店員さんのいない東芝

日中間の不理解に挑む(3)

店員さんのいない東芝

李 やんやん

 母親が胆嚢ガン。突然の衝撃的な知らせにいても立ってもいられなくなり、故郷に飛んだ。
 切除手術を受けたばかりの母は、思ったよりもずっと元気そうで、とりあえずはほっとした。遠くで暮らす自分にでもできる親孝行はといえば、キッチンの大掃除と、古くなった冷蔵庫や洗濯機を買い換えてあげることぐらいしかなかった。

 「蘇寧」という全国展開をする大型電器屋さんを訪れ、例によって買い物一つにしても「知り合い」のコネを探し当て、少しばかり余分に値引きしてもらう準備を整えた。メーカーごとにブースが分かれ、半端ない商品の多さに圧倒された。こういうときは自然に「有名メーカー」に目がいく。隅っこにパナソニックのコーナーがあり、同じコーナーの片隅に、東芝の冷蔵庫が数台だけ置いてあった。たくさん見たなかで、外観も性能もこちらのニーズ的にも最も気に入ったのは、東芝の冷蔵庫だった(日本の現時点の製品に比べれば、少しばかり型が古いのだが)。しかし、熱心に説明し、強く薦めてくれるシーメンスやLG、サムスンなどの海外メーカーに比べ、パナソニックはずいぶんと控えめで、東芝に至っては、店員さんさえいなかった。「買いたいならパナソニックの店員さん経由で、電話連絡する」ことになっているらしい。誰一人、商品を薦めてくれる人がいなかった。

 「日系はお偉いさんはみんな日本人だし、日本にいるから、ここは誰も気にしてない」。一台売るごとにボーナスが入るシーメンスとは大違いのようだ。それでも東芝の冷蔵庫を諦めずに購入した我々に対して、「これは本当はすごく良い商品なんだよ。値段が同じぐらいのサムスンやシーメンスよりずっと使いやすくて質も良い。ご購入プレゼントだってシーメンスよりずっと高価なものよ。でも、東芝は人を置かないし、宣伝もしないから、もう長春のシェアから消えそうよ。誰も買わないわ」と係の人が教えてくれた。

 そう話している間に、田舎出身風の年配のご夫婦が、「松下はどこだ?」と聞いてきた。指差すと、まっすぐそのブースに向かった。私たちも炊飯ジャーがほしかったが、置いてあるパナソニックの炊飯ジャーは、日本の製品に比べると少なくとも10年も型が古いのではないかと思った。道理で来日する観光客は、みな炊飯ジャーを2個も3個も買って帰るわけだ。
 「日本製はいい。みんな知ってる。でも、最新のものは置いてくれないし、こっちの好みに合う新しいものを開発しようともしない。宣伝も下手だし、販売にも力を入れない。ほかのメーカーに負けるのは、当たり前じゃないか」。

 電化製品に限らず、各種商品はまさに日進月歩に進化し、各メーカーは消費者を取り囲もうとしのぎを削っている。特にドイツと韓国メーカーの攻勢が激しい。日本製に深い信頼を寄せている田舎風の年配のご夫婦に、日本メーカーは果たしてどのように答えられるのだろうか。中国を市場として重視すると言うが、日本と縁が深く、日本製への信仰心も篤い中国東北部の街でもこの状態では、中国市場から消え去る運命をたどるのも時間の問題かもしれない。
 日本企業に聞きたい。やる気、本当にあるのか?

 (筆者は駒澤大学教授)

※この原稿はCSネット・メールマガジン36号から許諾を得て加筆・転載したものです)


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