札束とブルドーザーの安倍政権

【沖縄の地鳴り】

札束とブルドーザーの安倍政権〜選挙対策のディズニーランド

仲井 富


 すべてが沖縄の選挙対策の安倍政権は、沖縄宜野湾市へのディズニーホテル誘致で協力とぶちあげた。12月9日、沖縄タイムスによれば、以下のように報じている。「宜野湾市の佐喜真淳市長は8日、菅義偉官房長官と首相官邸で会談し、日米両政府が2024年度以降の返還で合意している米軍キャンプ瑞慶覧のインダストリアル・コリドー地区へのオリエンタルランドのリゾートホテル誘致に向け、政府に税制優遇措置などの支援を要請した」。

 さらに自公政権による一兆円の軽減税率も効いた。公明党沖縄県本部は、宜野湾市長選挙で、基地負担の軽減策を評価し、現職の自民党の佐喜真淳市長を推薦することを決めた。公明党の参院選での選挙協力を得るための、財源問題を置き去りにした一兆円の軽減税率合意とされているが、それを見事に証明した。「戦争法案に賛成したお返しの一兆円」と酷評され、あの橋下元大阪市長さえ「軽減税率には反対だが、そこまでやるか。これで改憲発議の三分の二議席を獲得しようということだ」と驚いて見せた。

 佐喜真氏はこのほか、(1)普天間飛行場の5年以内の運用停止に向けた協議の早期開催(2)環境補足協定に基づく基地内環境調査の先行実施(3)「宜野湾みらい地区」の実現(4)県道34号(大謝名−我如古)の国道格上げを含めた道路整備(5)普天間飛行場での東京五輪聖火リレーの実現— を要望した。佐喜真氏は、運用停止を話し合う負担軽減推進会議が開催されていないことを上げ、「政府と市が直接話す場をつくってほしい」と述べ、県を加えない新たな協議会の設置も要求した。菅義偉官房長官は8日の記者会見で、宜野湾市の佐喜真淳市長から基地返還跡地へのディズニーリゾート関連施設の誘致の協力要請を受けたことに関し「全面的に協力したい」との考えを示した。だが肝心のオリエンタルランド側の広報は8日、沖縄タイムスの取材に対し、「2日に宜野湾市の佐喜真淳市長と島尻安伊子沖縄担当相から要請があったが、具体的な計画については白紙。現段階で話せることはない」とコメントしている。

 昨年の名護市長選挙で、自民党候補を応援に出かけた野中広務元幹事長は、街頭演説で「札束でほっぺたをシバくようなやり方ではダメ」と安倍政権の手法を批判した。その野中氏は県知事選挙では翁長応援のメッセージを送っている。なりふりかまわぬ安倍政権の札束攻勢と警視庁機動隊まで動員した強制工事、これこそ米軍の「銃剣とブルドーザー」に代わる「札束とブルドーザー」そのものだ。一方では宜野湾市長に選挙対策のための物心両面の支援をしながら、他方では島尻沖縄担当相 — かつて2010年の参院選では、辺野古反対で再選を勝ち取り、2012年の安倍政権発足とともに、真っ先に辺野古賛成に転じた議員だ — は報道陣の質問に応える形で、「今の沖縄県の姿勢では、来年度の沖縄県予算の満額回答は難しいという空気を感じる」などと見え透いた牽制球を投げて、翁長県政を批判している。かつて多くの自治体首長が選挙対策も含めて「カジノ誘致」を競った。沖縄の昨年11月知事選挙でも、翁長氏をのぞく三候補はすべて「カジノ誘致」をぶち上げた。翁長氏は「バクチで稼ぐやり方には反対」を表明した。また翁長氏は平和憲法を擁護すると言い、原発にも反対を表明した。全国の自治体で、ここまで明確な政治姿勢を打ち出して当選した知事はいない。

 国防や外交は政府の専権事項という理由で翁長県政を批判する政治評論家も多い。それらに対して私は反論する。戦後の米軍基地反対闘争で県知事、県議会、地元市長、市議会、国会議員すべて反対派が勝利した前例はない。これを東京都や神奈川県に置き換えてみるといい。県知事や県議会、あるいは地元代議士すべてが反対する米軍基地を、いかなる政権であろうとも強行できるはずがない。沖縄を真に日本人として対等にみているならば、民主主義も地方分権も基本的人権も無視した独裁国家のような蛮行が許されるはずはない。

 思い起こせば沖縄戦の最後に、大田海軍中将は次のように打電して自決した。「・・只管日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ 沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」(資料参照)。安倍総理のみならず、すべての日本人が、戦後70年、「特別ノ御高配」どころか、今なお「札束とブルドーザ—」で、百年、二百年に亘る辺野古新基地建設という、失礼極まりない「沖縄差別」を容認していることに思いを致すべきだ。

<資料> 沖縄県民斯ク戦ヘリ(大田実司令官の電文)資料
昭和20(1945)年6月6日夜、沖縄の海軍陸戦隊司令官大田実少将は海軍次官あてに次のように打電した。(文中の□□は、不明部分)

大田実司令官の電文
発 沖縄根拠地隊司令官  宛 海軍次官ノ電□□次官ニ御通報方取計ヲ得度沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ラザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇ナカリキ然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト家財ノ全部ヲ焼却セラレ僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難尚砲爆撃ノ□□ニ中風雨ニ曝サレツツ乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ而モ若キ婦人ハ卒先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦烹炊婦ハ元ヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ルモノアリ所詮敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ親子生別レ娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ衛生兵既ニ出発シ身寄無キ重傷者ヲ助ケテ□□真面目ニシテ一時ノ感情ニ駈ラレタルモノトハ思ハレズ更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ夜ノ中ニ遥ニ遠隔地方ノ住居地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ是ヲ要スルニ陸海軍□□沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只管日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

 (オルタ編集委員)


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