~迷走する在沖海兵隊グアム移転計画~

■ A Voice from Okinawa (24)       吉田 健正

  ~迷走する在沖海兵隊グアム移転計画~
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 日米間で2014年完了と合意されていた在沖米海隊(第三海兵遠征隊)のグアム
移転が迷走している。その結果、住宅、幼稚園や保育所、学校、病院、給油所な
どが密集する宜野湾市の中心に位置する普天間海兵隊基地の危険性は、このまま
続く可能性がある。


◆日米とも予算計上


   海兵隊移転に関連して、日本政府が真水(直接財政)資金として司令部・家
族住宅地区整備費や消防署建設事業費、アンダーセン空軍基地の基盤整備事業費、
港湾運用部隊司令部庁舎建設事業費、診療所建設事業費として平成21年度予算に
3億3600万ドル(353億円)、22年度予算に4億9780億ドル(479億円)、23年度
予算に(149億円)、23年度予算には他に370億円の住民用インフラ(下水道処理
場、新規井戸、水質浄化装置、送水管)整備費のための対米出資用に日本政策金
融公庫向けに370億円(米国は利用者から徴収した料金や家賃で返済する計画)
を計上しているにもかかわらずである。

 米国は、アンダーセン基地の整備、海軍基地埠頭の改修、アクセス道路の改修
などのために、2010年度予算に3億ドル(309億円)、2011年度予算に1.32億ド
ル(124億円)を計上し、2012年度予算案に空軍基地内の電気・水道整備、海兵
隊司令部・住宅地区の上下水道整備に1.81億ドル(161億円)を追加した。2010
年9月には、米海軍省が、環境評価に基づいて、グアム基地再編に関する最終決
定(Record of Decision)を下した。予算の消化も進んでおり、海兵隊司令部・家
族地区や埠頭の整備などはすでに入札が済んでいる。


◆県内移設・海兵隊移転は棚上げに


  ところが、今年6月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2
プラス2)では、普天間海兵隊航空基地を県内・辺野古にV字型滑走路を建設し
て移設することを確認した上、「2014年までに」と決めていた期限を「(2014年
より後の)できるだけ早い時期に」へと変更した。沖縄で辺野古移設に強い反対
があるだけでなく、米国では軍事費削減の必要から上院軍事委員会と同歳出委員
会が、2012年度海兵隊グアム移転予算1億5600万ドルの全額削減を可決した。辺
野古移設の進展が不透明なのと、米軍が検証可能なグアム基地建設費と工定表を
提出していないからだという。グアムでは、島東北沿岸における実弾射撃場建設
への先住民チャモロやグアム政府当局の反対も強い。
 
米軍は、2001年以来、グアムを中東の不安定な情勢、中国や北朝鮮などの脅威に
対する新たな軍事拠点(ハブ)と位置づけて空軍・海軍・海兵隊・陸軍統合基地
建設計画を進めてきたが、10年たった現在も実現のメドは立っていない。原子力
空母停泊地の整備、陸軍ミサイル部隊の配備計画、無人偵察機・無人爆撃機基地
としてのアンダーセン空軍基地の整備も、不透明のままだ。


◆米国では「非現実的」な計画を見直し


  今年5月、グアムと沖縄を視察した米上院軍事委員会のレビン委員長らは、日
米両政府の現行の普天間県内移設+在沖海兵隊グアム移転計画を「非現実的」
「実現不可能」として、普天間基地の嘉手納空軍基地への統合、嘉手納基地の飛
行訓練のグアムや日本本土への分散を軍事委員会やパネッタ中央情報局長官(7
月よりゲーツ国防長官の後任)に提案した。

 一方、日本政府からは、普天間基地の辺野古移設や海兵隊のグアム移転が「非
現実的」かどうかの声はない。普天間基地の危険性排除についての審議もない。
東日本大震災と原子炉事故に対処するための大規模な財政出動が必須であるにも
かかわらず、国会では対米軍「思いやり予算」の削減はおろか、辺野古移設予算
やグアム移転関連予算の是非を問う声も聞かれない。中央メディアは、相変わら
ず、これらの血税出費に対して調査報道を行う気配を見せない。

 迷走が続けば、今後どうなるのか。辺野古移設も、海兵隊のグアム移転も、普
天間基地の閉鎖・撤去も実現せず、米国の軍事政策のみが優先される。菅首相に
よれば、普天間基地の辺野古移設は普天間の固定化回避と沖縄の負担軽減に「現
実的な形でつながる道筋」であり、県民が求める「県外・国外移設」の可能性を
否定した(7月7日、参院予算委員会)。日本は県民(日本国民)の意思を無視して、
ご主人様の言いなりになるだけだ。


◆普天間基地は空母艦隊か米本土へ


  政治・経済の中心地・東京から遠く、沖縄戦で「皇土」を守るための「捨石」
とされて多大な犠牲を生んだ沖縄に、なぜ面積にして在日米軍基地の75%を押し
付けるのか。この際、日本政府は沖縄県民の意向を汲み取って、米国に危険性存
続および辺野古移設への「ノー」をつきつけらどうか。深刻な財政難を抱える米
国も、グアム統合基地化計画を再考したらどうだろう。

 「トモダチ作戦」が示したように、米軍は駆逐艦などを引き連れた空母に航空
要員を含む数千人の兵士、ミサイル、100機近い攻撃機や輸送機、その他の装備
や物資を積んで世界中を動き回り、紛争や自然災害に対応できる。普天間基地に
代わりうる洋上基地だ。あるいは、地元警備員への誤爆事件がプエルトリコから
の米軍撤退を招いたように、米国は住民の要求にしたがって、在沖米軍基地を閉
鎖して米本土に引き揚げるべきだろう。日本政府にその意志さえあれば、不可能
ではない。人口20万弱の米領グアムの経済活性化は、別の方法を考えたらよい。

             (筆者は沖縄在住・元桜美林大学教授)

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