【コラム】大原雄の『流儀』
私論・マイ「メディア史」(9)
ミステリー小説ではないけれど私の自宅の固定電話は、滅多に呼び出しベルを鳴らさない。メールでは高齢者向けの、詐欺の脅迫文が紛れ込むことがあるからだ。馬鹿げた話だが、この固定電話では、どこかの調査会社の世論調査に無作為で登録されているようで、時々、コンピュータの声で、調査の協力を依頼する電話がかかってくることがある。
今回は、ある新聞社からかかってきた。答えようとして呼びかけても返事の声も返って来ない。それで、電話を切ろうとして気がついたのだ。「ああ、そうだったんだ。(一方的なネット電話だったんだ)。AIならば、見分けられなくなるだろうな。
ほかの新聞社などの世論調査は、紙面や画像、インターネットのデータなどで公表されたものがあれば、使い勝手チェックの良い機会だ、と思って、調査結果を拝借したてみた。
複数の新聞社などが、先月(12月)実施した電話による全国世論調査で、高市内閣の支持率などを調査して、結果を公表していた。「オルタ広場」の発信時期などのズレで少し古いデータになってしまったところもあるかもしれないが、報道の記事ではないし、コラムでの感想なので、脱線コラムが売り物の私の「流儀」スタイルで書いてみようと思った次第だ。無断借用、御免。
それによると、高市内閣を支持すると答えたのは、A新聞の調査では、今回68%(前回:69%)と横這いであった、という。M新聞の世論調査でも、今回、67%であった、という。さらに、Y新聞の調査でも自民支持と、支持なしを合わせた支持率は71%であった。
政権トップの支持率と政党の支持率は、似たようなものかもしれないが、具体的な投票行動を尋ねる「票読み」世論調査と政治意識を尋ねる世論調査では、それぞれ、独自の工夫があるようなので、同じ尺度ではないのかもしれない。しかし、有権者の傾向は今回のデータでも何か掴めるかもしれないのでは、と思えてきた。なぜ、そう思ったか、と言うと、高市さんは、日本の憲政史上初めて誕生した女性首相だったということが、私たち(男のジャーナリスト)が、受け止めている以上に衝撃的だったのかもしれないのだ。女性首相誕生したということは、時代が変わる、という受け止め方をした有権者が、男も女も多かったということではないか。
何かが見えてくるのではないか、と思ったのだ。実際、その後の調査でも、傾向は、大きく変わってはいないようであるけれど。
つまり、昔、私たちが実践していた選挙取材の統計学を借りれば、投票に行った有権者のうち、投票所の「出口調査」という調査を受けた有権者の7割前後は、高市個人の支持、あるいは、高市政権支持という訳だ、という傾向が推量される。
3つの全国紙の世論調査は勝因は、憲政史上初めての女性首相という点が大きかったと思うが、「ウルトラ保守のアジテーター」イメージのある女性首相がどういうことをいうのか」、という発言の不安定さを期待するSNS 社会らしい、若い世代のものごとを斜めに見る視点もあったのではないか。私は、そういうメッセージを期待した。その辺りを分析してみたい、と思ったのだ。
言わば、この1ヶ月は、「高市高止まり(ダジャレではないが・・・)」状態では、日本の有権者の行動認識は、高市氏ご本人も、高市派の自民党議員も、後援会の支持者も、一般のちょっと過激な有権者も「ハイの状態」が維持されていて、この一ヶ月殆ど変わっていない、ということは、ウルトラ保守派の皆さんには、分かり易いのではないのか。
オールド・メディアの職場で選挙取材をしてきたジャーナリストの一人としては、このポイントは、慎重に見て行きたい、と思う。それにしても、若い世代というのは、大(おお)把みが特に、好きなようだ。それだけに有権者の支持率の変化に私も注目している。
オールド・メディアの世論調査は、当該選挙前に「票読み」(候補別得票を予測する)をするとともに有権者の政治意識や国政選挙の政党支持率の動向を探るのに有効で興味深い。
朝日新聞 など大手全国紙やNHKなどの、長年の調査結果というデータを積み上げてきたオールド・メディアの政党支持率の変化が、ことさらに興味深い。概論が見えるように、引用させていただいたが、文責は筆者にある。
(注)党派(%)別では、党派の支持率を表示。
保守党は、党派名を表すときは、「保守」と記号化した。
一般用語として使用する場合は、「保守系」などと記すようにした。
6割〜7割程度は、保守系などというと、大保守系ブームが、巻き起こっているのだろうか。そんなムードはないか?
