【コラム】大原雄の『流儀』
★★★ トランプという「保安官」国家
この国では、いまだにアメリカの時代劇、つまり西部劇のことだが、「時代劇」の保安官のように銃が、権力? 権利? を持っているのか。21世紀になっても、この国は?
合法化された暴力が権力と呼ばれ、権力が権利を侵害する。銃が、最後の審判なのか。そういう意識が、若い年齢層にも受け入れられている、という国。アメリカ。
「アメリカペンシルベニア州バトラーで(7月13日、)トランプ前アメリカ大統領が野外での演説中に銃撃され右耳を負傷した。現場は、「バトラーファームショー」という、農業関連の品評会などが開かれるイベント会場。容疑者は演説会場の、すぐ外側に隣接する企業の屋上から狙撃した。容疑者は直ちに射殺され、連邦捜査局(FBI)は、暗殺未遂事件として捜査を開始した。あわせて、銃撃者の口も押さえ込んだ。大統領選への立候補予定者を暴力で抹殺しようとする事件が起きたことに、アメリカ社会で激しい衝撃が広がっている」(朝日新聞7月15日付朝刊記事など参照、一部引用」)。だが、私にとってトランプ氏の暗殺未遂事件の衝撃は、ほとんどない。トランプ氏は、いつかはこのような事態に直面するだろうと覚悟していた。朝日の記事だって、全然緊張感も、高揚感も、なにも、ない。なぜか、それはこの原稿が、取材初期段階ゆえ、リアルな原稿ではないからだろう、と思う。本記部分は、以前に書かれた記事(いわゆる予定原稿、下書き原稿)だからでは無いのか。トランプ氏の経歴部分などをメモにした想定原稿。今も準備しているのか知らないが、訃報原稿の予定原稿。かっては「死亡予定原稿」という、そのものずばりの名で、新聞社やテレビ局の未使用の原稿を書き溜めた保管用の原稿入れがあった、ものだと記憶する。私も若い頃には、デスクに言われて資料室に立てこもって、死亡予定原稿をその時点での新しい内容を付加し書き溜めたものだ。原稿の当人が知らないまま、私たちの社会では、先輩が書き、後輩に書き継ぎ、書き継ぎしながら、長生きした証拠のように新しい経歴や情報が書き加えられ、若い日の経歴の断片が差し替えられる。いまでは、この種の原稿は、コンピューター管理されていることだろうが、年齢、場所や現場状況などを空欄にしたままの原稿簿は、報道現場のコンピューターの中で、普段は眠っているのでは無いか。トランプ氏のアメリカは、「激しい党派対立に引き裂かれて来たアメリカ社会に、新たな深い傷痕を残すことは間違いない」と、トランプ氏の登場するアメリカ社会の現実を記者たちは書いていたりする。
画像に記録されていた発砲音は、私の耳には、おもちゃのような音に聞こえた。
「乾いた音が立て続けに響いた。『パン!パン』。会場の様子を中継していた動画では約2秒間で5回ほど、発砲音が聞こえる。13日午後6時11分ごろ。」だったという。
トランプ氏が演説を始めて、数分後のことだった、という。
テレビなどの動画を観ていたか、後で歴史的な場面を観たことがある人たちは、憶えているだろうが、トランプ氏は右頬を痛みを感じたのだろう、右頬に右手をやり、その手が赤く濡れているのを確認した後、一旦、現場の演壇の後ろに崩れるように落ちた。それに気付いたシークレットサービス(USSS・大統領警護隊)の隊員たちが、トランプ氏の上に次々と覆い被さって行った。離れた場所にいた警護官も慌てたように駆けつけてきた。会場では、「伏せろ!」という誰かの声が響き、「発砲音がさらに数回続いた」という。この辺りのトランプ氏の挙動は、多くの証言と重なっている。会場の演壇は、周りを支持者の客席で囲まれている。
その後、現場が穏やかになったのが私の目にも見えてくると、トランプ氏は警護官に囲まれて出来上がった輪の中で、脱げていた靴を履き直して立ち上がると、トランプ氏を支えて移動しようとするスタッフを「待て待て」と制止し、会場の支持者たちに拳を突き出して、支持者たちを鼓舞する声を出して、格好をして見せた。会場からUSAコールが鳴り響くと、トランプ氏は、警護官と共に声を出し、誰か支持者が「流れ弾」にあたったかもしれないとか、支持者を気遣う所作や表情も感じさせずに、拳を作った右手をさらに高々とまっすぐ上に突き出した。自己主張の強い性格丸出しであり、判りやすい人物だと再確認した。
