【書評】
「永田町 鳥獣戯画 山田紳40年全作品集」
記事より風刺画の印象が強い。記者業からするとまことに残念だが、その1冊が刊行された。漫画家の山田紳の「永田町 鳥獣戯画」。40年にわたる月刊誌「選択」に毎月掲載された作品の総集編である。ページをめくると、懐かしいような顔が、格別の動作や表情で登場する。日本の政治史を見直すには最適な書でもある。
(選択出版株式会社刊 2500円)
<内容> 取り上げたのは、戦後40年を経た1985(昭和60)年から戦後80(令和7)年までの40年間。その40年間に首相21人の統治22代の政界の動きをとらえる。
誌面の構成はわかりやすい。以下の4項でくくっている。
①金竹小時代(1985年3月―93年7月)中曽根・竹下・宇野・海部・宮沢
②殿・トンちゃん時代(1993年8月―2001年3月)細川・羽田・村山・橋本・小渕・森
③自民党をぶっ壊す時代(2001年4月―12年11月)小泉・安倍・福田・麻生・鳩山・菅・野田
④シンゾウ一強時代(2012年12月―25年2月)安倍・菅・岸田・石破
<特徴> 山田紳のピタリ本人の特徴をとらえた似顔がいい。新聞の四コマ漫画には、どうもうまい、そして品がある、とは思えないものも登場するが、山田の画には厳しいが悪意がなく、ニヤリとさせるところでとどめるうまさもある。
全123ページの書の大半を占める、1ページに10コマ前後もの盛りだくさんの漫画は見飽きることがない。
しかも、時局に絡む画には、記憶から遠ざかった場面も少なくなかろうが、各ページにその折々の状況を説明するコメント(文字は小さいのだが)が要領よく載せている。
「政治」には、シラケる建前あり、利害あり、ウソあり、偽善あり、裏がありだが、これを見事に見抜いて描かれている。さすが40年以上政治を見抜いてきた漫画家である。
絵はなくコメントだけで残念だが、一例を2度目の安倍晋三首相(2013年1月)を見てみよう。「迷ったら右!突き当たりを右!周りをよく見て右!ほら改憲広場へ出たろ?出ない!?ま、そこは空想上の場だからネ」と安倍が右を指さす画が。
安倍についてもう一枚(2014年4月)。「『アベなっかしい』から『アベないやつ』へ」として、絵柄に「最高責任者」のマントを翻して国会議事堂の空を飛ぶ安倍、そして唖然として見上げるかの自民党議員が数人。
漫画に添えた絵解きのコメントが、これまた的確で笑えてくるのだ。2ページにわたる連載記事の「政界スキャン」に添える山田紳の1枚の戯画なのだが、こうして1冊にまとめてみると、その絵ばかりが目に入り、主役を奪ったようにも思われてくる。
<朝日新聞への登場> 朝日新聞の一コマ漫画にも、山田紳の画が登場する。これもまた、大いに冴えており、国会議員の間ではなにかと話題になっている。
新聞から、政界の風刺画は欠かせない。
朝日紙面は、小島功、山田紳、針すなおの3人の週替わりで始まったが、その後小島に代わってやくみつるが山田と針に加わり、最近新たに博士号を持つ横田吉昭が参入、なかなかの才覚と絵柄を見せ始めた。小島、山田、針の朝日新聞登場以前は大御所の横山泰三の「社会戯評」が紙面を飾り、1954(昭和29)年2月1日から1992(平成4)年末まで実に38年間13561回続いた。
この横山と併載される形で1982,3年ころから針、山田らが不定期に紙面を飾り始めた。そのスタートを朝日新聞社に問い合わせたが、「不明」とのことだった。すでに42,3年になるので「選択」掲載よりちょっと早かったようだ。ともに長寿の連載で、なお人気を支えていることになる。
ちなみに両者を比較すると、「選択」の山田画の方が自在でのびのびし、「朝日」の方は手堅さ、穏やか感がある。少数読者を対象とする「選択」の自由度の高さか。
筆者は朝日の政治部デスクとして、小島、山田、針3氏の画の2代目の担当を経験したが、風刺画の届く日が待ち遠しかったことを思い出す。
ともあれ皆さんもご一読され、政治を斜めから見る風刺画を楽しんでいただければなにより。
(元朝日新聞政治部長)
(2025.12.20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ/掲載号トップ/直前のページへ戻る/ページのトップ/バックナンバー/ 執筆者一覧