環境と分権の時代の法の運用

【沖縄の地鳴り】

環境と分権の時代の法の運用

— 市民からみた国の訴状の決定的矛盾(1)

<沖縄の誇りと自立を愛する皆さまへ:第28号 2015年11月号改訂版>

辺野古・大浦湾から 国際法市民研究会


 土地収用法(国土交通大臣所管)は、米軍用地を収用する場合には駐留軍用地特措法(総理・防衛大臣所管、以下「特措法」)によることとし、特措法は収用手続きを簡略化して、総理または防衛大臣が米軍用地としての提供を「適正かつ合理的」と判断すれば、どんな土地でも強制収容できる。これは米軍のために“いつでも使用可能”になるよう国が配慮したものといえるだろう。
 これに対して公有水面埋立法(以下「埋立法」)は、米軍用地としての埋立に特別措置が用意されていない。つまり国による埋立は、すべて知事の承認(一般事業者の場合は免許)を必要とし、米軍のために“いつでも埋立可能”になるよう配慮されていない。生物多様性の見地からの水環境の重視、巨額に上る漁業補償、予想される世論の反発などの事情から、陸地のような過剰サービスの制度化はムリだったと思われる。

 11月17日、国は福岡高裁に翁長知事による埋立承認取消処分の「取消命令請求」を提訴し、国防・外交という「国の存立や安全保障に影響を及ぼす…きわめて重大な事項」には、政治的・外交的・専門技術的な判断が必要とし、この埋立事業には「国防・外交の要素」が含まれているから「知事の権限が及ばない」(p70)。米軍基地に関わる判断は「総理大臣の政策的・技術的な裁量に委ねられている」とした1996年最高裁判決を引用し(p72)、「辺野古でなくてはならない必要性を独自に審査することは許されない」とする(p73)。

 しかし、国防・外交事項には知事の「権限が及ばない」とする規定はどこにも存在しない。国防・外交であっても生態系と生物多様性や、住民の利益と権利を侵害する場合は埋立法で「不承認」できるし、またそうすべきなのだ。この法構造を否定することは、憲法が保障する地方自治の本旨にも、分権時代を拓いた1999年改正地方自治法の趣旨にも反する。

 さらに訴状は、知事の承認が地方自治法の第一号法定受託事務(国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理をとくに確保する必要があるもの)にすぎないことを理由に「権限が及ばない」論を展開(p71)。しかし法定受託事務であっても、受託した以上すべて自治体の事務。機関委任事務を廃止した改正地方自治法が、国・自治体関係を上意下達から対等・協力の関係に変えるためのものだったからである。

 政府が「安全保障環境の変化」というなら、地球環境の悪化と地方分権の進展という二大変化に注目しなければならない。引用された1996年最高裁判決は、異常気象を含む地球環境問題が今日ほど深刻になる前であり、また旧地方自治法時代のものだ。安倍内閣の時代錯誤がここに象徴されている。

(文責=河野道夫)


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