2014年11月〜12月

マスコミ昨日今日(2014年11~12月)

                               大和田 三郎


 今月の主テーマは衆院選報道です。もう一つ2014年回顧ものの一つを従テーマとします。従テーマの方は、来月(2015年1月配信)の方が「本番」となるはずです。

■【第1のテーマ=疑問だらけの衆院総選挙報道】

1>.選挙結果を決めた(?)世論調査報道

◆各社一致した常磐情勢調査記事

 衆院選の公示は2日。その2日後、4日付朝刊各紙はそろって衆院総選挙の情勢調査結果だった。見出しは以下のとおりだった。

朝日=自民、300議席超す勢い 民主伸び悩み 維新不振 衆院選・朝日新聞社序盤情勢調査
読売=自公、300議席超す勢い…衆院選序盤情勢
毎日=衆院選:序盤調査 自民300議席超す勢い 民主70前後、維新減
日経=自民、300議席うかがう 衆院選序盤情勢 与党3分の2視野 民主伸び悩み、維新苦戦
産経=序盤情勢 自民300議席超の勢い 海江田・菅氏苦戦、民主70議席台も
北海道=衆院選、自民300議席超の勢い 全国序盤情勢、民主微増70前後か
東京・中日=自民 過半数から大幅増も 衆院選序盤情勢
西日本=自民300超、民主70前後か 衆院選序盤情勢

 ほとんど同じといってもいいほどだ。「自民300議席超」「民主70議席」「維新不振(あるいは苦戦)」といったキーワードが一致している。
 一見、各紙がそれぞれ独自調査をしているような印象だ。しかし記事内容を読んでみると、大部分の記事は共同通信の世論調査に基づいていることが分かる。自社で独自調査をやっているのは朝日だけだ。

 読売の記事は、独自調査のように見える。しかし各選挙区の情勢などを詳報した特集面(11〜17ページ)の中にある「調査の方法」を読むと、日経との共同調査であることがわかる。
<調査は日本経済新聞と協力して実施した。両社で基礎データのみ共有し、集計、分析、記事作製は両社が独自に行った。調査実施は日経リサーチに委託した>
と書いている。
 特集面の片隅であろうと、共同調査であることを明らかにした読売は、「良心的」と言えるかもしれない。

 日経のメーン記事(見出しは上記)の冒頭は、
<日本経済新聞社が衆院選の公示直後に実施した全国世論調査では>
となっている。誰が読んでも日経の独自調査という理解になる。読売との共同調査であることなど思い浮かばない。
 毎日記事の冒頭は
<共同通信社は第47回衆院選について2、3両日、全国の有権者約12万1700人を対象に電話世論調査を実施し、公示直後の序盤情勢を探った>
である。つまり共同配信の世論調査原稿をそのまま掲載したことが明々白々という扱い方になっている。

 これに対して産経記事の冒頭のセンテンスは、
<産経新聞社は3日、第47回衆院選(14日投開票)について、全国の総支局の取材に共同通信社の電話世論調査の結果などを加味して、選挙戦の序盤情勢を探った>
である。
 東京も冒頭、
<本紙は3日、第47回衆院選(14日投開票)について、共同通信社と本紙などが行った電話世論調査に、独自取材を加味して序盤情勢を分析した>
という文章を掲載している。
 両紙とも記事の内容はほとんど全部が共同通信配信のものである。「全国の総支局の取材や独自取材はどこにあるの?」と皮肉を言いたくなる。

 世論調査は、例外なく電話調査で、RDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式をとっている。調査対象は、コンピューターに無作為選択させた電話番号の持ち主となる。全国で10万人程度にのぼり、そのうち60%余が回答しているようだ。これだけ多数が対象となると、どの調査でも同じ結果になる。「自民300議席超」「民主70議席」「維新不振」といったキーワードが一致するのは当然のことである。

◆候補者名も知らずに回答?

