≪新年のメッセージ≫

■ 新年の挨拶    西村 徹

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正月になると「おめでとう」という。反射で言うのであって反省して言うので
はない。めでたいか、めでたくないかを確認してから言うとしたなら今年は「お
めでとう」とはとても言えない。

去年の出来事のうちで、めでたいとは言えないことが、めでたいと言えることを
圧倒した。フクシマがナデシコを圧倒した。今年でなくても年取ると正月に「お
めでとう」を言うのはなんだか嘘ついている気がしてちょっとためらう。付き合
わないとしらけるところがあって、嘘をついているのが実態である。

 テレビ画像がきれいになって、年寄りのテレビ依存はひどくなっているのでは
ないかと思う。すくなくとも私がそうである。ところが、なぜか正月番組は、と
っておきということで話芸でもなんでも往年の名人を映すことが多い。たいてい
享年とある。とっておきにはちがいない。それはそれでありがあたいのではある
が、どうしてもしんみりする。
  正月とはしんみりする時節である。

(筆者は堺市在住・大阪女子大学名誉教授)

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