東アジアの高齢社会における持続繁栄と共存の道―その1

■【北から南から】
台湾・花蓮便り(3)

東アジアの高齢社会における持続繁栄と共存の道―その1

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 2008年から2012年にわたる5年間にかけて、西は姫路から東北の新潟
まで、日本の介護施設や、看護と介護の学術部門、社会福祉系大学を視察訪問し、
老人介護と社会福祉政策、介護保険制度などの会議を重ね、姉妹校提携や奉仕活
動協議協定を結んだ。現在、日本語学科では年間15名の学生を日本に1年間留
学させ、介護施設での1カ月研修が2012年の夏季から正式に開始される。

 この5年間の研究交流を通じて、台湾に必要な尊厳のある介護文化を日本から
学び、日本のEPA制度に対応できる漢字圏介護人材の育成に、精力的に活動を
始めている。2010年には私を含め、淑徳大学社会福祉学部の田宮仁教授や早
稲田大学日本語教育研究所の宮崎里司教授の3人が発起人になって、東アジア老
人介護研究会が発足した。台湾発信で積極的に日本の学術と介護機関との太いパ
イプを構築するために努めている。

 日本の高齢化状況を見ると、高齢者対生産労働人口の場合、高齢者の面倒を見
る日本の生産労働人口(15-64歳)の割合は、2015年は1:2.3人で、
生産年齢人口2.3人で1人の高齢者を支え、2055年は1:1.3人で、労
働人口1人で1人の面倒を見る社会がやってくる。

 2055年には生産労働力の減少と供に、生産労働者の過酷な負担が現実化す
る。それに加えて少子化のため、2025年には高齢化率は30%に達し、生産
年齢人口は2055年なると半減して4595万人になる。

 日本は社会福祉保険を導入しなければ高齢化に対応できないとして、社会福祉
政策を打ち、2000年から老人介護保険を全国で展開した。介護保険制度は7
段階の要介護度によって、要介護者が介護度の認定を受けた後、自分で介護サー
ビスの種目を選択し生活介護、生活介助を受けるという制度である。

 現在、看護・介護の現場にいる看護人材と介護人材がかなり不足しているとい
う過酷な事実が問題になっている。特に介護士の欠員が要介護者の増加に追いつ
かない現状である。また、ハード面では、2006年から小規模多機能型施設の
法改正が見られた。看護・介護の学者とともに、2008年12月から2010
年9月までの間、日本各地において看護・介護の国際健康介護の実務調査を行っ
た。

 2008年年末の情報では日本全国の施設待機者は80万人だという。日本の
介護施設は次のような機能に分類されている。社会福祉法人が運営する介護施設
の場合、ケアハウス、グループホーム、ディサービス施設、訪問介護、訪問看護、
居宅介護などの小規模多機能施設のサービスも一緒に提供している。医療法人財
団病院が運営する関連施設の場合は、医療サービスを提供するほか、療養型サー
ビスや高齢者在宅サービス、高齢者施設サービなどを提供している。

 たとえば、聖隷福祉事業団は昭和5年に始まった保険・医療・福祉の事業団で
あり、地域の訪問看護者数は月に1058人、それを192名の看護師で担当し
ている。付属施設として介護付き有料老人ホームもある。ちなみに関西地域から
東京、東北地域の有料老人ホームの入居金は頭金が1500万円から3000万
円である。そのほか月に15万から20万円かかる。

 社会福祉法人であれば、介護保険料と施設に支払う個人負担分は要介護者負担
である。従って、日本の場合、65歳以上の高齢者は、健康保険料、介護保険料、
個人負担費を毎月政府に納付しなければならない。もし、生活保護を受けていれ
ば、生活補助金が支給されるが、10万円足らずでは、介護を受けることが困難
なため、生存が憂慮される。

 以上のいくつかの施設を訪問した際、どこの施設でも、生活介護の専門スタッ
フが不足しているという実態を目の当たりにした。日本政府はこの介護スタッフ
が不足している現象を打破するため、政策の見直しや看護と介護の外国人労働者
導入措置を行った。

 政策の一つは、介護福祉士と社会福祉士制度の見直しである。長岡看護福祉専
門学校の介護福祉学科と看護学科を例に見ると、その就職率は100%である。
しかし多くの場合看護師は急性期に入り、介護領域に行かない。しかしこの現象
は国別の特異性は無く、どの国においても看護士は急性期医療に従事することが
ほとんどである。西尾は介護の現場において、介護専門スタッフは、高齢者の生
活の介護を助けるという視点で考えれば、介護福祉士のほうが、高齢者の生活援
助に向いていることを指摘している。

 もう一つの政策は、国内の不足を海外に依存する方法である。外国籍の医療専
門人員をフィリピンとインドネシアから導入するとして、日本とフィリピン、イ
ンドネシア政府は経済連携協定(EPA)を締結した。それによって、3年前の
2008年からフィリピンとインドネシアから看護師と介護士が合計1000名
近く来日した。

 東京都足立区にある「千住桜苑」は職員の確保に苦労した。2007年6月の
オープンに備えて、2年前から職員の確保として、岩手県の介護福祉養成校を訪
問したが、予定人数35人のところ、17人しか確保出来なかった。このような
状況は日本全国各地に見られる。また、職員不足のためショートスティや新型特
養老人ホーム、従来型特養が閉鎖する事態も見られる。

 世界の事情を見ると、OECD諸国でも少子高齢化社会のため、自国の労働力
不足を補填するために国外の医療専門人員を導入している。例えば早稲田大学日
本語教育研究科の宮崎氏はオーストラリアの事情について次のように述べている。
オーストラリアはアジア系の医療専門人員が医療看護・介護の現場で働いており、
医師と看護師はそれぞれ42.9%と24.8%だという。

 それに引き換え、2010年6月末の統計によれば、台湾国内における65歳
以上の老人は約247.5万人あり、全人口の10.69%を占める。2026
年は475万人になり全人口の20.6%に達する。この数値は日本の2005
年とほぼ同様の割合になり、4人に1人(65歳以上が20.6%)の高齢化社
会に突入する。

 日本は要介護者を対象に、人間の尊厳を尊重した心こもる生活介助を提供して
いる。ケアの姿勢とケアの文化、ケアの衛生観念と実務経験は、台湾にとって大
いに学ぶべき所でありしっかりしたケア人材が台湾に回流すれば、台湾の新たな
領域としての発展が期待できる。次回では、台湾の看護と介護の現状、そしてな
ぜ日本語教育が必要なのかについてお話をさせていただきたい。
       (筆者は慈済大学副教授)

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