そのため、残り3割を1議席から少数議席獲得の候補が奪い合う、というイメージということだろうか。あるいは、自民党批判の保守系の支持無し派が、保守系の実態か。
少数与党が鬩ぎ合う国会では、バラバラで、ひとり党首を軸に、所属議員は、ひとりか二人か。ということになれば、選挙活動はできても、与党の政策を替えるような政治活動はできないのではないか。
神輿ばかり多い、バラバラの少数派野党、バラバラの少数派与党という珍妙な政治地図。ポピュリズムの政治的光景。これでは、いつになったら、政治基盤のしっかりした与野党が生まれることが可能になるのか。
経験豊かな政治家が生まれるのか?
では、シミュレーション。与党も、野党も、仲が悪く、大局観がないのか、大同団結ができない状況が続くのか。数字の単位は、全て、% 。()は、前回。支持率。
自民:30%(29%)、
立憲:5(5)、
維新:4(3)、国民:7(4)、公明:2(4)、
れいわ:1(1)、共産:2(2)、参政:5(5)、
保守派:1(1)、社民:0(1)、チームみらい:1(0)、
その他の政党:0(0)、
支持なし:36(39)、無回答:6(6)。
数字が二桁なのは、自民と支持なしだけ、というありさま。
こういう世論調査は、データの読み方が難しい、と思う。まず、有権者の回答はほとんど全て有権者の投票日前の、投票見込みの行動を事前に予想するという投票行動結果を想定するというものだからである。最後まで、安定しない投票行動の中での世論調査になったのではないか、というような場合。
例えば、保革対決の選挙を控えた世論調査か、普通の日常的な政治状況を調査する世論調査か、で変わってくる。つまり、政党別の支持率には、回答者=有権者は支持政党の支持率を上げようとするからである。そういう「戦略的」投票が入る。それに、回答者=有権者の投票行動は、保守党なら後援者団体や個人が支持政党に有利になるように実際の投票率を動かそうとするからである。今回の調査は、普通の政治状況で、保革で、今後の政治的な展開を我が方が有利か、否かを探ろうというものだろう。
一方、革新党の場合、革新党の情勢が厳しい、後一歩の支持が当否を決めるから支援してほしい、と訴えて、支持する候補を当選ラインに乗せなければならないという心境を有権者に抱いてもらおうとするだろう。そういういつに変わらぬ人間心理を利用する調査なのである。
ならば、どういう結果が予想されるだろうか。
まず自民党は、1%下がった。大きく下がったのか。ほかの政党や党派の下がり方と比較すれば、1%は、大きいとも言える。維新が1%伸びても「躍進」と評価される。国民民主党の上げ幅と変わらないからである。上げ、下げ、同じ。そういう心理状態を作って、さらに、支持の上積みを求めて支持固めを訴えられるか、どうかが大きなポイントになるだろう。
立憲民主党は、横這いで、変化なし。あるいは、大いに変化ありの、横這いだったような気がする。これは、私には、深刻な結果を予感させる、と思われる。右肩下がりの延長の先が、あすの立憲民主党の姿なのか、どうか。さらに、国民民主党の支持層が、3%も増えている。総じて保守系は、国民民主党が上潮に乗っているように見える。しかし、不安定感は、強い。
この場合、自民に維新、国民、参政(党)、保守、その他、など。
→ あるいは、多重構造の保守系会派の構築か。
そんなスケッチが、目に浮かぶ。
保守系は、中間派が、前回の世論調査と変わりなさそうであるが、本当に変わりないのか。
れいわ、共産、参政、保守は、それぞれ、横這いである。エネルギーを溜めて、スタートダッシュを狙っているのか、現状維持が精一杯なのか。新聞社の政治部や社会部などの取材ならば、記者の力量が問われる、大舞台の開幕近しというところだろう。
★問題は、若い世代に火がついた!
