【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(80)

日本あとさき考えていない外国人受け入れ

坪野 和子
 
0.インバウンドにはガイドブックより頼れる存在がある  
 コロナ禍以降、昨年一昨年(2023,2024)所用で東京や成田空港へ行くとインバウンドの海外からのお客様たちがとてもとても楽しそうに日本を満喫する様子を…見かけるのではなくどこもかしこも見える・聞こえる。場所によっては日本語がほとんど聞こえてこないことさえある。家族旅行、新婚旅行、友達同士。さまざまな言語が飛び交っていた。言語から察するに以前だと短期滞在ビザでも通りにくい国からも簡単に入れるようになったとも感じた。あきらかに家族旅行とみられる人たちのなかには日本在留の親戚をガイドのように面倒みてもらっている様子もわかる。友達同士だとリピーターか留学生かわからないが、やけに慣れていてリーダーのようにふるまっていた。中国語圏の女子たちは電車から降りたあと迷わずに目指すアニメグッズのお店に移動していた。イタリア人男子たちは駅構内のお弁当屋さんで、かなり変わり種でインスタ映えするような「ごちそうおにぎり」を見ていた。やはりリーダー的存在がおにぎりの説明をしていて…悪いけど邪魔、数人であってもガタイの良い男子が群がっていたら、買いたいおにぎりに手が届かない。日本人、欧米人に甘いなあ。これをアジア圏のひとたちがやっていたらSNSで何かしらあげていただろうに。新婚旅行であってもネット検索能力が夫婦の仲を取り持ち、在留もしくは在留経験の友人にビデオ電話で訊いたりもしていた。例えば、ヴェジタリアンやハラル問題でレストランやコンビニフードのこと、安く買える店など。或いは日本の友人にも。こういった事実をどのくらい日本の人たちは気づいているのだろうか?
 
 1.在留・定住・永住・帰化・日本脱出
 インバウンドは帰国する予定の人たちではある。コロナ禍前は観光客を装い、難民申請する日本側からみれば厄介な人たちも少なくなかった。また難民申請の回数制限法改定はある程度効果があったのかもしれないと思われる。とはいえ、申し立てで回数を超えて在留していたり、不法滞在をしていたりする新規ではなく、残留している外国人も存在する。日本で生まれ育ったのに定住の在留資格しか取得できない人もいれば、永住資格が国内での貢献度が高く簡単に取得できたりもする。だが、帰国して永住権存続のために数年に一回日本に来ている人たちもいる。私の親友的な女性もそうで、旦那さんに伴っていただけなので日本にいたいも母国にいたいもない。旦那さんは国際放送の社員として日本に来て、彼女は日本の公立学校で英語教育に携わっていた。その後、旦那さんの転勤で帰国した。もともと帰化する予定はなかったようだ。「社内転勤」という在留資格で日本で仕事をすることになったインドIT社員の多くは最初から5年在留資格だ。定住や永住に身分変更している人もいれば、他の国にいつ転勤させられるかわからない人もいて、ずるずる延長している人もいる。海外転勤をお断りして転職し、日本に残って帰化を目指している人もいる。その逆にここのところの物価高、円安、給料が上がらないなど経済的な理由で海外への転勤や転職を狙っている人もいる。
 
 2.どこでも見かけるようになった外国人(出身)やその家族連れ
 私自身の行動範囲はどうしても外国人が多い場所になってしまうが、たまたま縁が薄い土地へ行ってもやはり見かけることが増えている。例えばスーパーやショッピングモールなどで買い物している姿であるが、日本語学校(専門学校)の学生や技能実習生、介護実習生とみられる若者は同国の友達同士が多い。友達にはカップルも含まれている。そして日本が長いであろう家族も多くみられ、親御さんと思われる年長のかたも一緒にいらっしゃる。中国人と思われる場合は中国帰国者(残留孤児)である可能性が高い。特別永住者(コリア・台湾籍)は日本人とほとんど変わらないのでわからない。最近よく見かけるのがベトナム人同士の子連れ夫婦だ。私の教え子たち(在留者)もまた大学で知り合った留学生男性と結婚し子どももいる。彼女たちは「ベトナム人の友達を作りたくない。留学生と違う」と言っていたのに彼氏は別だったということだろうか。そしてよく見かけるのはネパール人子連れ夫婦だ。しかも高齢に見える親御さんか祖父母さんも一緒にいらっしゃる。短期滞在か呼び寄せかはわからない。この様子をみて心の中で「労働者を受け入れるということは年老いた親を日本で養うこともこれからたくさん出てくるだろうに、日本はさらに労働力人口に入らない高齢者人口が増えることに対してどうするつもりなんだろうか?単純に医療や介護はどうする?例えば、フィリピン・インドネシア・ベトナムから看護師・介護福祉士を入れたのに介護しなくてはならない人も入れる可能性も出てくるのに。もう少し先を見通してほしい。国は面倒をもみるという気持ちを持っているのだろうか」と考えてしまった。
 
 [参照] インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて 厚生労働省
 >>これら3国からの受入れは、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではなく、相手国からの強い要望に基づき交渉した結果、経済活動の連携の強化の観点から実施するものです。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/other22/index.html
 