 4日付朝刊に結果が掲載された世論調査は、2、3両日に実施された。2日が告示日だったから、調査対象者の中で、自分の選挙区の立候補者をしっかり認識している人の方が少数派だったはずだ。とくに選挙区選挙では、立候補者が○○党のA、××党のB、▽▽党のC、といったことがしっかりアタマの中に入っており、そのうち1人を選んで「投票する」と言い切れる調査対象は、ごく少数だったはずだ。それでも投票する候補者名とその所属政党を答えさせてしまう。電話で質問し、回答をメモする調査員たちは、その「押しつけ」作業をやらされていたはずだ。
 電話調査員は大半が学生アルバイト。実施主体の朝日新聞や共同通信の世論調査担当者、あるいは日経リサーチの社員が、候補者名も知らない調査対象者に対する対応法についてコーチしているはずだ。それに従って調査員が問い詰めても、なおしっかりした意思が出て来ない調査対象がいる。そういう人たちをどう処理するか? 調査員が、実施各社の担当者に問い合わせる場面もあったのではないか。

 「自民300議席超」「民主70議席」「維新不振」などのキーワードは、こうした過程も経て形成されたはずだ。調査員となった学生はともかく、新聞社などの世論調査担当者の世界には、共通の「空気」がある。その空気が反映して「自民300議席超」などのキーワードが形成されたと思われる。公示日やその翌日に世論調査を行うという「超拙速」日程を考慮するなら、これはけっして邪推ではないはずだ。

◆予言の自己成就というメカニズム

 それでも「自民300議席超」「民主70議席」などは、世論調査の結果として語られることになる。メディア社会の諸現象について「予言の自己成就(じょうじゅ)」というメカニズムが指摘されている。
 クリスチャン・ディオールやハナエ・モリらの超一流デザイナーが、来年春のファッションについて、「明るい色がもてはやされるはず。流行色はイエロー系統」などと「予言」することを想定すれば分かりやすい。その「予言」はたいてい当たる。デザイナーに未来予測の能力があったからではない。流行に敏感な人ほど、高名なデザイナーの「予言」どおりの服装で飾ろうとする。デザイナーが高名であるほど、人びとのファッション選びへの影響力は強い。だからこそ、デザイナー発言どおりの流行が実現するのである。
 選挙の場合、「世論調査の結果」という言葉には、「高名なデザイナーの予言」と同程度の「力」がある。各社の世論調査は、4日記事化された「序盤調査」だけではなかった。

 毎日は8日付朝刊、朝日は10日付朝刊にそれぞれ「中盤情勢」を、読売は11日付朝刊に「終盤情勢」を掲載した。
 1面記事の見出しは、以下のとおりだ。
読売=自民300議席うかがう、与党3分の2の勢い
朝日=自公3分の2超す勢い 民主70台、共産倍増も
毎日=与党3分の2超す勢い 自民堅調続く 民主伸び悩み 第三極振るわず
 内容的に同じだが、与党が3分の2を超える勢いというのは、言葉遣いまで一致していることに驚く。

 この時期の世論調査回答者は各紙が報じた序盤調査の記事に影響されている。予言の自己成就のメカニズムが作用して、結果は序盤調査と同じものになってしまうのである。こうして2回繰り返された世論調査結果という「予言」の自己成就のメカニズムは、さらに強固になるのである。
 予言の自己成就理論を確立したのは米国の社会学者ロバート・K・マートンの著書「社会理論と社会構造」(1949年、邦訳1961年みすず書房)である。米国の場合、「個の確立」が重視される文化があり、何ごとについても、個性的な「意見」を持つことが尊ばれるとされる。それでも「予言の自己成就」のメカニズムが成立しているのだ。

◆「「KY(空気が読めない)」が軽蔑される社会

 日本社会では、自分の考えをしっかり持っていることが評価されない。逆に自分の考えより所属集団の「仲間」に共通する「空気」に従うことこそ評価される。だからこそ「KY(空気が読めない)」が手ひどい軽蔑ないし非難の言葉となる。
 KYに連なる著作としては、山本七平著「『空気』の研究」(1077年4月文藝春秋、83年10月文春文庫)がよく知られている。しかしそれよりはるか以前に中根千枝著「タテ社会の人間関係」(67年2月、講談社現代新書)があったことを指摘しておきたい。日本の集団では、集団内部の人々で構成される「ウチ」と、外部の人々である「ソト」が峻別される。内側の人間だけが仲間であり、外部の人間は仲間ではない。仲間なら誰でも知っている基本的な情報を、ソトの人間には知らせない。それこそがウチとソトの峻別の第一歩(アルファ)であり、全て(オメガ)である、というのである。
 ウチでは、暗黙の了解事項が積み重なった「空気」が構成される。その空気が読める人々こそ評価される。逆に空気が読めない人は、ソトと同じだから、それだけでいじめの対象となったりするのである。
 こうした「思想と行動」のスタイルが「当然のこと」として積み重なる結果、多くの日本人は、空気を読み、その空気に沿った言動を展開するだけになってしまう。予言の自己成就のメカニズムは米国より一段と強力なものとなっている。
 こんな社会で、短い選挙期間に2回も世論調査結果を報道し、選挙結果をつくってしまっている新聞のあり方は、疑問とせざるをえない。どの新聞も、真剣に再検討すべきだろう。

