俳句57

■俳句                        富田 昌宏

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   縫目なき空の青さや稲の花

  稲の香や生涯此の地守らむと

  職退いて野良人となる新酒かな

  積み上げし本の崩るる残暑かな

  掘井戸の蓋打つ音や桐一葉

  桐一葉牛の瞳に嘘はなし

  秋高し牧場の牛の背番号

  紅は雨聴く色や萩の花

   (妻新盆二句)
   新盆やつとに増えたるひとり言

  栗茹でヽ湯気もろともに妻の霊

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  ◇「 蚯 蚓 鳴く 」
   平成20年度栃木県芸術祭文芸作品・俳句の部入賞作品*
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  農に生き土に還る身蚯蚓鳴く

  代掻くや心の起伏均しつつ

  頷きしごと田植機の動き出す

  初筍秘仏のごとく掘られけり

  突っ張って乾く野良着や風五月

  日々平穏じゃがいもの花咲きにけり

  蚊を打ちて仏心揺らぎゐたりけり

  睡蓮にうすくれなゐの羞恥あり

  南部風鈴関東弁に馴染みをり

  夏蝶や六法を踏む石舞台

   (作句者は俳句結社「柿の木」代表)

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*この作品は随筆・詩・短歌・俳句・川柳など各部門ごと
に文芸賞(1名)準文芸賞(2名)文芸奨励賞(5名以
内)で富田昌宏氏の次の作品が準文芸賞に選ばれました。
オリンピックでいえば、いわば銀メダルです。

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