【沖縄の地鳴り】

「辺野古新基地」建設・埋め立ての設計変更

平良 知二

 「辺野古新基地」建設問題が新たな段階に入った。辺野古海域の埋め立てについて、沖縄防衛局が設計変更の承認申請書を沖縄県に提出した。軟弱地盤問題が浮上し、その問題解決のための設計変更である。
 しかし、その変更が認められるかどうか。沖縄県は今月8日、防衛局からの承認申請書について告示と縦覧手続きを開始した。告示・縦覧は公有水面埋立法に基づくものであり、埋め立てに問題がないかどうか、「利害関係者」に意見申し立てしてもらう手続きだ。「利害関係者」は工事によって影響を受ける人だが、明確な規定はないという。前回の承認申請の時は約3千件の申し立て意見書があったという。
 「オール沖縄」など基地建設に反対している団体が、多くの人に意見申し立てするよう呼び掛けており、防衛局の設計変更に異論が続出することになりそうだ。

 申し立て期間は今月28日までと短いが、県はこれらの意見書も踏まえ、那覇防衛局の申請書を点検し、市町村や有識者などの意見も聞き、最終判断することになっている。結論は来年1月下旬以降とみられている。玉城デニー知事は新基地反対を明確にしており、最終的には不承認の判断になるだろう。

 申請書では焦点の軟弱地盤の改良工事について、地盤の性状や改良の手法など詳細は記載されていないようで、杭の本数も明らかではない。識者の一人は「最も驚いたのは地盤の実態についての説明がなく、地盤改良についても面積、深さ、砂杭の本数、径、間隔などの具体的内容が記載されてないことである」と批判している(沖縄タイムス9月9日、土木技師・北上田毅氏)。
 軟弱地盤をどうするかということが新たな問題として浮上し、それへの対応としての今回の設計変更であったはずだ。それが解決策を伏せたままの申請とあっては、異論続出は目に見えている。県としてもそのような内容の申請を安易に認めるわけにはいかないだろう。沖縄防衛局はなぜ、本質的な地盤改良策を示さないのか。

 うがった見方をすれば、玉城県政の姿勢から「どうせ不承認となる」の見通しを持ち、真剣に改良策を考えなかったか。あるいは改良策を本格実施すると膨大な資金と年月がかかってしまう、それが公になるのを恐れたか。この問題は結局訴訟となる、裁判所の判断を待てばいい、としたのか。
 今回の申請では土砂をこれまでの3市町村に加え、県内では新たに6市町村を含めた計9市町村から調達することになっている。環境破壊の拡大だという声も強まりそうだ。

 今(9月12日)、自民党総裁選の最中であるが、菅義偉・新政権の誕生が確実視されている。菅政権であれば「辺野古」について、これまでの路線を継続していくことは間違いあるまい。菅氏は辺野古新基地建設を「粛々と進める」と何度となく「粛々」という言葉を使い、亡くなった翁長雄志前知事から「(本土復帰前の)高等弁務官と同じではないか」と批判され、今はまた「辺野古が唯一」をリフレインするばかりである。「辺野古」を沖縄県民が望むような方向へ転換(例えば工事を中断し、模索期間を設ける)することなど、望み薄だろう。

 菅氏は沖縄基地負担軽減担当相でもある。しかし負担軽減とは名ばかり、真逆の方向に引っ張り続けてきた。沖縄基地負担軽減担当は4年前に安倍政権で初めて置かれたものだが、冗談でなく「辺野古基地建設推進担当」となり果てている。
 新政権では、総理となる菅氏自身がこの担当を兼任するわけにはいかないだろう。誰が継ぐか注目ではあるが、政府として従来路線の継続となれば言葉本来の軽減は今後も遠のくばかりだ。

 玉城県政は本格的な訴訟を覚悟で新政権と対峙していくことにならざるを得ない。

 (元沖縄タイムス記者)

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