「平成維新」の成就をめざして

■ 「平成維新」の成就をめざして          久保 孝雄

   ―日本を今一度、せんたくいたしたく候 坂本竜馬―
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  今回の政権交代の特質は、単なる「政局変動」ではなく、政治の質的変革を伴
う「政治変動」だという点にある。戦後64年、これまでも政局変動は何度も繰
り返されてきたが、統治構造の変革をめざす政治変動は今回が初めてである。


◇◇ 1、新政権は「無血の平成維新」をめざす


  鳩山首相は所信表明演説のなかで、新政権がめざすものは「無血の平成維新」
だと述べていたが、演説全体が「平成維新宣言」になっている。維新とは革命の
ことであり、革命の本質は権力の移動である。平成維新=革命の本質は、官僚か
ら国民への「大政奉還」であり、アメリカに奪われている(自民党政府が提供し
てきた)国家主権の一部を取り戻すことである。つまり、国民主権と国家主権の
回復をめざす平成維新の大業が、政権交代とともにスタートを切ったのである。
それは、中央集権型官僚支配を解体できず、市民参加型社会の形成も果たせず、
未完に終わった「戦後民主革命=市民革命」の完成をめざすものでもある。

 旧体制派は、いち早くこの「革命性」を感知していたからこそ、自民党、特権
官僚、マスコミ、検察までが一体となって政権交代つぶしの激しい攻撃をしかけ
てきたのである。政権交代つぶしに失敗すると、こんどは誕生したばかりの新政
権つぶしのため、より執拗で陰険な攻撃を加えてきている。政権交代が起これば
マスコミの論調も変わり、検察の動きも変わるだろうとの予測もあったが、全く
の的外れであった。

とくに新政権誕生後は、普天間基地問題をテコに日米関係の危機を煽り立て、
「日米合意」の即時履行を迫る日米守旧派(日本=自民党、マスコミ、官僚、
御用学者ら。米国=アミテージらブッシュ時代の対日タカ派)が一体となって
新政権攻撃を激化させているが、政権交代があれば政策変更があるのは当然の
ことであり、こうした攻撃は日本国民の意思で成立した新政権への不遜な挑戦
である。日米守旧派に迎合して虚報と偏向報道を繰り返すマスコミは、あたか
も植民地支配者に媚を売る植民地御用新聞に似ている(注1~2)。
  
  (注)1、マスコミは、普天間問題で決断しない鳩山首相に対し「アメ  
       リカは怒っている」「日米同盟の危機だ」などと騒ぎ立てて
       いるが、米大使館は「呆れ顔」で、「日本の新聞は危機を煽
       りたいようですが、同盟関係は幅広くかつ深い。普天間問題
       は同盟に影響しないし、危機でもありません。米側に取材す
       ればすぐわかることばかりですが・・・」と言っている
       (米大使館関係者、週刊文春、12.24)。
    
     2、12月23日、各紙は一斉にクリントン長官が藤崎駐米大使を呼
       びつけ、鳩山首相への不快感を示したことを大きく伝え「米
       国の鳩山不信は頂点に達した」(読売)と解説したが、
       クローリー次官補は直ちにこれを否定し「呼びつけたのでは
       ない。大使が立ち寄って日本の立場を説明したのだ」と述べ
       ている(TBS.12.23)。

 日米守旧派の連携によるこの攻撃は、単に既得権が失われることへの危機感か
らだけでなく、既得権にからむさまざまな闇の世界が暴かれることへの強い恐怖
感からもきている。まさに、「革命」対「反革命」の厳しい攻めぎあいが始まっ
ているのだ。維新政府の拠点であるべきマスメディアは依然として日米守旧派に
制圧されており、「無血の平成維新」どころか、自民党、マスコミ、検察一体と
なった攻撃で、小沢、鳩山の「血」が流れ、民主党のイメージも切り裂かれつつ
ある。すでに維新の大業は修羅場を迎えているのだ。とくに国民の総意で、国民
の代表として選ばれている鳩山首相一しかも今、山なす難題を抱え、日夜国事に
奔走している首相に対し、殆んど犯罪性のない案件でここまで執拗に追求するこ
とが国益に適うことなのか。総選挙で示された国民の意志さえ意に介さぬ検察の
行動が、多くの国民から「暴走」と評されている所以である。

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   「維新」への気概に欠ける民主党―戦略的布石を打つ小沢 
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  しかし、肝心の民主党には、この政権交代が維新=革命だという緊張感や警戒
心が薄く、与党気分に浮かれたり、権力を取った以上はもっと現実的にならなけ
ればと、旧体制に妥協的になったりしている議員が多い。維新政府の閣僚、副大
臣、政務官のなかにも、維新への意志や能力に欠けるものが何人もいる。生まれ
たばかりの維新政権に対し、これを押しつぶそうとする旧体制側からの想像を超
える重圧がかかっているのに、全党一丸となってこれを跳ね返そうとする迫力が
感じられない。

