【「労働映画」のリアル】

労働映画のスターたち(85)

風間俊介と綾瀬はるか
清水 浩之

《気がつけば40歳 …… ジタバタする男女の「人生折り返し点」》

 2025年夏のドラマは、40歳直前の男女がジタバタする作品が相次いで登場した。アラフォー男子は風間俊介さん主演の『40までにしたい10のこと』(テレビ東京・金曜深夜)。アラフォー女子の方は綾瀬はるかさんが主演の『ひとりでしにたい』(NHK総合・土曜22時)。ずっと「若手」のつもりだったのが、いつの間に「中年」になっていた……そんな驚きと焦りがサマになるお二人が、人生に悩みまくる展開を楽しめた。

 『40までにしたい10のこと』の主人公は、仕事一筋に生きてきた39歳の独身男性。40歳の誕生日を間近に控え、私生活でやってみたい事を秘かにリストアップするが、1世代下の部下(庄司浩平)に見られてしまったことから、2人の関係はどんどん接近していく。

 『おっさんずラブ』(2016・テレ朝)、『きのう何食べた?』(2019・テレ東)のヒットですっかり定番化したBL(ボーイズラブ)路線だが、昔も今も日本の企業体質が「アットホーム」なことと関係があるのかも知れない。先輩と後輩、兄と弟の関係がより深く結びつく展開は、従来の男女の恋愛ドラマよりファンタジックで、コンプライアンス的に安心な気もする。長身の部下を「見上げる」上司はとてもチャーミングだ。

 風間俊介さんは1983年生まれ。中学2年生の時にジャニーズ事務所に入る。1999年、TBS『3年B組金八先生』第5シリーズのオーディションに合格。外見は「良い子」だが、心の中に深い闇を抱えた少年を演じて高く評価される。その後も『それでも、生きてゆく』(2011、フジ)での殺人犯、NHK連続テレビ小説『純と愛』(2012)での人生を悲観的に歩む冷めた男と、「屈託のある」若者役で知られた。

 役柄が変わってきたのを実感したのが、40歳で主演を務めた『初恋、ざらり』(2023・テレ東)。配送センターの管理職として働く独身男性が、アルバイトに入った若い女性(小野花梨)と恋仲になるが、彼女が軽度の知的障害を持つことを知り、家事や身の回りの世話をフォローするようになる。不器用に生きてきた「男の子」が、掛け替えのない人と出会って優しさを発揮していく姿に、観る者の心は温まった。

 現在はNHK大河ドラマ『べらぼう』(2025)でも、主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)のライバル、日本橋の地本問屋・鶴屋喜右衛門を、目だけが笑っていない笑顔とともに演じている。今後も男性俳優陣のキーパーソンとしての活躍が続くでしょう。

 『ひとりでしにたい』の主人公も39歳・独身。美術館で学芸員として働いているが、子どもの頃に憧れていたキャリアウーマンの伯母(山口紗弥加)が、定年退職後に孤独死したことに衝撃を受け、終活を考え始める。「女性の生き方」に関わるリアルなギャグ満載の原作を存分に活かし、専業主婦として生きてきた母(松坂慶子)、「かわいい孫」を生んだ弟の嫁(恒松祐里)との間の、人生観を巡る「深い溝」を見つめていく展開が、現代日本のどこの家族にも当てはまりそうで面白かった。

 綾瀬はるかさんは1985年生まれ。NHK大河ドラマ『八重の桜』(2013)をはじめ、出演作が常に話題を呼ぶ国民的スターだが、2007年のヒット作 『ホタルノヒカリ』(日テレ)での「干物女」、『義母と娘のブルース』(2018・TBS)の継母など、世間から「ちょっと浮いている」女性を演じると見事にハマる。今回も、一家の「お荷物」となりそうな未来に焦りつつ、「ひとりで生きて、ひとりでちゃんと死にたい!」と開き直る姿が痛快だった。今後も「ふわふわ」感のあるキャラクターを貫いていただきたいです。

 厚生労働省の「簡易生命表(令和6年)」によると、現在の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳。「人間五十年」と謡われた昔とは違い、40歳は人生の折り返し点に過ぎなくなった。新たに中年となる皆さまのご健闘を祈ります。

(しみず ひろゆき、映像ディレクター・映画祭コーディネーター)
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●労働映画短信
◎働く文化ネット 「労働映画鑑賞会」
働く文化ネットでは、毎月「労働映画鑑賞会」を開催しています。お気軽にご参加ください(参加費無料・事前申込不要)。

第109回労働映画鑑賞会~ヤマの記憶と向き合う~
10月9日(木)18時から上映(17時45分開場)
上映作品:『作兵衛さんと日本を掘る』 2018年/111分/監督:熊谷博子
2011年、日本初のユネスコ世界記憶遺産となった絵や日記697点を残した炭坑画家・山本作兵衛(1892-1984)。彼が残した記憶と向き合い、この国の過去と現在、未来を掘る。
会場:連合会館 2階 203会議室(地下鉄千代田線 新御茶ノ水駅 B3出口)
働く文化ネット公式ブログ http://hatarakubunka-net.hateblo.jp/

◎【上映情報】労働映画列島!9月~10月
※《労働映画列島》で検索! https://shimizu4310.hateblo.jp/

◇新作ロードショー
アハーン 《9月5日(金)から 新宿シネマカリテほかで公開》 ムンバイに暮らすダウン症当事者が主役のサバイバル・コメディ。両親からの自立、就職、素敵な女性との結婚という切実な思いを募らせた青年アハーンの冒険。(2019年 インド 監督/ニキル・ペールワーニー)