 3.終身雇用的発想から抜けているかいないか
 ここで話題の中心を単に人材不足を補うための外国人労働者としか考えていないのかと思われる実にあとさきを考えていない日本について述べよう。

 3-1. 約20年前技術だけ持っていかれて帰国されてしまった
 これは日本で働く外国人がほとんど中国人ばかりだった頃の話しだ。ずっと雇うつもりだった外国人が3年目くらいで会社を退職すると言い出した。日本の会社は、この人がやっと仕事も覚えたし、これからだと思っていたそうだ。当時日本では最初の3年は勉強で給料はその後も働くという前提で出していた。この人はきっぱりと「日本で仕事も覚えたし、国に帰って自分の会社を作ります」と言って辞めてしまった。その後、本当に自分の会社を作ってその分野で大きく成長していった。日本の会社は裏切られた!せっかく育てたのに恩をあだで返された!盗まれてしまった!と。これはこの当時いろいろなところであった話しだ。私もそう言って辞めていったひとたちを数人知っている。特殊な部品やアパレルや高度な機械技術などを持ち帰った。数年前までの勢いよく発展していった国の裏にはいつまでも働くと思って技術を教えた日本企業あってのことだ。

 3-2. 給料安いから転職します
 コロナ禍の最後くらいの頃だ。パキスタン人機械エンジニア。たった1年で転職を考えた。現在派遣で別会社で働いている。これもちょっと考えさせられた。なぜなら会社は彼の在留資格を留学生から就労ビザに変更するために 奔放していただいていたのだが、彼はそれに気づいていない。この会社は甘くみていたのだろうか?それとも在留資格変更を恩義に感じていたと勘違いしていたのだろうか?
 
 3-3.「日本の会社を経験したいので御社を希望しました」
 これはコロナ禍の頃。アメリカ企業日本支社ソフトウェアとアプリ開発チームで働いていたインド人IT。出向で日本の保険会社で働いていた。その会社で社員として仕事がしたくなった。そして面接。タイトルの言葉を日本語で言った。以前だったら、この言葉はタブーだろう。しかし逆に何年も務める気がないが在籍中はきちんとした仕事をしてくれるだろうと読んでもらったらしい。1年契約で長くいたかったら更新するという内容で話しは決まった。2年在籍し、結婚式を理由に退職した。遠距離恋愛結婚(職場結婚ではあるが勤務地は双方の実家より遠い)なので親戚回りが大変だし、嫁さんはタミル語ができないのでそのサポートも必要だ。かくして「寿退職」と相成った。今や死語。しかも男性。会社は彼が開発したアプリで収益を得た。彼は日本企業のシステムとビジネス日本語の上達を獲得した。Win-winだったといえよう。結婚式・披露宴(何回も親戚各地で)寺院参拝がすみ、まずは新婚旅行で日本に戻り、元のアメリカ企業日本支社に再就職した。その後、彼は本業の技術試験いくつかを合格した。お子さんはまだのようだ。ただ思うのだが、日本も終身雇用に対する執着がなくなったとまでは言えないと思うが、かなり薄くなったのと、外国人労働者(高度人材)への対応も慣れてきつつあるのかもしれない。
 
 4日本での教育の意味は?

 4-1.高校から日本の学校留学…でも半数は
 私の親友(チベット人・帰化)は日本の高校から留学するプログラムを立ち上げた。基本的には難民チベット人・チベット系インド人・ネパール人・インド国籍・ブータン人・モンゴル人のチベット仏教教徒。20年ほど経った今、半数は日本から出て、主にアメリカに移住した。スイスにも。現地ですでに自民族が定着コミュニティがあるので暮らしやすいと判断したようだ。日本に残った元学生たちはどうやら子どもの教育環境を重視したようだ。英語ができなくても他の教科は悪くないどころか厳しくないかわりに興味を持てる授業が多い。定着するつもりがあってのことだろう。
 
 4-2.日本語学校を出ても海外流出
 過日、九州在住のインド人個人事業経営の男の子と電話で話した。「ボクの日本語学校の友達はほとんどインドに帰っちゃったよ。帰ったら日本語能力があれば現地の日本の会社が雇ってくれるし、金額でなく実質の給料は高いからね。日本に留学したキャリアーってことで就職先、見つかるからね。ボクはなんとなく日本が好きだからここにいるけど。ロンドンは好きだったけど日本は住むのに楽かな?」
 
 今回はバングラデシュ暫定政権に関するトピックを休みとした。まずはラマダン、イードの期間なんで喉が渇くような思い(断食だけでなく断飲もしている。今年は楽な時期のラマダンだったが)をさせたくないのと、イード(ラマダン明け)はコミュニティのお付き合いで忙しい。また過日ユヌス暫定政権首席顧問が中国訪問し、協定を九つも結んだ。やはり日替わりで新しい動きがある。一段落した段階でまた話しを訊こうと思っている。その頃には親ハシナ派もなにか言いたいことがあるだろうから。

(2025.4.20)
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