浜田山・三井グランド環境権訴訟

【レポート】

■浜田山・三井グランド環境権訴訟      編集部 仲井富

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●緑奪うマンション建設に抗議する住民
 神田川沿いの旧緑地地域にある「三井上高井戸運動場」(通称三井グランド)
は、杉並区南部の防災の拠点であるとともに、緑豊かな低層住宅地に囲まれた
遺跡も眠る景観の地である。二万五千坪の広大な敷地は、野鳥が飛来し、野草
の花が咲き、タヌキも生息する都内屈指の自然に恵まれたオアシスとして知ら
れている。多彩な植生でも知られている。ここには大木の主木として常緑広葉
樹シラカシ、ヤマモモ、落葉広葉樹のケヤキ、クヌギ、イヌシデなどが繁り、
貴重な混交林を形成している。

 平成十六年九月、三井不動産(株)は、井の頭線浜田山駅近くにある三井グ
ランドを閉鎖し、跡地に高さ二十メートルのマンション五棟等約六百五十戸の
マンションと五十戸の戸建て住宅を建設する計画を発表した。以来二年にわた
って、地域住民は「三井グランドの森を守る会」を結成、マンション建設など
に反対する運動を続けている。その理由として、
(1)三万七千人余の大地震や災害などにおける避難場所であり、住民の生命を守
るかけがえのない場所である。
(2)野鳥、小動物、野草生育地で、都内屈指の自然環境を有する。
(3)周辺一体は、第一種住居専用地域で、高さ十メートル以下の低層の静かな町
並みである。
(4)神田川沿いから連続するグリーンベルト地帯の中枢にある。
(5)表土の喪失はヒートアイランド現象をもたらすばかりでなく、水害の危険を
生ずる。
等を挙げている。
 住民は一万名以上の計画反対の署名、行政に対する意見書、住民提案の地区
計画などを提出し、行政や三井不動産に対して、計画の中止を強く求めてきた。
しかし、杉並区や東京都は、住民の声を全く省みず、本来、マンション建設や
ミニ開発から町を守るためにあるはずの地区計画を悪用し、開発業者である三
井不動産の利益を守るためだけの「一人地区計画」を決定したうえ、用途地域
を変更し、容積率、建ぺい率を緩和、マンション建設を進める「土地区画整理
事業」を平成十七年十二月一日に許可した。さらに建築確認を得て、工事を強
行しようとしている。
 これ以上このようなことを許せば、東京は人間不在の取り返しのつかない状
況になるとして、「三井グランドの森を守る会」は「浜田山・三井グランド環境
権訴訟原告団」をつくり、今年の五月十七日、「土地区画整理事業施行認可の取
り消しと建築確認差し止め」を求めて東京地裁に提訴した。

●訴訟の基本的視座とグランドの価値
 訴状の中で原告は、「本件の基本的視座」として、「三井グランド保全の今日
的意義」を強調している。
 まず第一に、三井グラウンドの成り立ちとして、三井グラウンドは、昭和8
年より三井グループが所有しているが、そもそもは、東京市民のレクリエーシ
ョンゾーンを東京市郊外に設け、これにより郊外への市街地の拡張を抑制しよ
うとする目的で、昭和8年から昭和14年にかけて策定作業が行われた東京緑
地計画に基づき、政策的に企業、官公庁グラウンドとして誘致されたものの1
つである。それ以降70年余にわたって周辺住民の歴史と生活に密着した存在
であった。

 戦後、昭和23年、特別都市計画法3条1項による緑地地域指定(グリーン
ベルト構想)として都市計画決定がなされ、三井グラウンドを含む地域もその
対象となった。そして昭和44年の新都市計画法による市街化区域、市街化調
整区域の都市計画の創設と同法の施行にあわせて、旧都市計画法第3条に基づ
き、旧「緑地地域」のほとんどは、土地区画整理事業予定区域に指定されるこ
ととなり、建ぺい率も3割まで緩和された。しかしなお、無秩序な開発を抑制
し、市街地の拡大防止という特別都市計画法の緑地地域指定の理念が失われた
わけではない。新都市計画法においては、環境への配慮をすべき旨を定めた規
定が随所に置かれた。