「会場では3人の死傷者が出た」という。観客席にいた男性が、後ろから頭を撃たれて倒れた」という(新聞、テレビ、インターネットなどの発した情報や動画が国際社会を流れ回ったことだろう。亡くなったのは50歳の元消防士。この地区では、典型的なトランプ支持者なのだろう。
頭を撃たれた男性は、「狙撃者とトランプ氏の間の場所にいたとみられる」と、メディアは報じた」。それは、そうだろう。流れ弾で頭を撃たれた支持者は、口が利けない。亡くなってしまったのだから。
トランプ氏は、その後、SNSにこう投稿したという。
「銃弾で撃たれ、右耳の上部を貫通した。ビューと風を切る音が聞こえ、すぐに銃弾が皮膚を裂くのを感じた」と、証言している、という。新聞に載った写真を見ると、トランプ氏の右耳の付け根から唇にかけて赤い線状の傷跡と思われる直線が右頬にはっきりとついている。銃弾は、どういう動きをしたのか不詳だが、赤い傷跡は、アルファベッドのU(ユー)の字のように見える。銃弾は、左右に何センチか何ミリか、ぶれていたら、トランプ氏は、もっと深刻な傷を受けたかもしれないし、なかったかもしれない。いやいや、もっと致命的な傷となり、最悪の場合、命を落としていたかもしれない。大統領選挙の戦術として、トランプ氏の自作自演という説が、現場でも囁かれていたとメディアは、報じていた。本当ならば確かに大見出しを呼ぶ。ジャーナリストが「魅了」され、かつ、警戒する表現ではあるが、余りにも不自然極まる、でき過ぎた表現であるがゆえに、これが小説ならば、ストーリーを作り過ぎると早々と予選落ちの憂き目を見ることだろう。自作自演は、リアルじゃないからだ。
★★ 暗殺未遂事件の「陰謀論」
もう一つの「陰謀論」。観念論的発想の、陰謀論とでも言おうか。結果的に、利益を得た者が犯人という説。確かにトランプ氏は、大統領選挙戦において、この未遂事件の段階では、「有利」になったかもしれないが、本当にそうだろうか。その後の展開を見ると、一概に「そうだ」とは、言いにくいのではないか。銃で撃たれてトランプ氏が、悲劇の主人公になったのは短かったかもしれない。もう1人の大統領選挙現職候補者・バイデン氏を「撤退」表明に追い込んだ辺りまでは、「有利」だったかもしれないが、バイデン氏が若い、女性の現職副大統領、カマラ•ハリス氏を民主党の後任大統領選挙候補者とし、全面的に支持すると表明した辺りで、「今こそ、団結して、トランプを打ちまかそう」というムードが一気に強まったように見える。初の女性大統領になる可能性は、トランプ氏でも真似はできないからだ。
演壇から去る際、トランプ氏は、支持者のコールに加わり、拳をつくった右手を天高く突き上げていた辺りは、トランプ氏の絶頂感も最高潮だったのでは無いか。
★★まだ残る! 違和感の強さ
繰り返す。にもかかわらず、なぜか、私にはこの場面にも違和感がある。自然じゃない。
何か「でき過ぎていないか?」。トランプ氏の所作も、歌舞伎役者の、花道の引っ込みのように様式美さえ感じられる。トランプ襲撃事件が醸し出す違和感。そこで、私はインターネットを利用して、カメラマンの目撃記事を探してみた。
一枚の写真がメディアを飾った。AP通信から配信された。エバン・ブッチ氏の報道写真という作品だ。青空には星条旗が水平に風に泳ぎ翻っている。抜けるような青空だ。アメリカ国旗の下には、サングラスをかけた中年の警護官がトランプの左手を抱えるようにして支えている。天空へすくっと伸ばされたトランプ氏の右手の下でトランプ氏を抱き止めているのは、女性の警護官であろう。その背後には、やや若い感じの警護官がトランプ氏に張り付いているように見える。その背後を守るように、姿がほとんど見えない位置にかくれるようにしながら、誰かが星条旗を掲げているのである。一瞬の場面のはずなのに、誰かが仕掛けた歌舞伎の舞台のような大見得の場面に成り切って見えるから不思議だ。また、男も、女も黒ずくめのスーツ姿に白いワイシャツで身を固めているはずの、シークレット・サービスの面々は、煌びやかな衣装姿で飾っているように見えてくるから、不思議だ。とにかく、自然じゃない、という印象を拭い去れないのだ。特に、星条旗は、存在感が強すぎないか。
星条旗は、いつからこの場面に映り込んでいるのか?
