母と息子のインド・ブータン「コア」な旅(9)

【旅と人と】

母と息子のインド・ブータン「コア」な旅(その9) 

坪野 和子


■美しい土地ダージリンで知った「国境線」の悲しさ(後編の3)
 〔番外編3〕ダージリン観光案内(お土産)

 日本では花粉の飛散がはじまる季節となりました。ダージリン滞在中、息子がなんかおかしいなぁ〜体調が悪いわけじゃないのに…ヒマラヤスギでした、原因は。彼は強烈な花粉症持ちなので。ダージリンのように空気が良いところでも花粉症になるのだなと思っていました。最近ダージリンの人たちが、増え続けるタクシーやシーズン中に自家用車で乗り入れてくるインド国民観光客の排気ガスに対して「毒を大気に撒いている、規制すべきだ」とダージリンの役所に要求したようです。交通渋滞が出るほどでもないのに、自然環境に対して敏感な人たちにとって深刻になる前になんとかしたいという気持ちなんでしょうね。

 さて、今回はお土産の話をさせていただきたい。まずは日本の話だが「ハワイのお土産もらったけど、Made in China って書いてあって、少しがっかりしたわ」などという話しを時々耳にする。また中国人の友人とショッピングモールに行ってキレイなデザインのジャケットを見て「わ!! 日本製、これなら帰省のお土産になる!!」と言ったら、店員が「やっぱり日本製っていいんですか? 外国のかたはこだわっているようですね」「違うよぉ。買ったけど、自分の国のものだったら、お土産にしてもがっかりされちゃうでしょ」ということで、世界中、Made in China もしくは Made in PRC(People's Republic of China)がどこでも溢れているということになる。さらに逆パターンもあった。中国語の箱にパンダの写真がついているお菓子を買ったらマレーシア産だった。MADE IN ○○はよく見るべきだ。

 最近、世界でお金を落としていく中国人観光客。いや、正確にはたとえば秋葉原で炊飯器ひとり20台、乳幼児用粉ミルク…秋葉原の電気街で中国語表記つきで大量に売られている…箱買い山ほど、中国ではブランドといっていいユニクロ商品カートにどっさり、単なるお土産ではなく、観光客を装った仕入人たちなのだ。日本在住で、こんな買い物して母国に持ち込んだら税関でたっぷり税を取られるが、観光客だと免税のようだ。個人輸入といえばそれまでだが。しかし、彼らが買い物しているラオックスは中国系資本だし、買っていくユニクロも made in China だったりもする。彼らのマナーの話はブータン編で現地での日本人について述べるときに、再度したいと思う。
さて、今回はダージリンのお土産について述べたいと思う。

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 ダージリン ---紅茶---
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 やはりダージリンといえば、紅茶だろう。いや、意外と緑茶やウーロンも美味しいのであるが、というよりダージリン茶は世界の銘茶だと言って間違いないだろう。ダージリンであれば、どこのお土産屋さんでも売られているし、等級もさまざまだ。「政府公認」というお墨付きショップで売られているものは大抵良いものだし値段もそれなりだ。「GOLDEN TIPS」は最高級だろう。またお茶の等級は問わないが、かわいい、キレイ、いかにもインド土産という入れ物を選択することもできる。象さんのかわいいアルミケースに入った紅茶やデザインが良い陶器入りは、飲んでしまうとなくなるので、ケースだけでも取っておいてもらえる。

 お土産屋さんではなく、地元?準地元の人たちがお買いものしている大き目の商店、観光客が多い中心地ではなく、山の少し下の自動車の乗り換え地点あたりにある何店舗かで、インド人なら誰でも知っている「Lopchu」というブランドの紅茶が、お土産にするには大量のパッケージで売られている。職場のお土産や小分けで詰め替えるにはいいかもしれない。
 また以前も述べたが農園で直販しているものは安い。今回は外れがなく、すべて美味しかったと言われたが、新茶だが無選別なので等級がないから外れるかもしれない。

 蛇足だが、昨年末、勤務校で多文化共生クリスマスパーティーを行ったとき、ダージリンティーを入れて出した。ガーナ人の生徒はリプトンやトワイニングを茶葉も英国で生産された英国ブランドだと思っていた。「ウチはイギリスの高級茶しか飲まないんです」「あら、それもダージリンで生産されて英国が売っているのよ」と教えると担任の社会科の先生が「あはは、世界史もっと勉強しろよ」って言った。インド人の生徒がニヤニヤしていた。