2>.安倍政権のダーティーな勝利とマスコミの敗北

◆衆院選開票結果「与党圧勝」のウソ

 14日投開票が行われた衆院選は自公与党の「圧勝」「大勝」などと報じられた。14日夜は多くの人々がテレビの開票速報を見ながら過ごしたと思うが、NHKも民放各局も「圧勝」「大勝」などと言っていた。
 15日付朝刊各紙も同じことだった。1面トップ記事の見出しは
朝日=自公大勝、3分の2維持 安倍政権の基盤強固に 「アベノミクス」継続へ 衆院選
読売=自公圧勝325議席 3分の2上回る… 民主伸び悩み、維新苦戦 海江田代表落選 辞任へ
だった。

 獲得議席を解散時と比べると、自民党は追加公認1を加えても、マイナス2の291だった。公明党が同プラス4の35議席を獲得したから、自公併せてプラス2の326となった。
 毎日の1面トップ記事見出しは
<衆院選:自民横ばい、自公3分の2維持 民主は11増>
だった。これが正確であることは言うまでもない。
 その毎日も社説のタイトルは
<衆院選:「冷めた信任」を自覚せよ>
だった。
 冒頭部分を引用しよう。
<高揚感なき信任である。衆院選で自民党は絶対安定多数を確保し、与党で3分の2以上の議席を維持した。国会での1強構図は続き、安倍晋三首相は国政を担う新たな基盤を得た。
 追い風も逆風も感じられなかったが、結果はほぼ一方的だった。消費増税先送りを理由とした解散の大義には疑問がつきまとい、争点がつかみにくい選挙は異常な低投票率に沈んだ。それが厚い地盤を持つ組織型の政党に有利に働き、与党の議席を積み上げた。>
 投票率は史上最低だった前回の59.32%を大きく下回り、52.66%となった。その低投票率の下で、ともかくも安倍政権は信任されたと見て、「冷めた信任」というキーワードを考え出したのだろう。

 他紙の社説タイトルは
朝日=自公大勝で政権継続—分断を埋める「この道」に
読売=衆院選自公圧勝 重い信任を政策遂行に生かせ
などだった。
 毎日の言う「冷めた信任」が、朝日・読売では大勝、圧勝となっている。

◆政治の劣化がもたらしたウルトラ低投票率

 ここ数年、政治を語るさい「劣化」が、重要なキーワードとなっている。「政治の劣化」という言葉を、さまざまなデータベースを使って調べて見ると、1980年代まではほとんどなかった言葉だ。新聞記事などで、ときに出てくるがおおむね環境汚染がらみの問題で、日本の政治に限ったことではなく、世界各国に共通した現象として指摘されるのである。
 日本の問題としては「経済一流、政治三流」という言葉があった。「三流」という低レベル認識はあったが、「劣化」しているという動きは意識されていなかったのである。
 この「経済一流、政治三流」は、80年代に最もひんぴんと叫ばれていた。私たち政治部記者は、経済部記者の前では恥ずかしいような気分であった。しかし「一流」であったはずの80年代日本経済は、バブルに踊り狂っていただけなのだ。世の中が大きく間違っているときは、誰もその間違いに気付かない。じつは当事者たちが「誇るべきだ」と口を添えるような時こそ、大きな間違いをしでかしているものなのである。

 閑話休題(それはさておき)、毎日は異常な低投票率こそ今回衆院選での「有権者の選択」と考えるべきだった。政治劣化にあきれ果て、投票にも行かなかった有権者が過半数に達しそうになったという認識である。15日付朝刊1面の大見出しは「劣化する政治に厳しい審判 投票率半数割れの危機」とするのが正しい報道だったはずだ。

◆テレビ報道を禁圧した安倍政権

 この低投票率は安倍政権がつくったのだからあきれる。安倍首相は11月18日「3日後の21日、衆院を解散する」と宣言した。その日夜、TBS系「NEWS23」に出演した首相は、局側が流した市民の声について、「おかしい」と声を荒げた。「アベノミクスの恩恵は感じてない」などの声だったが、「暮らしが良くなったなどの声もあったはず。偏った選択だ」とクレームを付けたのだ。
 2日後の20日、自民党は在京の民放キー局5社に対して、選挙報道で公平中立、公正を期すよう文書で求めた。萩生田光一・筆頭副幹事長らの署名付きで、出演者の発言回数と時間▼ゲストの選定▼テーマについて特定政党への意見の集中がないように▼街頭インタビューや資料映像の使い方、の4点を挙げて、偏った選択をしないよう求めた。