演壇近くのトランプ氏を取り巻く映像をチェックしてみて、驚いた。
トランプ氏が、襲撃される前の客席後方には、星条旗が見つからないように見える。青空に浮かび、決定的な印象を残した星条旗は、なぜ、ここにあるのか。
★ ★ トランプ歌舞伎、「暫」という演目か?
歌舞伎の演目に「暫(しばらく)」というのがある。江戸時代、元禄10年正月(旧正月)江戸中村座、主役の鎌倉権五郎景政が、花道奥の向こう揚げ幕の内側にいて、観客に姿を見せる前から、「しばらく」「しばらく」と、科白を言い始めるので、この外題(タイトル)が、つけられた。「暫」とは、「ちょっと、待って」という意味か。
上総と常陸の国境。
鹿島神社の社頭が、場面となる。権力争い。新たに権力の座に就こうとする側が、邪魔になる。いつものパターン。紋切り型な内容こそ、人気演目になる、というわけだ。権力者に近づくことを阻害される。権五郎は、弁舌と武力を武器に権力者に抗う。その場面を深掘りするとそういう実像が見えてくる。その、象徴的な場面。その、一瞬静止した場面で、私はトランプ氏と権五郎をダブルイメージしたというわけだ。荒事の歌舞伎の名作。アメリカ政治史の事件現場の場面の類似、という発想が突然私の脳裏に湧き上がってきたから不思議なのだ。
一方的に有利な状況が、そこにあるが、あまりにもくっきりと残されていすぎるのではないのか。ジャーナリストは、多角的にいろいろな角度から、ニュースというかたまりを見る癖がついている。アメリカでは政治活動を銃という暴力装置で押さえつけようとしてはいないのか。ライフル銃で公人候補を殺害しようとする行為は、何よりも許されない。正義は、皆トランプ氏に理があるだろうことを示している。孤独なテロリスト青年。権力側も簡単に容疑者を殺してしまうが、真実の解明に齟齬をきたすようなこともアメリカでは、多いのではないか。青年も権力に殺されたことには間違いないのではないか。
もう1人のカメラマンに登場してもらおうか。ダグ・ミルズ氏。40年以上も歴代のアメリカ大統領に関わる報道に携わってきたという。ミルズ氏は演壇の周囲を歩きさまざまなアングルからトランプ氏の姿をチェックした。そして、トランプ氏が立つ演壇のすぐ真下に陣取ったという。上を見上げた。その瞬間、銃声が聞こえた。トランプ氏に銃弾が命中した。
その後、編集者に聞かれて驚いた。「何か、別のものが写っている、というのだ。
「信じられないけれど」と、彼は言った。
「頭の後ろの銃弾を捉えた写真がある」。「シャッタースピードが高速だったので、銃弾が写っている」と、編集者は、真面目な表情で言い続ける。
★★ 星条旗の「陰謀論」
朝日新聞の記事だけでなく、インターネットのメディでも取り上げているのが、ドラクロワが描いたフランスの7月革命(1830年)をテーマにした「民衆を導く自由の女神」。勇ましく先頭を前進する女神と群衆だ。1945年、ローゼンタール氏が撮影した「硫黄島の星条旗」という一枚の写真。広い空に斜めに星条旗を立て、6人のアメリカ兵が星条旗の下で団結するポーズを取っている。そして、今回のトランプ氏をサポートするシークレットサービスのスタッフとの集合写真。映像作家の小原真史さんは、朝日新聞文化面(7月22日付朝刊記事参照)で、こう分析している。
「堂々と演壇降りる必要があった」トランプ氏は、「死を逃れた後で脱げた靴を履き直し」た。その上で、「警護隊を制止し、何度も高々と拳を上げた。ピンチをチャンスに変えるために自分の見え方をとっさに計算し、雄々しい姿を撮らせようとしたのだろう」と分析している」。トランプ氏の自己演出説だ。だとすると、どこかから星条旗をもってこっさせて、あのような写真を撮らせたのは、トランプ氏ということになる。
