【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(85)
世界が排他的に
世界中、いろいろな意味で同じになってきている。
3つ挙げよう。ひとつは汚職または裏金を理由に外国や大きな組織が裏で若者を動かしているように思われる政治のトップ交代。しかも暫定のトップはロボットかアンドロイドみたいだ。日本の場合だと同学年のおばちゃんを見た外国人女性友人の何人かが「あの人ヒアルロン酸注射繰り返していない?人形みたいでかわいそう」。2つ目は排外主義者が増加していること。3つ目はSNSによるAIや偽情報の拡散、大掛かりな詐欺集団の虚偽によって人を惑わせ・惑わされていることである。そしてこれらが組み合わされて、おかしな方向へと向いつつあるような気がしてならない。排外主義者によるSNS投稿が賛否いずれも中毒性を感じてもいる。
今回は、パキスタン人・日本在留30年のインド人・中国出身の友人たちからの話である。
1.パキスタン人の弟分 初めての差別実感
弟分から久しぶりに電話がきた。私がオンラインで教えていた生徒の叔父でもある。生徒が年末結婚式を挙げるという報告だった。心から嬉しかった。弟分は在留総計約20年。1980年代後半に来日し10年以上滞在していた。家庭の事情で帰国し、実家の財産を手放し、ドバイで商売をしていた。ドバイは暮らしにくかったので日本で再び仕事を始めた。通算年数だと永住も取れそうだが、帰国・ドバイ在住のブランクがあるので再来日からの年数となるため、まだ永住権を取るに至らない。コロナ禍帰国はカウントされていないらしい。本人は日本に溶け込んでいるつもりだが、名刺交換を片手で受け渡しするし、エスカレーター真ん中に立つし。ゴミのポイ捨てとかのあからさまなマナー違反は絶対しないけれど、長年住んでいても日本の静かなマナーに気づいていない。名刺交換に関しては自分の日本語クラスの学習者に教えていたけど、おい!弟よ!彼らより日本長いのに知らなかったのか?後で教えた。しかし「大丈夫、ガイジンだから」といった西暦2000年以前のやさしい日本人とのおつきあいの感覚は、今、通用しないかもしれない。
「長年日本にいて、今までこんなにイスラム教徒をネットで攻撃したり、外国人をみたて差別目線を送ってきたりする日本人はいなかった」と言った。いままで日本人が怖いと思ったことはなかったけれど、最近は違う。どうなっちゃったのだろう?
2.自分の国の在留者がいやになったインド人
時々、寂しくなったら電話をくれる人。軽く呑みながら、おしゃべりしたいと思いつくとお誘いがくる。どこかレストランではなく、自分のお店。手料理やら弁当やら持ち帰り店。現在は2軒だが、そのうち1店舗を閉めることにしたそうだ。閉める予定のお店で最後の晩餐…いやお店最後という意味で。次に会ったのはもう1店舗。こちらは事務所みたいなものだったが、従業員が店番をしている。本人は取引先と会ったり、輸入した商品を受け取りに行ったりと店にいるわけではない。今後は店番従業員が休みの日にそちらの店に会いに行くことになるだろう。円安の多大な影響で、インド人同業者の増加と在留インド人の多様化と海外転勤・支店移転による顧客の減少など、今までの羽振りの良さは衰退しているようだ。
インド人の取引先もまた景気が悪いのか、もともとそういう人だったのかわからないが、支払い遅延、約束の金額が払えず、最悪の場合不払いで他国へ移動する、など彼は同国人への不信感が強くなっている。いや、もともと日本が好きで30年近く日本に暮らし、日本人と結婚し、日本で貿易の仕事を自営する。ただし顧客はインドの会社とインド系◯◯人たちである。かつては彼独自のスタイルで輸出入をしていたが今はもっと大掛かりな会社がブランド化したり同じようなスタイルの商売をしていたりするので水面下で国際的なビジネスをしていた彼には痛手だ。詳しい話は会ってから聞くつもりだ。一時は日本撤退さえも考えていたが、昨今のインド人商売人たちのやりかたに嫌悪感を抱いている。
彼の撤退予定のお店の近隣で事件があった。「インド人が女性に性的な暴行を加えたらしい。未だに誰がやったのかわからない」とのことだ。彼は「インド人」だと思っているようだ。だが日本人が南アジア系の人たちが「なに人」か区別できるのだろうか?私は例外だ。言葉はもとより見た目でもわかる。それがインド系アメリカ人でもシンガポール人でも香港人でも。見た目浅黒い人たちを見ると日本人の大勢がインド人という。
彼は「被害者は19歳で母親が寡婦で、仕事で疲れていた子ども。19歳は子どもだよ!そんな卑怯なこと許せないよ!どうしてもなにかしたかったら、お金出してデートに誘うとかマトモなことができないんだろうか!(20代半ばの)娘がいるボクとしては怒りしかないよ!」インド人が19歳を子どもというのは珍しいようにも思える。しかし、インドでも結婚年齢は高くなっているからそれもおかしくはない。