 この2つの行動によって、民放テレビのワイドショー番組は、衆院選をテーマとすることを避けるようになった。朝日10日付朝刊社会面に<衆院選テレビ放送激減 視聴率見込めず・「公平」要請で慎重>という見出しの記事が載っている。冒頭部分は以下の文章だ。
<衆院選を取り上げるテレビ番組が激減し、解散から1週間の放送時間でみると、前回の2012年と比べ約3分の1になっていることが分かった。高視聴率が見込めないことが大きな理由だが、自民党がテレビ各局に文書で「公平」な報道を求めたことで、放送に慎重になっている面もある。「テレポリティクス」(テレビ政治)に異変が起きているようだ。>

 期間中唯一の日曜だった7日、NHK総合は午前9時から「衆院選特集 9党の幹部が徹底討論」を放送した。谷垣禎一自民党幹事長は締めくくりで「風が吹かなかったのが、今回衆院選の特徴」と語った。09年8月衆院選では、「政権交代」を求める、自民党にとっての逆風が、そして12年12月衆院選では、民主党政権の終焉(えん)を求める、自民党にとっての追い風が吹いた。しかし今回は、風が吹かなかった……という主旨だった。
 表情・口調とも満足げで、「作戦成功」と誇っているように見えた。「風」は民放テレビが吹かせる。民放の「偏った」選挙番組を封じておいたのだから、風が吹くはずはない、というわけだったのだろう。自民党公認の選挙区候補は公明党推薦となっている。公明党票は固いから、投票率が低いほど比率が高まるといわれている。低投票率は自公と共産に有利で、浮動票に頼る民主、維新などには不利なのだ。

 テレビ局相手に「報道するな」と言わんばかりの安倍政権の強腰が新聞にも影響。「微増」を「圧勝」「大勝」などと虚報して政権にゴマをすったのではないか? 「朝日の敗北」から「マスコミ全体の政権ゴマすり」に発展したのでは困る。

◆年内選挙決断は8月段階?

 今回の解散・総選挙について、安倍首相が衝動的に断行したかのような報道も目立った。それはまったくの間違いでしかない。安倍晋三首相は今年8月12日から14日まで、山口県の下関、防府両市などに「里帰り」していた。月遅れお盆だとはいえ、首相の里帰りは例外的な行動だ。その里帰りでどういう行動を展開していたのか? 1日丸ごと地元で過ごした13日の行動を朝日の首相動静で見てみよう。以下、朝日8月14日付朝刊政治面に掲載された動静記事だ。

<首相動静 13日
 安倍首相
 【午前】9時10分、山口県下関市の故小浜俊昭元同市議会議長宅や支援者宅などを訪問。弔問。11時44分、同市の長府商店街。地元住民と記念撮影。57分、同市のお好み焼き店「ひら田」。秘書官らと食事。

 【午後】0時27分、長府商店街を練り歩き。44分、同市の「蛍遊苑 長府製作所記念館」。長府製作所の川上康男会長、橋本和洋社長出迎え。見学。1時12分、報道各社のインタビュー。50分、同市の支援者宅などを訪問。弔問。2時58分、同市の住吉神社を参拝。支援者らと記念撮影。3時30分、同市の支援者宅。弔問。49分、同市の後援会幹部宅。4時22分、同市の故伊藤博元同県議会議員宅。弔問。46分、同市の後援会関係者宅、支援者宅を弔問。5時52分、同市の自宅。6時45分、同市の「やまぎん史料館」。福田浩一山口銀行頭取出迎え。昭恵夫人とともに見学。7時11分、同市の関門海峡花火大会会場。あいさつ。昭恵夫人とともに観賞。8時20分、同市のレストラン「ワイン食堂NARROW」。来店客と記念撮影。40分、同市の焼き肉店「アリラン」。昭恵夫人、友人らと食事。10時、自宅。>