 とくにマスコミの世論操作に対して効果的な反撃がなされておらず、情報戦で
は自民党、特権官僚、マスコミ、検察、米国タカ派に押されっぱなしである。平
成維新の司令塔であるべき官邸も国家戦略室も、情報戦ではほとんど機能してい
ない。情報戦における「反動の嵐」に対し、民主党の議員はなぜ一斉に街頭に出
て反撃しないのか。この現状を見て、気の早い一部の左派系評論家のなかには(
一部民主党支持者の中にも)、早くも鳩山政権に見切りをつけ、(保守派の御用
評論家と同じく)政権崩壊を予言するものさえ現れている。

 この政権交代が維新=革命だと本気に考えているのは、鳩山、小沢、菅、亀井
などごく少数にとどまっているのではないのか。なかでも、旧体制派から(一部
の身内からも)蛇蝎(だかつ)のように嫌われている小沢氏は、来夏の参院選に
向けて自らを「野戦軍の司令官」と位置づけているが、すでに二つの戦略的布石
を打っている。一つは、来年夏の参議院選挙が「平成維新の天王山」であり、こ
れに勝たなければ政権は安定しないし、維新の大業も成就しないと考え、全力を
傾けていることである。(旧体制派も、この参議院選挙での逆転勝利をめざし、
鳩山政権に対しあらゆる攻撃をしかけようとしている)。

 もう一つは、オバマ大統領のアジア歴訪から間をおかずに、維新政権の「アジ
ア重視の外交」を鮮やかに演出したことである。民主党議員140人を含む60
0名を伴った「派手な」小沢訪中について、自民党、マスコミは見当はずれの非
難、中傷(注)を繰り返したが、現実には、アメリカへのメッセージ効果をすで
に生んでいる。
    (注)98年のクリントン大統領の訪中をはじめ、欧米の指導者はしばし
     ば数百名を率いて訪中している。中国の省長たちが数百名を率いて来日
     することも珍しくない。

 東京で「日米同盟の強化」を謳いながら、北京では「米中(G2)で21世紀
をつくろう」と呼びかけたオバマに対し、小沢は北京訪問とその後の韓国訪問、
植民地支配への謝罪発言を含め、日中韓の結束の重要性を対置したのである。オ
バマは東京演説で「米国は太平洋国家であり、アジアへの関与を続ける」と強調
したが、米国はASEAN+日中韓の「東アジア共同体」から外されること、世
界経済の中心として劇的に台頭しつつあるアジアから取り残されることを最も恐
れている。小沢訪中、訪韓後の米国主要紙の論調が、日本への性急な要求を戒め、
「忍耐」や「冷静」を説き始めたのが注目される。

 最近、元国防次官補で知日派として知られるジョセフ・ナイ教授(ハーバード
大)も「(米国政府の一部は)日本の新政権に対して強硬な姿勢をとりたがって
いるが、思慮が足りない・・・もっと忍耐づよく、戦略的な交渉が必要だ。(普
天間のような)二次的な問題のせいで、東アジアの長期的な戦略を脅かしてしま
っている」と、対日強硬派を批判している(朝日、1.8)

 さらに、「アジア重視の外交」によって日中韓の連携が深まっていけば、米中
協調の深化、米朝対話の開始、6カ国協議の再開と北朝鮮の非核化の進展などと
あいまって、北東アジアの安全保障環境は一変し、沖縄、韓国駐留米軍の存在理
由は益々希薄になっていく。最近、日中の軍事交流が始まり、災害救助、テロ対
策など初歩段階ながら合同軍事演習までも行われるようになっているが、こうし
た信頼醸成活動で「中国脅威論」が消えていけば、沖縄米軍は益々無用の長物と
化していく。「アジア重視の外交」とは、東アジアの安保環境を変え、日米安保
の帰趨にも影響する外交戦略なのである。


◇◇ 2、政権交代を可能にした国民の「覚醒」


  すでに述べたように、政権交代をつぶそうとした守旧派の総力戦ともいうべき
「反維新=反革命」の策動は、いまも鳩山内閣をつぶすため執拗に続けられてい
るが、しかし、政権交代そのものを止めることはできなかった。では、なぜ政権
交代が実現したのか。それは、(1)ここ10年の自民党政治、なかんづく小泉構造
改革による国民生活破壊が、国民の忍耐の限度を超え始めたこと、(2)アフガン、
イラク戦争に失敗し、金融危機を世界に広げ、ドルの信任が揺らぐなど、自民党
支配を支える岩盤だった米国の世界覇権が崩れ始めたこと、(3)自民党政治を支え
てきた「官僚一流、官僚無謬」の神話が崩れたこと、(4)麻生首相や自民党への嫌
悪感が高まったこと、などの要因が強く作用して、有権者の地すべり的投票行動
を引き起こしたからである(拙稿「地殻変動はなぜ起きたのか」オルタ69号参照)。

 しかし、地すべり的投票行動を生んだ背景には、もう一つの重要な要因があっ
た。それは国民の政治的「覚醒」が徐々に始まっていたことである。これまで自
民党政府、特権官僚、これと結託したマスコミによって覆い隠されてきた「本当
の現実」に多くの国民が気づき始めたのである(しかし、最近のマスコミによる
猛烈な鳩山、小沢バッシングで、この「覚醒」が押し戻されているが、この点は
後で触れる)。