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 ダージリン --- BIG BAZAR にて---
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 観光客ホテル・スポットからみて一番端に位置する BIG BAZAR という商業ビル。ここは、観光客がお土産を買える店も地元の人用の庶民的な外国ブランドのお洒落な服を売っている店も、日用雑貨を売っている店もオリジナル・ファッション・ブランドのチェーン店と思われる店も、映画館もカメラや家電の店もある。飲食店もある。入口でまるで空港の入口のような厳しいセキュリティ・チェックをしないと入れない。また店舗によって万引き防止装置も設置されている。私たちは2回行った。1度目は例によって映画を観ようかということだったが、上映されていたのがコルカタで観た映画と同じだったのでやめた。
 お土産とウールのお土産用の服を売っているお店で息子が面白い写真を撮影した。店のディスプレーに仏像を並べているのだが、なぜか招き猫。コルカタでも何回か招き猫を見つけたが。そして、ちょっとした洋服屋さん、若い子たちが好きそうなファッション。しかし、気に入ったのは私。オートリキシャーとパドマ(蓮の花)がデザインされた、いかにもインドという雰囲気なのにくどくない長めのTシャツ。自分用のお土産だ。ここで売られている洋服は人様に差し上げるには好みがあるから考えてしまうが、自分用には地元らしさがある服なので帰国してから楽しめる。不思議なことに誰ひとりインドで買ったと気付かない自然さだった。エスニックなデザイン自体が世界の日常になっているのかもしれない。インド綿日本デザイン中国縫製というような服は、普通に日本の洋服屋に並んでいる時代だから。

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 ダージリン ---息子が買った食品---
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 観光客ホテル・スポットのほぼ中央に黄色い建物がある。その2階は欧米人が量も味も良いとされるレストランとして英語のガイドブックやネット情報が流れているのだが、息子と向かったのは、その下の食料品店だった。息子はチベット人のレストランで出された「グリーンチリ・ソース」が気に入って、自分へのお土産として1本購入。これは焼きそばや肉料理にかけるととても美味しい。まあ日本では買えないだろうなと思った。しかし、帰国数か月後、バングラデシュ人の食材屋さんや西麻布の日進という海外食材を売る大型スーパーで普通に棚に入っていた。日本にはいろいろな国の人が住んでいるのだと実感した。それまで知らなかった。
 また彼はマクビティ・ダイジェスティブ・ビスケットを買った。日本でも売られているものと変わりないが多少インドのほうが美味しい。ただし、箱にはインドの女優さんの写真がついている。職場のお土産にするとのことだった(結局自分で部屋で食べていたのだろうと思った)。またブータンの民宿やお寺などに持っていくために「ドラえもん」の絵がついているマクビティ・ビスケットも買った。「ドラえもん」は南アジアの子どもには人気がある。バングラデシュでもインドからの放送が受信できるので「ドラえもん」のベンガル語吹き替えを放送するか、現在のヒンディー語が受信できなくなるようにするかと問題視された。バングラデシュでは「ドラえもん」人気が母語教育に悪い影響を与えると考える人たちがいるからだ。
 ちなみにホテルでは「クレヨンしんちゃん」のヒンディー語を見ていた。お父さんひろしさんがあまりにやさしそうだったので、日本の誇りだと思った。インドでもブータンでも「ドラえもん」はわかりやすいので、子ども向けのお土産としてはよいと思う。今考えるとネタとして日本にも持ち帰ってお土産にしてもよかったのかもしれない。それから「デイリー・ミルク」。このチョコレートは日本ではヨーロッパから輸入しているし、KALDI のような店でも普通に売られている。これはお土産ではなくブータンまでの移動用として買った。

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 ダージリン ---民族・仏教用品---
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 ダージリンのお土産屋さんは骨董屋のように仏教用品や美術作品として考えていい仏画(宗教用ではなく)がたくさん売られている。玉石混交で、骨董的価値が高いまたは美術的レベルがたかいものと一緒に美術的価値がないものも、まだ慣れていない仏画師の作品と思われるもの、贋作も並んでいるので判断が難しいが、良いものだと思って買うのであれば納得する値段で買えばいいという南アジアの言い分で買うべきだろうか。よく日本人がインドで贋作を高い値段で買って騙されたと言う話を聞くが、私にはわからない。いただくので買ったことがないから。そして並んでいる仏教用品・装飾品は一体どこで作られているのか、またはどこから来たのか、ということも、一見さんにはわからないだろうと思うが、これもまたどこで作られたかを知らずとも「ここで買った」ことに価値を感じたら買ってもいいかと思う。こういったものは「Made in ○○」という札はついているわけではない。ざっとリストアップするような形で紹介しよう。

☆手頃で安い山珊瑚やトルコ石のようなものがついている銀の指輪
 ネパールのトカマンドゥ盆地の職人さんが作ったもの。中の石は本物、プラスチック練り石、石ころ着色など。古いものは本物であることが多い。つやが良すぎるものは偽物であることが多い。とのことだ。そして、真珠はかじって皮がはがれなければ本物だということになる。もともと安いものは偽物でも気にならないが、大きな石で本物と思って買ったら偽物であることも覚悟する必要がある。尚、プラスチック練り石は中国資本のチベットやネパールの工場で作られたものである。