 支援者・支持者と記念撮影したり、訪問・弔問したりで、選挙の事前運動と考えてもおかしくない。しかも正午過ぎには「長府商店街を練り歩き」までやっているのだ。この「里帰り」の時点で安倍首相は、年内解散・総選挙の意思を固めていたというのが私見である。
 9月の内閣改造・自民党役員人事のさい、石破茂氏を閣内に取り込んだ後任幹事長には小渕優子氏を起用するのが首相の構想で、「最後までこだわっていた」という記事もあった。40歳(衆院選投票日には41歳)の女性で、元TBS社員。遊説で人気を呼ぶには絶好のキャラクターだった。結果的には小渕氏が固辞し、経産相という有力閣僚での処遇となった。
 この人事構想からみても、首相の12月衆院選構想は、念入りに練りに練ったものであったはずだ。テレビが風を吹かせるのを防止し、低投票率に押さえ込むと勝てるという計算もあった。結果はまさに計算どおりの「勝利」だった。

◆改憲でも同じ敗北?

 私が新聞社の政治部勤務となったのは1980年5月。以後政治を見続けているつもりだが、現職首相が選挙区に里帰りし、商店街を「練り歩き」したなど、聞いたことがない。こんな行動をとるのは安倍首相自身が「近いうちに解散・総選挙」と考えていたからに違いない。
 この異例の「事前運動」について、マスコミ報道は皆無だった。「大勝で政権奪還を果たした12年12月衆院選から2年しか経過していないのに、解散・総選挙はあり得ない」という余談・油断こそ、マスコミの敗北の根底にあったものではないか。
 周到な準備の下で、投票率押し下げというダーティーな手段まで使って与党議席3分の2超を維持した安倍首相は、「憲法改正」という偉業を達成するため、来年早々から動き出すのではないか? こうした「意欲的姿勢」についても、「無理だ」という予断の下で油断しているのでは、マスコミは今回衆院選の全経過と同様の手痛い敗北を繰り返すことになる。

■【第2のテーマ=謝罪会見ワースト10と今年の漢字】

 年末だから、新聞記事やテレビニュースに「回顧もの」が増える。「こんなのもあるのか?」と驚いたのが「謝罪会見のワースト10」だ。
 広報対応の専門誌「広報会議」を発行する出版社の宣伝会議が4日発表したのだという。ネット上で500人を対象にアンケートを実施。ワースト10を決めたという。
 ワースト謝罪会見のランキングは以下のとおりとなった。カッコ内の数字は、その項目を選んだ人の比率(1人何項目でも選択できる)。
    ×    ×    ×

1位 理化学研究所の小保方晴子氏のSTAP細胞問題(67.4%)
2位 前兵庫県議の野々村竜太郎氏の政務活動費問題(47.6%)
3位 佐村河内守氏のゴーストライター問題(36.6%)
4位 日本マクドナルドの期限切れ鶏肉使用問題(35.0%)
5位 ベネッセコーポレーションの顧客情報流出問題(31.8%)
6位 朝日新聞の吉田調書、慰安婦記事取り消し問題(25.6%)
7位 東京都議のセクハラやじ問題(12.2%)
8位 牛丼チェーンすき家の過重労働問題(12.0%)
9位 アクリフーズ(現マルハニチロ)の元契約社員による冷凍食品農薬混入問題(11.0%)

10位 たかの友梨ビューティクリニックのパワハラ問題(4.8%)
    ×    ×    ×
 こんなことに気づいたのは毎日の記事検索をやっていたとき。何かのキーワードで検索していたのだが12月5日夕刊のこの記事が引っかかってきたわけだ。宣伝会議のホームページにアクセスして、毎年やっているのかどうかを探ったのだが、よく分からなかった。いずれにせよ10傑を見ると、「謝罪」を迫られるような事態にこと欠かなかった1年だったことが分かる。

 12日は、「今年の漢字」が京都・清水寺で発表された。こちらの方は「税」だった。日本漢字能力検定協会(京都市)が集めた、はがきやインターネットによる応募総数は16万7613票というから、もはや国民的行事なのかもしれない。
 今年の10傑と、1995年にスタートして以来、20年のトップ一覧表を付しておこう。
    ×    ×    ×

1位「税」(ゼイ・セイ/みつぎ)8,679票(5.18%)
2位「熱」(ネツ/あつい・ほてる・いきる・ほとぼり)6,007票(3.58%)
3位「嘘」(キョ/ふく・はく・うそ)5,979票(3.57%)
4位「災」(サイ/わざわい)5,830票(3.48%)
5位「雪」(セツ/ゆき・すすぐ・そそぐ)5,474票(3.27%)
6位「泣」(キュウ/なく)3,050票(1.82%)
7位「噴」(フン・ホン/ふく・はく)2,984票(1.78%)
8位「増」(ゾウ・ソウ/ます・ふえる・ふやす)2,689票(1.60%)
9位「偽」(ギ/いつわる・にせ)2,543票(1.52%)