 1)「アメリカの時代」は終わったと感じ始めた国民
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  まず第1に、「アメリカの時代は終わった」「次は中国の時代、アジアの時代
だ」というのが世界の常識になっているのに、自民党政府も特権官僚もマスコミ
も、依然として「アメリカの時代」「アメリカの世界覇権」が続いているとの架
空の前提に立って政治、外交を進め、マスコミもそれに迎合する報道を流し続け
てきた。しかし、よく見ると世界の風景は一変しているのに気づきだした。

「世界一豊かな国」だった米国は、いまでは先進国中貧困率1位の国に変わっ
ている。
アフガン、イラクで世界最強の軍事力で8年も戦ったのに、ついに勝利できな
かった。この侵略戦争につぎ込んだ莫大な戦費も含め、膨大な財政赤字、貿易赤
字に苦しみ、世界一の借金国(世界一の対米債権国が中国)になっている。金融
危機を世界に波及させ、基軸通貨ドルの信任も急落し、世界各地でドル以外によ
る決済が始まっている。

 アメリカの裏庭とされる中南米では8割の国々が反米、非米国家になっている
し、EUはブッシュの時代に米国と決別した。オバマになってヨリを戻す方向に
向かっているが、米国を口説いてG7をG20に拡大させたのは英仏であり、I
MFや世界銀行における中国、インドの発言権拡大を要求しているのも英仏(日
本ではない)である。アラブ世界の反米感情はいうまでもないが、アフリカ諸国
も長い間の欧米との従属的関係を嫌って中国に急接近している。

 さらに、中露の連携で01年に結成された「上海協力機構」がユーラシアのど
真ん中で存在感を高めている。中国、ロシア、中央アジア諸国(カザフスタンな
ど4カ国)を中心に、インド、パキスタン、イラン、モンゴルもオブザーバーに
加えたこの組織は、世界の多極化、新国際秩序形成をめざしており、ブッシュ時
代に中露に対抗して作られた米国のユーラシア戦略(「不安定の弧」戦略)は完
全に空洞化している。

 日本人の海外渡航先を見ても中国への渡航者が年々増加し、07年には390万人
に達したのに対し、米国(本土)への渡航者は年々減少し、07年には130万人だ
った。米国への留学生も減少傾向にあり、日本人の対米意識に変化が現れている
ことが示唆されているのではないか。

 2)官僚政治への不信の高まり
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  第2に、「政治は三流でも、官僚は一流だから、官僚に任せておけば日本は安
泰だ」と長い間信じられてきた神話が壊れてきたことである。「官僚一流、官僚
無謬」など、とんでもないことだったことに、多くの国民が気づき始めている。
確かに戦後の一時期、政治、外交面では対米従属に甘んじ、経済面で欧州にキャ
ッチアップしようとした段階では、国家目標は単純だったので官僚の采配で国を
動かすこともできたが、冷戦終結後の複雑化する世界では、官僚たちの無能さが
露呈されてきた。日本は「失われた10年」を経て、国力の衰退を招き、一人当
たりGDPでも、90年代の世界3位から07年の23位まで転落し、G7中最
下位になっている。

 そればかりか、最近だけでも杜撰な管理による有毒な「事故米」の流通(農水
省)、5000万件の年金記録の紛失(厚労省)、守屋次官の収賄事件で露呈し
た防衛利権の深い闇(防衛省)、各省庁の裏金問題、ノーパンシャブシャブなど
の過剰接待等々、官僚の腐敗、堕落の例は枚挙に暇がないほどである。さらに、
特権官僚たちが天下り、ワタリを続ける特殊法人(179もある)への巨額の税
金の配分と華麗な老後生活の保障なども明るみに出てきている。

 保坂正康氏(ノンフィクション作家)は、敗戦直前の東条英機(開戦時の首相、
陸軍大将、戦犯で処刑)手記を読んで驚き、次のように書いている。「私はす
ぐ二つの感想を抱いた。ひとつは、軍官僚としての東条には、敗戦と言う未曾有
の事態に際しても、指導者としての自らの責任に対する反省がまったくないとい
うこと、もうひとつは、戦争指導にあたって300万人の国民を犠牲にしながら、
その痛みに対して何の思いも馳せていないことである」。

 「東条に限らず、軍官僚は、どのような苦境に日本を追い込もうとも、その責
任を決して認めず、ひたすら自分たちの決めた方針、方向のみにまい進するとい
う特徴をもっている・・・かつて軍官僚が国を滅ぼしたのと同じような事態を、
今また私たちの国は味わっている。日本はいわば官僚による<第2の敗戦>に突
き落とされようとしているのではないか」。

 そして、結論的に「官僚は国民への奉仕者」「官僚は国益を護る」「官僚は無
謬」という甘い認識は捨て、「<官僚は間違える>、<官僚は(省益どころか)
個益を追及する>と言う前提に立ってすべてを考えるべきではないだろうか」と
述べ、官僚国家からの脱却の必要を説いている(「官僚亡国」、朝日新聞出版、
09年)が、多くの国民も同じ思いである。

 「官僚神話」は、明治から昭和初期まで、大学進学率が極めて低く、帝大卒が
希少価値だった時代の遺物である。大学進学率が5割近くまで向上し、IT時代
を迎えている今、知識や情報の官僚による独占は崩れてきている。専門的知識や
情報では、官僚を上回る市民が多数を占めるようになっている。「官僚神話」崩
壊の社会的要因はここにもある。