ここで、さらに小原さんが、卓越していると私が思ったのは、この写真が、歴史の波に洗われて「モニュメンタルな聖像のようになっていくだろう」と予言していることだが、いかがであろうか。
さらに、同日の前掲同紙では、東京大学(比較文化専攻)の今橋映子教授が「この写真は、ある現象が持つ性格を何よりも象徴する『イコン』にもなり得る」と、喝破している点である。「エバン・ブッチ氏にも、(共和党支持者の期待に応える意図はなかっただろう。(略)この写真に見えないところにまた違う現実はないのか。SNSの時代にイコンたる写真の拡散力は高まっている。
(略)写真の背景も考える姿勢が重要だ。」
★★★ 性意識の変革、急激
メディアは、一斉に報道した(新聞報道は、朝日新聞7月11日付け朝刊記事など。その他、各メデイア報道・記事など参照)。
出生時の性別は男性で、女性として日常的に生活するトランスジェンダー(トランス女性)が、戸籍上の性別変更を求めて広島高裁の判断を求めた。
これに対して、7月10日、広島高裁の倉地真寿美裁判長は、性別変更を認める決定を出した。手術なしで男性から女性への性別変更が認められるのは極めて異例だ。トランス女性に手術なしで性別を変更する道を開く司法判断となった。
性意識が、急激に変わろうとしている。
この判決で、司法は一律な当てはめは「過剰な制約」と指摘し、性別変更の訴えを認めた。申立人は幼少期から抱えてきた「生きにくさ」から解放されると喜び、専門家からは速やかな法改正を求める声が上がった。
テレビでは、申立人の思いを弁護士が代読するだけだったようだが、これは、肉声で聞きたかった。「生きにくさ」という性差別の意識は、とはどういうものなのだろう。
性別変更のためには、性器の切除までしなければならないのか。体の形状を優先して性意識を抑圧する社会から性意識こそ優先し身体の形状を緩やかに許容する、という今回のような解釈が積み上がることを大事にしたい。申立人は「よかった」と嗚咽を漏らし、「家族もほっとしてくれた」と、弁護士を通じて談話を出していた。私は、NHKの報道で弁護士の談話紹介の内容を知ったが、こういう談話なら、顔は隠し、声を変えてでも、当人の喜びの声をそのまま聞かせてほしかったと思った。
「社会的に生きている性別と戸籍上の性別のギャプによる生きにくさから解放されることを大変嬉しく思います。」
性意識の変革は、現代社会を縛っているさまざまな意識の変革に繋がってくるのではないかと思っているだけに、こういう変革が具体的に積み重なって行くことを今後も見つめて行きたい。
人間関係が変わると、人間の性意識が変わる。既に報じたように、外部に生殖器がある「戸籍男性」であっても、女性という意識が強まっている男性がいる。生きにくさが、この男性の女性度を表す。
★★ 無人兵器が戦争(子ども殺し)をしている
以下は、7月8日付朝日新聞朝刊「記者解説 無人兵器で変わる戦争」記事参照、データも引用。無人兵器の最新状況を伝えてくれるようだ。さらに、7月13日付朝刊記事「時時刻刻」参照、引用した。
戦争では、技術的にも非人間化が進む。無人兵器の登場。AIの導入など戦争のあり方は、軍事技術とともに、変わろうとしている。市民社会は、マスメディアとともに巨大化している。市民社会では、心理戦や混乱戦術が、はびこり、今や、スマホも兵器になり、戦場が広がる。
「日米一体」の一翼を担う日本。
自衛隊は、「台湾有事」を掲げて「南西シフト」を強めている。