 そして杉並区内では、善福寺川と神田川沿いに指定され約470ヘクタール
が「杉並南部土地区画整理事業施行区域」として指定された。つまり本件三井
グラウンドの南地区を含む地域は、昭和44年に「杉並南部土地区画整理事業
施行区域」として都市計画法に基づき都市計画決定されたのである。もちろん
杉並区においても、緑の豊かな福祉的文化都市を目指すとの基本方針の下、自
然環境を保持しつつ、整備することとされていたのである。この結果、残され
ていた山林緑地が神田川沿いを中心としてグリーンベルトとなり(井の頭公園
から神田川、NHKグラウンド、郵政グラウンド、柏の宮公園、塚山公園へと
続く一連の緑地帯)、生態系のコリドー、エコロジカルコリドーとして貴重な環
境を、現在まで維持してきたのである。

 訴状が第二に強調しているのは 三井ラウンドの自然環境上の価値である。
(1)生物の多様性として、三井グラウンドの周辺には、神田川が流れ、広い
雑木林が存在しており、このような環境を基盤として、昆虫類数百種、鳥類三十
数種を数える。現在の東京において、このような多様な生物が集中して生息して
いる地区は貴重である。これらの生物の生息個体数、種数は、微妙な環境変化に
より大きな影響を受けるのである。三井グラウンド南側崖地の池では、「キイト
トンボ」が生息する。この池は、緑地帯下にある豊富な地下水脈の存在も示す一
方、地下に大きな影響を与えるマンション建設工事等が行われれば、簡単に地下
水脈が絶たれて池が枯渇し、生物の宝庫である貴重な水辺は消滅する危険がある。
また、昆虫類を補食する鳥類、ほ乳類も豊富で、三井グラウンドはムクドリの大
群が飛び交い、ホンドタヌキもその住みかとしている。タヌキが生態系の頂点に
いることは、それだけの自然が残っている証拠である。

(2)植生についても、三井グラウンド及びその周辺には、キンラン、フユノハ
ナワラビなどの貴重な植物が見られ、それ以外の植物の個体群も豊富である。ま
た、ケヤキと桜の並木は、豊かな土壌と地下水脈の存在を示している。したがっ
て、三井グラウンドの自然は、そこで生活している生物に限定して保全している
のではなく、神田川緑地全体の自然環境・生態系を保護する重要な役目を果たし
ているのである。(以上、訴状より抜粋)

●企業の社会的責任を問う原告代表意見陳述
 第1口頭弁論は今年七月二十六日に開かれ、原告団から意見陳述を行なった。
昭和十七年から六十四年間、三井グランドから一分のところに住み、現在は曾
孫まで四世代同居しているという安藤尤子さんは以下のように述べた。

<昭和四十七年に、東京都が、災害時の広域避難地域に指定したと聞いたとき
は、嗚呼よかった、と感謝した。大地震があったら三井グランドで会おうね、
というのが家族の合言葉になっていた。それが突然、グランドを潰し、マンシ
ョンが建つという通知だ。まさに寝耳に水、晴天の霹靂だった。東京でも大地
震が予測され、防災のために何百億円の予算が組まれるという。すでにある二
万五千坪もの広大な広域避難場所を潰してしまうことは、税金の無駄遣いその
ものだ。杉並区の地区計画の目標は「避難場所としての機能および避難路の確
保を図り、周辺地域と調和した緑豊かな低中層市街地の形成をめざす」となっ
ている。グランドを潰し六階建てのマンションを建てることが、どうして周辺
地域との調和につながるのでしょう。