10位「妖」(ヨウ/あやしい・なまめかしい・わざわい)2,327票(1.39%)
    ×    ×    ×

◆過去の「今年の漢字」と選定理由

◇1995年「震」
 阪神・淡路大震災や、オウム真理教事件、金融機関の崩壊などに「震えた」年。
◇1996年「食」
 O-157食中毒事件や狂牛病の発生、税金と福祉を「食いもの」にした汚職事件の多発。
◇1997年「倒」
 金融機関など経営破たんの続出や、サッカー日本代表が並み居る強豪を倒してFIFAワールドカップ初出場決定。
◇1998年「毒」
 和歌山のカレー毒物混入事件や猛毒ダイオキシン、環境ホルモンなどが社会問題に。
◇1999年「末」
 世紀末。東海村の臨界事故や警察の不祥事など信じられない事件が続出して、「世も末」と実感。
◇2000年「金」
 シドニーオリンピックでの日本人選手の金メダル獲得や、南北朝鮮統一の実現に向けた“金・金”首脳会談など。

◇2001年「戦」
 米国同時多発テロ事件で世界情勢が一変し、対テロ戦争、炭そ菌との戦い、世界的な不況との戦いなど。
◇2002年「帰」
 日本経済がバブル前の水準に「帰り」、昔の歌がリバイバルされ大ヒット。北朝鮮に拉致された5人が24年ぶりに帰国。
◇2003年「虎」
 阪神タイガース18年ぶりのリーグ優勝、「虎の尾を踏む」ようなイラク派遣問題など。
◇2004年「災」
 台風や地震などの記録的な天災や、イラクでの人質殺害や子どもの殺人事件など、人災が多発。
◇2005年「愛」
 紀宮様のご成婚、「愛・地球博」の開催、各界で「アイちゃん」の愛称の女性が大活躍。残忍な少年犯罪など愛の足りない事件が多発したこと。

◇2006年「命」
 悠仁様のご誕生に日本中が祝福ムードに包まれた一方、いじめによる子どもの自殺、虐待、飲酒運転事故など、痛ましい事件が多発。ひとつしかない「命」の大切さを痛感した年。
◇2007年「偽」
 身近な食品から政界、スポーツ選手にまで次々と「偽」が発覚して、何を信じたら良いのか、わからなくなった。
◇2008年「変」
 日米の政界に起こった変化や世界的な金融情勢の変動、食の安全性に対する意識の変化、物価の上昇による生活の変化、世界的規模の気候異変など様々な変化を感じた年。
◇2009年「新」
 政権が交代し新内閣が発足、アメリカでも新大統領が就任、スポーツ界ではイチロー選手とボルト選手の新記録、裁判員制度やエコポイント制度などの新しい制度も始まった。
◇2010年「暑」
 猛暑日の連続で熱中症にかかる人が続出、地球温暖化を実感。チリ鉱山事故による暑い地中からの作業員生還や、大気圏突入時の猛烈な暑さに耐えた「はやぶさ」の帰還に未来への希望を得た年。
◇2011年「絆」
 東日本大震災など大規模災害の体験から、身近な人との「絆」の大切さを再確認した年。ソーシャルメディアを通じて新たな人との「絆」が生まれ、なでしこジャパンチームの「絆」には日本中が勇気付けられた。
◇2012年「金」
 金環日食や金星観測など天文現象の当たり年、ロンドンオリンピックでは日本史上最多のメダル獲得、ノーベル賞の受賞など数多くの金字塔が打ち立てられた年。
◇2013年「輪」
 2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催、富士山の世界文化遺産登録が決まり、日本中が「輪」になって歓喜にわいた。また自然災害で多くの支援の「輪」が広がった。
◇2014年「税」
 4月1日の消費「税」の増「税」を前に、日常生活に欠かせない消費財の買いだめや高額商品の駆け込み消費が増加。生活者の金銭感覚が一層シビアになり、「税」について考えさせられた年。「税」に関わる話題が政財界で多く取り沙汰された1年。
 (日本漢字能力検定協会ホームページから)

注)12月15日までの報道・論評を対象にしております。一部敬称略。引用は、<>で囲むのを原則としております。
        (筆者は元大手新聞社・政治部デスク・匿名)


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