 3)マスコミへの依存度、信頼感の低下
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  第3に、戦後、立法、司法、行政の三権に対して、第四の権力ともいわれるほ
どに力を持ってきたマスコミが、政治的には公正、中立の立場から真実の報道を
するという建前から大きくかけ離れ、自民党一党支配を支え、癒着し、権力迎合、
対米従属的報道、解説に偏して来たことに、国民はしだいに気づき始め、イン
ターネットなどのメディアの多様化ともあいまって、マスコミへの信頼感が急速
に低下してきたことである。

 大新聞は1000万部、800万部などの発行部数を誇ってきたが、実は「押
し紙」と呼ばれる「水増し」部数が相当数含まれていることが暴露されており、
偏向報道への批判ともあいまって、各社とも大幅な読者減少に悩んでいるのが実
態だ。TV各社も、低劣かつ偏向的番組が嫌われて視聴率が低下し、広告収入の
大幅減収で苦境に立たされている。

 今回の選挙戦をめぐっても、マスコミによる民主党バッシングが激しかった。
とくに小沢代表の失脚を狙ったキャンペーンは官邸、検察、マスコミが事実上連
携し、苛烈を極めた。小沢代表は辞任に追い込まれたが、小沢氏のイメージダウ
ンはあったものの、民主党は一時支持率を若干減らしただけで決定的ダメージは
受けなかった。あとを継いだ鳩山氏によって支持率を回復し、そのまま総選挙の
大勝利につながった。選挙後は鳩山氏の政治資金をめぐってバッシングが執拗に
続いているが、国民は、自民党には遥かに悪質な政治資金疑惑があるにもかかわ
らず、全く不問に付されていることに不信の念を抱いており、鳩山献金問題でも
醒めた目でみている。勿論、ファミリー内のカネとはいえ国民感覚からいえばケ
タ外れなので、十分な説明は必要である(「説明責任を果たせば、首相辞任の必
要はない」が74%。毎日)。

 選挙中の自民党による民主党へのネガティブキャンペーンについても、結局、
逆効果だったことが証明されている。マスメディアによる世論操作、国民洗脳が
限界を示し始めたのも、今回の総選挙の大きな特徴の一つであった。

 しかし、最近の鳩山内閣の支持率の低下ぶりを見ると、マスコミの鳩山、小沢
バッシングがかなり効き始めているように見える(ただし、民主党への支持率は
40、自民党20で、今も自民党を圧倒している)。この意味で、現時点における「
維新勢力」対「反維新勢力」の攻防の焦点は、鳩山政権が国民の「覚醒」をさら
に促すことができるか、旧体制派が大掛かりな国民洗脳作戦によって再び「目く
らまし」に成功するか、情報戦の成否にかかってきている。維新政府は、マスコ
ミの明らかな誤報、虚報に対しては毅然とした措置をとるほか、放送法や新聞倫
理綱領などの遵守を強く求めるべきである。

 そもそも、今のマスコミは時代遅れと不勉強で、今回の政権交代の意義を正確
に理解して報道、解説する能力に欠けている。従来から慣れ親しんできた「政局
観」「米国観」の枠を出られず、鳩山、小沢のスキャンダル追及(殆どが検察リ
ークの垂れ流しだが)、「小沢支配」と党内対立、官僚との確執、日米同盟の亀
裂といった手垢のついた切り口でしか記事が書けないのだ。首相会見時の記者の
質問のレベルの低さに呆れるが、これが今のマスコミのレベルなのである。小泉、
竹中時代の御用記者や評論家たちがいまだに幅を利かせているのも醜悪である。
マスコミの世界にも「政権交代」「世代交代」が必要なのではないか。さもな
ければ、マスコミの没落が加速されるだろう。


◇◇ 3、「無血の平成維新」をめざす鳩山政権


  1)所信表明演説の意義
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  選挙結果に示された国民の政治的覚醒を、象徴的かつ集約的に表現していたの
が、鳩山首相の所信表明演説である。この演説が「無血の平成維新」への「革命
宣言」であることはすでに触れたが、鳩山演説では、さらに、政治を官僚の手か
ら市民の手に取り戻すこと、そのため政治や官僚が独占してきた情報の公開を徹
底し、市民の政治参加を推進していくことをはじめ、「命と生活を護る政治」「
人間のための経済」「居場所と出番のある社会」「支えあって生きる日本」「新
しい公共の創出」「地域主権改革の断行」など、いずれも「平成維新」の遂行―
くにのかたちを変えていくための戦略課題が提起されている。

 この政権交代が文字通り維新=革命に発展するか否かは、国民の支持と参加如
何によるが、それを極度に恐れる守旧派は、この演説の意義をできるだけおとし
めるため、こぞって「抽象的で感傷的だ」「具体性がない。理念では飯が食えな
い」「ヒットラーの演説みたいだ」などと批判していたが、それはこの演説が、
守旧派が自らの支配のため国民に押し付けてきた幾重ものタブーや古い価値観の
呪縛から、国民意識を解放し、覚醒を促すインパクトを持つ内容になっているか
らである。

