帝国アメリカの支配と日本、北朝鮮

帝国アメリカの支配と日本、北朝鮮    皆川 昭一

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 北朝鮮の核実験に関連して、「国体護持」を金科玉条として本土決戦を呼号し
た日本と、「金王朝護持」?で最後の危険な賭けにでた北朝鮮とは同類である、ア
メリカの封じ込め作戦によりABCDラインによって包囲され、自滅に至ったの
はそんな昔のことではない、北朝鮮は日本の過去と現在を勉強しろ、というオル
タ34号の編集部の「北朝鮮の核実験と東アジアの軍事的緊張に反対する」を勝
手に要約して、少々考え込んでしまいました。
 編集部の指摘するように、核実験を行って金王朝の体制護持に狂奔する北朝鮮
と本土決戦を呼号して天皇制という国体護持をもくろんだわが軍国主義日本の
断末魔の策謀とは双子のように相似形をなしていることは言うまでもありませ
ん。

 一方、アメリカの現在の北朝鮮に対するやり方もかつて日本をABCD包囲網
で封じ込め、追い込んだやり口とおなじ手法であることも言を待ちません。アメ
リカの手法は今も昔も何も変わっておりません。日本をつぶしにかかった手法を
今度は北朝鮮つぶしに適用しているわけです。
 誇大妄想的な指導者に領導された戦前のパックス・ジャポニカの帝国日本が自
滅的に消滅したのち、敗戦日本は、パックス・アメリカーナという世界支配シス
テムの一環に組み込まれ、アメリカを宗主国とする安保条約体制の下で、とりあ
えずは従属国として専守防衛に落ち着いている平和憲法が与えられています。日
本の一部のアホな無定見の指導部が言うように、もし日本が核武装したら再びア
メリカに完膚無きほど空爆されることになるでしょう。

 旧約聖書をみますと、弱小国ユダヤ・イスラエルが、北方の覇権帝国であった
アッシリアおよびバビロニアとこれに対峙する南方の帝国エジプトとの間に挟
まれ、指導層が定見なく右往左往した挙げ句、結局、亡国の憂き目に至ったこと
が記録されております。アッシリアやバビロニアの世界政策は、ユダヤ・イスラ
エルなど周辺の弱小国を宗主条約で安全保障を行って保護国化し、そのかわりに
自己の版図拡大の戦争の際には、兵力や財力を提供させる義務を課しました。

帝国と従属国との関係は、2500年後の現在の日米関係とそっくりといえるほどの
生々しさがあります。帝国バビロニアはペルシャ帝国に滅ぼされ、ペルシャはア
レキサンダー大王によって、そのヘレニズム・ギリシャの三つの帝国はローマに
よって滅ぼされました。イエスの時代のローマ帝国とヘロデ大王のユダヤも帝国
-属国の関係にありました。民族主義で暴発したユダヤはローマによって鎮圧さ
れ、イエスから100年後には歴史から抹殺され、跡>形なく消え去りました。

 聖書にある二千数百年前の古代帝国と同型の支配システムを承継しているア
メリカが、遠い将来は別としても、これから数十年はまだ帝国として影響力を保
持し続けていくと想定できます。北朝鮮の金王朝支配の現状はかつての軍国日本
の過去の姿です。日本が滅びたように、北朝鮮が解体するか屈服するまで圧力が
止むことはないことは容易に言うことができます。
 
強力な世界支配を維持する帝国アメリカの下で、暗愚な専制支配を続け危機を
増長させ挑発する北朝鮮の指導者と定見のないアホとしかいいようのない日本
の一部指導者の妄動の狭間にあって、弱者である民衆は、賢く知恵をしぼって、
帝国支配のシンボルである核を廃絶することおよび戦争の放棄をうたった日本
国憲法の理念を愚直に世界を相手に訴えていくほかはないだろうと思いました。

 西欧由来である自由、基本的人権、民主主義は、とやかく言われながらも普遍
的価値であり、我々もその価値観を共有しております。戦争の放棄し、大量破壊
兵器である核兵器を廃絶するということは、国家権力に対して殺人行為をもはや
許さないという命令です。この内外に対する国家への殺人禁止命令は、自由や基
本的人権と同じように普遍的な価値を有しており、愚にもつかない八紘一宇など
とは違って、敗戦を経験し被爆国となった日本から発信できる唯一の世界思想で
す。パワーポリティクスの世界にあって、迂遠の道のようにはみえますが、歴史
体験をふまえて、日本国憲法の価値を世界に訴えることは日本人のミッションな
のではないでしょうか。
                    (筆者は元横浜市議会議員)
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