 三井グランドは東京緑地計画に基づき、国の政策として企業や官公庁のグラ
ンドとして誘致されたと聞いている。緑地を残すという趣旨に賛同した地主た
ちが、一坪十一円総額三十数万円で三井に売却したといわれる。緑地を残すこ
とを前提にして取得したグランドを、営利だけのために売り飛ばされることが
許されるとは思えない>
 また安藤さんは意見陳述のなかで、「わが家の近くにお住まいの元三井銀行
会長の小山五郎氏は今年三月亡くなられたが、生前、三井グランドの森を守る
会が三井不動産岩沙社長宛てに提出した署名簿に手紙を添え、『長年三井グル
ープに関与してきた一人として、今回の決定は残念だ。企業は利益追求は当然
だが、さりとて貴重な居住環境を破壊してまで行うことは企業の社会的責任か
らみて如何なものか』と書かれていた。この言葉の重みを、三井のみならず杉
並区長、東京都知事にも考えて欲しい」と述べている。

●「緑地こそ都市の生命」と斎藤弁護団長
 「浜田山・三井グランド環境裁判」の第二回の口頭弁論は九月二十二日に開
かれた。東京地裁法廷は原告・傍聴者百三十人で埋まった。斎藤暁弁護団長は、
著名な都市計画家・石川栄耀氏の「都市計画とは“社会への愛”である」とい
う言葉を引用して、都市計画の理念と相反する今回の杉並区・東京都などの決
定がいかに誤ったものであるかを説いた。
 
<石川栄耀氏は戦災復興計画を主導したひとだが、その古典的著書「都市計画
及国土計画」の中で、都市計画とは、本来、目先の利益にとらわれず、将来を
見越した大きな視野のもと、かけがえのない環境を保護、保全して人間が暮し
やすい場を提供することを目的とするものであり、都市整備特に緑地計画が都
市計画に必須事項であるとされている。「自然物により醸成されることによっ
て、都市美が現れ良き都市環境が造成される。緑は散歩その他心身の保健に資
する。公園などの空き地は都市防災に役立つ。そのことによって都市人口の無
制限膨張を調整する」と述べている。都市が環境破壊を止め、人が人らしく豊
かに生活していくためには、一刻も早い対応が必要であり、三井グランの保全
こそ、その第一歩となり得るのである>

●この訴訟が注目される理由
 
 三井グランド環境権訴訟に現れた事象は現在の東京都内における狂気じみた
都市開発の一つにすぎない。日経不動産サービス情報によると東京二十三区内
で二〇〇六年以降に誕生する延べ面積一万平方メートル以上の大規模オフイス
ビルは、判明しているだけで九十九棟、総延べ面積で六百六万平方メートルに
達することがわかった。今回の調査では、新たに三十一棟のオフイスビル計画
が明らかになった。二〇〇六年には、二〇〇五年の二倍に当たる二十九棟が完
成する。
 石原都政は、空き地や公園を潰し、大地震などの災害時の安全を置き去りに
して、東京オリンピックに大金を投じてさらなる都市開発を進めようというの
である。まさに土建国家そのものである。東京への集中、集積の拡大は安全・
安心の都市づくりに逆行する。三井グランド環境権訴訟は杉並区のみならず、
全都民の環境保全、安全とも密接につながっている。
 以下に、三井グランド環境権訴訟に訴状を参考資料として掲載する。
(オルタ編集部 仲井富)


■資料 <三井グランド環境権訴訟の訴状>(抜粋)

【請求の趣旨】
1 処分行政庁杉並区長が平成17年12月1日付で訴外三井不動産株式会社
に対してなした東京都市計画事業高井戸東一丁目南地区土地区画整理事業施行
認可処分(杉並区告示第719号)を取り消す
2 処分行政庁杉並区長が平成17年12月1日付で訴外三井不動産株式会社
に対してなした高井戸東一丁目北地区土地区画整理事業施行認可処分(杉並区
告示第720号)を取り消す
3 処分行政庁東京都建築主事は、東京都杉並区高井戸東一丁目1797番地
外における建築につき、訴外三井不動産株式会社に対して別紙建物目録記載の
建物についての建築確認を行ってはならない
4 訴訟費用は被告らの負担とする
との判決を求める。