 2)民主党への期待と不安
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  しかし、政権交代の主役となった民主党は基本的に保守党であり、党内には社
民主義に近い中道左派から、新自由主義を信奉する超保守派までが混在しており、
鳩山、小沢氏も含めて改憲派が5割以上、集団的自衛権容認派が2割以上いる
ことも事実であり、民主党がもつ政治的限界をも冷静に見ておく必要がある。同
時に、現在主導権を握っているのは、中道左派を含む中道派、いわゆる「リベラ
ル保守」勢力であり、社民党、国民新党との連立を進めたのもこの勢力であり、
彼らが政権の中枢を占めている今日的意義を過小評価してはならない。

 さて、このようにして誕生した鳩山政権は、すでに「政権の蜜月」と言われる
3カ月を経過しているが、初めての本格的政権交代にしては大混乱もなく、これ
までのところ概ね順当なスタートを切ってきたと思う。CO2の90年比25%
削減で一挙に国際的評価を高め、国連総会での演説や相次ぐ首脳会談などを通じ
て「日本は変わった」との印象を世界に広めることに成功した(注1)。各大臣
たちの発言も官僚作文の棒読みでなく、自らの言葉で語っているし、前内閣の補
正予算の執行停止や事業仕分けもまずまずの成果を出している。初の国会で成立
させた法案は、いずれも国民生活に緊急、必須のものばかりである(注2)。
   
  (注1)在京外国人記者たちの鳩山評価はかなり高い。伊=101点、豪州
      =70点、シンガポール=75点、韓国=89点など。いずれも鳩
      山が米国の言いなりになっていないことを評価している(ASAHIN
      EWSTAR.12.22)
   (注2)今国会で成立した主な法案 ・肝炎対策基本法 ・原爆症基金法 
     ・新型インフル対策法 ・中小企業者に対する返済猶予法 ・郵政民
      営化凍結法など

 事業仕分けについては「乱暴過ぎる」「公開処刑だ」「パフォーマンスだ」な
どの批判もでているが、明治いらい予算編成や政策作りは国家官僚の専権事項で
あり、「秘技」とされ、エリート官僚たちによって密室で行われてきた。国民に
は全くのブラックボックスだった。それが今回初めて公開され、衆人環視(傍聴
者計1万人、TV、インターネット中継、ネットアクセス200万)のもとで、与党
議員、民間人の「仕分け人」が官僚と激論を交わしながら「廃止、縮小、見直し」
などの評価を下したことは、日本に近代国家が成立していらい初めての画期的
な試みであり、エリート官僚の特権剥奪、脱官僚依存への象徴的取り組みの一つ
である(これについては国民の支持も高く、90%近い。産経、11.23)。

 しかし、ここにきていくつもの高いハードルにぶち当たってきたことも事実で
ある。とくに、鳩山内閣をつぶすため、来年夏の参議院選挙で逆転勝利をめざす
旧体制派は、民主党への敵対的キャンペーンを強化している。小沢、鳩山への執
拗なスキャンダル攻撃、普天間問題などで日米関係の危機を扇動するキャンペー
ン、「天下り禁止」などの公約違反追求、経済無策と財政規律軽視を非難するキ
ャンペーンなどに力点を置いて攻勢を強めている。

 とくに来年度予算編成にむけて「公約違反」「増税路線」などと攻撃している
が、破産状態の国家財政を放置し、9兆円もの税収減(46兆が37兆円に20%減)
となるような経済運営しかできなかった自民党政治の責任について、マスコミは
口をつぐんでいる。反対に、政府の来年度予算案や成長戦略については何かと難
癖をつける一方、自民党政治に比べ画期的に前進した面や革新的施策については
口をつぐんでいる。

 3)厳しさ増す守旧勢力の反撃
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  米国の対日強硬派も含め、既得権回復を狙う旧体制派の執念はすさまじいもの
がある。決して甘く見てはならない。米国外交筋に強い人脈があるとされ、対日
強硬派の意向を代弁していると見られる某評論家は「(鳩山首相は)米国を甘く
見てはならない。ホワイトハウスや国務省と違い、情報機関や軍は違う思考回路
で動いている・・・」「鳩山首相は(米国によって)丸裸にされている。(対等
な日米関係、東アジア共同体、普天間問題先送りなどで、鳩山は)虎の尾を踏み、
『第2の田中角栄』になる危険がある」などと不気味な警告を発している(加
藤昭、ZAKZAK、09.11.16)。亀井大臣が「CIAに暗殺されない
かぎり、私はアメリカの言いなりにはならない」と覚悟の程を述べたのは、こう
した背景があるからである。

 政権奪回で失地回復、少なくとも来年夏の参院選の逆転勝利で、鳩山内閣を打
倒しようとする(米国共和党サイドも含む)旧体制派による執拗な抵抗と摩擦に
よって、鳩山内閣は乱気流に巻き込まれ、足並みの乱れが目立ち始めている。と
りわけ、週刊誌を含むマスコミによる新政権攻撃、とくに小沢、鳩山への誹謗、
中傷、虚偽、偏向報道は異常ともいえる状況で、再び国民を洗脳し、「目くらま
し」の世界へ引き戻そうとしている。