☆天珠 首飾りなど
 チベットのパワーストーンとして女性に知られている。ダージリンにかぎらず、ほぼ100%偽物である。日本でも駅などで期間限定販売中国物産を売っているが、そんなにたやすく出回るものではない。しかも日本での値段は安すぎる。持っている人は希少価値があることを知っているのでたやすく売ることはない。手に入れたいきさつを大切にしているので売るときは法外な値段であるはずだ。…ちなみに、私は青海省出身のチベット男性から天珠の首飾りを貰ったが、天珠以外のチェーンや石が偽物だったので、天珠も偽物だろうと思い捨ててしまったが、実は天珠だけ本物だったのかもしれないと捨てたことを後悔している。彼は私が別れた奥さんに似ているから彼女にプレゼントするつもりだったこの首飾りをつけてほしいと言った、そういういきさつだったから。偽物は、もちろん Made in China。

☆ラダック、ザンスカールなど北インドのチベット文化圏の装飾品や衣装
 これは、私が思うかぎり、ラダックで買うよりもいいものが売られていたと思う。ただし高い。ラダックもまた観光地であるが、そこから転売されたり、現地の商売人に売らないでダージリンの商売人に売ったりした結果ではないかと思う。以前、述べたカシミール人のおじさんの店で売られていたラダックのものは、本気でラダックのいいものを求めている人にとって狙い目といっていいような品物が並んでいた。ラダックのものをラダックでというこだわりがなければよいと思う。ダージリンのものが欲しい人には無関係だし、ラダックのものをなんでダージリンという思いがあるならば、やめたら?となる。

☆帽子・手袋・コート
 化学繊維かウールか?? 売っている人たちもわかっていないのではないかと思うほど微妙だ。線維に敏感な肌を持っているのであればわかる。ちなみにカトマンドゥでカシミール商人が売っているカシミール・ショールもまたほとんど化学繊維の偽物だ。あててみて痒いからわかる。

☆金剛鈴・金剛杵・閼伽水容器など
 これもカトマンドゥ盆地の職人が作ったもの。ちなみにチベット各地、インドのチベット系民族居留地などは同じものが売られている。

☆機械プリントによる釈尊の布仏画。すごく安いのでお土産としていいのかもしれないが、上海製造である。チベット人向けに作られた安価な仏画。

☆仏・仏教神・お坊さんの小物・置物
 Made in China。ダージリンで買う必要がどこにあるの?と言いたいが、たぶん日本人は欧米人と違って布袋みたいな置物をダージリンで買うことはないかと思うが、念のため。香港やタイでも同じものをみるのでうんざりする。

☆チベット人向けの仏教用品
 基本インド人経営の工場でチベット人もしくはチベット系民族がプロダクトして工場労働者はインド人。ダージリンでチベット正月用品を買ってもいいかなと思ったが、捨てる運命にあるものにお金を出すのはおかしいと思い、留まった。

☆仏画・仏像
 これは本当に難しい。本当に価値が高いものも売られている。1948年東チベット=現四川省と1959年チベットが中国に侵略されて、亡命するときに手放した豪族・貴族のもの、寺院から命からがら持ち出したもの、逃げるときに盗んだもの、文化大革命の難を逃れるために次々に国外持ち出しをした結果のもの…そういったものは、ダージリンやカトマンドゥなどとりあえず逃げた地で売られていることが多い。お寺に所属している仏画師による魂入れすれば本物、仏画師のアルバイト、仏画師として勉強して観光用の仏画を描いている人の作品、最低レベルでは下書きを塗り絵しただけの作品、また外国であるけれどチベット仏教の仏画を勉強した仏画師・画家(日本人も含む)の作品、など。これは彫塑も同じである。

☆カーペット
 ダージリンのものはチベット難民ハンドクラフトセンターで売られているので、お土産屋さんのものはチベット自治区、ネパール、インドのチベット人居留区で作られたものと考えてよい。デザインや手触りが気に入ればダージリンにこだわらないなら、カーペットのオリジナルである中東地域に接しており、デザインが南と東アジアなので悪くない。少し質が落ちてもというのであればネパールで買うのも一考だと言えよう。

☆とりあえずダージリンで作られたものがほしいなら…
 チベット難民ハンドクラフトセンターの売店でタペストリー、カーペット、手作りポストカードなど。カーペットは大きいけれど船便で送る手配をしてもらえば自分で運ぶことはない。

※ここで思い出したが、日本でも観光地で「ご当地○○」のキーチェーンなどは中国で作っているが、ご当地でしか売られていないというケースもある。価値判断だろう。

 と、いうことで「物」もまた「国境線」を越えているという実態に考えさせられたのであった。…またもや…分量オーバーなので止める。次回は、ダージリンの裏路地を歩く話と母子は国境の町ジャイガオンに向かう【続く】

 (筆者は高校時間講師)


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