
人が自殺している(警察庁統計)。その一方で、財政難にあえぎながら、米軍駐
留経費を国内だけでなく米国領グアムにまで国民の税金を投入する異常さ!

「思いやり予算」を含む駐留経費負担こそ米国が日本での基地維持に固執し続
ける主要な、あるいは唯一の理由ではないかという指摘が増えている現在、政府
もメディアも、「思いやり予算」を「聖域」とせず、ぜひ「事業仕分け」の遡上
に乗せて欲しいものである。元外務省事務次官、元駐米大使の柳井俊二氏は、「
鳩山前首相らが主張した「常時駐留なき安保」は間違い。

戦争が起こってから「助けてくれ」という考え方だが、一度でも侵略されれば
日本は大変な被害を受けるとして、抑止力のため米軍の常時駐留は必要、と述べ
る(沖縄タイムス社・神奈川新聞社・長崎新聞社共同企画「安保改定50年(74回
目)」。

 しかし、在日米軍の「抑止力」の意味に大きな疑問符がついた今日、日本は国
民の「民意」に背いてまで米軍の常時駐留を遂行するのか、米軍駐留を支える地
位協定を継続するのか、在日米軍基地の「運営」を米国にまかせ続け、墜落事
故、騒音、環境汚染、殺人や強姦などを「災害」としてあきらめ、また憲法に反
して日本国内から遠くイラクやアフガニスタンへの戦争出撃を黙認し続けるのか。

 莫大な「駐留軍支援」を投じるのは、結果的にこうした「災害」や戦争行為を
支援していることにつながらないか。常時駐留を主張するのなら、せめて、米軍
に日本国憲法の順守を義務づけ、米軍を日本政府の管理下におく地位協定の改定
と駐留軍経費の「事業仕分け」をやらないと、日本は軍事優先国家・米国に従属
したまま、止むことのない米国の戦争の片棒を担ぎ続けることになる。

(筆者は在沖縄・元桜美林大学教授)

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