安倍は日本をアメリカに「殉死」させる気か

【戦後70年を考える(4)私にとってのアジア】

安倍は日本をアメリカに「殉死」させる気か

久保 孝雄


 7月16日、過半数の国民が反対する安保関連法案が衆議院で強行可決された。国会は前日から特別委員会での強行採決に抗議して駆けつけた数万の市民の怒りの声に包まれていた。しかし安倍は国民の声を一顧だにせず、「夏までに安保法制を成立させる」とのアメリカとの約束を最優先し、憲法破壊、「平和国家日本」破壊の暴挙を強行した。

 友人の一人は「安倍は日本亡国への道をまっしぐらだ。アメリカもそうだ。時代の大転換期とはいつもこういうものではないか」と言っていたが、いぜん深刻なフクシマ危機も含め私の実感もこれに近くなった。

 瀬戸内寂聴(93)さんは、高齢かつ病後の不自由な体を車椅子に乗せて京都から東京へ馳せ参じ、国会周辺の抗議集会で「いま日本は本当に恐ろしいことになっていることを申し上げて死にたい・・戦争にいい戦争はない、すべて人殺しだ・・このままでは日本は駄目になる、滅びる」(6.25)と訴えられたが、八十路半ばの私も同じ思いだ。

 戦後70年、一貫して革新の側に身を投じ、二度と再び「戦争をする国」に戻ることのないよう、平和と民主主義、人権と福祉が重視される人間的社会をめざし、さらに近隣諸国との友好を深め、アジアと世界の平和に貢献する日本をめざして一臂の力を傾けてきた人間の一人として、亡国への道をひた走る日本を見るのは、耐え難い。別の友人は「安倍内閣の前に死にたかった。こんな日本を見ないで済んだのに」と嘆いたが、「とてもこのままでは死ねない」とも言った。

 戦争法案の廃棄を目指す闘いはこれからも続く。安倍右翼政治の暴走は一刻も早く止めなければならない。世論無視、歴史への無知、無教養の右翼丸出し政治に、反対運動にも新しい動きが生まれている。従来の中高年、男性中心から中・高・大の学生、子連れの母親たちを含む女性グループ、さらに憲法学者を先頭に多くのジャンルの学者、文化人、アーチスト、法曹界の人々がこぞって動き出した。オール沖縄で抵抗を続ける米軍基地反対運動も本土の運動と強く共鳴し合い、支え合っている。

 ところで、安倍が独裁的権力行使までして忠誠を尽くすアメリカはどうなのか。アメリカの政治と経済を支配する軍産複合体は、世界中で国際緊張が持続し、数年おきに軍事紛争が起きないと立ち行かない体質を持っているので、 21世紀に入ってからでもアフガン、イラク、シリア、リビア、ウクライナなどで次々に戦争を起こし、軍事介入をして数千人の米・欧兵を殺し、数十万人の中東、アラブなどの無辜の民を殺してきた。このためアメリカ国民の6割に反戦、厭戦気分が広がり、中東、アラブはじめ世界中に反米・嫌米機運が高まり、アメリカの威信は急落しつつある。チェコのゼマン大統領は「アメリカは、国際情勢を客観的に評価する能力を失っている。過去10年間の外交政策は、深刻な過ちという点で抜きんでている」と断じている(スプートニク、7・1)。

 7月8〜10日、ロシア中部の小都市・ウファで同時開催されたBRICSと上海協力機構(SCO)の首脳会議は、戦後70年続いてきた米欧中心の世界秩序、その基軸をなすアメリカ覇権が崩壊し、「多極的な世界の新たな中心、より民主的な国際関係の新体制」(リャブコフ・ロシア外務次官)が形成されつつあることを内外に告げる歴史的な会議になった(日本のマスコミは無視・軽視した)。とくに注目されるのは上海協力機構のオブザーバーだったインド、パキスタンが正規メンバーに迎えられ、中露印パ(やがてイランも)が手を結ぶことでユーラシアの地政学に大変化が起きること、SCOにもBRICSにも参加希望国が増えていることだ。ギリシャのロシアやBRICS銀行への接近も注目されている(この項は改めて論じたい)。

 アメリカのあるシンクタンクが作った言葉に「JIBs」というのがある。アメリカの衰退とともに衰退していく国の頭文字を取ったものだ。すなわち Japan、Israel、Britain の3国だ。しかし、このうちアメリカと最も緊密な同盟関係にあるイギリスは、いち早くアメリカの衰退を見越して中国に接近しており、ウクライナ問題でアメリカ主導の対露制裁にも消極的だ。イスラエルもイラン問題を機にアメリカと距離を取り、ロシア、中国への接近を模索し始めた。ただひたすらアメリカに忠誠を尽くし、国民世論を無視して退潮するアメリカを軍事、外交、経済面で支え、補完しようと憲法破壊までして対米隷属政治を強行しているのは、日本だけだ。

 しかも、予算削減でプレゼンスの低下に苦しむ米軍の補完、代替役として自衛隊を最大限活用すべく、集団的自衛権行使を含む新方針(新ガイドライン)のシナリオを描いたのは、アメリカのジャパンハンドラー(「日米安保」でメシを食う人)たちだった。今度の安保法案も2012年8月、日本に提示された「第3次アーミテージ・ナイ・レポート」のコピペであることが暴露されている(『週刊朝日』7・17)。中国や北朝鮮の脅威をことさらに煽って安保法案成立を後押しするのも彼らだ。

 安倍は「沈みゆくアメリカ」に日本を「殉死」させるつもりなのか。「法の支配」を高言(安倍談話)しながら憲法破壊を強行し、対米隷属を深める安倍は紛れもなく「売国奴」だ。

 (筆者はアジアサイエンスパーク協会名誉会長)


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