レッド・パージ~今に続く負の遺産~ 《9月26日(金)から 東京 池袋シネマ・ロサほかで公開》 連合国軍占領下の思想弾圧事件「レッド・パージ」。日本共産党員やその支持者ら数万人が職場を追われた人権侵害の全容を、証言などを通じて明らかにする。(2025年 日本 監督/鶴見昌彦)

ホーリー・カウ 《10月10日(金)から 東京 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開》 熟成ハードチーズ「コンテ」で知られるフランス・ジュラ地方。チーズ職人の父を亡くした少年が、コンテストの賞金を狙って伝統製法のチーズ作りに挑む。(2025年 フランス 監督/ルイーズ・クルヴォワジエ)

ナイトコール 《10月17日(金)から 東京 新宿武蔵野館ほかで公開》 ベルギー・ブリュッセルで夜間の鍵屋として働く青年が、ある依頼を受けたことから思いも寄らない事態に巻き込まれる。(2025年 フランスほか 監督/ミヒウ・ブランシャール)

◇名画座・特集上映
▼全国
【札幌シネマフロンティア/ほか全国66館】 9/19~10/16 「午前十時の映画祭15 短い出会い、永遠の思い出」…ローマの休日/E.T.(2週ずつ上映)

▼北海道・東北
【札幌 シアターキノ】 「KINOフライデーシネマ」…9/26 風たちの学校 10/10 骨 10/24 溶岩の家
【山形市中央公民館/他】 10/9~16 「山形国際ドキュメンタリー映画祭2025」…日泰食堂(台湾ほか)/Ich war, ich bin, ich werde sein!(日本)/終わりなき夜(コンゴほか)/標的までの時間(ラトヴィアほか)/ずっと一緒に(ベラルーシ)/他

▼関東・甲信越
【舞浜 シネマイクスピアリ】 「キネマイクスピアリ 舞浜で名画を」…10/10~16 正義の行方
【東京 御茶ノ水 アテネ・フランセ文化センター】 9/27 「映画美学校ドキュメンタリー・ワークショップ2025公開講座 第7回 アルチザン宣言―松川八洲雄の仕事」…不安な質問/味の王様/他
【東京 恵比寿ガーデンシネマ】 10/3~16 「特集・ザンドラ・ヒュラー 変幻する〈わたし〉のかたち」…落下の解剖学/関心領域/ありがとう、トニ・エルドマン/希望の灯/エリザベートと私/他
【東京 神保町シアター】 10/4~31 「名作映画でみる 男たちの人生劇場」…不滅の熱球/大番/王将(1948)/馬喰一代(1963)/小原庄助さん/会社物語/Shall we ダンス?/他
【まつもと市民芸術館/他】 「松本CINEMAセレクト」…9/26 タイムズ・スクエア 9/27 Chageのずっと細道 東西南北/オルエットの方へ/アデュー・フィリピーヌ 9/27・28 ピアノフォルテ/キムズビデオ 9/28 野火(2014)/ジャック・ロジェ監督短編集 10/3 テイク・ミー・サムウェア・ナイス

▼東海・北陸
【富山 ほとり座】 9/27~10/3 「サタジット・レイ レトロスペクティブ 2025」…音楽サロン/ビッグ・シティ/チャルラータ/臆病者/聖者/主人公/エレファント・ゴッド
【名古屋 シネマスコーレ】 10/4~10 「ホアン・ジー&大塚竜治の世界」…卵と石/フーリッシュ・バード/石門

▼関西
【大阪 九条 シネ・ヌーヴォ】 9/26~10/1 「ポーランドSF映画の世界」…ルイザはどこだ?/第一パビリオン/ピルクスの審問/オビ、オバ:文明の終焉/フォトン/ソラリス・モナムール/寄せ集め/他
【神戸映画資料館】 10/11~13 「神戸発掘映画祭2025」…管原傳授手習鑑 手習兒屋/お猿の大漁/富士の地質/琉球の恋/月夜鴉/米つくりのしごと/他

▼中国・四国
【山口情報芸術センター】 10/15~18 「小さき背中が見た日本」…蜂の巣の子供たち/山椒大夫/風の中の子供/浪華悲歌
【高知 シネマ四国】 「とさぴくシアター」…9/26~30 終わりの鳥 10/17~21 リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 10/24~28 ザ・フー キッズ・アー・オールライト 11/7~11 フォーチュン・クッキー

▼九州・沖縄
【福岡市総合図書館映像ホール シネラ】 10/4~23 「ファンタスティック・フィリピン!TBAスタジオの軌跡」…カナ 夢を織る女(ひと)/ルナ将軍/サンデー・ビューティー・クイーン/こことよそ/他
【那覇 沖縄県立博物館・美術館 講堂】 「海燕社の小さな映画会2025」…10/19 文楽に生きる 吉田玉男+伊那人形芝居 11/30 西陣+石の詩

◎日本の労働映画百選
働く文化ネット労働映画百選選考委員会は、2014年10月以来、1年半をかけて、映画は日本の仕事と暮らし、働く人たちの悩みと希望、働くことの意義と喜びをどのように描いてきたのかについて検討を重ねてきました。その成果をふまえて、このたび働くことの今とこれからについて考えるために、一世紀余の映画史の中から百本の作品を選びました。

『日本の労働映画百選』電子書籍版(2021.04更新)
https://drive.google.com/file/d/1WUUYiMwhdncuwcskohSdrRnMxvIujMrm/view

(2025.9.20)
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