私が沖縄の米軍基地に関心を持ち始めた頃、沖縄の知人が、沖縄県民は、米軍基地もさることながら、宮古島や石垣島では自衛隊の配備が強化されようとしていると危機感を募らせていた。今から考えれば、残念ながらそのものずばりの懸念であったのだ。ミサイル部隊の配備・増強だった。米軍の基地強化より自衛隊の増強が心配だと憂いていた、その通りの歴史が展開されているというわけだ。サイバー戦や認知戦などへの対応も求められているという。ミサイル部隊などの配備は進んでも、住民の安全や生命が、どう守られているのか、そういう問いは、後回しにされているという。
政府は沖縄県・先島諸島に住民らが一時避難するためのシェルターを建設する方針だと今年の3月に発表している。
自衛隊は、AIを導入している。防衛省は7月2日、AIの活用推進の基本方針を発表した。目標の探知、識別やサイバーセキュリティなどの分野で活用するという。
無人兵器が人間の判断を介在させずに自動的に攻撃を開始する。「自律型致死兵器システム(LAWS)」が実戦で使われる懸念も高まる。
既に、ウクライナや中東では、無人兵器が人々を無情に殺している。無人機から爆弾が落される。無人というシステムが、戦争をより悲惨なものに変える。無人機だ、誰を狙っても、非情でいられる。
さて、アメリカ。多くの国と軍事同盟を強化して、想定する敵国との軍事バランスを保とうとするアメリカ。
アメリカ国防総省は、去年8月、無人兵器を向こう1年半から2年以内に大量配備する「レプリケーター構想」を発表した。
軍幹部は、「多数の機密装備を用いて台湾海峡を無人の地獄絵図にしたい」(アメリカのワシントン・ポスト紙のインタビューで。孫引き)。
現在、アメリカ軍の部隊では、無人兵器が目立つという。
米海軍の無人水上艦は、去年9月太平洋を横断して横須賀基地に入ったという。アメリカ・ボーイング社の自律型潜水艦「Orca(オルカ)」も、去年12月納入された。
横須賀基地に新たに配備される原子力空母ジョージ・ワシントンには、無人空中給油機「MQ25 スティングレー」が搭載される見込みだという。アメリカ空軍は、F 15E戦闘機と無人機「XQ58Aバルキリー」の編隊飛行の写真を公開した。
アメリカが無人兵器の配備を急ぐ背景には、西太平洋地域において、中国との戦力バランスが崩れているとの危機感があるという。アメリカは、中国に対抗するには、無人兵器がカギになると考えているという(この辺りの最新知識は、朝日新聞国際報道部の牧野愛博記者の該博な知識に圧倒される)。ああ、そんなに戦争は、いま、コンピューター任せで行われているのか。変な言い方だが、死者だけが生身の人間という訳か。そういう意識に気付かされ、愕然とする。
★★ 戦場、生身の人間が「大量」にいた
いや、いや。そう思っていたら、生身の人間は、自衛隊という秘密、機密の秘められたフロアーで、踊っていたのだ。特定秘密保護法違反に違反する運用が自衛隊の全組織に亘って見つかったというのだ。防衛省は、7月12日、国の安全保障に関わる機密情報「特定秘密」についての違法な運用などが行われていたなどとして自衛隊員延べ220人を処分したと発表したのだ。このうち、延べ115人が、特定秘密保護法違反だったという。実に被処分者の半分以上が該当したことになる。
既に、このコラムでも何回も触れてきたように、特定秘密保護法では、防衛や外交などに関する「特定秘密」に指定された情報を扱えるのは、適性評価を受けて認められた人のみと定められている。誰でも、簡単には触れられない情報なのだ。