【請求の原因】
第1 当事者
 1 原告
(1)原告らは、いずれも杉並区高井戸東一丁目地区(東京都杉並区高井戸東
一丁目1797番外、通称「三井グラウンド」、面積約8万3000平方メートル。
以下同じ。)の周辺に居住する住民であり、長年にわたって三井グラウンドの豊
かな自然環境に育まれて生活しているものである。
位置関係は、別紙原告居住地図のとおりである。

(このあと訴状一部略)
(2)植生
 三井グラウンド及びその周辺には、キンラン、フユノハナワラビなどの貴重
な植物が見られ、それ以外の植物の個体群も豊富である。
 また、ケヤキと桜の並木は、豊かな土壌と地下水脈の存在を示している。
 したがって、三井グラウンドの自然は、そこで生活している生物に限定して
保全しているのではなく、神田川緑地全体の自然環境・生態系を保護する重要
な役目を果たしているのである。(後略)

(3)気象
 三井グラウンドには、朝霧が立ちこめ、草には朝露がつき、冬には霜柱も
見られる。これは、アスファルトやコンクリートで覆われた都市ではあり得
ないことであり、普通の空き地とも土中の水分量が違うことを示している。
このような水分を含んだ広い空き地と樹木と緑地帯をもつ三井グラウンドは、
ヒートアイランドと化した都市部においては、放射冷却効果、にじみ出し現
象で、冷気が周辺にゆっくり伝わり、クールアイランド効果を生み出し、実
際、三井グラウンド周辺を散策する人の多くがグラウンドの涼しさを口にす
るのである。
 そして三井グラウンドという2万5000坪もの空地の存在は、このよう
な周囲への冷熱の伝達にとどまらず、その膨大な土と空間故に、太陽熱を吸
収、発散し、雨を貯め、水蒸気を逃がし、また風の通り道となり、周辺の気
温や風、ひいては気象にも好ましい影響を与える。
更に、このような効果は、三井グラウンド周辺地域にとどまらず、まとまっ
た緑の多くが失われた東京全体にとっても少なからず影響しているのである。

(4)環境・景観
 三井グラウンドには、四季を通じて変化するケヤキ並木があり、4月には
絢爛と咲き誇る桜並木がある。
 グラウンドにあったクラブハウスは、久米権九郎氏の設計によるモダニズ
ムデザインの代表的な建物であり、現存する数少ない一つであった。緑の芝
生を大海原に見立て、そこに浮かぶ船をイメージしていた。日本建築学会も
保存の要望を出していたこの建物は、ごく一部を残して取り壊されてしまっ
たが、武蔵野の自然林の雰囲気を残す背景の通称「三井の森」(三井グラウ
ンド南西部の雑木林)と一体となっていた。
 そして、三井グラウンド全体は、周囲の第一種低層住居専用地域に指定さ
れた低層の町並みと調和し、周辺の住民に良好な住環境を与え、住民だけで
なく、ここを訪れる人々の心を和ませる、すばらしい景観をも備えた場所で
ある。コンクリートで覆われた都市の中でこのような環境は貴重な存在であ
り、また、このような景観自体が一つの重要な価値である。
 これまで乱開発の結果失われた多数の環境・景観を省みれば、今東京の都
市部に残された稀少な環境・景観の一つであり、これを保存することは、都
市環境を回復するための喫緊の課題である。

3 三井グラウンド開発に伴う悪影響と保存の必要性
(1)しかるに、本件開発行為を許せば、上記グリーンベルトが断ち切られ、
エコロジカルコリドーの断絶による生態系の破壊は決定的となり、上記三井
グラウンドが持つ様々な価値を失わせる結果となる。
即ち、開発行為により、多種多様な生物が生活の基盤としていた緑及び空地
が大幅に失われ、更に分断されることにより、生物の多様性が失われ、池が
枯れるなどの環境変化により、貴重な動植物が絶滅・消滅の危機に曝される
ことになる。形式的に樹木を残しただけでは、生態系の価値は失われるので
ある。自然の緑と生物の生育のための十分なスペースを備えた表土を持つ緑
地帯が必要なのであり、それでこそ社会的価値があるのである。
 つまりは、同開発行為により、豊かな土壌が失われ、風の流れが変わり、
清浄な空気も保てず、ヒートアイランド現象を助長し、更には神田川の洪水
の危険をも生じ、動植物だけでなく、その周辺に住む住民の良好な生活環境
を著しく損なう。そして、周辺の良質な住環境を支えていた、三井グラウン
ドの景観や静謐な環境をも失わしめるものである。
 三井グラウンドは、既にこれらの多くが失われた東京の都市部にあっては
極めて貴重な存在であり、開発行為は決定的で再生不可能な環境破壊をもた
らすのである。そして、三井グラウンドを中心としたエコロジカルコリドー
は、単にその地域の問題にとどまらず、地球環境の地域における具現化であ
り、地球全体の環境保護を考える上でも重要な問題なのである。
 この地域に残された自然を保全することが一地域にとどまらず、東京全体、
日本全体、ひいては地球そのものの環境を守ることにつながるのである。

