■NPO紹介

特定非営利活動法人 ロシア学生奨学日本基金

            代表理事 横須賀壽子
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ロシア学生奨学日本基金(当初は旧ソ連学生奨学援助日本基金)の支援活動は、 1992年9月から始まりました。  ソ連の体制が91年に崩壊し、その混乱の中で日本の婦人団体に呼びかけて救援物資 をロシアの婦人団体に運びながら、新しい国づくりのためにはどんな協力の方法があ るのだろうかと考えました。

 私たちの国が先の第二次大戦で戦争に負けた時、当時のソ連は日本の子どもたちの ために小児麻痺ワクチンを贈って子どもたちを助けてくれました。戦争を体験した私 たちにとって世界の平和を築くために、何よりも大切なことは相互理解と友好の具体 的な積み上げをすることだと思いました。新しい国づくりのために必要なことは、何 よりも若い人たちの力、能力のある若い人たちの教育だと思います。特に生活にハン ディをもつ学生を励ましたい、日本から優しい心を伝えたいと思い取り組んだのが奨 学支援です。

 当時、私たちが対象とする学生をどのようにして探し出したらいいのか、どのよう にして奨学金を届けるのか、金額はいくらにしたらいいのか、一つ一つが大きな問題 でした。幸い救援物資の支援で協力した女性団体が両親のいない女子学生に奨学支援 の取り組みを計画していたことを知り、その団体を担当していた方の心のこもった誠 実な協力を得て、10年余り支援を続けることができました。  そして、特定非営利活動法人化(NPO法人)を機会にモスクワに日本基金協力委 員会を設け支援を続けることに致しました。

 これまで卒業した学生は300人おります。その中には第10回チャイコフスキー国際 コンクールでグランプリを取ったヒブラ・ゲルズマーワさんをはじめ音楽の分野で、 また医者として、教師として、ジャーナリスト、技術者などの分野で社会人として活 動中の人たちがいます。今年は日本語学部を卒業した学生が日本の商社(東京)に就 職でき、私たちの日本基金事務局の協力もしてくれています。  ロシア奨学日本基金の運営は、私たちの呼びかけや新聞などで支援の主旨に賛同し た会員の会費によって運営されています。その会費で奨学金と事務費の実費を賄い、 その他すべてボランティアで運営しています。学生からは本人の領収書を受け取って います。

 会員の皆さんには、私たちのささやかな支援が、実際に学生に役立っているのか、 現地の学生がどんな生活をしているのかを、学生自身や現地で学生に接している協力 者からの手紙などを紹介するかたちで、年2~3回の会報“地球人”でお知らせしてお ります。  私たちは、この10年余りの支援を通して会員のご協力に支えられて取り組んでこら れたことを感謝しております。奨学生たちがアルバイトをしながら良い成績で卒業し ていることを知るだけでなく、ささやかな支援が同じ運命の友を知る機会を提供し、 地球人としての連帯と友好のパスポートになっていること、奨学生が自分の子どもた ちに日本基金からの奨学金について伝えていきたいと言ってくれていること、また市 や州の行政からも注目され権威ある奨学金になっていることを知りました。  私たちは隣国ロシアやベラルーシやウクライナなどの学生も支援していますが、こ の輪を広げていきたいと思っております。

 今年、「基金」設立12年を迎えたことを機に、「地球人=市民」の立場から社会的 ・公共的な活動の輪を内外に幾重にも広げていくために特定非営利活動法人(NP O)の認証を取得しました。これまで以上に広く日本の人々に支援を訴え、サポート 体制の充実を図り財政基盤を確立していきます。そして学生たちを通じて学校や地域 の人々に、日本のことを伝え相互理解を深め平和の絆となる活動にしたいと考えてお ります。今後とも、会員の皆様をはじめ趣旨に賛同をいただける方々にそれぞれの立 場・条件に応じてご協力・ご支援をお願い申し上げます。              2004年 3月

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□特定非営利活動法人 ロシア学生奨学日本基金
───────────────────────────── 特定非営利活動法人 
ロシア学生奨学日本基金 代表理事 横須賀壽子 
                      専務理事 笠見  猛  
<連絡先>
東京都清瀬市中清戸一丁目607番地 横須賀 壽子(代表理事) TEL:0424-92-0521、 FAX:0424-95-3331
<会費>
個人:10,000円(1口以上)、団体:50,000円(1口以上)
<振込先>
郵便振替     口座番号 00120-1-606624

ロシア学生奨学日本基金 代表理事・横須賀壽子さんより>>

 「何も事務所を持たなくても、自宅を事務所にして取り組めばよいのだよ」と、私 の肩を押してくれた友人に励まされ、友人、知人に手紙を出したのが、この支援の始まりでした。

 こんなこともありました。当初人を介して、月100万出す人がいるので役員にしたらという話しがあり、それがロシアの若い女性を使って六本木で店を持っているオーナーだったり、テレビの タレントが協力したいと言っているといわれて会ったら、有名人を役員にそろえるか ら理事長になれないかと言う話しだったりしました。そうかと思うと、新聞で知った のか、ロシアの学生なんか支援するなという電話が何回かきました。 基金は、里親制度で支援するのでなく、会費で運営する方法をとりました。ソ連時 代に友好の運動にかかわった経験をもつ私は、草の根の人々と心と心をつなぐ地道な 活動をつみあげていく事が、友好の基礎になるので、この取り組みをその一つとして とり組みたいと考えました。幸いモスクワの責任者になってくれたロシア人の 友人は、私と同じ気持ちで各地に協力者を探して、奨学金を手渡しするだけで なく、学生の相談相手になり、学生の情報を聞く努力をしてくれました。

   時には、悲しい出来事もありました。病気や事故で亡くなった奨学生にたいして、 その地域の奨学生が家族に代わって弔い、まだ渡さなかった奨学金がその費用に使わ れたということを知ると、私たちができたことは、家族に代わるよい友との出会い 作ってあげられた事だったかと心が悼みます。  最後に学生からの手紙をご紹介します。  心からの感謝をこめてこの手紙を書いています。日本奨学基金のおかげで、私は高 等教育を受けることができ、優等の卒業証書を授与されました。今日、私は人生にお ける新しい1ページを開くにあたり、恐怖は感じておりません。頑張って生きていれ ば助けてくれ、支えてくれる素晴らしい人々がいるということを知っているからで す。私たちの運命に同情し、世界に善を増やしている皆様に心からの感謝とご健康を お祈りいたします。(ブリャンスク)

   私は大学を卒業してから、小さな村の学校の教師をしています。学生のとき私たち を訪ねてくれた横須賀さんのこと、日本基金のことを生徒たちによく話します。です から日本基金のことは知られています。生徒は私が日本基金の奨学生だったことを誇 りに思っており、彼らにとっては、私のようなロシアの学生に支援する日本人につい ての話しはおとぎ話みたいに受け取っています。

   日本奨学金との出会いは私の運命を改善しました。私はおどおどした女の子から、 自信のある女性になりました。そして各地の奨学生と友人になりました。奨学金の 入ったグリーンの封筒には「頑張ってください」というような人間の心の温かさが 入っていました。これは本当の支援でした.私はこのことを忘れません。息子にも話 してやります。皆さんによろしく伝えてください。(リャザン)