多様性が、保守系の一党、一派に激変したのではないか。つまり、若い世代は、皆さん、保守系予備軍の支持なし、ばかり。多様性化が進む。若い世代は支持なしが、増えた、という。無党派層が、39%から、36%に3%も大幅に減っていることである。自民党の支持層は、やはり、まだ、まだ厚そうである。支持なしの有権者たちは、自民党を巡る支持層、与党から野党に代わって新たなパートナーと共に新たな新与党体制の構築を目指すのか。1ないし、2、3の貴重な議席を最大限に生かして、当分、目を離せないだろう。
さて、オールド・メディアの本流の原稿も、残り少なくなってきた。私の記者時代のスタートラインに戻ろう。
私の場合、24歳で大手メディアの記者になって、初任地・大阪に赴任した。以来、多数回の票読み取材に参加してきた。今年(26年)今月(1月)、79歳になった。十分に高齢者の世代。大組織の記者は、異動が多い。私もメディア人生で数カ所の転勤。定年後の、ボランティアとして、日本ペンクラブでの、フリージャーナリスト活動などでは、その成果を期間限定の大学での集中講義実施なども行なった。
数えてみれば、通算で55年間の時間を費やしたジャーナリスト人生の旅路であった、と言える。
さて、「オルタ広場」ご参加の読者の皆さんの中には、私より年長の方もおられるだろうが、年少の方もおられるだろう。
皆さんにお聞きしたい。どんな時に、「老い」を感じられるか?
逆に言えば、老いを感じるのは、どんな時ですか?
夜中、眠られずに、不眠症になる。そのせいか、午後、眠くなり、不調感が募る。午後の怠さが数日消えないこともある。肩や腰が痛い、と感じることが増えた。歩く歩幅が狭くなり、歩き方が遅くなる。歩いていても、後ろから来た若い人たちに、追い越されるばかりである。足元をいつも意識下に置かないと、転倒する恐れもありそうだ。転倒すれば、転倒した部位によっては歩行困難になるかもしれない、と注意される年齢層の世代なのだ。
そういう状態に、いつのまにかなっていることに私も気が付いた。気を付けないと、騙されそうな年寄りを騙そうとして、狙っているワルどもが、身辺に近づいてくる気配が、年々濃くなってきているような気がすることだ。見知らぬ他人からの電話が増えた。ということは、騙されそう、騙されてはいけないという弱気が滲み出しているのかもしれない。そういう連中は、餌になりそうな他人の区分けに敏感なのだろう。
一体、どういう連中が、そういうことをするのか?
例えば、政治家たち。
首相官邸というところには、いろいろな秘密兵器が隠されているらしい。世論の動静を世論調査に負けぬほど映し出すというからスゴイ。例えば12月18日、ある官邸幹部は、ここが、凄いところなんだが、個人の見解だとしながらも、それを否定せずに「日本は核兵器を保有すべきだ」と、いきなり結論の政治的な意見を言い切ってしまうことだし、それをあたかも事実のように一片の情報(商品)としてしまう。虚報をメディアの力を利用して新聞記事化してしまうことだ。
この幹部は高市首相に結論めいた意見具申をする立場にある高官だそうだが、実際に政権内で議論を進めているわけではなく、核不拡散条約(NPT)体制との兼ね合いなどから実現は難しいとも指摘した、という。19日朝刊各紙は、公式の責任者の記者会見情報と間違えろとばかりに誤報を装った姿勢で官制情報を垂れ流すのである。
そして、その背景として、官邸幹部は、中国の核戦力増強やロシアによる核の脅し、北朝鮮の核開発など、日本を取り巻く安保環境が厳しさを増しているとの見方を示す」というようにタコは己の足を食うというが、正にそれを見せてくれるというわけだ。
このニュースは、見出しは字が小さいが、3段の記事に、白抜き黒ベタの見出しが、縦に1本、横に2本で横見出しが,大相撲の土俵入りの風格でどっしりと主張しているように見える。
見出しに曰く、こうある。
官邸幹部「日本核兵器保有すべきだ」(世論誘導)
「首相に安保の意見具申する立場」 (誘導振りチェック)
「個人の見解実現困難とも指摘」
あるいは、これで十分にメディアへの情報コントロールは、初期の目的を達したのでは無いのか。ニンマリ。官邸幹部は、裏へ廻って、ワンと吠えているのではないのか。
年寄りの最期の貢献談は、・・・。
頑固たれ。
憎まれ子、憚る可し。
物分かりの良い年寄りになるべからず。
「オルタ広場」で好評連載中だった連載コラム「大原雄の『流儀』」の、シリーズ企画は、来月号で10回連載となるので、暫く、中断して、それ以降は、従来通り個別なテーマで書き継ぎたいと思うので、ご愛読下さい。
了)
(2026.1.20)
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