(2)また、三井グラウンドを含む緑地帯形成の上記歴史的経緯を踏まえれ
ば、三井グラウンドは、単なる私企業の一所有物にとどまらない存在として
位置づけられ、更に周辺の住民にとどまらず、東京に住む人間のために必要
な緑として、大切に保全されてきたものであり、今後も保全していく必要性
がある。
 そして、未来に向かって東京の環境を再生するために欠かせないものであ
る。よって、原告ら地域住民だけの問題にとどまらず、都市部に生活する東京都
民全体にとっても重大な問題なのである。

(3)このような環境問題はとかく政策的な問題であり、行政の裁量に委ね
られるとの考えもあるが、現代社会における環境の重要性のもと、法体系に
おける環境法が占める地位の向上に伴い、行政裁量の範囲内と安易に判断す
ることなく、厳格な法的判断によって、その当否が論じられなければならな
い。
即ち、21世紀は環境の時代ともいわれる。時代と共に価値観、時代認識は
変わっていくのであり、現在はまさに環境に最重要の価値がおかれるべき時
代へと変わっていっているのである。環境に対する配慮義務がより強く求め
られ、その内容もより厳重なものである必要がある。
土地の問題を考えるにあたっても、土地の有効利用といった経済効率では推
し量れない環境的な価値を付加して考える時代に変わっているのである。

(4)そして、環境を的確に論ずるには、数年の単位ではなく何十年、何百
年の単位で図る評価が適合する長期的視野が必要であることは、今でも多言
を要しない。
 目先の利益にとらわれず、将来を見越した大きな視野のもと、判断を下す
必要があるのである。

(5)都市計画とは、本来、そのようなかけがえのない環境を保護、保全し
て、人間が暮らしやすい場を提供することを目的とするものであり、本件に
おいても、そのような目的にかなうべく検討されなければならない。
 ここで、我が国の都市計画学会において揺るぎない権威を有し、先述の戦
災復興計画を主導した工学博士石川栄耀の言葉を借りて説明しよう。
石川栄耀の古典的著書「都市計画及国土計画」の目次においては、都市計画
の基本原則が示されており、都市計画の考慮事項について述べた第4部都市
整備において甲、環境整備として、その1「緑地計画」が冒頭に置かれ、環
境整備、特に緑地計画が都市計画の必須事項であるとされている。況や、こ
の著作が出された頃と比べて環境の比重が格段に増した現代においては、何
が最も重要な問題であるか、いうまでもない。

 そして、同著の中では、緑地の都市計画的効用は「自然物により醸成せら
れたる造園芸術の鑑賞、都市の自然修飾-その結果、真正都市美が顕出し、
良き都市環境が造成される。緑を主題として美装されたる広場は善隣感情の
醸成点となる。空地は防災に役立ち、且つ当然空気の浄化槽ともなる。緑地、
緑道いずれも散歩その他の方法により心身の保健に資する。都市を分割して
隣保単位を造る。都市人口の無制限膨張を調整する。」と述べていることは、
今十分留意すべきなのである。
 都市の環境破壊を止め、人が人らしく豊かに生活していくためには、一刻
も早い対応が必要なのであり、三井グラウンドの保全こそ、その第一歩とな
り得るのである。

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