 しかし、ここで改めて確認しておきたいことは、今回の政権交代が戦後64年、
55年に戦後政治体制=「55年体制」が成立してから54年、明治維新による近代
国家成立いらい140年にして初めて、国民の投票によって起こった政権交代であ
り、「平成維新」をめざす政権が誕生したことである。ということは、新政権が
抱える課題は一世紀を超えて、少なくとも半世紀を越えて残されてきた歴史的課
題の解決であり、まさに「回天の大事業」なのである。一朝一夕で成し遂げられ
るものではなく、基礎作りだけでも2期8年はかかる大事業であることを、しっ
かりと肝に銘じ、腹をすえて粘り強く取り組む覚悟が必要である。

 とくに、新政権は積年の自民党政治による巨大な負の遺産を背負って出発しな
ければならなかった。財政は破綻寸前の状態であり、その上、麻生内閣は政権交
代を見越して、存在を否定していた埋蔵金まで掘り出して「焦土作戦」を展開し、
不要不急の事業に予算を浪費した。その一部は前内閣の補正予算の執行停止や
「事業仕分け」で取り戻されたが、前政権が正常な政権ならば、次期首相のため
一定の財源をリザーブしておくのが暗黙のルールのはずであるのに、下野寸前に
2億5000万円の機密費まで持ち去っている。

 経済では輸出産業に過度に依存する産業構造が経済の不安定を招き、世界の流
れでもある低炭素型産業構造への転換が遅れており、地域経済は疲弊するまま放
置されてきた。
  日米関係でも、「NOと言えない」過度の従属状態が固定化され、郵政民営化
はじめ「年次改革要望書」によって米国の都合に合わせて社会システムが作り変
えられてきた。沖縄米軍基地問題や駐留経費への大盤振る舞いなど、余りにも大
きな負の遺産である。
  新政権は、こうした数々の負の遺産に手足を縛られ、「肢体不自由」の状態で
維新街道を走り出したのである。正常な走りになるまである程度の時間がかかる
のは、理解しなければならない。


◇◇   4、鳩山連立政権の課題は何か


  1)「富と権力と情報」の配分を変える
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  そこで、そもそも画期的な政権交代によって実現した鳩山内閣の課題は何なの
かを考えてみたい。
 
第1に、最も基本的な課題は「富と権力と情報の配分」を根本的に変えること
だ。自民党が戦後半世紀以上にわたって進めてきた大企業(経団連)、アメリカ、
特権官僚、マスメディア優先の資源配分を、国民の生活と権利の向上を最優先
に、大きく切り替えることだ。OECDの調査によれば、日本はGDPに占める
福祉や教育予算のウエイトが、先進国中最低に近い。こうした教育、福祉、医療
軽視の資源配分を先ず真っ先に是正しなければならない。逆に、世界6位の防衛
予算(注)、米軍駐留費の75%%負担などは大胆に仕分けすべきである。
   (注)日本の防衛予算は米国の同盟国では第4位、陸上兵力7位、海上兵
    力2位、航空兵力5位にランクされている(米国防省資料)。

 また、法人税、所得税はじめ大企業や高額所得者優遇の税制を大幅に見直し、
欧米よりも低い累進度を高めるべきだ(所得税の最高税率は86年の70%から現在
の37%へ、法人税は84年の43.3%から現在の30%へ低減されている)。税財源
の移譲を伴う分権の徹底化による地域主権体制の確立、官僚支配の根源の一つで
ある情報支配を打破するため、情報公開の徹底を図ることも重要である。マスコ
ミに対する優遇制度(独禁法の特殊規定など)や便宜供与(記者クラブなど)も
見直すべきである。

 2)官僚主導の政治から政治主導の政治へ
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  第2は、明治いらい連綿と続いてきた官僚主導の統治構造を解体することであ
る。国家戦略室、行政刷新会議、事務次官会議の廃止、政務三役会議、国会での
官僚答弁の廃止など、次々に脱官僚依存の積極策が打ち出されている。

 しかし、官僚機構の変革は一筋縄ではいかないことも事実だ。何しろ、一世紀
以上もほとんど無傷で生き延びてきた組織であり、官僚制を打破するにも官僚を
使わなければならないからである。そこで、気になるのは鳩山内閣の高級参謀た
ちの多くが、旧大蔵官僚をはじめとする霞ヶ関出身の政治家で占められているこ
とだ。国家戦略室長、行政刷新会議事務局長、官房副長官などである。霞が関を
見限って政治家になった「過去官僚」たちだが、人脈はつながっており、その多
くが東大法を頂点とするエリートたちで、明治いらい「富国強兵」の近代日本を
つくったが、無謀な戦争で国を滅ぼした者たちの末裔である。

 面従腹背は官僚の得意技であり、「政治家に使われている」とみせて「政治家
を使いこなす」術にも長けている。しかし、階層制社会に生きる官僚にとっては
「人事が万事」である。キャリア官僚については政治家がしっかりと人事権を掌
握し、抜擢、左遷を含め「信賞必罰」「一罰百戒」の人事を徹底し、官僚の抵抗
を撃破していくべきである。羽毛田長官や藤崎駐米大使などは罷免に値する。時
に応じて政治の厳しさ、怖さを見せつけなければ、いずれ官僚機構に絡めとられ
てしまう。
 
