編集後記102

【編集後記】

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◎野田内閣は大飯原発を再稼働させ、消費増税を軸とする『税と社会保障の一体
改革』の成立を急ぐが、国民はますますシラケる。しかし、自分たちの将来が確
実に保証されるならば消費増税を頭から拒否しないようにも見える。だが、いま
の民主党=自民党案から明確な社会の将来ビジョンは見えず、政府がいくら笛を
吹いても国民は踊らない。

その国家ビジョンについて、リヒテルズ直子さんは『安心・幸せ社会のつくりか
た―オランダ型成熟・市民社会を日本復興ビジョンに―』を提起されている。リ
ヒテルズさんはオランダに15年住まわれ、それまでの15年はマレーシア・ケ
ニア・コスタリカ・ボリビアなど開発途上国で暮し、社会調査されたり大学で教
えながら2人の子供を育てられた行動的で視野の広い方である。

オランダは欧州で失業率が最も低く、1人あたりGDPも2位でユーロ危機にも
かかわらず国民の80%以上が自分の将来に不安を感じないという。「強い社会」
「強い自然」「強い民主主義」という明確な国家ビジョンと市民参加の政治決定
という「オランダモデル」に国民は確信を抱いているのだ。私はリヒテルズさん
から直接お話を伺ったが、日本の将来を案ずる見識・情熱は素晴らしく是非読者
と共に提言を玩味したい。

◎EU経済の危機は内需比率が約40%と低く、対EU貿易比率も高いGDP世
界2位の巨大な中国経済にも影を落としているが、さらに世界は景気後退が政権
の交代期と重なり、大胆な政策が取れないと見て先行きを懸念する。浜矩子同志
社大学教授は近著『中国経済危うい本質』で、中国経済が直面するいくつかの課
題を、急速に発展した中国が内に「20世紀」を抱え、外に「21世紀」の大国
として振舞う苦悩を鋭く指摘する。

ところが、この大国を指導する習近平新政権の人事が、天安門事件以来の政変と
もいわれる「重慶事件」の溥煕来解任にみられる激しい人事抗争にまみれ固まら
ない。ネット上に憶測が飛び交う「重慶事件」とは何なのか。その政治・思想的
背景について、中国の労働問題研究を専門とされる石井知章明大教授に『重慶事
件における新左派の役割と政治改革のゆくえ』として論じて戴いた。

◎在留日本人はニューヨークに約6万人・上海に約5万人いるが、上海の日本人
が一番心配しているのは子供の教育だという。小・中・高3000人の生徒が学
ぶ上海日本人学校の現状と課題について小暮剛一菫事長の報告を頂いた。

◎【運動資料】上海の日本人が子供の教育を心配するように東京の在留中国人
(約16万人)も同じ悩みを持っている。『東京に中国人学校を』と華僑団体か
らの要請を受けて、東京でも日中国交正常化40年記念行事として超党派で設立
運動が始まり、その要請書を載せた。

◎【書評】は来日された武田尚子さんからオルタに頂戴したご自身の翻訳書2冊
『アメリカのユダヤ人・ある民族の肖像』・『不死身のパートフス』をまとめて
『「アメリカのユダヤ人」を読む』として荒木重雄氏に評して頂いた。

◎【日誌】5月20日法政大学市ヶ谷キャンパスで大原社会問題研究所の社会党・
総評史研究プロジェクトがあり、五十嵐仁教授など研究者からの聞き取りに50
年前の社会党構造改革派について報告し夜まで懇談。21日学士会館で米国から
来日した武田尚子さんを迎え、高沢英子、河上京子、杉本美樹枝さんなど女性を
中心に竹中一雄・荒木重雄などと大阪から西村徹氏にもご出席願い和やかな懇親
会を持つ。

22日いまの民主党をとても支持できないがTPPに反対し、脱原発に取り組む
篠原孝議員のキャピトル東京ホテルでのパーテーに出る。24日から28日まで
大連・旅順に初岡昌一郎氏と旅する。6月1日ソシアルアジア研究会でモスクワ
のシンクタンク研究員コーシキン氏からプーチン再選後の政治情勢を聞く。7日
三ツ谷洋子法政大学教授主宰の研究会200回記念の催しに招かれJリーグ川渕
三郎氏の講演を聴く。

10日東京・京橋で荒木美智子さんのボタニックアート展参観。14日衆議院会
館で「TPPを慎重に考える会」(大河原雅子事務局長)主催の『モンサントの
不自然な食べもの―未来を生きるために知っておきたい多国籍企業のこと―』試
写会に行く。15日仲井富氏と沖縄県議選挙総括などのオルタ出稿を話す。

◎【お断り】武田尚子さんの米国大統領選挙報告は5月に来日されたため休載に
なります。                 (加藤宣幸 記)

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