オルタ118号の感想

【オルタのこだま】

オルタ118号の感想

                    武田 尚子


1)118号の感想

 オルタ118号は大半を読ませていただきました。
 何時もながら濱田氏の『カウントダウン・メルトダウン』を先ず、たいへん興味深く拝見しました。福島事故を不必要に大きな災禍にした日本側の対応の仕方に、昔変わらぬ縦割り官僚制度から一歩もでないほとんどの責任者たちの責任逃れの言動に泣きたいような思いに包まれました。

 (近藤俊介原子力委員会委員長のような例外も有りますが)原爆唯一の被爆国としてはあり得ないほどのノー天気で、せっかく核テロ訓練をやりながら「成田空港に外国から放射性物質が持ち込まれたという想定はやめてください」といわれてセシューム検出訓練もできない、あるいは新潟のように、県から「被爆者が出たという想定はやめて下さい」とか、まるで「核テロ訓練なんておよそ無意味で無駄なこと」とみられているとしかおもえない政府側の受け止め方ですね。そしてそれに抗議もせず、救急車がサイレンを鳴らして走り回るとか、武装テロリストに攻撃された場合は駐在のおまわりさんに一報することで訓練を終えるとか、まるでへたくそな喜劇の舞台をみているようなばかばかしさで、これがほんとうに日本なのかと信じられない思いで読みました。日本人全部がけっしてそうではないはずですが、あらゆる段階での想像力の欠如と、ともかく自分の縄張りが非難されないですむことだけを考えているような、卑小さの典型みたいな人がけっこう地位の上下に関わらずいることを知って、いまさら唖然です。

 今のアメリカ共和党の中道派を突き上げているテッド・クルーズを先頭に若い人達を中心とする連中の無知と傲慢さはよくご存知だろうと思います。彼等は本気で、オバマをインピーチせよと、“大統領のインピーチの仕方”という本を党内に配って本気で対策を練っています。成功するはずも有りませんが。かとおもうと、今日は、なんらかの会場に現れたオバマに面と向かって「お前さんの顔を見るのさえおれにはたまらない」といった共和党員がいたというのを、ニュースの終わりでキャッチしてみました。(どんな会場だったのか明日はわかるかと思います。)

 アメリカ政治の、とりわけテッド・クルーズ出現以来の共和党のふるまいに日夜腹を立てているところですが、日本を考えると、西村氏の「大本営発表級のウソ」に出てくる、橋下氏や石原慎太郎氏のような政治家の品の悪さ、教養のなさにかなり共通するものを感じて、ますます気を腐らせています。ただアメリカの場合は、民主主義の訓練が日本よりよほど徹底しているので、「出て行け」みたいな言葉をぶつけたりしないのはまだしもですが。わたしの好きな経済学者クルーグマン氏にいわせれば、「共和党はオバマケアの内容を嘘という名のシラミでぬり固めてアメリカ中に逆宣伝するのに忙しい」のですから、どちらがどちらとも簡単にはいえません。でも、少なくともオバマは、間違いはいくつかおかしましたが、彼の人間的な誠実さには何の汚点もなく、彼の知識とビジョンでは、ここ何代かの大統領のだれにも劣らないと思います。たまたま彼が黒人であリ、成功していることが、政権を取れない共和党系のアメリカ白人の多くのしゃくに障って、アメリカではこのところ黒人偏見がまたもや噴出してきました。

 ジェンダーの問題では、オバマのもとでアメリカは大きな進歩を見せています。が、差別は勿論ジェンダー問題の中心なので、黒人問題に長い時間がまだまだかかるであろうように、女性の解放にもおそらくかなりの時間がかかることでしょう。でも考えてみると、これほど大きな挑戦を与えられている時代に生きることは感謝すべきことなのでしょう。のほほんと年をとるわけに行かないとおもわせてくれるだけでも。

2)日米関係に新しい外交を〜猿田論考を読んで

 猿田佐代氏の論考を、なんども首肯しなが読ませていただきました。非常に重要なお仕事と思い今後のご発展を願ってやみません。
 日米間の外交チャネルが、ほとんど両国のシンクタンクをベースにして行われていることも、知日派の潜在的な発言力の大きさも、政治の素人である私には新しいレッスンでした。

 二つの点についてだけ、感想を述べさせていただきます。
 一つは、政策をつなぐカウンターパートの問題であり、二つ目は、知日派の激減が憂慮されているという点です。

 いうまでもなく、アメリカに住む者にとって、時たま現れる日本関連記事にも、革新的な視点がていねいに紹介されることは あまりないように思います。ただ、オバマ大統領の政策は、日本のりべラルなカウンターパートにも受け入れやすくはあると思うのですが、アメリカの国益という限界を超えられない大統領のニュアンスが、伝わらないことが有るのは勿論ですし、ましてや日本の革新勢力の現状や政策は、アメリカ人一般には決して理解されているとは思いません。

 2016年の選挙で、万一保守党が勝利したら、リベラルな声は日米の両方でおおいに塞がれてしまうことでしょう。そのときのためにも、日本の良識をもつ人達を友人と考えるアメリカの知日派との交流を大事にし、さらにその数を増やさなくてはならないのは、まったく猿田さんのいわれる通りです。

 1973年にアメリカに移住した私が、マンハッタン郊外のこの街に落ち着いたとき、日本人のいる家庭は3軒だけでした。高度成長の波にのって、企業戦士の家庭は瞬く間に増えてゆき、十数年のうちには、この2万人余のコミュニティに150軒以上の日本人家庭が生まれました。日本紹介のバザーや、ニュージャージーではじめての子供の発明クラブの創設そのほかの努力が認められて、学校側では、これまたニュージャージーでは最初の公立学校での日本語授業を初めてもくださいました。

 しかし今、日本語授業は公立学校から姿を消し、日本人家庭はわずか34軒にへり、日本バザーだけは街の名物として残りました。いやもうひとつ、日本の影響として確かに残ったのはお寿司です。最高の健康食だと信じて、週一回は必ず私たちも行くお寿司屋さんにやってくるアメリカ人を何人か知っています。
 一方、かつては日本人街のおもむきさえみせたフォートリーの商店街には、韓国店の看板がひしめくようになりました。

 こんな私事をお話しするのは、猿田氏が強調していられる、多様なレベルでの日米間のコミュニケーションの強化に、せめて一市民のレベルでもなんとか参加すべきではないか、しかしそれを実現するには、具体的にはどうしたらよいだろうという疑問を、私自身もいだいているためなのです。

 いわば、お寿司やバザーを超えた草の根の知日派作りですね。
 私の母校のNY同窓会には、英語のプロフェッショナルはもとより、中国人ジャーナリストと結婚なさってエール大学で定評の有る日本語教育に何十年かを費やされた方も、中国語の同時通訳もいらっしゃいます。同窓会の友人たちに、NDの存在を知らせることから、はじめて見ようかと思います。

 NDの会員には登録していただきたいと思います。
 重ねて、猿田さんのご健闘に声援をお送りいたします。

 (筆者は米国・ニュージアーシー州在住・翻訳家)


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