編集後記58

【編集後記】 

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◎ 今月の巻頭は物流業者代表を含む有識者による東海道物流新幹線構想委員
会の「物流新幹線構想」(資料)とこれに賛同する立場から牧衷氏に「貨物電車
による首都圏物流のモーダルシフトの提唱」―「ハイウエイ・トレイン」の構想
に寄せてーを執筆していただいた。私が始めてモーダルシフト論に触れたのは雑
誌『発想』(2000年5月創刊号・季節社刊)における「失われた10年からどうや
って脱出するか」という力石定一氏と牧衷氏の対談で「新幹線による貨物輸送」
を提唱されていたのを読んだ時である。あれから8年、地球温暖化による環境危
機の深化、原油価格の高騰などが人々のエコ意識を急速に変えつつあるとはいえ
、今回の有識者による「物流新幹線構想」の政策提案は感慨深い。是非、民主党
なども高速道路無料化という当面の経済活性化策にとどまらず総合交通体系を確
立する全体像のなかで「物流新幹線構想」を政策的に位置付けて貰いたいと思う

     
◎ ほんの数ヶ月前、7人を殺害した秋葉原通り魔殺傷事件が発生し、その記億
が消えないうちに今度は大阪・難波の個室ビデオ放火事件で15人の犠牲者が出た
。いずれも何の関係もない多くの者を巻き込む悲惨な事件である。この二つの事
件について、犯罪の動機や性質は違っても、非正規雇用の急速な拡大や社会にお
けるコミニケーションの変化など共通する背景がありはしないか。両事件に通底
を感ずる者は多い。これについて、政治社会学者の岡田一郎氏に秋葉原通り魔殺
傷事件をネットコミニケーションの視点から論じていただいた。

◎ 私たちは、ともすれば、いわゆる西側に偏った価値観・情報で世界を見が
ちだ。今月からは宗教に造詣の深い荒木重雄氏に『宗教・民族から見た同時代世
界』という視点の連載コラムを始めて頂いた。また短期連載で工藤邦彦氏の「『
2008年秋の政権交代』への私見」を載せ、書評では政治学を志す大学院生の山口
希望氏にアメリカの知日派政治学者ジエラード・カーテイス氏の『政治と秋刀魚
』―日本と暮らして45年―を評して貰った。エッセーには久しぶりに高沢英子さ
んが生活者視点の『キッチン断想』を寄せて下さった。

◎ 年金・医療など日本の社会保障制度全般が崩壊に瀕するなか、高齢化は急
速に進み、個人も社会も未知の世界と遭遇しつつある。その一つに終末期医療・
緩和ケアー。さらに安楽死の問題があり、患者・医療従事者・患者の家族など多
くの人々が戸惑っている。まだまだ社会的に議論が深まっていないのだ。「オル
タ」では西村徹氏が56号の「臆子妄論」で緩和ケアーについて触れ、57号では初
岡昌一郎氏が『エコノミスト』から「人生は長くなり、ゆっくり死んでゆく」「
人生終末期のケアー・サンセットに向けて」「家庭こそ安住の場」という興味あ
る議論を紹介された。西村氏の提起についてはすぐに湯布市の司城さんという読
者から長文の意見が寄せられ西村氏もこれに何回か丁寧に答えらた。

編集部としてはこのヤリトリを紙面に載せることも考えたがお家庭のことなど
も触れられており取りやめた。初岡氏の記事にも反響が多く、この問題が高齢
化社会の大きな課題であることを示唆していた。「オルタ」ではあらためて取
り組みたいと思う。

◎ 去る10月10日、東京・総評会館で行われた浅沼追悼集会シンポジューム
『今、憲法問題を考える』は2Fの大会議室が満席になる盛況であった。昨年
に引き続き「浅沼追悼集会実行委員会」の主催だが今年はパネラーに土井たか
子・野中広務・横路孝弘(欠)・大谷昭宏(ジャーナリスト)各氏とコーデイ
ネーターに作家宮崎学氏を招くなど異色の組み合わせで、九条改憲阻止の幅広
い戦線構築を企図したものとなった。      

 昨年の集会では早稲田大学弁論部で浅沼氏の後輩になる民主党渡辺恒三議員
の追悼の弁が人々を惹きつけたが、今年は違った意味で主役は自民党の野中広
務氏であった。土井さんの次に発言した野中氏は冒頭「この会が浅沼追悼集会
と名付けながらなぜ黙祷も捧げずに進行するのか」と発言、司会者があわてて
黙祷を宣し、不手際をわびた。このハプニングは後味の悪いものを残したが、
宮崎学氏の『社民党・共産党は「護憲」であたりまえなので、問題は自民党内
部の九条改憲反対グループとどう組むかが大切だ』という指摘に共感の拍手が
強かったのは主催者の意図が通じたのであろう。

                       (加藤 宣幸 記)

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