編集後記110

【編集後記】

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◎さきの総選挙では自民党が『日本を取り戻す』と叫んでともかく大勝し民主党
は惨敗した。ただ自民党の得票率は比例区で27.6%(57議席2増31.7%、小選挙区
で43%(237議席79%)であり、まさに民主党の自滅であったが、与党は衆院で
三分の二を制し憲法改正への足掛かりをつかんだ。

彼らが目指すものは何か。集団自衛権の容認、国防軍の創設に見るように尖閣を
好機として平和憲法をなし崩そうとすることで、現行憲法の『国民主権。基本的
人権尊重。非戦平和』三原則への挑戦である。私は、安倍の云う『戦後レジユー
ムの脱却』とは『右傾化』というより『逆コース』の制度化と言いたい。

若い人には耳慣れないが『逆コース』とは、『1951年に朝鮮戦争に伴う占領軍の
意向で第三次吉田内閣が戦後の民主化政策を中止し、警察予備隊(自衛隊の前身)
の創設、追放解除・労働・行政・教育・警察など全般を戦前的なものに戻そうと
した政治路線』である。

◎この安倍路線に対して、いまや「右翼」の論客として名高い西部邁氏は『戦後
は、日本の伝統をひたすら忘却し破壊する68年間であった。そのことを根本から
問い直すのでなければ「日本を取り戻す」ことなど叶わぬ仕儀である。』(「取
り戻すべき日本とは何か」ニューリーダー2013.2月号)と安倍総理を叱咤する

一方、リベラルで知られる元朝日新聞コラムリスト早野透氏は『安倍自民党は衆
議院を自公で三分の二を制したが、7月の参議院選挙までは慎重に抜き足差し足
忍び足で行き、維新の会や民主党改憲派を誘って『暗黙の改憲連合』を形成し念
願の憲法改正を目指すだろう』(「安倍氏が取り戻そうという日本」世界別冊
no.841)と指摘する。

◎世界は果たしてどう見ているのか。中・韓メデイアは云うまでもなく、どちら
かと言えば保守的ともいえる英誌「エコノミスト」でさえ新年号(1月5日)で『安
倍内閣はアジアにとって最も危険』『安倍内閣は保守とは名ばかりでその実態は
恐ろしい国粋右翼で固めたもの』として19人の閣僚のうち14人が「靖国神社に参
拝する会」。13人が国粋右翼の「日本会議」。などに属し、中でも下村博文文科
大臣は極東軍事裁判否定を公言しているなどと強く警戒している。
 
◎私たちが戦後の朝鮮・ベトナム・イラクなどの各戦争に「戦闘要員の出兵」と
いう形で駆り出されず、経済の豊かさを追求出来たのは、敗戦の代償で得た平和
憲法の御蔭である。70年近く一発の弾丸も打たず、ついに『日本は平和国家』と
いう稀有のブランデイング(ブランドを創る)に成功した。貿易立国の日本が世
界でビジネスを展開する時、この『平和国家』ブランドが、いかに大きな力を持
ったかは云うまでもない。安倍内閣は、ひたすら「戦後レジュームからの脱却」
「日米同盟強化」を叫んで、この世界に誇る貴重なブランドを投げ捨てようとし
ているのだ。

◎これを「日本を取り戻す」というが『どのような日本に「戻る」のか』として
社会環境学会会長荒木重雄氏に論じて戴き、さらに劣化した日本の政治をどう立
て直すのか。ドイツで躍進する緑の党に関連して『日本の政党政治を根底から変
革するために―ヒントとしての「緑の党」―』を生活クラブ・スピリットの白井
和宏氏に提起して頂いた。白井氏はかつて生活クラブ神奈川の活動家として、代
理人運動神奈川ネット事務局長を5年も務められた政治活動の実践家で、本号で
紹介した『「緑の政治」ハンドブック』(ちくま新書)の訳者である。
 
◎私たちがもっともっとお互いを知り合わなくてはならない韓国の政治状況につ
いて『朴槿恵大統領の誕生とこれからの韓国』として、韓国の光と影をJC聡研・
参加システム研究所の研究員で韓国問題の専門家丸山茂樹氏に詳しく分析して戴
いた。さらに脱原発のために私たちが乗り越えるべき諸条件について『脱原発の
ための6のパラメータ』として濱田幸生氏から厳しい問題提起があった。
 
◎【書評】は『緑の政党ハンドブック』デレク・ウォール著/白井和宏訳を気鋭
の政治学者岡田一郎氏にお願いし【投稿】には三上治氏の『右傾化という言葉が
流行であるが…』と仲井富氏の『民主再生は可能か。無党派層と脱原発票の行方。
』を【追悼】には杉本美樹枝さんから『河上民雄先生の思い出』を戴き『山本満
先生に感謝します』を加藤宣幸が書いた。
 
◎【日誌】1月24日日本ユーラシア協会でウラジオから来たワレンチン・ブーラ
ヤさんの「日露の市民交流―戦争と抑留を乗り越えて―」講演。27日加藤公男と
終日オルタ・HPリニューアルのための整理作業。29日「変革のアソシエ」で韓
国の著名な学者チヨ・ヒヨン氏の「2013年韓国新政府の性格と展望」。30日横浜
美術館でキャパ写真展。午後、新横浜オルタ館で東京新聞デスク田原牧氏の「震
災・原発事故から見えてくる日本社会」。2月1日ハイムで創業史研究会出席。会
食。5日学士会館で台湾・慈済大学王さんと横田克己・荒木重雄・岡田充氏等と
懇談。会食。7日妙見寺で仏教に親しむ会。8日東工大で東大出版会竹中英俊氏
「公共哲学と出版」。9日神保町で荒木重雄・岡田一郎・山口希望・堀内慎一郎
氏らと運動史懇談。河上民雄氏追悼打ち合わせ。10日あそか病院に北市氏見舞。