しかし、官僚依存の政治を脱するには、政治家の自己革新が不可欠である。官
僚を「使いこなしている」とみせて「使いこなされてきた」多くの自民党政治家
の轍を踏んではならない。そのためには官僚も一目置かざるを得ないような人格、
識見を備えた政治家になるよう、不断の修行と研鑽が不可欠である。政治主導
とは政治家にとってこの上なく厳しい道でもあることを知らなければならない。

 3)「国民の生活が第一」「人間のための経済」へ
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  第3の課題は、「国民の生活が第一」という民主党のメーンスローガンを、目
に見える形で早急に具体化していくこと、とくに、小泉構造改革を通じて深刻化
した「貧困」や雇用問題に緊急に対処しなければならない。何よりも、小泉改革
で破壊されたセーフティーネットの建て直し、再構築を急ぐことである。

 最近、NHKテレビで「子供の貧困」や「30代の貧困」の問題を特集していた
が、「ついに日本もここまできたか」というショックを受けた。登校してそのま
ま保健室で寝込んでしまう子供。給食が唯一の食事という子供。年収200万円
以下の世帯の子供と1000万円以上の世帯の子供との間には、学力差だけでな
く体力差、体格差まで開き始めたこと、高校中退者が急増していること等々。ま
た、高卒で就職に失敗し、不安定雇用で食いつないできたが、負け組みで30代
になると底辺から這い上がることができず、「居場所」も「出番」もなく餓死し
たり、自殺するものが増えているなど、日本社会の持続可能性が失われつつある
実態が浮き彫りになっていた。

 したがって、生活保護の母子世帯加算の復活、子ども手当て、高校授業料無償
化などは決してばらまきではなく、日本社会の持続可能性を守るための国家的、
社会的責任の問題であることを明確にしていく必要がある。セーフティーネット
を再構築するには、浅薄な自己責任論をふりかざし、「社会保障は惰民を作る」
「セーフティーネットは国民を甘やかす」といった小泉・石原慎太郎的価値観を
克服し、「支えあって生きる日本」をめざし、「新しい公共」を創出するなど、
国民の価値観の変革も伴わなくてはならない。弱者に冷酷な自己責任論ではなく、
「自立と共生」のための社会的責任論を明確に位置付けていかなければ、日本
社会の持続可能性が壊れてしまう。

 欧米の格差社会の実態を克明に調査した矢部武氏は「米国の福祉機能は小さい
が、NPOが政府の代役を担っている。また、欧州諸国の多くには手厚い労働者
の社会保障などを含め、<政府が貧者・弱者の面倒を見るのは当然だ>と言う考
え方が浸透している。翻って日本は福祉機能が小さい上に、NPOなどによる社
会的な救済システムがあまり整っていない。こうして見ると、日本は先進国のな
かで最も冷たい格差社会のように見える」「日本では、生活保護を申請に来た人
を窓口から追い返すようなことが行われ、その結果、絶望して自殺する人が相次
いでいる」と書き、「人間の尊厳と生存権を奪う<世界一冷たい日本の格差社会
>」を告発している(『世界で一番冷たい格差の国日本』光文社。09年7月)。

 また、深刻化する雇用問題はじめ、国民生活の安定のためには、当面の景気対
策のみならず、従来型の公共事業、輸出振興策に替わる新たな成長戦略が必要で
ある。このためイノベーションを奨励し、若い起業家たちが希望を持ってベンチ
ャー企業を起こせるよう、インキュベータなどの環境整備を進めるべきである。

また、「人間のための経済」「コンクリートより人へ」の観点に立って、安心社
会の基礎となる福祉、医療、教育に重点的に財源と人材を配分しなければならな
い。先進国中最低の食料自給率を改善するには、大幅に資金と人材を投入して一
次産業の振興を図る必要がある。さらに、世界トップクラスの環境技術を生かし、
国内はもとより、アジアを重点に環境協力のネットワークをひろげ、環境産業
の発展を図ることで雇用吸収力を高めることができる(最近の「成長戦略基本方
針」は概ね妥当である)。

 4)「対等な日米関係」をめざして
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  第4の課題は、半世紀以上にわたる対米追随の日米関係を「対等な日米関係」
に切り替えることである。10月初めに来日し、普天間基地問題で日米合意の早期
履行を求めたゲーツ国防長官の恫喝的発言は、独立国に対する発言とは思えない
異常なものであった。しかし、マスコミはこの無礼な発言を全く批判せず、即時
履行を否定し続ける鳩山首相を「日米関係を危うくする」「米国は怒っている」
と批判し続けた。沖縄県民の怒りや日本国民の反発を報じないマスコミに対し、
国民の間に「どこの国のマスコミか」との批判が起こったのは当然である。

 「対等な日米関係」を求める鳩山首相に対し、11月に来日したオバマ大統領も
含め、アメリカ側は「日米はすでに対等である」と繰り返しているが、半世紀以
上にわたって外国軍隊の駐留を認めている独立国が、世界中どこにあるのか。し
かも米軍駐留費用の75%を日本が負担しているが、この額は米軍駐留を認めて
いる十数カ国の負担総額の半分以上を占めており、世界一安上がりの基地なので
ある。米軍が居座り続ける根拠はここにもある。