彼が中途半端に日本化していて中途半端にインド人の感覚を残していることが伺えた。そして彼は外国人逆風の中「日本国籍を取ろうと思う。こんな人たちと同じ国の人間でいたくない。インド人でありがちなのが、自分が一番えらいと口に出さなくても思っていることだよ。こんな人たちと同じ国の人間でいたくない。」いつでも日本国籍取得できる要件を持っているのに敢えて日本国籍を取得しなかったのは現地ビジネスのためだった。そういえば、旦那さん日本帰化。奥さん永住者のままという御夫婦もいらっしゃる。これもビジネスのためだ。彼のインドのアイデンティティは薄くなっているものの見た目が外国人である。母国でのカースト差別と日本人外国人差別、解放されるのは難しいように思われる。
3.中国・日本人駐在員たちの恐怖や差別
先日、駅の改札を出た途端に中国出身の友人に偶然出逢った。私はボォーとしていたので気づかなかったが「和子さん!」「ああ、うさぎちゃん![あだ名・以下彼女]」。そのまま二人でお茶をした。7年ぶりに中国の実家に帰省した。中国人の日本人に対する敵対心のようなものが定着していて、それは驚きを超えて恐怖だったという。
日本人との間にできた娘がいて、ほとんど中国語は話せない。娘の顔つきを見て「あれは日本人じゃないの?」とヒソヒソ話をする人たちもいた。前回の帰省では日本人か中国人か敢えて見分けようとする人などいなかった。いやそれどころか見分けられるようになっていたのが彼女にとって恐怖の始まりだった。娘に「外で話しちゃ駄目よ」ちょっとでも話すと「あの子、言葉がおかしい。日本人じゃないの」など言われるのだ。「ああ、この子は生まれつき言葉に障碍があるのよ」と。実感する前にニュースでは知っていた。2つの事件だ。
[AIによるまとめ] 近年、中国では日本人学校に関連する複数の事件が発生しています。主なものは以下の通りです。
2024年6月:蘇州日本人学校スクールバス襲撃事件
発生地と日時: 2024年6月、江蘇省蘇州市。
概要: 日本人学校のスクールバスを待っていた日本人母子が刃物を持った男に襲われ、重傷を負いました。
被害者: 現場に居合わせた中国人女性(胡友平さん)が、男から母子を守ろうとして刺され、後に死亡しました。
犯人の処罰: 犯人の男は殺人罪で死刑判決を受け、2025年4月に刑が執行されました。動機は「借金苦で生きるのが嫌になった」とされていますが、日本人を狙ったか否かについては言及されませんでした。
2024年9月:深セン日本人男児刺殺事件
発生地と日時: 2024年9月、広東省深圳市。
概要: 日本人学校に通う男子児童(当時10歳)が登校中に刃物で刺され、翌日に死亡しました。
犯人の処罰: 犯人の男はインターネットで注目を集める目的で事件を起こしたとされ、2025年1月に死刑判決を受けました。
事件後の影響
警備強化: 両事件の発生後、中国人や日本人を問わずショックが広がり、各地の日本人学校や日本人コミュニティでは警備が強化されました。
柳条湖事件の日: 蘇州の事件の約3か月後、柳条湖事件の記念日である9月18日には、反日感情の高まりを警戒し、一部の日本人学校が休校措置を取りました。
追悼: 亡くなった方々に対し、中国と日本の双方で追悼の意が示されました。
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[筆者(私)による]
深圳・蘇州市ともに駐在員を含めた日本人の人口は市内人口からみて半端なく多い。上海は日本人数は多いが多数の国からの外国人も多く比率として少なく感じるのだ。蘇州の例を挙げよう。事件以前から…。コロナ禍で半数の邦人が日本に帰国したままである。
「蘇州 人口」 - Google 検索:昨年2024年の時点で在留邦人が5000人弱とされている。出張など帰国を前提としたビザで短期滞在する邦人はその10倍以上と考えられている。蘇州市全体の人口が1200万人ほどと推定されている。日本で在留外国人の総数は中長期滞在者と特別永住者を含めた統計では395万にである。東京都で約1000万、そのうち70万人が外国人となる。
統計の取り方が違うのであるが日本も中国もオフィス街に近いところに住んでいる人たちの感覚は数値以上に外国人が目に入ってくるようだ。マレーシアやシンガポールのように多民族共生している国とは違う。そして蘇州には現代日本人街がある。他にも観光を目的とした日本人街があるのだが、駐在日本人のための日本人街はここだけであると言っても良いだろう。
もちろん日本人観光客向けだ。それと2事件があった深圳・蘇州は「日本人学校」がある。日本人の親は、いつ帰国を命じられるかわからないし。中国での進学などまったく考えていないようだ。
彼女は言った。私がインド人・ネパール人・ベトナム人の子どもたちに日本語を教えていることが不思議。「英語ができるこどもなら日本語いらないんじゃないの??大学だって英語の国に行けば良い。日本の中国人も英語できれば中国人のインターナショナルスクールに入れているよ。中国の日本人も日本人学校じゃない」
せっかく現地にいるのだから現地の言葉を自然に覚えれられればいいのだが、自国の学校や習い事に行っているため、現地の言葉や文化を理解する環境が少ない場合は、プロのネイティブ先生に習わせたいと考える親もいるのだと説明した。無意識な多文化享受をしている彼女のことは、別の機会で述べたいと思う。

美しい蘇州の夜景。友人撮影をAIでゴッホ風に。
(2025.10.20)
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