防衛省によると、陸海空の各自衛隊や、全体を運用する統合幕僚監部などで違法な運用が合わせて58件確認されたという。そもそも、この法律は、2014年、「アメリカとの情報共有の円滑化」のためとして岸田政権が強行に次ぐ強行で成立させたものだ。この問題に対するあの頃の社会の熱い雰囲気を思い出す。10年後、どの組織よりも情報管理の厳格さが求められる自衛隊で、おざなりにされるとは、私のみならず、誰もが想像もしていなかったのではないか。さらに、今年の5月には、公務員を対象とする10年前の防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止に加えて、経済安全保障に関する重要情報の取り扱いのルール民間に広げる「セキュリティ・クリアランス(適性評価)制度を導入する法律が成立したばかりであった。
政府は、機密情報の取り扱いが甘ければ、アメリカなどから重要な情報が共有されなくなる可能性があり、同盟国や同志国と安全保障上の連携強化を図るためにも必要だと主張している。日米は自衛隊とアメリカ軍との指揮統制の連携をめざしている。日本の情報管理やサイバー防衛の甘さは、協力の土台となる情報共有の面でも日米間に懸念を生じさせるものになると指摘する専門家もいるという。
特定秘密を扱う公務員や防衛産業などに勤める民間人は、事前に政府の「適性評価」を受ける。評価は、犯罪歴や酒癖、借金の有無、なども調べられる。万一、情報を漏らせば、最長で懲役10年。漏らすように唆した人も、最長で懲役5年に処せられる。
政府は年1回、特定秘密の指定や適性評価の実施状況を国会に報告し、公表しなければならない。
★ バイデン大統領 新型コロナ感染・回復
7月18日付朝日新聞夕刊記事参照一部引用。アメリカホワイトハウスは、17日、
バイデン大統領(81)が新型コロナウイルスに感染したと発表した、という。
「鼻水や咳をともなう軽い症状が出ている。バイデン氏は地元デラウェア州に戻り、隔離された上で職務を続けるという。」
しかし、それも無事経過した、と伝えられた。
★★ 猛暑とコロナ禍
一方、日本では?
8月が、要注意!
今シーズンも、コロナ禍は、夏にしぶといね。8月の感染ピークは、予約済みという感じが強くなってきた。
4年前の2020年夏。8月3日から9日。
コロナ禍第2波ピーク。年を超えても、季節に関係なく感染が続く。
2年前の2022年8月15日から21日。
第7波ピーク。
去年の2023年8月28日9月3日。
第9波波ピーク。
今夏、?
第11波、?。
感染拡大しやすい変異株が出現。現在主流のオミクロン株から派生した変異株「KP.3」。
オミクロン株より免疫をかいくぐる性質が強いと言われる。
今夏も去年同様の感染が予想されている。従来通りのオオソドックスな対策が大事と専門家は、呼び掛けている。
★★ 新聞社受難2題。
新聞社ばかりではないよ。マスメディアは、先きが見通せなくなているのではないか。弱いところから、潰れ始める。
毎日新聞社は富山県内に配送した17日付の北陸版で、同県内での新聞配送を9月末で休止すると発表した。「同社社長室広報担当によると、同社が全国の都道府県で配送を休止するのは初めて」という。「同県内での発行部数の減少傾向や、印刷や輸送コストの増大で、『配送体制の維持が難しくなった』としている」という。(略)「富山支局は残し、取材体制は維持する」という。
新聞の経営難は、続いているようで、同じ18日付の紙面では東京新聞の「夕刊終了を報じている。以下、引用。
「中日新聞社は17日、東京本社が関東を中心に発行している東京新聞について、8月末で東京23区を除く地域で夕刊の配達を終了し、朝刊に一本化すると発表した」、という。
加えて、購読料の値上げも発表した、という。新聞というメディアは、こうして消え去って行くのだろうか。
(2024.8.20)
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