 しかし、かくも長きにわたる米軍基地の存在は、アメリカ側の意図だけによる
ものではない。自らの世界戦略のため(日本を守るためではない)、日本を最大
限に利用したいアメリカのニーズと、中、露、北朝鮮の「脅威」(これらはすべ
て外交的課題であり、軍事的課題ではない)を誇張し、その「抑止力」として米
軍駐留が「必要」だとし、多額の費用負担を条件に、駐留を求め続けてきた自民
党政府の対米従属外交の結果でもある。しかも、自民党政府は、冷戦の終結やソ
連崩壊、米中接近、6者協議などで北東アジアの緊張が緩和し、日米安保に規定
する在日米軍の存在は緊要性が低下していることに口を閉ざしてきた。元CIA
東アジア部長のアーサー・ブラウンは次のように証言している。

 「もともと米国にとって普天間は優先度が低く、<明日、普天間がなくなって
も困るわけじゃない>と言う認識だ・・・神奈川県にあるキャンプ座間は、米軍
で<博物館>と揶揄され、実質的な戦闘機能はほとんどない」「歴史的な政権交
代を果たした今こそ、占領時代からの懸案である米軍基地問題を、鳩山首相はオ
バマ大統領と腹を割って話し合うべきだ。(オバマも政権交代を理由に、ポーラ
ンド、チェコへのMD配備を撤回している)」。同氏は、さらにいくつかの遊休
化した米軍施設を挙げ、在日米軍の必要性が減少してきていることを証言してい
る(週刊朝日、11.27)

 来年は日米安保改定50周年に当たるので、日米関係を見直す好機である。冷
戦終結、ソ連崩壊から20年、G7からG20への世界経済の主役交代、BRI
C、とりわけ中国の劇的な台頭など、国際情勢は大きな構造変化を遂げている。
米国もまた「核のない世界」をめざし、一国主義を捨てて国際協調外交に踏み出
したオバマ大統領の時代に変わっている。日米安保見直しの絶好の機会である。

とくに、05年、小泉=ブッシュ時代に両国の外相、防衛相によって署名された共
同宣言「未来のための変革と再編」は、安保条約の極東条項をはずし、テロとの
戦いなど「世界の課題に対処」する安保に拡大されている。これはブッシュ=小
泉時代の宣言であり、当然見直されるべきである。

 アフガン、イラク戦争は、いかに強大な軍事力でもテロとの戦いや国際紛争解
決の手段としては有効性を失っていることを、数千の米兵の死者、十数万のイラ
ク、アフガン国民の犠牲者たちが身をもって実証してくれた。日米安保は、北朝
鮮の非核化、東アジア共同体など東アジアの安保環境の改善とあいまって、軍事
色を脱し、環境、防災、医療、教育、科学技術などを柱とする「平和友好条約」
に切り替えていくべきである。子や孫の世代に借金のツケを回すことよりも、米
国の軍事戦略に加担し続ける安保条約のツケを回す方が遥かに罪深いことを知る
べきである。

 もう一つ、対米従属を正していく上で重要なのは、小泉内閣によるイラク戦争
への加担について(すでに英国議会の独立調査委員会が始めているように)徹底
的に検証し、対米追随外交がいかに国益を害してきたか、その実態を明らかにし、
小泉元首相と自民党の責任を問うための徹底した調査を行うことである。民主党、
社民党有志議員が始めた調査委員会の立ち上げ準備につよく期待したい(NHK.
12.24)。


◇◇むすび 「平成維新」の大業成就へ市民の参画を


 「平成維新」を遂行するには、内外情勢を見極めつつ、政策の優先順位とタイ
ミングに細心の注意を払いながら、これらの課題を逐次、着実にクリアしていか
なければならない。もちろん、これに対する旧体制派からの反撃と抵抗も厳しい
ものがあると予想される。とりわけ、戦後日本を自国の世界戦略の中に組み込み、
政治、経済、軍事面で最大限に活用してきた米国は、米国離れを意味する「対
等な日米関係」「アジア重視の外交」などをめざす鳩山政権への不信感を強めて
くる可能性がある。対日タカ派による今まで以上の恫喝や介入も予想される。し
かし、米国民の6割はアフガン戦争に反対しており、国際世論もノーベル平和賞
受賞者のオバマ大統領が「戦争国家アメリカ」をチェンジしてくれることを強く
期待している。鳩山政権もこの「チェンジ」に力を貸すべきである。

 こうした内外の摩擦と抵抗を排して、乱気流を乗り切り、上昇気流を作り出し、
「維新の大業」を進めるには、何よりも「覚醒」し始めた国民の強い支持を取
りつけていかなければならない。そのためには、徹底した情報公開が必要である。
それによってさらに国民の「覚醒」を積極的に促していき、維新の大業に圧倒
的な市民参加を作り出していくことが民主党、社民党、国民新党連立政権に課せ
られた歴史的使命ではないか。

(元長洲神奈川県知事の特別補佐官、副知事。現在、アジアサイエンスパーク
  協会名誉会長。1月8日、菅財務相の記者会見を聞きつつ)

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